※この作品はR-18です。

僕のヒーローアカデミア  ─MEGADILE─   作:餅米蒟蒻

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Episode4 DETERMINING"見定め"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラガラガラ…………

 

ボサボサの黒髪に、どこかくたびれた雰囲気をした、疲弊した顔。

 

首元には重厚な包帯のような布を巻いた男──1年A組の担任教師、相澤消太である。

 

 

彼が教室に入ると……一同は静まり返って着席していた。

 

見渡してみると、殆どの者が顔色を極度に悪くして何かに深く怯えている。

 

特に耳郎、上鳴、瀬呂の3人。

 

そして、困惑と戦慄が入り混じった顔で一点をチラチラと何度も見やっている飯田と八百万。

 

その一点とは──席でご機嫌そうに鼻息を荒くし、一人満足気に座っている例の巨体の生徒。

 

 

 

間違い無い。

 

相澤がここへ辿り着くまでの僅かな時間で、既に何か致命的な問題を起こしたのだ。

 

 

 

【相澤】

「(……初日とは思えん空気だな。確実に何か問題を起こしたか。ハァ……本当に大丈夫なのか、オールマイトさん)……俺は君等の担任の相澤消太だ。宜しく」

 

 

【一同】

(た、担任!?この疲れ切ったおっさんが!?)

 

 

教室中に激しい動揺のざわめきが広がる中、緑谷だけは目を凝らして教壇の男を真剣に観察していた。

 

 

【緑谷】

(先生……って事は、この人もプロヒーローなのかな……? でも、あんなに疲れ切った雰囲気の人、僕のデータには一切無いぞ……公に出ていない、未知の隠れた凄まじい実力者なのかな……?)

 

 

【相澤】

「早速だが、これ着てグラウンドに出ろ。更衣室はあっちにあるから、ちゃっちゃと着替えて降りてきなさい。以上、先生は先に行って待ってるからな」

 

 

 

相澤は足元から取り出した雄英高校指定の体操服を一同に見せつけると、呆然とする生徒達を置き去りにして淡々と、しかし迷いの無い手際で指示を出し、さっさと教室を去っていった。

 

 

 

【上鳴】

「な、何するんだろうな……?体操服着てグラウンドって事は……やっぱりいきなり体力テストか?」

 

 

【尾白】

「えっ、ガイダンスとか入学式も無しにいきなり?いやでも、体操服着ろって指示が出た以上はそれしか考えられないよね…」

 

 

【芦戸】

「何するんだろねーカエルちゃん?」

 

 

【蛙吹】

「私は蛙吹梅雨よ、梅雨ちゃんと呼んで。…まぁ今から考えても仕方無いわ、とりあえず素直に着替えに行きましょう」

 

 

 

先程のストーンによる大混乱に続き、唐突過ぎる担任の指示に更なる困惑を深めつつも、一同は急いで男子更衣室、女子更衣室へと駆け出していった。

 

 

 

 

 

 

グラウンドへ移動すると、当然ながら既に相澤が待っていた。

 

 

【相澤】

「……よし、揃ったな。ではこれより、"個性"把握テストを行う」

 

 

【一同】

「"個性"把握テストーーー!!!?」

 

 

 

「入学式は!?」「ガイダンスは!?」と口々に叫び、パニックになる生徒達。

 

それに対し相澤は、ヒーロー科としての合理性とテストの趣旨を冷徹かつ淡々と説明した。

 

一応の納得はしたものの、依然として戸惑いと不安を隠せない生徒達。

 

 

相澤は爆豪を前へと呼び出し、中学時代のソフトボール投げの記録を確認した上で、投球サークル内からの“個性”を使った投球を命じた。

 

 

 

【爆豪】

「死ねええええええええ!!!!」

 

 

 

爆破の凄まじい推進力を上乗せした爆豪の投げたボールは、一瞬で空を切り、恐ろしい記録を叩き出した。

 

 

【上鳴】

「うっひょー!700m超えかい!マジかよ!」

 

 

【瀬呂】

「自分の“個性”を思いっきり使っていいのか!!面白そうだなヒーロー科!!」

 

 

 

 

 

生徒達から歓声と興奮の声が上がる中、相澤の表情が不気味に、そして冷酷に陰った。

 

 

 

 

 

【相澤】

「……面白そう、か。ヒーローになる為の3年間、そんな甘い腹づもりで過ごす気で居るのかい?」

 

 

 

ゾクリとするような圧倒的な威圧感がグラウンド全体を支配する。

 

嫌な予感に身をすくめる一同に対し、相澤は容赦のない最悪の宣言を突きつけた。

 

 

 

【相澤】

「よぉし……8種目のトータル成績最下位の者は、見込み無しと判断して………………除籍処分としよう」

 

 

【一同】

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

 

【峰田】

「おいおいマジかよ!?入学初日だぞ! 理不尽すぎるってそんなの!」

 

 

【上鳴】

「ヤバイヤバイヤバイ!! どうしよう除籍ってクビって事!?入学早々クビとか冗談じゃねえぞ!!」

 

 

【緑谷】

(じょ、除籍処分……!?そんな……そんなの不味い……!8種目も……!?ワン・フォー・オールは今の僕じゃ完璧にはコントロール出来ない……使うたびに指や腕が壊れる……!まだ出力の微調整なんて全く……!!)

 

 

【相澤】

「生徒のいかんは俺達の自由。ようこそ……これが雄英高校ヒーロー科だ……!!!」

 

 

 

 

 

相澤の鋭く光る眼光に、極限のパニックに陥る生徒達。

 

 

 

 

だが、全員がただ狼狽しているわけではなかった。

 

 

優雅に己の美学を貫こうとする青山、一切手を抜くつもりのない障子や飯田、尾白、冷徹なまでに落ち着いている蛙吹、好戦的な笑みを深める爆豪、冷や汗を流しながらも必死に生き残る為の思考を巡らせる緑谷……。

 

 

 

そして──────。

 

 

 

【ストーン】

「除籍だと……?下らねえ!!」

 

 

 

巨体から放たれた大音量の怒号に、一同はビクッと体を震わせて一斉に注目する。

 

 

 

【ストーン】

「だったら全ての種目を完璧にこなして、最高の記録を叩き出してやるまでの事!!まずは手始めに俺様がその"個性"把握テストとやらで堂々の1位を目指してやるわ!!!ガハハハハハハハ!!!!」

 

 

【障子】

(…確かにあいつのあの異常な筋力なら、上位の記録を出してきそうだが…)

 

 

【耳郎】

(嘘でしょ!?コイツ除籍って言われて怖くないの!?やっぱり根本からイカれてる…)

 

 

【相澤】

(……向上心がある事自体は大変素晴らしいな。生徒名簿の詳細と前科を知らなければ、素直に褒めてやれたんだがな)

 

 

 

 

しかし、当然ながら納得のいかない抗議の声も上がった。

 

麗日が「初日やのに除籍処分なんて……いや、初日やなくても理不尽過ぎます!」と必死の形相で訴えかける。

 

 

しかし相澤の返答は極めて冷徹かつ、納得せざるを得ないものだった。

 

 

 

 

【相澤】

「自然災害、大事故……そして身勝手なヴィラン達。いつどこから来るか分からない数々の厄災……日本、いや世界は理不尽にまみれてる。そういう理不尽なピンチを覆していくのがヒーローだ。放課後マックで談笑したかったならお生憎様、これから3年間、雄英は全力で君達に苦難を与え続ける。……更に向こうへ、Plus Ultraさ」

 

 

 

相澤の放った重い言葉が、全員の胸に深く突き刺さった。

 

ヒーローとは単なる華やかな憧れの職業ではない。

 

ただ格好良いだけでもない。

 

不条理で理不尽な現実と正面から戦い、人々の命を全力で守り抜く存在なのだと、全員が覚悟を固めた。

 

 

 

【相澤】

「……全力で乗り越えて来い。さて、デモンストレーションは終わり。……ここからが本番だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1種目・50m走。

 

 

 

各々が自身の“個性”を最大限に活かしてグラウンドを駆け抜けていく。

 

 

 

最初に走るのは青山と芦戸。

 

スタートの合図と同時に青山は「ネビルレーザー」を後方へ勢いよく照射し、その反動でロケットのように飛び出すが、副作用でお腹を痛めてしまい途中失速。

 

その横を、足裏から分泌した酸で滑走する芦戸が、スピードスケートさながらの滑らかな走りで一気に追い抜き、軽やかに駆け抜けた。

 

 

続いて蛙吹と飯田。

 

 

蛙吹も蛙らしい見事な跳躍とフォームを見せたが、流石は飯田。

 

「エンジン」の爆発的噴射による異次元のアクセルで圧倒的な滑り出しを見せ、驚異の「3.04秒」という圧巻のトップタイムを叩き出す。

 

 

続いて麗日と尾白。

 

 

麗日は自身の服や靴を無重力化して軽量化を図るも、太く鍛え上げられた尻尾をしならせてバネのように爆発的な跳躍を生み出す尾白の凄まじい脚力には一歩及ばなかった。

 

続いて上鳴と切島が走り終え──。

 

 

 

そして、次の組。

 

瀬呂とストーンの番が巡ってきた。

 

 

 

【ストーン】

「おっしゃあ!!!やっと俺様の番か!!!あのメガネ野郎の記録を最強の脚力で超えてやる!!」

 

 

【瀬呂】

「い、いや流石にあいつの記録は無理があるだろ…3.04だぞ?お前のそのデカい身体じゃどう頑張っt」

 

 

【ストーン】

「んだとこのモヤシ野郎…!ならお前の脚をいまここでへし折れば、この記録は実質俺様の勝ちだな?折ってやろうか!!!」

 

 

 

ガシッ!!!!

 

 

 

【瀬呂】

「えっ!?ちょ待て待て!!わ、悪い悪い悪い!! (痛えぇ!?コイツ冗談抜きで折る気だ!!)」

 

 

気合い十分でドカドカと地面を鳴らし叩きつけるストーンに、思わずツッコんでしまった瀬呂。

 

だが、先程教室でぶん投げられたトラウマが蘇り、一瞬で心臓が縮み上がる。

 

教師である相澤の目の前であるにもかかわらず、ストーンはお構いなしだ。

 

 

 

【相澤】

「ストーン。さっさと始めろ。瀬呂に手を出した時点でお前の記録を全て0にするぞ」

 

 

 

これで大人しく収まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

と、その場にいた全員が思っていた。

 

だが、ストーンは誰もが想像する以上に、根本的なネジが吹き飛んだ傍若無人の権化だった。

 

瀬呂の脚から手を離したかと思うと、今度は一直線に相澤へ牙を剥き出し、そのまま巨拳を振りかぶって殴り掛かりに行ったのだ。

 

 

 

【ストーン】

「このヒゲ野郎!!!テメェ今なんて言いやがっ…」

 

 

【上鳴】

「マジかあいつ!?先生だぞ!?」

 

 

【爆豪】

(凶暴さが異次元だな…あいつとはバチバチに殺り合いたかったが、ここまで馬鹿だと速攻除籍で終わりか)

 

 

【相澤】

(!?…こいつ正気か?本当に頭のネジが外れてるな)

 

 

 

シュルルルルルルッ!!

 

ギチッ………!!

 

 

 

ストーンが殴りつけるより早く、相澤は一切動じる事無く首元の捕縛布を射出、一瞬で巨躯をガチガチに拘束した。

 

そして、髪を逆立て両目を赤く不気味に光らせる。

 

 

 

【相澤】

「つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のような完全な性格破綻者も、試験の点数さえ取れば入学出来てしまう」

 

 

【緑谷】

「あの目……あっ!!!そうかッ!」

 

 

 

相澤の放つ圧倒的な威圧感、その赤く光る眼光、そしてあのゴーグルと捕縛布。

 

緑谷の脳内に眠っていた膨大なヒーロー知識が爆発的に繋がった。

 

視界に入れた人間の“個性”をその場から一時的に消し去る特殊能力──アングラ系のプロヒーロー、イレイザーヘッドである。

 

 

 

【相澤】

「とてもじゃないがお前みたいな人格破綻者は雄英に相応しくない。今すぐ荷物を纏めて失せろ。退学だ」

 

 

 

しかし────────。

 

 

 

【ストーン】

「ヴヴヴヴオオオオ…………!!!!!!!」

 

 

 

ギシッ…ギシギシギシギシ…ブチブチブチブチブチィッ!!!

 

 

 

【相澤】

(!!?冗談だろ…捕縛布を引き千切ろうとしてるのか? …“個性”を封じた生身の筋力だけで?)

 

 

 

相澤──イレイザーヘッドの誇る武器「捕縛布」は、特殊炭素繊維に鋼糸の特殊合金を編み込んだ、しなやかさだけでなく鋼鉄並みの高い強度を誇る万能拘束具である。

 

身体強化系の“個性”であっても、並大抵の出力では千切れるどころか繊維一本傷つけることすら叶わない。

 

にもかかわらず目の前の生徒は、なんと純粋な筋力だけでそれを力任せにブチ千切ろうとしていた。

 

 

 

そして、ストーンは凶暴な啖呵を切る。

 

彼が目指しているのは、平和の象徴たるヒーロー等ではない。

 

この世で一番強い「最強の男」だ。

 

オールマイトに上手く諭された事でここにいるだけであり、彼の根本的な本質は何一つ変わっていない。

 

だからこそ、自分に立ち塞がる者は何があろうと「敵」と認識し、躊躇無く襲いかかる極めてタチの悪い危険人物だった。

 

 

 

【ストーン】

「ヒゲ野郎……退学だと?上等だ!!!どっちにしろ俺様はヒーローなんぞに端から興味ねぇ!!最強の男になる為にここに来ただけだ!!退学だってんなら都合が良い!!手始めにお前も周りの奴らも全員ぶっ潰し、その後にあのトゲトゲ頭と心置きなく喧嘩を楽しんでやる!!!」

 

 

【八百万】

「な…なんという野蛮で凶悪な……!!先生に対してまで……!」

 

 

【口田】

「ひ、ひいいいい……!!!怖い……せ、先生が殴り殺される…!!」

 

 

【爆豪】

「!!おい待てやバカワニ!!テメェそれは話が…」

 

 

【相澤】

「……………ほぉ。そうかそうか。最強の男、か。…………………………………お前には絶対無理だな。今のままじゃ」

 

 

【ストーン】

「何だと!!!こんな布切れすぐにブチ切ってお前の頭蓋骨を噛み砕いて脳みそを啜ってやるぞゴルァァァァァァ!!!!」

 

 

 

 

 

一方、遠く離れた校舎の陰から静かに見守っていたオールマイト。

 

 

 

【オールマイト】

(あらら…性格はやはりそう簡単に変わらないか……さぁ早く!相澤君、例の言葉を述べるんだ!!)

 

 

捕縛布の繊維がミシミシと千切れ始め、クラス全員がパニックに陥る。

最早テストどころの騒ぎではない。

 

相澤も内心ほんの少し、ほんの少しだけ驚愕していたが、表向きは完璧な冷酷さと冷静さを保っていた。

 

 

 

【相澤】

「いーや、お前には絶対無理だ。その怪力があろうが、お前の"個性"がどんな凄まじいものであろうが、お前は絶対最強にはなれない」

 

 

【ストーン】

「殺す!!!叩き潰す!!粉々にしてや…」

 

 

【相澤】

「本当に最強になる素質があるなら、何故なれないのか自分自身で分かるはずだしな」

 

 

【ストーン】

「………何?」

 

 

【相澤】

「まさか………分からないのか?お前、本気で今のままで最強の男になれるとでも思っていたのか?ただただ自分で自分を弱くする道を選んでるのに気付いてなかった訳じゃないよな?優秀な雄英生なら誰でも分かると思ったんだが……」

 

 

【ストーン】

「んぐっ!!?……このままじゃ弱くなるだと!?デタラメ言うなよジジイ!!俺様は嘘つきと口八丁で言いくるめようとするカスが何より大嫌いなんd」

 

 

【相澤】

「学校のルールを守るのが、最強の一歩に近付く最善の道だって事も分からないとはな。お前こそ、最強を目指すなんて口先だけの嘘つきじゃないのか?」

 

 

 

一同がヒヤヒヤしながら固まって見守る中、突如としてストーンの動きがピタッと止まった。

 

 

 

【ストーン】

「……………何?学校のルールを守るのが、だと?何でそれが最強に関係すんだよ」

 

 

【相澤】

「…一応敢えて教えてやるが…例えばオールマイト。彼を見てお前は強いと思うか?」

 

 

【ストーン】

「当たり前だ!!!あの人は最強の男!!どんな奴にも負けねえ男の中の男で、己の身一つで沢山の……」

 

 

 

あまりにも意外で純粋な肯定に、緑谷も内心びっくりし、爆豪も内心毒突いた。

 

 

 

 

【相澤】

「分かった分かった。ならその男の中の男であるオールマイト。彼の普段の行いはどうだ?日頃から礼儀正しく社会のルールを守り、人々の模範となっているだろう。お前から見てもそう見えるはずだ。………違うか?」

 

 

【ストーン】

「違わねえ。皆誰もがあの人の真似をしたがる。最強だからな」

 

 

【相澤】

「それだ。皆が憧れて真似したがるからこそ、彼は絶対的な最強なんだ。お前も認める最強の男がやってる行為は絶対だろ。彼も学生時代は極めて模範的で礼儀正しい人間だったと聞く。………だからこそ今でも最強なんだよ。これが、学校のルールを守る事が最強への確実な一歩だという証拠だ」

 

 

 

相澤はオールマイトのアドバイス通り、『最強』というキーワードを論理的に関連付けて説得を展開した。

 

 

事前に目簿で確認した通り、ストーンは相手の嘘や下心を野生の勘で非常に鋭く見抜く。

 

だからこそ、保身のデタラメや適当な宥めは一切通じず、却って逆上させてしまうのだ。

 

だからこそ彼自身が納得出来る、筋の通った説明を落ち着いて提示すれば────。

 

 

 

 

 

【ストーン】

「…………成る程…俺様はそんな重要な事を見落としていたのか…危ねえ危ねえ。危うく最強になる道を自分で無くす所だったぜ」

 

 

【耳郎】

(………え? なにこれ、急に変な空気に…?)

 

 

【緑谷】

(…まさか…納得しちゃうの…!?)

 

 

【爆豪】

(最初の会話で分かるわ。あいつはバカだが卑怯な屑じゃねえ。ただ圧倒的にバカ過ぎるだけだろ。だがまぁ……揉み消されねぇなら楽しめそうだ)

 

 

【蛙吹】

(やっぱり。乱暴で危険だけど、根は驚くほど素直過ぎる子なのね)

 

 

【ストーン】

「分かった!!!その話なら完璧に筋が通る!! その学校のルールとやらを守ろう!!!俺様は最強……いや、これから最強になる男だからな!!! 教えてくれてありg」

 

 

【一同】

(信じた!?あっさり納得した!?)

 

 

【相澤】

「………あと、先生には敬語を使いこなし、敬うのも最強の道に繋がる。目上の者には敬意を払い、自分の知らない知識を教授してもらう事で更なる力を得るのだからな。……全ての者にとは言わんが、少なくとも道徳心のある目上の者には敬語を使え。初対面で内面が分からん間も同様だ」

 

 

【ストーン】

「分かっ……分かりましたぜヒゲの先生!!!敬語を使ってやりますぜ!!!」

 

 

【相澤】

「……………ちょっと使い方が違うが…まぁ良いだろう。分かったらとっとと定位置に戻れ。測定する。分かったな、こいつらはお前を馬鹿にしてる訳じゃないから余計な手を出すなよ。ルールを守れ。あと俺の名前は相澤だ。以上」

 

 

【ストーン】

「分かりましたぜ相澤先生!!!よし!!俺様の圧倒的な走りを見せてやる!!!」

 

 

【瀬呂】

「(お、おいおい本当に大丈夫かよ……)ま、まぁその…よ、宜しくな……」

 

 

【ストーン】「………………………………………」

 

 

 

返事は無い。

瀬呂を無視している訳ではない。

 

ただ、集中力が極限に達し、目の前のゴールだけに意識が絞り込まれ過ぎているのだ。

 

 

 

 

つまり、彼の脳内は今、こうなっている。

 

 

 

【ストーン】

(一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番一番!!!!!)

 

 

 

鬼の形相でクラウチングスタートの体勢に入り、全身の筋肉に凄まじい力を込める。

 

 

 

【瀬呂】

(よ、よし……俺は脚には自信があるし、仮にこいつを抜き去っても、もうキレられないだろ…多分。にしてもこいつの"個性"って一体何なんだ? やっぱ単純なパワー系かな)

 

 

 

すると、スタート体勢をとるストーンの極太の脹脛と太腿が、ミシミシ…と異様な音を立てて膨らみ始めた。

 

 

 

【瀬呂】

(!?なんか脚が急激にパンプアップしてねぇか!?)

 

 

 

そして──。

 

 

 

【計測ロボ】

「位置ニツイテ……ヨーイスタート」

 

 

【ストーン】

「ゔおおおおおおおおおおおあああああああああああ!!!!」

 

 

 

ドオオオオン!!!!!

 

 

 

ストーンが爆発的に全力を解放。

 

“個性”によってとある強靭な生物の爆発的な筋力を下半身に宿し、一気に爆速で飛び出した。

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

 

 

【蛙吹】

(!!?速いわね…あの巨体で…)

 

 

【尾白】

「瀬呂より速い!?あの凄まじい体格で…」

 

 

【耳郎】

「マジでバケモンじゃん…怖すぎるって…ハルクだよあんなん……」

 

 

【瀬呂】

(マジかよ!!?俺の脚より速ぇ!!)

 

 

 

そして豪快にゴール。

 

計測ロボの電子音が響く。

 

 

 

【計測ロボ】

「只今ノタイム、5.07」

 

 

【芦戸】

「え!?5.07!?」

 

 

【爆豪】

(やるな……脳筋のワニ野郎にしては馬鹿げた記録だ……)

 

 

【尾白】

「あのウサイン・ボルトの記録より上…?」

 

 

 

人類最速とされるウサイン・ボルトの50m走の記録は5.47。

 

それを生身と"個性"で易々と置き去りにするスピード。

 

 

 

【瀬呂】

(マジかコイツ……馬鹿力な上に脚まで異次元に速ぇ……動けるタイプのデカブツって一番タチ悪いだろ…ゼェ…ゼェ)

 

 

 

【緑谷】

(さっき、ストーン君…だっけ。彼の脚の筋肉が異質に膨らんだ様な……単純な身体強化系の"個性"なのかな…?)

 

 

 

クラス全員がその圧倒的なポテンシャルに感嘆する中、肝心の本人はといえば──。

 

 

 

 

 

 

 

 

【ストーン】

「ぐおおおおおおクソがぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!メガネに負けたぁぁぁぁぁぁあ!!!!なんでじゃぁぁぁぁぁあ!!!!!!」

 

 

【飯田】

(いや、彼も充分以上に凄まじい記録なのだが……こ、これは果たして声を掛けて称賛すべきなのだろうか…判断に困るな………)

 

 

 

こうして、荒れに荒れた1年A組の“個性”把握テストが本格的にスタートしたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[今回のステータス]

 

●ストーン

相澤の「ルールを守る=オールマイトと同じ最強への道」という理論を完全に信じ切っている。

「最強の道」を教えてくれた目上の者として、不慣れな敬語で接しようとしている。

…しかしその後、飯田の3.04秒に負けた事に地団駄を踏んでいるが。

 

 

 

●相澤:

オールマイトのアドバイス通り「最強」という言葉をダシにした説得が成功し、胸を撫で下ろすがドッと疲れた。

一安心だが捕縛布を素の筋力で引き千切りかけたストーンの規格外の危険性を強く再認識中。

 

本来なら速攻除籍対象の人格破綻者も見込みがあれば説得して認める等、めちゃくちゃ良い人。

 

 

 

●爆豪:

ストーンのポテンシャルの高さを確認し、戦闘訓練での殴り合いへの期待を更に深める。

でも流石に瀬呂の脚をへし折ろうとしたのと、相澤先生に襲い掛かったのは焦った。

 

 

 

●緑谷:

相澤先生の正体=イレイザーヘッドと的中し、存在に感動しつつ、ストーンの圧倒的身体能力と脚の変化に強い興味を抱く。

でもやっぱり怖い。

 

 

 

●瀬呂:

足を折られかけたトラウマと、スピードでも圧倒されたショックで冷や汗が止まらない。

何なんだあのバケモンはと思っている。

 

 

 

●蛙吹:

何気にストーンを観察中。

 

 

 

●その他クラスメイト:

ドン引きと関心の半々。

教師にすら噛み付く狂暴さに怯えつつも、ストーンの素直さと圧倒的な身体能力の高さには目を見張っている。

 

 

 

 

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