※この作品はR-18です。

新たな棟梁に選ばれた主人公の命を奪いに来た女アサシン達を返り討ちにして犯し奪い娶る現代ファンタジー   作:三流木青二斎

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第五話

 

 

 

だがしかし、彼らの魔の手が彼女の柔肌を触れる事は無かった。

暗闇の奥から、複数の鋼の風が空を切ったかと思えば、暗殺師達の手に正確に刃物が突き刺さる。

 

「な、こ、これはッ」

黒髄(こくずい)ッ」

 

黒髄。

暗殺師が使役する闇力を結晶化した刃物である。

手頃に実体化したり影化する事が出来るが、対暗殺師用か暗殺にしか使えない飛び道具だ。

それを放つと言う事は、非道な行為を遮る相手は、同業者である事を示す。

そして、暗闇の奥から現れる、一人の男。

 

「俺が奪ったモンだ、俺のモノに手を出す意味を理解しているのか?」

 

憤怒が混ざる声色で漆篠夕が道路をゆっくりと歩き出す。

彼の姿を認識した暗殺師たちは、標的が態々出向いて来た事に労せず功を奏したと思ったのだろうが、それは大きな間違いであった。

 

「漆篠だッ!!」

「漆篠夕だ、殺せッ!」

「う、うぉおおお!!」

 

 

蛙赤甞が叫ぶと共に、周囲の暗殺師達が腰に携えた小刀を取り出す。

それと共に、即座に漆篠夕の肉体に、一同が彼の肉体に刃物を突き刺して確実に仕留める。

四方八方から刃物を受けた漆篠夕は口から血を吐き出しながら顔面を蒼白とする。

 

「なッ……は、ははッ!!容易い、容易いぞォ!!」

「ふははッ!!この程度か漆篠夕ッ!!」

「所詮は無能、幼き頃に捨てられた無価値なガキよォ!!」

 

彼らの嘲笑の声に対し、次第に漆篠夕の肌がドロリ、と溶け出す。

そのまま、彼の皮膚が剥がれると共に、黒色の表皮をした影で構築された人形が顕わとなる。

 

「なッ!?」

 

漆篠夕の使役する『七屍』の一体である『身代(みのしろ)』は、致命傷を受けた際に使役者と影人形の位置と怪我を入れ替える能力を持つ。

これにより、漆篠夕の代わりに人形がダメージを肩代わりしたのだ。

であれば、漆篠夕は一体、何処に消えたのか。

 

「っ、鬼月愛露が居ない」

「まさか、あの一瞬でッ!?」

「こ、小癪なァあ!!」

 

憤りを浮かべる暗殺師達を尻目に。

彼女を腕の中に抱き上げながら、漆篠夕はゆっくりと道路を歩き続ける。

鬼月愛露の表情は複雑だった。

あれ程までに自分に責め苦を浴びせ続けた男が、今では自分の命を救った事に対して、何故この男が自分を助けたのかまるで分からなかった。

 

「な、んで、ウチをたすけたんゃ」

 

目付きを鋭くしながらも、その声色は消え入りそうな程に小さい。

彼女の質問に対して漆篠夕は静かに答えた。

 

「勘違いするな、お前はもう、俺の肉傀儡だ、皐一人じゃあ俺の昂りを抑える事が出来なかった、だから、お前も使い潰してやる、勝手に逃げるな、俺が使う」

 

自分勝手な物言いだ。

しかし、何よりも安全に思える感情が芽生えだす。

敵にすれば何よりも怖ろしい存在だろうが。

味方として身を捧げ続ける限り、これ程までに安全な場所など、他にないだろう。

 

「俺に従え、俺に尽くせ、全てを晒し、全てを捧げろ、そうすれば、命だけは赦してやる」

 

そして、それこそ。

王の資質と言うものを、鬼月愛露は感じ取った。

 

 

影人形には夫々番号が記されている。

 

壱號『離剣(りけん)』。

弐號『臥伏(がぶし)』。

参號『身代(みのしろ)』。

肆號『双腕(そうわん)』。

伍號『鐵拳(がちけん)』。

陸號『爪牙(さいが)』。

 

現状、六体の〈七屍〉が蛙赤甞の前に出現。

対して蛙赤甞以外の暗殺師は死之技を持たぬ雑衆である。

それでも暗殺技術と体術に特化した暗殺師であり、身体能力を向上させる術を持つ。

 

赤涙(せきるい)ッ)

 

心臓を高鳴らせる事で体温を上昇。

血液の高速稼働による肉体負荷は身体能力を上昇させる。

眼球から張り巡らされた血管が血圧に耐え切れず破裂し血液が霧の様に散る。

この事から身体能力向上の術は赤涙と言う名称が名付けられた。

 

「ぶがッ!?」

「ぐぇえッ」

 

だが。

身体能力を向上させた者の殆どは壱號が生成する黒髄の手裏剣により致命傷を受ける。

辛うじて手裏剣の投擲から搔い潜る事が出来た暗殺師は接近し影人形の破壊を行おうとする。

手裏剣から回避出来た他の暗殺師も同様に、援護射撃をする様に黒髄を生成し、影人形に投擲するが。

 

「なッ弾かッ」

 

伍號である鋼鉄の籠手を装着した『鐵拳』と強大な筋肉を持つ『臥伏』が手裏剣を弾く。

そして接近してくる暗殺師に相対する様に陸號『爪牙』と『双腕』が前に出る。

『爪牙』は鋭い爪と牙を持つ獣の様な姿をした影人形だ。

同時に敏捷値が高く、暗殺師が攻撃をする為に大きく腕を振り上げた瞬間に爪で胴体を三回切り裂く事が出来た。

 

他にも暗殺師が接近するが、肆號『双腕』が黒髄を使役して細長い刀の様な物を生成する。

単純に手数が二倍になる影人形の攻撃により暗殺師は即座に斬り殺された。

 

「ひ、ぃッ」

「なんだよ、この、化物はァ!!」

 

ただ、無能を処罰するだけの簡単な仕事であった筈だ。

それなのに何故仲間が死ぬ?何故、此処まで壮絶な死地を味合わなければならない?

割に合わない、決して、この戦いに見合う対価が無い。

 

「ダメ、だッ!」

「逃げろッ!!」

「く、う、ぁッ」

 

背中を見せれば壱號の黒髄手裏剣が飛ぶ。

立ち向かえば明らかに格上の影人形に殺される。

 

(なんだ、これは?)

(何故、……こんな事、に?)

 

多くの同胞が殺され、蛙赤甞が一人、残された。

残る影人形達が、ゆっくりと彼を殺そうと接近する最中。

 

(このまま、では、死……)

 

死ぬ。

そう連想した最中だった。

 

「あー、今日も、酔っぱらっちゃったもんにぃ」

 

高笑いをしながら、此方へと千鳥足で接近する人の姿を見た。

振り向くと、其処には終電帰りのサラリーマンが歩いていた。

暗殺師が殺される壮絶な死の場所に出くわしたサラリーマンは、その惨状を見れば一気に酔いが醒めるだろうが。

醒めたのは、暗殺師達の方であった。

死亡した暗殺師たちは、サラリーマンが視認すると共に遺体が影となり消失。

黒髄も同様に消え去り、先程まで追い詰めていた影人形も同様に黒色の霧と成って霧散した。

 

「んあ、なぁに見てんだよぉ爺さん、このエッチ!!」

 

サラリーマンは、蛙赤甞の視線を感じ取ってそう声を漏らした。

普段ならば殺意を抱くが、この時ばかりは感謝する他無い。

 

(助かった……天照の瞳を持つ者よ)

 

暗殺師。

超常の力を持つ彼らが、何故、裏社会でしか生きられないのか。

本気を出せば、世界を牛耳る事すら可能な異能を所有するのに。

彼らが表舞台でその力を発揮する事が出来ないのは、その性質が由縁であった。

闇の力は便利ではあるが、その力は、闇の力を持たぬ者が視認すると消失してしまう。

 

故に、暗殺師が人の世に追放される事は、能力を封じられると言う事なのだ。

漆篠夕が人間社会に追放されたのもそれが理由であった。

人の前では姿を見せる事が出来ない異能、それこそ、彼ら暗殺師と言う名の由来でもあった。

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