※この作品はR-18です。

戦い続ける呪い NARUTOの世界で無双する   作:闇夜光明

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少年の旅立ち

俺は家に帰った。

 

「お帰り、シン」

 

 玄関を開けると、母さんがいつものように迎えてくれた。

 

「……ただいま」

 

 それだけ言って、俺は自分の部屋へ向かった。

 

 この世界で、俺の味方は母さん一人だった。

 

 父さんも悪い人じゃない。

 

 でも、俺のことを理解してくれているのかと聞かれれば、よくわからない。

 

 学校ではいじめられている。

 

 友達もいない。

 

 好きな女の子には、取り返しのつかない傷をつけてしまった。

 

 ――俺には、何もなかった。

 

 ベッドに横になる。

 

 明日、学校に行きたくない。

 

 いや。

 

 学校どころじゃない。

 

 生きていることそのものが、つらかった。

 

 目を閉じる。

 

 あの悪魔の言葉を思い出す。

 

 ――その女の子の傷を消してあげようか?

 

 本当に、あいつの言葉を信用していいのだろうか。

 

 そもそも、あれは夢だったんじゃないのか。

 

 そう思った瞬間だった。

 

 部屋の中が、突然暗闇に包まれた。

 

「……なんだ?」

 

 真っ暗だ。

 

 だが、完全な闇ではない。

 

 ところどころに、小さな光が浮かんでいる。

 

 星のような光。

 

「……なんだ、ここ?」

 

 足元もない。

 

 壁もない。

 

 天井もない。

 

 俺はただ、暗闇の中に浮かんでいた。

 

「宇宙……?」

 

「よぉ。待たせたな」

 

 突然、隣から声がした。

 

 振り向く。

 

 そこにいたのは、昨日の黒い人影だった。

 

「あなたはいったい……?」

 

「ああ、俺か?」

 

 黒い影は少し考えるような仕草をした。

 

「俺は悪魔……らしい」

 

「らしい?」

 

「俺自身も、よくわかってないんだよ」

 

 悪魔はあっけらかんと言った。

 

 昨日の恐ろしい存在とは、少し印象が違う。

 

「それで……何の用?」

 

「お前に話がある」

 

 悪魔はそう言うと、俺の前に浮かんだ。

 

「俺はいろんな世界を旅してる」

 

「……いろんな世界?」

 

「ああ。そして、俺はこの世界に入りたい」

 

「この世界って……?」

 

「ナルトの世界だ」

 

「……ナルト?」

 

 あいつの世界?

 

 なぜ、わざわざ「ナルトの世界」と呼ぶのかはわからなかった。

 

「だが、俺には身体がない」

 

 悪魔は自分の身体を眺めるように言った。

 

「だから、お前の身体をくれ」

 

「……俺の?」

 

「ああ」

 

 普通なら、そんな話をされたら恐怖するだろう。

 

 でも俺には、どうでもよかった。

 

 カナコの傷が消えるのなら。

 

 俺の身体なんて、どうなってもいい。

 

 そもそも俺は、一度死んでいる。

 

 いや――

 

 正確には、死んだはずだった。

 

「条件は?」

 

 俺が聞くと、悪魔は少し意外そうな顔をした。

 

「お前から条件を出すのか?」

 

「一つだけ」

 

「なんだ?」

 

「俺の命を差し出せばいいんだろ?」

 

 悪魔は笑った。

 

「違うよ」

 

「え?」

 

「お前に俺の力を与えるんだ」

 

「……力?」

 

「ああ。その代わり、お前は戦い続ける」

 

 悪魔の声が、少しだけ低くなる。

 

「辞めることはできない」

 

「……」

 

「それでもいいか?」

 

 意味がよくわからなかった。

 

 戦い続ける。

 

 辞められない。

 

 そんな条件が何を意味するのか、俺には理解できない。

 

 でも――

 

「もちろんだよ」

 

 即答した。

 

「それで……彼女の傷は、本当に治るんだな?」

 

 悪魔はニヤリと笑った。

 

「お前、その女のことが好きなのか?」

 

「っ……!」

 

 図星だった。

 

「違うよ!」

 

 思わず声が大きくなる。

 

「俺が傷つけたんだ。だから、その責任を取りたいだけだ」

 

 嘘ではない。

 

 それも俺の本当の気持ちだった。

 

「そうか」

 

 悪魔は意味ありげに笑う。

 

「だがな――傷は消えない」

 

「……なんだと?」

 

 胸の奥が凍った。

 

「約束が違う!」

 

「傷は消えない」

 

 悪魔は淡々と言った。

 

「だが、移すことはできる」

 

「……移す?」

 

「そうだ」

 

「それは……俺に?」

 

「ああ」

 

 一瞬、俺は呆然とした。

 

 そして――

 

「なんだ。驚かすなよ」

 

 ほっとした。

 

「ぜひ頼む」

 

「……」

 

「俺に傷を移してくれ」

 

 迷いはなかった。

 

 悪魔が目を丸くする。

 

「お前……本気か?」

 

「もちろん」

 

「……そうか」

 

 悪魔は少しだけ苦笑した。

 

「あのさ」

 

「何?」

 

「それはまだ序の口だ」

 

「?」

 

「このあと、お前には修行をしてもらう」

 

「修行?」

 

「ああ。そのために、この家からも、この里からも出てもらう」

 

「……」

 

「そもそも君、死んでるし」

 

「……そうだった」

 

 俺は呟いた。

 

 いや。

 

 生きている。

 

 今こうして会話している。

 

 でも、飛び降りたのは事実だ。

 

 本来なら、俺は死んでいた。

 

「わかったよ」

 

 俺は答えた。

 

「そもそも、あなたにあげるつもりだった命なんだから」

 

 悪魔は一瞬黙った。

 

 そして――

 

「……意外とドライだな、お前」

 

 笑った。

 

「そろそろ行くぞ」

 

「どこへ?」

 

「決まってるだろ」

 

 悪魔が歩き出す。

 

「お前が傷を引き受ける場所だ」

 

 俺はその後を追った。

 

 ◆

 

 そこには、少女が眠っていた。

 

「……カナコちゃん!」

 

 思わず駆け寄る。

 

 ベッドで眠っているカナコ。

 

 その顔を見て、息が止まった。

 

 右半分。

 

 そこには大きな傷が残っていた。

 

 失明しなかったことが奇跡だった。

 

 あんなに可憐だった顔は、痛々しい傷によって大きく変わってしまっている。

 

 これでは――

 

 人前に出ることすら、つらいだろう。

 

 学校に来なくなったのも当然だ。

 

「……カナコちゃん」

 

 俺は拳を握った。

 

「ごめん……」

 

 悪魔がカナコの隣に立つ。

 

 そして、彼女の頬に手を添えた。

 

 同時に、俺の頬にも手を添える。

 

「いいんだな?」

 

「もちろん」

 

「後悔しないか?」

 

「しない」

 

 悪魔が笑った。

 

「そうか」

 

 次の瞬間――

 

「ぐっ……!」

 

 焼けるような痛みが走った。

 

「うあああああっ!」

 

 右半分の顔が、燃えているようだった。

 

 皮膚を引き裂かれるような痛み。

 

 俺は歯を食いしばった。

 

 やがて痛みが引いていく。

 

「……はぁ……はぁ……」

 

 俺は息を切らしながら、カナコを見る。

 

「……え?」

 

 傷がない。

 

 さっきまであった大きな傷が、跡形もなく消えている。

 

 可憐な顔。

 

 いつものカナコの顔。

 

「よかった……」

 

 涙が溢れた。

 

「よかった……本当によかった……」

 

 俺は眠っているカナコの頬に、そっと触れた。

 

 傷のない頬。

 

「……これくらい、許せ」

 

 それ以上は何もしなかった。

 

 ただ、彼女が元の顔に戻ったことが嬉しかった。

 

 ◆

 

 俺は悪魔と一緒に、自分の部屋へ戻った。

 

 鏡を見る。

 

「……」

 

 そこには、右半分の顔に大きな傷を負った少年が映っていた。

 

 醜い傷だった。

 

 でも――

 

「これでいい」

 

 この傷を見るたびに思い出せる。

 

 カナコが元に戻ったことを。

 

 俺は机に向かった。

 

 そして紙を一枚取り出す。

 

 母さん。

 

 父さん。

 

 今まで育ててくれてありがとう。

 

 何もできない息子でごめんなさい。

 

 もう、ここには戻ってきません。

 

 親不孝な息子でごめんなさい。

 

 ――そんな内容を書いた。

 

 ある意味、遺書だった。

 

 ペンを置く。

 

「……行こうか」

 

 悪魔を見る。

 

「ああ」

 

 俺は一度だけ、自分の部屋を振り返った。

 

 これが最後になる。

 

 そして――

 

 悪魔とともに、木ノ葉の里を出た。

 

 ◆

 

 翌朝。

 

 風間シンが行方不明になった。

 

 当然、家族は大騒ぎになった。

 

 だが、学校では――

 

「逃げたんじゃない?」

 

「まあ、あいつならありそうだな」

 

 そんな程度で済まされた。

 

 捜索は行われた。

 

 けれど、誰も本気でシンが自ら命を絶ったなどとは考えなかった。

 

 いじめられっ子。

 

 目立たない少年。

 

 いなくなっても、誰も気に留めない。

 

 悲しんでいるのは――

 

 家族だけだった。

 

 そして、誰も知らない。

 

 風間シンが死んだその日。

 

 別の何かが、生まれたことを。

 

 その少年が、これから数え切れないほどの戦いに身を投じることを。

 

 そして――

 

 その旅の先で、世界そのものを変えてしまうことを。

 

 誰も、まだ知らなかった。

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