※この作品はR-18です。

僕のヒーローアカデミア  ─MEGADILE─   作:餅米蒟蒻

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Episode5 FALSE"虚偽"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

50m走が終わり、続いては第二種目の握力測定。

 

各生徒が次々と測定器を手に取り、掌に全身の力を込めて握り込んでいく。

 

 

爆豪や轟といった実力派の面々は勿論の事、尾白、切島、砂藤、飯田、そして口田といった身体能力や力自慢の面々も順当に好成績を記録していった。

 

 

 

しかし、その中でも群を抜く数値を叩き出したのは、銀髪で口元をマスクで覆った大きな少年──障子目蔵であった。

 

彼は“個性”『複製腕』を駆使し、腕を増設して圧倒的な腕力で握り潰す事で、凄まじい記録をモニターに表示させた。

 

 

 

【測定ロボ】

「540kg」

 

 

【瀬呂】

「ご、540キロぉぉぉ!?すっげえ!!あんたゴリラかよ!?いやタコか!?」

 

 

【葉隠】

「すごーい!!障子君力持ちー!!」

 

 

【峰田】「タコって……………何かエロいよな…絡みつく感じが…」

 

 

 

障子の叩き出した異次元の記録に一同がワーワーと騒然としていると、先程の50m走で飯田の記録を超えられず苛立っていたストーンが、ドスドスと不機嫌そうに大股で迫ってきた。

 

 

 

【ストーン】

「どけモヤシ共!!!」

 

 

【瀬呂】

「うわっ!?」

 

 

【峰田】

「ひいっ!?」

 

 

【葉隠】

「きゃっ!?」

 

 

生徒達を力任せに押し退け、ズカズカと前へ突き進むと、障子を極太の指で指差し、野太い声で凄む。

 

 

 

【ストーン】

「おいタコ野郎!!テメェも腕力に相当な自信があるみてぇだが……俺様の方がすげぇって事を今すぐここで証明してやる!!」

 

 

【障子】

「……そうか。見せてくれ」

 

 

【ストーン】

「張り合えや!!もっとこうガッツはねぇのかガッツはよ!!あぁ!?」

 

 

【葉隠】

「そ、そんな怒鳴り散らさなくても……障子君困っ……」

 

 

【ストーン】

「なんか言ったか空気女……!!!その見えねえツラ噛み千切るぞ……!!」

 

 

【葉隠】

「ひうええ!!?しょ、障子君助けてー!!!」

 

 

【ストーン】

「勿論ルールを守らなきゃならねぇから対人訓練で当たった時にだがな……!!!分かったか!! あぁゴルァッ!?」

 

 

【相澤】

(……コミュニケーションは最悪そのものだが……一応さっき教えたルールを律儀に守ろうとはしてるな……)

 

 

 

ストーンは測定器を掴むと、全身の筋肉を激しく躍動させ、自身の“個性”を発動した。

 

 

 

【ストーン】

「よぉし……今の俺様が出せる最大出力でやってやる!!アメリカアリゲーター×3のフルパワーだ!!!ぬおおおおお……!!!」

 

 

 

すると────

 

 

 

メキメキッゴキッボコボコボコッ!!!

 

 

 

ストーンの太い腕が更に一回り以上膨れ上がって筋肉質になり、緑色の皮膚にはゴツゴツとした硬質で不気味な鱗が浮かび上がり始めた。

 

 

 

【障子】

(!?腕がより太く……増強系の異形型か?)

 

 

【口田】

(あれ……あの質感……アメリカアリゲーター……さっき3頭分って言ってたけど……動物の力を宿して使う“個性”なのかな……?)

 

 

 

そしてストーンは、肥大化した己の手では大きさが合わず、もはや「掴む」というより「つまむ」ような形になった測定器を、全身の渾身の力を込めて強烈に握り込んだ。

 

 

 

【ストーン】

「ごおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 

 

グシャアッ!!!!!!!!

 

 

 

凄まじい金属破壊音と共に、まるで紙くずのようにクシャクシャに押し潰された測定器を見て、障子は愕然とし、間近で見ていた瀬呂や峰田は顔を青ざめさせ、葉隠は恐怖のあまり腰を抜かした。

 

測定ロボの画面に表示された記録は─────

 

 

測定不能。

 

 

 

【口田】

(す、凄い……まるで本物の巨大なワニが全力で噛みついたみたいな力だ……いやでも、本物のワニでもあんなデタラメな破壊力は出ないと思うけど……ただの動物の力を再現する“個性”じゃないのかな……)

 

 

【峰田】

(そ、測定不能!!?この銀髪の540kgを超えるどころじゃねえだろ!?こんな怪物に絡まれたら、オイラ本気で殺される殺される!!!)

 

 

【ストーン】

「ブゥワッハッハッハッハ!!!!!どうだ見たか!!!これが俺様の実力だ!!!お前を超えたぞ!! 測定不能だ!!つまり俺様を超える奴はここには居ねえ!!参ったか!!」

 

 

【障子】

「……あ、あぁ。凄い力だな。とてもじゃないが敵わない」

 

 

【ストーン】

「おいメガネ!!!見ろこれを!!!速さじゃお前は勝ったかも知れねぇが、力なら俺様のが圧倒的に上だと分かったか!!!次の種目もお前に勝ってやる!!!」

 

 

【飯田】

「あ、ああ!!凄いじゃないか!!見た目以上に凄まじい力だな!! (何故僕がここまで執拗にターゲットにされているんだ!?)」

 

 

【ストーン】

「見ろトゲトゲ頭!!これを!!お前にも勝つぞ!!」

 

 

【爆豪】

「あぁ!?まだ俺が計ってねぇから分かんねぇだろがバカワニ!!!」

 

 

【麗日】

「……み、皆に見せて回ってる……」

 

 

【耳郎】

(やだ。やだやだやだこっち絶対来ないでよ……!!?)

 

 

【相澤】

(……ま、この種目に関してはあいつを超える数値を出せる奴は早々居ないだろうな……)

 

 

 

全員が握力測定を終え、続いての第三種目は立ち幅跳び。

 

用意されたのは、通常の立ち幅跳び用ピットよりも遥かに長大な特別仕様の砂場である。

 

青山は“個性”『ネビルレーザー』の逆噴射を腰から放って華麗に滞空して砂場を越え、蛙吹は蛙特有のしなやかな脚力で大きく宙を舞って跳躍した。

 

飯田も『エンジン』の瞬間的な爆発的推進力で、驚異的な飛距離を叩き出す。

 

麗日は“個性”『無重力(ゼログラビティ)』の副作用で「う……気持ち悪い……」と激しい吐き気と戦いながらも、自身の体重を極限まで軽くして砂場を飛び、それぞれ着実に好成績を記録していった。

 

 

他の面々も各々の“個性”を存分に活かし、記録を残していく。

 

 

そして、ストーンの番がやってきた。

ストーンは“個性”を発動させ、今度は50m走の時のように両脚の筋肉を異常に膨張させて強化。

 

持ち前の馬鹿力に任せ、その巨体に似合わぬ圧倒的な跳躍力でダイナミックに跳んだ。

 

結果──飯田の4m13cmを軽々と上回る、6m98cmという記録を叩き出したのである。

 

 

 

【ストーン】

「グワハハハハハハハハ!!!見たか!!!どうだメガネ!!!同じ脚の力でもジャンプ力なら俺様の勝ちだ!!!参ったかゴルァ!!」

 

 

【飯田】

「あ、あぁ!!助走無しであの重量級の体躯から繰り出される跳躍力は確かに凄まじい!! (ま、参った!?本気で全種目で勝負しているつもりなのか!?)」

 

 

【芦戸】

「あちゃー……メガネ君めっちゃ粘着されてるよ……可哀想……助けてあげたいけど超怖いよ……」

 

 

【耳郎】

「シーッ!!! あんた!! あいつめっちゃ地獄耳っぽいから余計なこと言わないで!!!」

 

 

【芦戸】

「流石にこの距離は聞こえ……ヒィッ!!!!!?」

 

 

 

ストーンの耳にはバッチリ届いており、ギロリと首を曲げて芦戸と耳郎を威嚇するように睨みつけると、「お前等の頭を噛み潰すぞ」とガチガチと鳴らす顎を指差し、次に2人を指差し威圧するジェスチャーをして、再び他の生徒の測定の見学へ戻った。

 

超絶短気の暴れん坊ではあるが、先ほど相澤に言われた通り、彼なりに律儀にルールを守っているつもりなのだ。

 

 

 

……しかし、もし今後の対人訓練等で彼と当たるような事があれば、確実にグチャグチャに叩きのめされるだろう。

 

 

 

一同がそれぞれ記録を出す中、ストーンを超える者は現れず、ストーン自身も「この種目も俺様が一番だ」と言わんばかりに自慢げに胸を張り威張り散らしていた。

 

 

 

が────。

 

 

 

この立ち幅跳びという種目で、「測定不能」という異次元の数値を叩き出した猛者が他に3人現れる。

 

爆豪は両手の掌から放つ『爆破』の爆風と衝撃波で空中を強引に飛び去り、砂場の限界地点を遥かに超えて「測定不能」。

 

 

轟は跳び上がった瞬間に足元から巨大かつ滑らかな氷の道を一瞬で生成し、その上を滑走していって「測定不能」。

 

 

そして八百万は、跳躍した瞬間に“個性”『創造』によって長大な高跳び用ポールを瞬時に作り出し、それを軸にしてしなやかに空中を跳び越えて「測定不能」。

 

 

やはり、入試実技トップの爆豪と、超難関の狭き門をくぐり抜けた推薦入学者2名は、基礎スペックの引き出しのレベルが違いすぎた。

 

 

 

【飯田】

「凄い……!!流石推薦入学者と実技トップの人は格が違うな……!!」

 

 

【麗日】

「推薦入学!? そんなに凄い人らやったんy」

 

 

【ストーン】

「ぐおおおおおおおおおおお!!!?負けたぁぁぁぁぁぁぁあ!!?そんなんジャンプじゃねえだろがぁぁぁあ!!!」

 

 

【麗日】

「うわわわわ!? びっくりした…… (やっぱりこの人、最高におっかない……)」

 

 

 

ストーンは納得がいかず、ズカズカと大股で爆豪へ詰め寄る。

 

 

 

【ストーン】

「おいトゲトゲ頭!!!テメェそれ反則だろうが!!!ジャンプしろやジャンプ!!アイアンマンみてーに飛ぶなんざズルだろボケがぁ!!!」

 

 

【爆豪】

「ボケはお前じゃ!!!頭使えやバカワニが!!!“個性”把握テストだから“個性”使って記録叩き出すんならどんな手使ってもルールに囚われなくて良いんだよ!!根本的な意味分かって無かったんかテメェは!!?」

 

 

【ストーン】

「あぁ……!!?じゃああのデコッパチが棒作って飛び越えたのもアリなのか!?」

 

 

【八百万】

「で、でこっぱち……」

 

 

【爆豪】

「そーだよ」

 

 

【ストーン】

「じゃああのストロベリーシェイクみてーなやつが氷で上を通ったのもアリなのか!?」

 

 

【轟】

(……俺はそんなに美味そうに見えるか……?)

 

 

【爆豪】

「そーだ」

 

 

【ストーン】

「くっそおおおおおお!!!そんな抜け穴があったのかクソがぁぁぁあ!!!チクショーが!!次だ!!次は絶対テメェに勝つぞトゲトゲ頭!!!」

 

 

【爆豪】

「やってみろやバカワニ!!何回でも返り討ちにしてやるよ!!! (……こいつは根っからのイカレポンチなのかただのバカなのかどっちだ。まぁ退屈はしねぇが……しかしこいつの“個性”、見た所純粋に身体能力を底上げする増強系か? それなら小細工の幅は限られてるだろ)」

 

 

【相澤】

(……思った以上に、爆豪にあの脳筋の相手を任せられそうだな)

 

 

 

第四種目・反復横跳び。

 

ストーンはパワーと直線的な突進の事しか頭に無い生粋の筋肉至上主義であるらしく、圧倒的な脚力はあっても小回りの利く機敏な横の動きは苦手なようで……結果はあまり振るわない成績であった。

 

 

そして、クラスで最も小柄な少年・峰田実が、頭部の「もぎもぎ」を地面に敷き詰めて跳ね回る事で最高記録を叩き出すと────。

 

 

 

【ストーン】

「ぐぬぬぬぬぬぬぬ!!!おいブルーベリー野郎……!!!! 次は絶対勝つぞ……覚えてやがれ!!!!!」

 

 

【峰田】

「ひいいいい!!!これだけ!!オイラが得意なのこれだけだから許して!!!(今度はオイラに牙が向けられたーー!!!)」

 

 

 

 

第五種目・ソフトボール投げ。

 

 

デモンストレーションとして最初に凄まじい爆風と共に好成績を叩き出した爆豪は、サークルから少し離れた場所で腕を組み、不機嫌そうに冷ややかな視線をグラウンドへ送っている。

 

生徒達が順調に記録を出していく中、麗日がボールに『無重力』を付与して軽々と空へ投げ上げた。

 

ボールは地球の重力を完全に無視して、どこまでもどこまでも上昇を続け、雲の彼方へと消え去っていく。

 

 

測定器のモニターに表示された記録は──「∞(無限)」。

 

 

 

【上鳴、切島】

「うおおおおお!!?無限ってマジか!!?凄え!!!」

 

 

【瀬呂】

「測定不能を超えて『無限』出たぞ!!?規格外過ぎるだろあいつ!!」

 

 

【麗日】

「ふぅ〜……やっと良い記録出せた!この種目は私がトッ……ハッ (……物凄く、物凄く嫌な予感がする……)」

 

 

麗日が恐る恐る後ろを振り返ると────そこには牙を剥き出しにしたストーンが、対抗心メラメラの状態で立っていた。

 

 

 

【ストーン】

「おい串団子……!!!!!俺様の番だ……ボール寄越せ……テメェに絶対勝ってやる……!!!!!」

 

 

【麗日】

「びいいいいいいいい!!!?どうぞどうぞどうぞ!!!!」

 

 

【上鳴】

(ゔわぁー……女子相手にも本当容赦ねぇな……難儀な性格してやがるわ……にしてもあいつ手デカすぎだろ……ボールがまるでピンポン玉じゃん)

 

 

【常闇】

(……唯我独尊の塊だな……)

 

 

【ストーン】

「串団子の記録を超えるには……やむを得ねえ……アメリカアリゲーター×4……いや5で行くぞ!!!ゔおおおおおおお……!!!」

 

 

 

ボコボコボコボコッ!!!

 

 

 

ストーンの右腕全体が、見るに堪えない程の密度でムキムキと肉体変化を起こしていく。

 

 

 

【上鳴】

「ひええー……! おっかねぇ“個性”……やっぱ超パワー的な増強系か?」

 

 

【爆豪】

(……単なる増強系……か?何か引っ掛かるが……あのアリゲーターなんたらって呟きは何だ?パワーの段階数値か?)

 

 

【八百万】

(アメリカアリゲーター……確かワニの中で最大級の筋力を誇る種……もしやワニの性質や力をそのまま身体に宿す“個性”なのでしょうか……?)

 

 

【ストーン】

「(少し腕の骨が軋むが行ける!!!!)ゔおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

 

 

 

ストーンはボールをつまんだまま、遠投のフォームも無視して力任せに空へぶん投げた。

 

 

 

ブオオオオオオンッ!!!!!

 

ボヒュウッ!!!

 

 

 

周囲の空気を引き裂く猛烈な風圧を起こし、ボールは音速に近い勢いで遥か彼方へ飛んでいき……記録は何と──988m。

 

 

 

【一同】

「988m!?」

 

 

 

あまりの桁外れの数値に驚愕する者、その凶暴なパワーを再び目の当たりにして恐れる者。

 

 

 

【爆豪】

(俺の記録を超えやがった……?面白え……!早く全力で殺り合いてぇ……!!)

 

 

【八百万】

(凄い……だけどワニの力を宿すだけであの破壊的な数値を叩き出すのは……いいえ、まだ推測の域を出ませんし、何か別の特殊な“個性”なのでしょうか……)

 

 

【緑谷】

(ワン・フォー・オールを使った時みたいな純粋なパワー……とんでもないぞあの人……! 性格はその……あれだけど……)

 

 

【麗日】

(……………………凄く嫌な予感がする)

 

 

 

一同が衝撃を受ける中、当の本人はといえば────。

 

 

 

【ストーン】

「だぁぁぁぁぁぁぁあ!!!?女に負けたぁぁぁぁぁぁぁあ!!?嘘だろおおおおお!!!今出せるフルパワー以上にやったんだぞ!!?納得いかねえええええ!!! 串団子!!!てめぇ覚えてやがれえええええ!!!」

 

 

【麗日】

(いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!三重の実家に帰りたい……!!!)

 

 

 

そして、遂に緑谷の順番がやってきた。

 

緑谷は全身に必死で力を込め、ボールを固く握って振り抜いたが──ボールが描いた軌跡は虚しく、手前にポトリと落ちて記録は「46m」。

 

あまりにも平凡な、ごく普通の数値であった。

 

 

 

【緑谷】

「なッ……!? 今、確かに使おうって……!」

 

 

【相澤】

「“個性”を消した」

 

冷淡な声と共に、相澤の黒髪が重力を無視して逆立ち、両目が不気味な赤色に発光していた。

 

首元に巻き付けられた帯状の捕縛布が、生き物のようにゆらゆらと宙に漂っている。

 

 

 

【相澤】

「緑谷……入試でもそうだったな。またそれを使って一発で自分を不能にして、誰かに救けてもらうつもりか?お前のしている事は、一人を救ってただの木偶の坊になる事……お前じゃあ、どうあがいてもヒーローにはなれないぞ」

 

 

 

突きつけられた残酷過ぎる現実と評価。

 

緑谷は悔しさに血が滲む程固く唇を噛み締める。

 

だが相澤は冷徹にボールを再び拾い上げると、緑谷の手へと無造作に手渡した。

 

 

 

【相澤】

「“個性”は戻した……再開だ。さっさと済ませろ」

 

 

 

ボールを握り直した緑谷は下を向き、「ブツブツブツブツ……」と狂気的なまでの思考の海へと没入していった。

 

 

 

【飯田】

「緑谷君、一体どうしたのだろうか……?」

 

 

【爆豪】

「ハッ!除籍勧告食らったんだろうがよ!!!出来損ないのクソデクだから当然だ!!!」

 

 

 

その時────!!

 

 

 

ズボォォォォンッ!!!!!!

 

 

 

緑谷が振り抜いた右手から、爆発のような凄まじい衝撃音が炸裂した。

 

ボールは白煙を置き去りにして、遥か彼方の空へと消え去っていく。

 

 

 

測定値────「705.3m」。

 

 

 

爆豪の「705.2m」をわずか0.1m上回る、驚異的な破壊力。

 

グラウンドにいた全員が、開いた口が塞がらない状態となった。

 

流石のストーンも目を丸くして少し驚く。

 

 

 

【緑谷】

「先生……!僕…………まだ……動けますッ!!!!」

 

 

【相澤】

「こいつ……………!」

 

 

 

右手の指1本だけを真っ赤に腫れ上がらせ、激痛に耐えながらも力強く笑う緑谷。

 

その覚悟の姿に、相澤の口元がニヤリと吊り上がった。

 

 

 

【ストーン】

(あのブロッコリー……意外と骨があって噛み応えありそうだな……!!!!!)

 

 

直後、あまりの衝撃と欺かれていた怒りに狂って緑谷に殴りかかろうとした爆豪が、相澤の捕縛布によって一瞬でグルグル巻きに拘束されるというハプニングもありつつ、テストは後半戦へと突入した。

 

 

第六種目の持久走でも、ストーンは50m走の時の爆発的なスピード程ではないが、それでも普通の人間よりかは遥かに速い、フットボールのプロクォーターバック並みのスピードを維持して8位でゴール。

 

全体的なスタミナはパワー程高くはないようだ。

 

 

その後、長座体前屈や上体起こし等、特に“個性”を駆使する必要の無い基礎運動種目を消化し、全8種目のテストがすべて終了した。

 

 

殆どの生徒が疲れ果て、肩で息をしながら相澤の前に整列する。

 

 

 

【相澤】

「んじゃあ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括表示する」

 

 

 

相澤が手元のボタンを押すと、空間にホログラムの順位表が青く映し出された。

 

 

 

----------------------------------------------------------------------

 

 

1. 八百万 百

2. 轟 焦凍

3. 爆豪 勝己

4. 飯田 天哉

5. リジオラ・ストーン

6. 常闇 踏陰

7. 障子 目蔵

8. 尾白 猿夫

9. 切島 鋭児郎

10. 芦戸 三奈

11. 麗日 お茶子

12. 上鳴 電気

13. 砂藤 力道

14. 蛙吹 梅雨

15. 青山 優雅

16. 瀬呂 範太

17. 口田 甲司

18. 耳郎 響香

19. 葉隠 透

20. 峰田 実

21. 緑谷 出久

 

----------------------------------------------------------------------

 

 

 

【緑谷】

(そんな……!? 最下位……!?)

 

 

【蛙吹】

(除籍は免れたけど……結構下ね……)

 

 

【砂藤】

(まぁ悪くはねぇな。もう少し頑張れたと思ったんだが……)

 

 

【ストーン】

「あががががが……!!?(5位!?俺様が5位だと!!?トゲトゲ頭だけじゃねえ!?メガネにストロベリーシェイクにデコッパチにまで負けてやがる!!クソオオオオオオ!!!)」

 

 

 

順位表を見てざわつく一同に対し、相澤はシレッとした顔で告げた。

 

 

 

【相澤】

「……あ、そうそう。ちなみに『除籍』はウソな」

 

 

【一同】

「………………え?」

 

 

 

相澤は意地悪そうにニヤリと口角を上げて笑い、言い放つ。

 

 

 

【相澤】

「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

 

 

【一同】

「はぁぁぁぁぁ!!!??」

 

 

 

殆どの生徒が、まさかのウソに対してグラウンド全体に響き渡る絶叫を上げたのだった。

 

 

 

【ストーン】

(どうでも良いわチクショーが!!!全員ぶっ殺……はルールだから駄目だな。クソッ帰って筋トレのメニューを倍にしてやる……!!!)

 

 

【緑谷】

(よ、良かったぁ……どうなるかと……!)

 

 

こうして、波乱と熱狂に満ちた1年A組の『“個性”把握テスト』は、無事に幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[今回のステータス]

 

 

●ストーン

総合5位という結果にブチギレているが、相澤の教えを守って「ルール違反の暴行」を踏みとどまり、筋トレ倍増を決意。

爆豪、飯田、轟、八百万、麗日、峰田に強い対抗心、そして緑谷へ興味を抱く。

 

 

●爆豪:

緑谷の隠された力への激怒と、ストーンの規格外のパワーへの強い戦闘意欲。

 

 

●緑谷:

最下位での除籍を回避して胸を撫でおろしつつ、指1本の負傷と向き合い次を見据える。

 

 

●相澤:

緑谷の可能性を見極め、ストーンを「ルール」の枠組みの中に収められた事にひとまず安堵。

 

 

●麗日、峰田、瀬呂、耳郎:

テスト終了と除籍撤回にホッとしつつも、ストーンの規格外の怪力と威圧感に終始怯えきっている。

 

 

 

 

 

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