新たな棟梁に選ばれた主人公の命を奪いに来た女アサシン達を返り討ちにして犯し奪い娶る現代ファンタジー 作:三流木青二斎
一先ず、蛙赤甞は撤退する事に決めた。
漆篠夕と言う男が無能とは違い絶大な力を宿している、棟梁に相応しい人材である事を告げなければならない。
暗殺師として、生きて情報を持ち帰る事こそが、蛙赤甞の仕事であった。
電車が通う線路沿いの道路を静かに足音を立てる事無く移動を行う彼は急ぎ足でその場から離れようとする。
(急がねば、少なくとも、人通りの多い場所へッ)
現在、漆篠夕が何処に潜伏しているのか分からない状況。
奇襲を受ける前に、人の多い場所へと移動しておきたかったのだが。
「……ま、まさか、真正面に居るとは」
道路の真ん中に立ち尽くす、一人の女性。
それは、皐めゐであり、彼女は赤い瞳で一人の暗殺師を呆然と見詰め続けていた。
「坊ちゃまの情報を持ち帰る事は許可していません、命と共に置いて逝け」
静かに告げると共に、彼女の死之技が発動する。
頭部から生え出す角が、槍先の様に蛙赤甞の方へ矛先を向けていた。
「ぐ、っ……ふふっ、漆篠夕、確かにアレは凄まじい、棟梁を継ぐ者として力だけ言えば、不足は無い」
急におだてて来る為に、一瞬、皐めゐは彼の言葉に思わず頷いてしまった。
だが、それが命取りであった。
即座に、蛙赤甞は自らの口を巨釜の様に開くと、口の中から赤と黒が混ざり合う舌先を伸ばし始める。
「だがッ、それでは棟梁として不相応よッ!!多勢を以てすれば他愛なしッ!!」
仲間を呼び寄せる事が出来れば。
あの化物を、影人形の王を滅する事が出来ると蛙赤甞は確信していた。
故に、どうにかしてこの場を切り抜け、情報を売れば他の棟梁候補から恩賞を賜る事が出来る。
全ては更に高い地位の為、権力の為、力の誇示の為に、蛙赤甞は皐めゐを戦闘不能にする事に定めた。
蛙赤甞の死之技『
舌先に疑似的な闇力で形成された鞭の様にしなる伸縮自在の舌先を自在に操る異能であった。
口が開いた瞬間に、素早く伸ばす事で槍による突進が如き鋭い一撃を皐めゐに向けて放つ。
しかし、皐めゐはその攻撃を見切ると共に軽く指先で蛙赤甞の舌先に触れた。
その瞬間、彼女の指先から放たれる電撃が舌先に通電し、そのまま本体に向けて稲妻が迸る。
「ぐ、ぎゃ、ァ!!」
感電した蛙赤甞は、肉体を痙攣させながら、表皮が焼け焦げる臭いが鼻を突いた。
このままでは感電死すると思った彼は即座に異能を解き彼女の魔の手から離れる事にした。
「ならば、殺す他ありません、私の死之技は加減がありませんので、カエルの焼き鳥にしてあげましょう」
「ならば……それは焼きカエルではないか?」
この状況でも、蛙赤甞は軽口を叩いた。
肉体から焼け焦げる臭いが周囲に散っていた。
皐めゐとは真正面から戦う事は不利と感じた蛙赤甞は踵を返して道路を駆け出す。
当然、皐めゐは相手の逃走を許す事無く、老獪を追跡すると共に角の切っ先から大量の光を発生させた。
ばちばち、と音を鳴らす電気の球が、相手を追う様に稲妻の一撃を発揮させる。
予見した蛙赤甞は地面を蹴って稲妻の一撃を回避すると共に舌を伸ばして街灯を掴んで天辺に昇ると、死之技を行使する。
(『垢舐』ッ)
舌の先端を黒髄で凝縮した鋭い穂先と化して皐めゐに向けて伸ばし出す。
再度、相手が同じ様に攻撃して来た為、皐めゐは腕部に集中して電気を流した。
相手が自身に触れれば即時感電出来る様にする処置だったが、この時の蛙赤甞の行動は違った。
(『垢舐』―――『二枚舌』ッ)
彼女に接触する寸前。
闇力によって構成された舌が大きく伸びると二股に避けて二本の舌先へ変化する。
一方の舌先は闇力によって先端が鋭くなった舌先であるが、もう片方は弾力のある柔らかな舌先であり、彼女の腕を避けて、首元に強く絡まった。
そして、彼女が舌先に触れた瞬間、電気が蛙赤甞に向けて疾走するが、それを老獪は逆手に取った。
電気を受けた肉体は筋肉が縮小する、それにより、舌先に集中した筋肉が締まり出して、皐めゐの首を強く締めたのだ。
「ぁッ、がッ」
彼女の肉体に受ける電撃は角が吸収してくれるが、蛙赤甞の舌により、彼女の喉は強く締め付けられる事で、呼吸が出来ずに酸欠状態となる。
結果。
意識が朦朧とした皐めゐは、死之技を解除する事となり、まともな判断が出来ない状態へと陥ってしまう。
即ちこの我慢比べは、蛙赤甞の勝利であり、卑下た笑みを浮かべながら舌先を使ってその場にしゃがみ込む皐めゐの両腕を舌先で拘束した。
「メス如きが、儂に盾突こうなど……この屈辱は、身体で返して貰おうか」
腹話術による会話を行いながら、項垂れて真面に動く事の出来ない皐めゐに向けて唾液を分泌したもう片方の舌先で彼女の頬を舐めながら、そのまま襟の中へと舌先を伸ばし込む。
「『垢舐』―――『
舌の表面にかえしを作り、舌先で擦る事で対象を削ぎ取る異能。
これにより、彼女のセーターとブラジャーを削り取ると彼女の衣服が前開きとなる。
下着によって締め付けられた胸元が解放されひと時の自由を得るが、再度蛙赤甞の舌先が這い出して肉体を強く縛り付ける。
「ん、ぐッ――― んぁっ」
顔面を紅潮とさせながら蛙赤甞の亀甲縛りに苦痛を漏らす彼女の歪んだ表情に溜まらなく興奮を覚える蛙赤甞は、よりいっそう、彼女を辱める事に決めたのだが。
蛙赤甞は、あまりにも彼女に集中し過ぎていた。
その背後から歩み寄る、男の影にすら気付いていなかった。
「う、漆篠ィ!!」
叫ぶと共に皐めゐの拘束を解き舌を伸ばそうとする。
しかし、彼女の腕から拘束を解いた瞬間、もう片方の、亀甲縛りの様に肉体を絡める舌先に皐めゐの手が強く握り締められた。
「な、ぁ!?」
皐めゐは気絶からの回復、即時に漆篠夕のサポートを行う。
相手の舌先を一つ封じる事で、トリッキーな攻撃をさせない為だ。
「く、うぉおおお!!」
叫びながらもう片方の舌先を操作し、黒髄で舌先を硬く鋭利な穂先に変化させて射出。
漆篠夕を貫こうとする一撃に対し、漆篠夕は静かに目元から赤色の霧を放つと共に黒髄を使役。
闇力を腕部に固めて、接近すると共に蛙赤甞の舌先を切り刻んだ。
「な、ぎゃッ」
触覚の機能を高精度にするべく痛覚機能も共に神経に繋げた為、舌先が本当に切り刻まれた様な痛みを覚える蛙赤甞。
漆篠夕の手は黒髄を指先に鋭い爪の様に形状を変化させた事で鋭い刃が指先から生えていた。
赤涙によって身体能力を向上させた漆篠夕は即時に蛙赤甞の近くに移動したと共に彼の口の中に己の指を突っ込んだ。
舌が起因となる能力ならば、口元を塞いでしまえば、その時点で無力になると同義であった。
彼の殺意に漏れた赤き瞳を前にして、蛙赤甞は恐怖しか覚えなかった。
「ひ、ぃ」
「俺の肉傀儡を舐めたな?……地獄の閻魔が舌を引き抜く手間を省かせてやる」
口の中に突っ込んだ手を引くと共に、蛙赤甞の本来の舌を切断し、大量の血液が口から漏れ出す。
「ぎ、ひ、ぃっ、ぃいいッ!!」
涙を流しながら失禁する蛙赤甞に、静かに近寄ると、漆篠夕は手をゆっくりと老獪の方に向けた。
「お前の能力は使い勝手が良さそうだ」
漆篠夕は弐號の『臥伏』をその場に召喚させた。
影人形はゆっくりと蛙赤甞の方に近付くと共にその肉体を掴んだ。
「な、や、ひゃめろッ、ひゃめふぇくれぇ!!てゃのひゅッ」
必死に懇願するが、舌が切断されお得意の腹話術も出来ない。
憐れな老人に対して漆篠夕は睨みながら告げた。
「俺の肉傀儡に触れた時点で許される筈が無いだろうが、精々無価値になるまで俺に使われ続けろ」
その言葉を最後に、壱號の離剣の顔面が割れた。
大きな口へと変化すると共に、壱號は蛙赤甞の頭部を一気に飲み込む。
ただ一人の老獪は、影人形に捕食されると、その頭部に記載された『壱號・臥伏』の文字が変化を及ぼし、影人形の肉体も変化し、蛙の様なフォルムに成った。
そして頭部には『壱號・蝦蟇』と言う名前と共に、口の中からちろちろと、細長い舌先を伸ばしていた。
これが、漆篠夕の能力の真髄であった。
『七屍』は殺害した対象物の能力を入れ替える能力を宿している。
故に、より強力な敵を倒せば倒す程に、強力な能力を入れ替えて強化する事が出来る。
それこそが、漆篠夕の死之技であった。