※この作品はR-18です。

僕のヒーローアカデミア  ─MEGADILE─   作:餅米蒟蒻

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Episode7 PATIENCE"我慢"

 

 

入学初日の波乱に満ちた“個性”把握テストから一夜が明けた、翌日。

 

 

 

雄英高校ヒーロー科1年A組に課せられたカリキュラム。

 

午前の時間帯は、現代文や英語といった必修科目、つまり他校と何ら変わらない至極普通の学科授業が行われる。

 

 

そして待ちに待った昼休みには、大食堂『ランチラッシュのメシ処』にて、プロヒーロー・ランチラッシュが振る舞う超一流の絶品料理を、驚く程の安価で心ゆくまで頂く事が出来る。

 

 

たった1日、同じ空間で時間を過ごしただけでも、互いの意外な性格や人柄が見えてきて、自ずと距離を縮めて打ち解けていく者達も居た。

 

 

 

そして──現在、和やかな熱気に包まれる昼休み。

 

 

各々が昼食を終えて教室へ戻り、自席やその周辺で思い思いの雑談に花を咲かせていた。

 

 

 

だが……………教室の空気はどこか異質で、クラスメイトの殆どが深い困惑と戦慄を隠せずにいた。

 

 

無理もない。

 

何故なら彼らの視線の先では、到底あり得ない光景が繰り広げられていたからだ──。

 

 

 

 

【砂藤】

「ストーン!お前1限目の英語、発音も文法も完璧だったな!!流石本場出身だぜ!」

 

 

 

【ストーン】

「当たり前だろが!日本人が日本語喋るようなもんだろ!英語圏の俺様が喋れなかったらモノホンの馬鹿だわ!!」

 

 

【尾白】

「そう言えばストーン、日本語も普通にペラペラ喋ってるけど……オーストラリアの学校って日本語の授業とかやるの?それとも雄英の入試に向けて猛勉強したとか?」

 

 

【ストーン】

「入試の為だな。俺様の姉貴がツアーガイドやっててよ。それで試験勉強を始める前に徹底的に脳みそに叩き込まれたんだ。だが覚えてみりゃあ案外いけるもんだな!」

 

 

【尾白】

「いやいや、異国の語学をここまで不自由なく扱えるのは結構難しいよ?相当な努力をしたんだと思うな」

 

 

【一同】

(……………………………………………ナ、ナチュラルに会話してない!!?)

 

 

【上鳴】

(いやいやいやいやおかしいだろあいつらどうした!!?なんであの歩く凶器みたいなワニゴリラと普通に雑談してんの!!?命惜しくないの!!?一噛みで殺されるぞ!!?)

 

 

【耳郎】

(昨日の今日で一体何があったの!!?あのワニ男、なんで普通に人と会話してんの!!?会話のキャッチボールが成立する生き物だったの!?てかオーストラリア!!?あいつそんな遠い所から遥々来たの!!?)

 

 

【砂藤】

「しっかしお前、よく食うよな。食堂でも相当な量食ってたけど、まさか出されたもの全部『生』で食うとは思わなかったぞ…昨日の買い物も殆ど生魚か生肉だったしよ…そのまま生で貪り食おうとするから焦ったぜ…お前んちの冷蔵庫、殆ど肉か魚か牛乳だけで埋まってたし、栄養偏り過ぎだろ……」

 

 

【上鳴】

(家!!?家行ったの!!?買い物付き合ったの!!?なんでそこまで一気に仲良くなってんの!!?しかも家でも生食!!?さっきの昼飯で見たあの地獄絵図、まさかの通常運転かい!!)

 

 

 

上鳴は、さっき大食堂で目撃した恐ろしい光景を思い出して背筋を凍らせていた。

 

ストーンがトレーの上に山盛りにしていたのは、調理されていない大量の生肉と、ジョッキ5杯分のなみなみと注がれた牛乳、そして──何故か禍々しいドロリとした赤い液体が満たされた大きなジョッキ1つだった。

 

 

 

【尾白】

「アレには流石に俺も驚いたよ。…しかも野菜室に何か謎のボトルが大量に並んでたから、何かの特製ドリンクかと思えば…………」

 

 

【砂藤】

「…………豚の血な……あんな珍しいモンよく買えたな…しかも直飲みだろ……血をよ……」

 

 

【耳郎】

(は!!?血!!?豚の血飲んでんの!!?じゃああのジョッキの赤い汁ってあれまさか本物の血……!!?てか雄英の食堂、メニューでそんなおぞましいものまで提供してんの!!?)

 

 

【ストーン】

「分かってねぇな!!魚も豚も牛も鶏も、肉だけじゃなくて内臓も骨も、血にだってありとあらゆる栄養が詰まってんだぜ?それを綺麗に捨てて喰わねえなんて勿体無え!!何より生の血肉を喰えば喰う程体に力が漲って『最強』に一歩近付くからよ!!!」

 

 

【砂藤】

「いや、栄養うんぬんより単純に生肉が好きなだけだろ…ははは…」

 

 

【尾白】

「……その後砂藤が見兼ねて『お前野菜も食えよ!?流石に食生活が偏りすぎるぞ!?』って親身になって野菜の目利きまでしてくれたよね……で、家に帰ったらストーンがそのまま生のままキャベツとかムシャムシャかじり出すから、結局砂藤が腕を振るって唐揚げと野菜サラダと魚のソテーにしてくれたんだっけ……」

 

 

【ストーン】

「生が一番美味ぇが、砂藤!テメェの作ってくれた料理クソ美味えな!!レシピもノートに教えてもらったしよ!!何から何までありがとよ同胞!!ガハハハハハハハ!!!」

 

 

【口田】

(い、意外と……ちゃんとコミュニケーションが取れて、打ち解けやすい人なのかな……?)

 

 

 

そこへ、尾白達の穏やかな(?)やり取りを遠目から伺っていて、「ん? もしかして昨日よりだいぶ大人しくなったのか?」と盛大な勘違いをした上鳴、そしてストーンの隣の席でありながら、そのあまりの凶暴性と圧で話しかけられずにいた切島が、興味津々で会話に入ろうと近付いてきた。

 

 

 

【切島】

「お前等なんかめちゃくちゃ楽しそうだな!ストーン!お前のその凄まじい筋肉って、やっぱりそのワイルドな飯が原料になってんのか!?漢らしいじゃねーか!!」

 

 

【ストーン】

「ガハハハハハハハそうかそうか!!で、お前は誰だ?」

 

 

【切島】

「ヒデェなおい!今朝からずっと隣の席だろ!?」

 

 

【上鳴】

「しっかし生食って!!お前野生動物じゃねーんだから腹下すぞー?身体も息も生臭くなりそうだし、そんなんじゃ女子にもモテね……」

 

 

【ストーン】

「テメェ今俺様に喧嘩売ったな!!?ぶっ殺す!!!まずはそのムカつく黄色い髪の毛全部毟り取ってやる!!!」

 

 

 

瞬間、ストーンの目が血走り、乱暴な手つきで上鳴の首元を締め上げると、そのまま頭髪を力任せに引き抜こうと持ち上げた。

 

 

 

【上鳴】

「ぎゃああああああ!!?イデデデデデデ髪が抜ける!!ごめんごめんごめんごめん冗談だって!!!」

 

 

【砂藤】

「こらストーン!!どうどうどう!!落ち着けって!!まぁ今のはお前的に若干イラっと来る言い方だったろうけど、ルール!ほら思いだせ!!」

 

 

【尾白】

「そうそうそう!!ほら、相澤先生との大事な約束があるだろ!?『学校のルールを守らないと最強になれない』って!!」

 

 

【切島】

「どわぁぁあ!? す、ストーン済まねえ!! ダチが調子こいた!上鳴を離してやってくれ!!」

 

 

 

突如として始まり出した大暴走に、遠巻きに見ていたクラスメイト全員が「ひぃっ!?」と悲鳴を上げて怯え上がった。

 

 

 

【耳郎】

(上鳴のアホ!!!んな煽るような言い方したら、あの単細胞がブチギレるに決まってんでしょうが!!余計な事言うんじゃないよ!!!)

 

 

【瀬呂】

(あっぶねー……俺も『野生児かよ』とか同じようなツッコミしそうになったわ……マジでチビリかけたぞ……)

 

 

【爆豪】

(あいつアホか。イキリと舐めた口調が嫌いだって昨日バカワニが言ったばっかだろーが)

 

 

【飯田】

「何をしているんだ!!?ストーン君またか!!?君は昨日相澤先生と『無闇に校内で暴力を振るわない』と約束を……」

 

 

【ストーン】

「おっと行けねえ!!!そうだった!!……ほらよ巣に帰れモヤシ野郎!!!」

 

 

 

ブォン!!!

 

ドンガラガラッ!!!

 

 

 

ストーンは掴んでいた上鳴を、自席に向かって大雑把に投げ捨てた。

 

上鳴は勢い余って机に腰を激しくぶつけ、派手にひっくり返った。

 

 

 

【上鳴】

「いっでえええ……マジで痛ぇ……死ぬかと思った……」

 

 

【障子】

「大丈夫か、上鳴。あいつ……本当に乱暴な奴だな」

 

 

【上鳴】

「ま、まぁ俺も調子こいて軽々しく絡み過ぎた……尾白達と笑って話してるからフレンドリーになったのかと勘違いしたわ……ハゲてねーよな…?」

 

 

 

一気に雰囲気が悪くなり、肩で息をするストーンに対し、「まぁまぁ」と冷や汗を流しながら宥める尾白、切島、砂藤。

 

そこへ飯田が駆け寄り、事態の経緯を聞き取った。

 

 

【飯田】

「ふむ……成る程。ストーン君!人の体質や消化能力はそれぞれ異なるから一概には言えないが、基本的に動物性食品の生食は細菌や寄生虫による重大な健康被害を引き起こす可能性があるから、衛生上あまり良くは……」

 

 

【ストーン】

「お"お"?」

 

 

【飯田】

「よ……良くはないが!だからといってクラスメイトを野生動物扱いし、『生臭いから女子への好感度が下がる』等の軽薄な発言をした上鳴君にも明確な非はある!俺から厳しく注意しておくから、どうか手を出さないでやってくれないか?『ルールを守る』と言っても、最初のうちは君も我慢の耐性がまだ無いd……!!しまっ…(耐性などと上から目線で言うのは不味かったか!!?)」

 

 

【ストーン】

「……ふむ……まぁ良いか。そう言ってあの間抜け面を締めるんなら構わねぇ」

 

 

【飯田、砂藤、尾白、切島】

(ホッ……………命拾いした……)

 

 

 

飯田はそのまま上鳴の元へ歩み寄り、極力小さな声で「いきなり暴力行為に及ぶ彼も良くないが、相手を軽んじた雑な絡み方をする君にも大きな非があるぞ!まだ皆知り合って二日目なんだから慎重に行動しなさい!」と説教していた。

 

 

 

【切島】

「ふぅー……わ、わりぃなストーン!まぁやり方はアレだけど……その人を軽々持ち上げるパワー、すげぇなマジで!!食い物もだけど、やっぱ普段の筋トレが凄ぇのか!?」

 

 

【砂藤】

「それがよ切島!俺等昨日こいつの部屋に行ったんだけどよ、部屋の真ん中にデケェラットプルダウンマシンがあってな、それが……こんな分厚いゴムベルトがバーの代わりについててよ!」

 

 

【切島】

「え!?そんなゴムじゃ手で引っ張りにくいだろ??」

 

 

【ストーン】

「手じゃねぇ、こいつで引っ張るんだよ……!!」

 

 

【切島】

「……え?マジで?じょ、冗談だろ? 歯で引っ張んのか??」

 

 

【尾白】

「しかもそれはウォーミングアップ代わりらしくてね。それを10セットやってから、懸垂マシンに固いタオルを括り付けて、それに噛みついた状態を維持して自重を支えたまま1時間耐えるんだって……」

 

 

【切島】

「マジで!?顎が砕けるか歯が折れるぞおい!!」

 

 

【ストーン】

「ああっ!!?岸島だっけか?テメェ俺様を舐めてんなおい!!!」

 

 

【切島】

「な、ナメてねえナメてねえ!!あと俺の名前は切島な!!?」

 

 

【ストーン】

「いーやナメてる!!そんなに俺様の顎を疑うなら、今ここで直接見せてやる!!!」

 

 

【砂藤】

「お、おいストーン待て待て!!だから校内で暴れるのはルー……」

 

 

 

何やら会話のボルテージが上がり、またしても大暴れが始まるのではないかと身構えるクラスメイト達。

 

特にすぐ後ろの席で成り行きを見ていた瀬呂は顔面蒼白で冷や汗をダラダラと流し、峰田も耳郎も上鳴もビクッと身体を強張らせ、飯田と八百万も再び暴走した瞬間に取り押さえる体勢をとった。

 

だが、ストーンは立ち上がると切島に向かっていくのではなく、自らの机に向かい──

 

 

 

ガグッ!!!ギギギギ……!!

 

 

 

【切島】

「おいおい止めろって!マジで危な……」

 

 

【芦戸】

(な、何してんのあいつ!? 机に噛み付いてる!!?)

 

 

 

ストーンは木の天板に深く牙を突き立てると──

ギギ……ギギギギギギギギギギ…………と、なんと腕を一切使わず、咬合力だけて重い机を持ち上げてみせた。

 

 

 

【切島、砂藤】

「うおおおおおおおおおお!!!?」

 

 

 

ストーンはそのまま、これが俺様の実力だと言わんばかりに、咥えたままの机を上に掲げたり、左右にブンブンと振ったりして己の圧倒的な咬合力をアピールした。

 

そして、気が済んだのかドスンと重い音を立てて机を元の位置に下ろす。

 

 

 

【切島】

「ま、マジかお前……すげええええええ!!!! 男の中の男だな!!!」

 

 

【ストーン】

「どうだ切島!!これこそが俺様の身体の中で最も強靭な武器であり、最強の象徴……この顎の力はタイヤを噛みちぎり、ぶ厚い五寸釘ならガムみてぇに噛み潰し、人間の手首くらいならチキンステーキみてぇに一瞬で食い千切れるぞ……!!!!」

 

 

【峰田】

(ヒィィィィィィ怪奇人食いワニ男だぁぁぁあ!!!もうこいつの“個性”100%ワニの怪物だろ!!いやワニでもそんな木製の机を咥えて振り回すなんて多分無理だわ!!!)

 

 

【切島】

「お、おう……人の手食い千切るのは……そのアレだけど……でもヤベーな男として超カッコいいぜ!!ジャックハンマーじゃねえか!!」

 

 

【ストーン】

「ドワハハハハハハ!!!この無敵の顎と腕っぷしで俺様はいずれ世界の頂点、最強の男になるのだ!!!(じゃ、ジャックハンマー?あの道路工事でダカダカ鳴ってるアレか?要素あったか?まあ言葉の響き的に馬鹿にはしてなさそうだから良いが……)」

 

 

【麗日】

「あの人もう人間のカテゴリやめてはるわ……デク君、ヒーロー基礎学で対人訓練とかあったら、私達噛み砕かれて食べられるんじゃ……ヒィッ!?」

 

 

 

うっかり恐怖で口を滑らせてしまった麗日の小さな呟きを、ストーンの地獄耳は見逃さなかった。

振り向いてジロリと恐ろしい目つきで睨みつけるが──

 

 

 

【緑谷】

「ま、待ってストーン君!!今のは君を馬鹿にしてるわけじゃなくて……(あ、怒って飛びかかってこなかった……ちゃんと相澤先生との約束を守ってるんだ……。でもその分、戦闘訓練で当たったら物凄い攻撃をしてきそうだから、余計に怖いな……)」

 

 

【砂藤】

「お前、いくらなんでも顎の力ヤバすぎだろ!!“個性”の発動なしで素でそれだろ!?」

 

 

【ストーン】

「あぁ、これが俺様の素の力だ!!!」

 

 

【尾白】

「それに“個性”を使えば、もう立派な一撃必殺の武器だよ……実戦や対人で使うにはあまりに危険すぎるだろうけど……」

 

 

【切島】

「?尾白、そういやこいつの“個性”って一体何なんだ?やっぱ全身の筋力を引き上げるシンプルな発動型の増強系か!?」

 

 

【尾白】

「あぁ、ストーンの“個性”はね……あ、これ勝手に人に言ってもよかったっけ?」

 

 

【ストーン】

「? ああ!!構わねえぞ同胞よ。俺様は嘘も隠し事もしねぇ。本物の最強はいつだって堂々とするもんだからな!!」

 

 

【緑谷】

(!!気になる……ぬ、盗み聞きはヒーローとして良くないだろうけど……でもクラスメイトの“個性”はすごく気になる!!)

 

 

【尾白】

「ははっ!ありがとう。でね、ストーンの“個性”は……」

 

 

 

その時、陰口……にもなっていない、尾白達の位置からでもハッキリと気取った声が聞こえてきた。

 

 

 

【青山】

「フッ!彼、昨日から全然エレガントに輝いてないね。凶暴な見た目といい粗暴な性格といい、まるで不潔な沼地に潜む人食いモンスターだよ!」

 

 

【芦戸】

「シーッ!!!!馬鹿!!!アンタブチ殺されるよ!!!あいつ信じられないくらい地獄耳なの知らんの!!?」

 

 

【尾白】

(………今のは俺もバッチリ聞こえた…)

 

 

【砂藤】

(えーと、青山だっけ…一応本人はヒソヒソ話してる気にはなってるっぽいが、完全に聞こえてるぞ……)

 

 

【切島】

(…………めっちゃ嫌な予感がする…………)

 

 

【爆豪】

(あっ。あの雑魚死んだな。流石に今の言い方はムカつくだろ。今回は俺は止めねえ)

 

 

 

クラス全体が息を呑み、ゆっくりとストーンの方へ視線を向ける。

 

チラリ……………

 

 

 

【ストーン】

「……今ぁ……なんだぁってえええええええ………!!!!?」

 

 

【一同】

(やばいやばいやばいやばい!!!?本気の奴だ!!!)

 

 

 

ストーンの全身から激しい殺気が膨れ上がり、腸が煮えくり返る勢いの、地底から響くような低い声を絞り出した。

 

 

 

【飯田】

「!待ちたまえストーン君!ルールだ!ほら、大声を出す前にルールを思い出して深呼吸を……」

 

 

 

しかし、今回は違った。

 

ただでさえ肥大化した自尊心の塊であり、非常に短気なストーンが、相澤の「学校のルールを守る事が、最強への一歩だ」という言葉を反芻して我慢を重ねていたところに、限度というものを軽々と超える刺激が与えられたのだ。

 

青山は、絶対に踏んではならない地雷を思い切り踏み抜いてしまったのである。

 

 

ドシンドシンドシンドシン!!!

 

 

巨躯が床を鳴らして迫る。

 

 

 

【青山】

「…へ?え!?き、聞こえてたの……!?」

 

 

【芦戸】

(馬鹿!!声がまぁまぁデカかったよ!!……ひいいいい!!!?めちゃくちゃ鬼の形相でブチギレてる……!!)

 

 

【ストーン】

「………おいウスノロのクソ雑魚」

 

 

【青山】

「え…………えっと、ぼ、ぼぼぼ僕は……その、えっt」

 

 

 

ドゴン!!!!!!!!

 

メシャッ!!!!

 

ストーンが上から全力で振り下ろした拳によって

凄まじい破壊音と共に、青山の机が一撃で木粉と鉄クズと化して大破した。

 

 

ガタガタと恐怖に震える一同。

 

 

当事者の青山に至っては、恐怖のあまり腰を抜かして半泣きになっている。

 

 

 

【ストーン】

「…………俺様よ、同胞達と楽しく語り合っててよく聞こえなかったんだわ。俺様の目の前で言ってみろ。………もう一度」

 

 

【青山】

「え、えっとその…ぼ、僕は……えっと…ご、誤解で…」

 

 

 

言葉を言い切る前に、青山の胸倉を鷲掴みにして軽々と持ち上げ、ストーンは大激怒の咆哮を上げた。

 

 

 

【ストーン】

「グルオオオオアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

【青山】

「へーーーーールプ!!!!ヘルプ!!!ご、ごめ、ごごごごごめんなさい……!!!許しておくれ!!」

 

 

【飯田】

「待てストーン君!!止めるんだ!!ほらルールだ!!学校のルールを守らなければ……」

 

 

【ストーン】

「ルールはよぉく分かってる!!だが我慢の限界だ!!!どいつもこいつも俺様が大人しくしてたら、勘違いして調子に乗って好き勝手言いやがる!!しかもこいつ、俺様の見た目がモンスターだと!!?だから調子に乗ったクズは大嫌いなんだよ!!!」

 

 

【上鳴】

(いやお前の言動と見た目は完全にモンスターだろ!!?やべえやべえやべえ青山が本気で殺される!!!)

 

 

【ストーン】

「よりによってこんなへらへらした舐め腐ったクソ雑魚が、俺様の見た目を侮辱しやがった!!もう絶対勘弁ならねえ!!ブチ殺してやる!!!クソがぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

【青山】

「ひぃ!!?」

 

 

身動ぎもできない青山目掛けて、ゴツゴツした大きな拳が一直線に繰り出された。

 

瞬間、切島が青山を庇おうと咄嗟に飛び出す。

 

しかし──。

 

 

 

バギンッ!!!

 

 

 

【切島】

「ぐぉゔっ!!!?」

 

 

【八百万】

「切島さん!!?」

 

 

【芦戸】

「ちょっ切島!!大丈夫!!?」

 

 

【切島】

「いっでえええ……(『硬化』したのに中まで衝撃が突き抜けてきやがった…やべぇ、こんなの食らったら青山は間違いなく即死するぞ…)」

 

 

 

切島は全身を『硬化』させて割り込んだが、その凄まじい質量と威力によって教室の壁まで勢いよく吹き飛ばされ、激しく叩きつけられた。

 

切島自身も十分な体格と重量がある。

 

それすらも一切関係無く玩具のように吹き飛ばした事実から、ストーンの腕力が尋常ではないレベルである事が分かる。

 

 

 

【耳郎】

(嘘でしょ!?制止を無視して本気でクラスメイトを殴った!!)

 

 

【爆豪】

(……チッ、やっぱ止めるか。あいつマジでここで殺して即退学になられたらムカつくからな)

 

 

【ストーン】

「邪魔すんじゃねえ!!!テメェも後でまとめてぶち殺してやるぞ!!だがまずはテメェからだぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

 

再び青山に牙を剥こうとしたその時──。

 

 

 

【蛙吹】

「ストーンちゃん、ストーンちゃん」

 

 

【ストーン】

「あぁ!!?何だチビ!!!邪魔するならテメェもまとめてぶっ殺……」

 

 

【蛙吹】

「ストーンちゃんは慣れない日本の学校で、色々なルールを守ろうと一生懸命真面目にしてるのに、それを周りから勝手なイメージで色々と言われたら腹が立つわよね」

 

 

【ストーン】

「そうだ!!!分かってんなら引っ込め!! でねぇとお前もバラバラに引き千切r」

 

 

【蛙吹】

「分かるわ。凄く腹が立つわよね。しかも見た目の事を悪く言われたら、誰だって当然怒るわよ。その気持ち、凄く分かるわ。でもせっかくここまで我慢して頑張ったのに、ここで暴れて退学になったら全部勿体無いでしょ?このままルールを守って頑張れば、あなたは本当に『最強』になれるかもしれないのに……。青山ちゃんにはキチンと謝らせて、私からキツく注意しておくから。ね?(……怖い、本当は凄く怖いけど、この子は多分根が素直だから、ちゃんと寄り添えば分かってくれる…はず……)」

 

 

蛙吹も内心では脚が震える程に恐怖していたが、あくまで冷静な表情を保ち、ストーンの怒りを受け止めるように静かに説得を重ねた。

 

 

教室全体がシンと静まり返り、息を殺してストーンの反応を見守る……。

 

 

 

【ストーン】

「…じゃあこいつらがまた調子に乗り出したらどうすんだ?お前が保証出来んのか!?あぁ!?そん時はルールもクソもねぇ!!全員まとめてぶっ殺」

 

 

【爆豪】

「おいバカワニ!!だからヒーロー基礎学があるんだろうが!!調子こいた雑魚は授業の中で合法的に痛めつけろ!!舐めた真似してきた奴は戦闘訓練で堂々とぶっ飛ばせ!!テメェの言ってるそのルールとやらを継続しつつ、ムカつく奴を叩きのめせるならそっちの方がお前にとって圧倒的にメリットだろ!!!」

 

 

【尾白】

(よし!爆豪ナイスだ!その理屈ならストーンも納得するはず……!)

 

 

 

そして────。

 

 

 

【ストーン】

「……成る程な。それもそうだ。トゲトゲ頭とチビ、良い事言うじゃねえか」

 

 

 

ドサッと掴んでいた青山を床に放り投げ、すっかり納得した様子を見せたストーンに、クラス全員が胸を撫で下ろして安堵した。

 

 

 

【蛙吹】

「ほら、青山ちゃん。ストーンちゃんにごめんなさいは?」

 

 

【青山】

「ぅう……ご、ごめんなさ…………」

 

 

【ストーン】

「おいクソ雑魚。テメェ対人訓練で当たったら覚悟しておけよ。テメェの面を噛み千切って、両手両足を噛み千切って、その腹もすっかり噛み千切ってやる。分かったな?」

 

 

【耳郎】

(怖すぎるでしょ……!!嫌だ嫌だ嫌だ絶対ペアで当たりたくない…本当勘弁してよ…!!)

 

 

【青山】

「!! わ……わかっ……」

 

 

【ストーン】

「それと……そうだ!そしてお前は手も足も内臓も顔も無くなって、通りをただ転がっていくんだ。風に吹かれた……クソみてぇに。分かったか」

 

 

【青山】

「ひ、ひいいいい………」

 

 

【八百万】

(なんて残虐で恐ろしい発言を……!!)

 

 

 

吐き捨てるようにそれだけ言うと、ストーンはチラリと蛙吹を見下ろし──

 

 

 

【ストーン】

「…チビ。……テメェは嘘つきで調子乗りのクズじゃなさそうだな。……そのクソ雑魚によく言い聞かせておけ!!!」

 

 

【蛙吹】

「わ、分かったわ」

 

 

 

返事を確認すると、ストーンはドスドスと重い足音を立てて、壁際で身体を起こしていた切島に近付いていった……。

 

 

【ストーン】

「……悪かったな、いきなり殴っちまって!!厳密に言えば、俺様はお前を狙って殴ろうとした訳じゃなかったんだ!!」

 

 

【切島】

「え!?あ、だ、大丈夫だ!!俺は頑丈さと根性が売りだからな!!」

 

 

【ストーン】

「ほほう……確かに拳に手応えはあった!!よし……お前とも思いっきり喧嘩がしてぇ!!また時間がある時に喧嘩しようぜ!!なぁ!?」

 

 

【切島】

「え、えっと……組手!ヒーロー科らしく組手な!おう!!楽しみにしとくぜ!!」

 

 

そう言って切島にゴツい肩を貸して立たせ、自席に着いてから、再び午後の授業が始まるまでの僅かな時間、尾白や切島、砂藤と何事もなかったかのように会話を再開しようとするストーンだった。

 

 

 

【ストーン】

「えっと……何の話だったっけか!?」

 

 

【尾白】

「えっと……な、何だったっけ……あはは……」

 

 

 

……終始、尾白と砂藤、切島の3人は滝のような冷や汗を流し続けていたが。

 

 

 

 

 

 

 

だがクラス全員にとって、ストーンの突発的な「怒りのスイッチ」と、止める為の「有効な説得のアプローチ法」が微妙に理解出来た貴重なひと時であった。

 

 

 

 

 

[今回のステータス]

 

●ストーン:

青山の陰口(まるで陰口になってなかったが)に大激怒するも、蛙吹の寄り添う説得と爆豪の合理的な助言で納得。

切島への誤打撃には素直に謝罪する等、凶暴で短気だが自分の非は認める一面もある模様。

ヒーロー基礎学で対人訓練がきたら、舐めた奴らを叩きのめす気満々。

 

 

●切島:

ストーンの『硬化』の上から通る規格外の腕力に驚愕しつつも、不器用な謝罪と漢気を感じ取って興味を持つ。

 

 

●蛙吹:

恐怖を抑えてストーンの感情に寄り添う様子を見せ、暴走を食い止めた事に安堵。

ストーンの素直な本質を確信。

 

 

●尾白:

ヒヤヒヤさせられつつも、ストーンの『我慢の限界』と『説得のコツ』を学習。

 

 

●砂藤:

胃が痛む展開が続きつつも、自分の料理を褒められてストーンとの友情を再確認。

乱暴者だが決して全て悪い人間ではないと認識。

 

 

 

●青山:

生命の危機を本気で感じ、恐怖で完全に意気消沈。

シンプルな迫力なら『おじさま』くらいだったはず。

 

 

 




現実でも大人しくしていたらつけ上がる、性格の悪い人は沢山居ますが、だからといって殴り掛かるのは極力止めましょう。
モロ犯罪です。場合と場所によってはサツにお縄になります。

何事も平和的解決が一番なのです。
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