とりあえず、凄まじい大音響と共に大破した青山の机は、八百万が自身の“個性”である『創造』を駆使し、寸分の狂いもない精巧さで全く同じ形状のものを作り直して事なきを得た。
そして急いで壊れた机の残骸を切島と芦戸がゴミ捨て場へと運んで処理した。
……まぁ、見方によってはただの証拠隠滅なのだが、もうすぐ午後の授業が始まってしまう。
一応の解決を見た以上、授業担当の教師に余計な心配や無用な追及をされたくないという、1年A組全員の密かな暗黙の了解による連帯感であった。
そして────午後の授業時間。
ドシン、ドシン、と重厚な足音が廊下に響き渡り、教室の扉が勢いよく開け放たれた。
【オールマイト】
「わーたーしーがー………………普通にドアから来たぁぁぁぁ!!!!」
No.1ヒーロー・オールマイトが、その象徴たるコスチュームを全身に身につけた状態で、宣言通り普通に正面ドアから堂々と教室へ入ってきた。
【上鳴】
「うおっ、オールマイトだ!!!」
【瀬呂】
「スゲェや!ホントに雄英で先生やってるんだな!!」
【蛙吹】
「あのコスチューム、シルバーエイジのコスチュームね!!」
日本が誇るNo.1ヒーローが直接自分達を指導してくれるという奇跡のようなシチュエーションに、生徒達は先程の「ストーンによる大災害級の暴動」の恐怖すら一瞬で忘れ去り、一気に歓声を上げて興奮した。
無理もない。
目の前に立っているのは、テレビの向こう側で誰もが幼少期から憧れ続けた、生きる「平和の象徴」その人なのだから。
すると──すっと自席から立ち上がり、迷いの無い歩調でそんなオールマイトへと一直線に近付いていく巨躯が一つ。
ストーンであった。
【緑谷】
「えっ!?ちょっ、ちょっとストーン君……!?」
【瀬呂】
「お……おい、待て待て!!何をする気だ!?」
【耳郎】
(マジで!?あいつオールマイトにまで喧嘩売る気!?待ってマジで頭イかれてるって!!)
クラス全員が滝汗を流し、息をのむ。
まさかあの絶対的な象徴であるオールマイトにまで暴力を振るう気なのでは、と緊張が極限まで高まったが……。
【ストーン】
「……………フンァッ!!!」
メキッ!!!
ストーンはオールマイトの目の前に立ちはだかると、見せつけるように太い両腕の上腕二頭筋を爆発させ、完璧なダブルバイセップスのポーズを決めた。
すると───。
【オールマイト】
「………ハァイッ!!!」
ムキッ!!!
オールマイトもその意図を瞬時に察し、一切の躊躇無く対抗して極上のサイドチェストをバシッと決めてみせた。
【上鳴】
(……え?な、何やってんだあの二人……?)
【ストーン】
「…………ウルアアアアッ!!!」
ムキキッ!!
ストーンも負けじと丸太のような腕を更に捻り込み、力強いサイドトライセップスを決めて威圧する。
【オールマイト】
「…………ヌヴヴッ!!!」
メキメキメキッ!!!
オールマイトも負けじと鋼の如き腹筋と大腿部を強調するアブドミナル・アンド・サイを決めて肉体美を見せつける。
そして………………。
【オールマイト、ストーン】
「…………ダァァッ!!!」
ムッキイイイイッ!!!
二人同時に、渾身の力を込めた屈強なモストマスキュラーのポーズを見せつけ合い…………。
【緑谷】
(な、殴り合っては……ないけど……二人共、一体何をしてるんだろう……)
【芦戸】
(……えっ?ここ教室だよね?ボディビル大会始まっちゃったの?)
【オールマイト、ストーン】
「………………ワッハッハッハッハッハッハ!!!!」
二人は互いの肉体を称え合うように、お腹の底から大声を張り上げて高笑いした。
【尾白】
(えっ?えっ何あれ!?何が起きてるの!? 俺の知らない世界なんだけど!?)
【飯田】
「………ハッ!?あ、あの!!オールマイト先生!! その……それは一体何をしてらっしゃるのですか!?」
【オールマイト】
「ハッハッハ!!飯田少年!これはプロレス式の挨拶だよ!!互いの鍛え抜かれた肉体を尊重し合い、漢の熱い友情が芽生えているからこそ通じる、至高のコミュニケーションさ!!」
【ストーン】
「そういう事だ!!オールマイト先生!!久しぶりでごぜぇますね!!いやぁ相変わらず素晴らしいナイスバルクですぜ!!ガハハハハハハハ!!!」
【飯田】
「プ、プロレスの挨拶……!?」
【オールマイト】
「あぁ!何せ彼のお父様は現役の偉大なプロレスラーだからね!!言葉ではなく筋肉と威圧感で会話するのさ!!」
【一同】
「プロレスラー!?」
【尾白】
(そういえばそういう事か……確かに俺も昨日、初めてストーンの父親があの有名な『ギガダイル』だって聞いてめちゃくちゃ驚いたもんな……)
【耳郎】
(父親もバケモンなの!?絶対悪役レスラーでしょそれ…ていうかお久しぶりって…どういう関係!?)
【爆豪】
(…オールマイトの事は尊敬してるみてぇだから余計な手出しはしねぇと思ってたが……んなアホみたいな挨拶があるかよ…)
すっかり毒気を抜かれる1年A組の面々。
だがただ一人、目をキラキラと輝かせる男が居た──。
【切島】
「筋肉で会話……なんて漢らしいんだ!!ストーン!オメェやっぱりめちゃくちゃ熱い心を持ったやつなんだな!!」
【上鳴】
(えっ!?あれで感銘受けちゃうのお前!?漢らしいで片付けて良いの!?)
こうしてストーンは、満足そうに上機嫌な様子で大人しく己の自席へと戻っていった。
オールマイトはコホンと一つ小さく咳払いを挟むと、教壇の前に立ち、授業の内容を改めて説明し始める。
【オールマイト】
「さて、改めて……私の担当する科目は『ヒーロー基礎学』!ヒーローとしての素地を作る為、多種多様な訓練を行う科目だ。単位数も最も多いぞ!!」
生徒達は期待に満ちたワクワクした様子で話に耳を傾ける。
レスキュー等の救助訓練やヒーロー活動の基礎知識に目を輝かせる者もいれば、対人での戦闘に血を滾らせる爆豪やストーンといった生粋の好戦的な者も居た。
【オールマイト】
「で!早速だが本日の訓練は…………これ!!戦闘訓練だ!!」
オールマイトが力強く『BATTLE』と書かれたボードをバッと掲げて見せる。
【爆豪、ストーン】
「戦闘……………!!!!!!!」
【緑谷】
「…………訓練」
【上鳴】
(好戦的過ぎんだろあの二人……目の光り方が怪物と同じだ……俺絶対ペアでも対戦相手でも当たりたくねえ…)
【耳郎】
(マジで嫌だ嫌だ嫌だ……爆豪もだけど、ストーンとは絶対当たりたくない……殺されるって……)
【青山】
(いいいいいいいー!!?せ、戦闘訓練!!?ど、どうしよう!?もし彼と当たったら確実に……僕がパンみたいに細かく千切られちゃう……!!)
【オールマイト】
「そして!それに伴って必要不可欠なのが〜……こちらッ!!」
オールマイトがババッ!!と壁の棚をダイナミックに指差すと──
壁がウイイイイン……と音を立て、出席番号が書かれた専用ケースがズラリと格納された自動棚が押し出されてきた。
【芦戸】
「わぁ!!なんかハイテクでスパイ映画みたい!」
【オールマイト】
「ハッハッハ! 入学前に君達に提出してもらった“個性”届と……要望に沿って最新技術であつらえた『コスチューム』だ!!」
【一同】
「おおお!!!」
【オールマイト】
「着替えを終えた者から順次、実技場である『グラウンドβ』に集合するんだ!」
【一同】
「はーい!!!」
一同は自身の出席番号が割り振られたケースをそれぞれ手に取り、熱気冷めやらぬまま更衣室へと向かった。
数十分後。
『グラウンドβ』の巨大な出入口付近にて。
生徒達の到着を腕組みをして待つオールマイト。
【オールマイト】
「……おおっ!来たな!」
暗い通路を通って姿を現したのは──それぞれの拘りと機能性が詰まったコスチュームを身に纏い、威風堂々と勇ましい表情を浮かべて集まって来た生徒達であった。
まだ高校1年生とはいえ、雄英高校という最難関の狭き門をくぐり抜けてきた選りすぐりの実力者達なのだ。
【オールマイト】
「格好から入るというのも非常に大切な事だぜ少年少女!自覚するのだッ!今日から自分自身が……『ヒーロー』なのだと!!」
【緑谷】
「うわぁ……皆凄くカッコいい……!!」
【オールマイト】
「良いじゃないか皆……!最高にカッコいいぜ!!!(にしても緑谷少年…そのコスチューム…わかりやすいっ!!)」
【麗日】
「おっ!デク君!?カッコいいね!地に足が着いたデザインって感じ!」
【緑谷】
「麗日さ……どぅぉっ!!?」
緑谷は後ろから声を掛けられ、振り返った瞬間にドギマギと狼狽えた。
無理もない。
麗日のコスチュームは、ピンクと薄桃色、そして黒に近い深緑をベースにした、可愛らしさと宇宙飛行士のようなスタイリッシュさを兼ね備えたデザイン。
市民に親しみやすさを与える為か、全体的に丸みを帯びた優しいフォルムなのだが……。
設計上の都合か、身体のラインにぴったり沿ったパツパツのスーツ仕様になっていたのだ。
【麗日】
「要望書にもうちょっとちゃんと書いておけば良かった〜……思いっきりパツパツスーツんなった…恥ずかしい……(照)」
【峰田】
「………ヒーロー科最高!」
【緑谷】
「え!?」
そしてストーンのコスチュームはというと──。
【尾白】
「ストーンのコスチューム、めちゃくちゃカッコいいな! お父さんみたいな伝説の悪役レスラーみたいでどっしりしてて……」
【切島】
「おお!お前も上裸スタイルか!!その鍛え抜かれた肉体美と合わさって迫力が半端じゃねえぜ!」
【ストーン】
「ガハハハハハハハ!!!そうだろそうだろ!!俺様は別に『ヒーロー』という職業そのものに特別な拘りがあるわけじゃねえ、最強になれたら何だって良いからな。だがコスチュームだけは……便利でも、最先端で無くても構わねえ!!これこそが俺様の魂のコスチュームだ!!」
ストーンのコスチュームは、裾の部分に緑の炎のような激しい模様がプリントされた上質なレザー調のロングパンツであり、膝には頑丈そうな膝当て、足元は漆黒の重厚なレスラーブーツ。
腰にはこれまた極太の革ベルトが巻かれており、バックル部分はワニの顎を真正面から見たようなデザインがあしらわれていた。
そしてそのベルトから、無骨な二本の太い鎖がサスペンダーのように肩へと掛けられており、目元には顔の下半分の異形さを引き立てるような黒いバンダナ風のマスク。
【砂藤】
「バッチリ決まってるじゃねえか!!マジで泣く子も黙るヒールレスラーそのものだな!」
【ストーン】
「砂藤! オメェのコスチュームも古き良き王道プロレスラー感があって良いじゃねえかよ!尾白も切島も格ゲーのキャラみてぇで様になってらぁ!!」
【耳郎】
(……あいつだけモロにヴィランじゃん……爆豪のはまだ……凶暴だけどヒーロー感があるのに……)
【葉隠】
(うわぁ……お化けより100倍怖いよあんなの……尾白君達、よく平気な顔で隣に居られるね……)
そんなストーン達の会話を遠くから見つめ、緑谷は胸の中で深く納得していた。
【緑谷】
(ストーン君のコスチューム……見た目はいつも以上に圧迫感があって怖いけど……『便利でも最先端で無くても良い、これが自分のコスチュームだ』って……僕がコスチュームに込めた思いと同じ考えだ……自分のルーツや拘りを何よりも大事にしてるんだね)
【飯田】
「先生!!ここは入試の時に使用された演習場ですが、本日もまた市街地での演習を行うのでしょうか?」
ビシィッ!と腕をまっすぐ上空へ伸ばして質問を投げかけたのは、白銀のロボットとフルアーマーの鎧が合わさったような重厚なヒーロースーツを全身に着用していた生徒。
声の張りからして飯田であった。
【緑谷】
(あっ、あの凄いの飯田君だったんだ。メカメカしくてカッコいいな)
質問を受けたオールマイトは豪快に笑いながら、指を2本立てて答える。
【オールマイト】
「いいや!もう2歩先を踏み込む!!ヴィラン退治のニュースは主に屋外で見られる事が多いが、確率や統計で言えば屋内の方が圧倒的に凶悪ヴィランの出現率は高いのだ!」
生徒達はオールマイトの解説に真剣な眼差しで聞き入る。
【オールマイト】
「監禁、軟禁、闇の裏商売……このヒーロー飽和社会……ゴホン!…………真の賢しいヴィランは常に屋内(闇)に潜む!君達にはこれからヴィラン組とヒーロー組の2つに分かれて『2対2』、全21人だから1枠だけランダムで『3対2』の屋内対人戦を行ってもらう!」
【蛙吹】
「…実戦の基礎訓練もなしに?少し危ないんじゃないかしら」
【オールマイト】
「その基礎を知る為の実践的な実戦さ!ただし今度は、闇雲にブッ壊せばOKなロボットではないのがポイントだ!」
【八百万】
「勝敗の具体的なシステムはどうなるのでしょうか?」
【爆豪】
「相手を力任せにぶっ飛ばしても良いんすか」
【ストーン】
「殺り合うならどんくらい骨を折るまでブチのめして良いんすか!?」
【麗日】
「ま、また相澤先生の時みたいな除籍処分とかはあるんですか……?」
【飯田】
「チームを分けるというのは、どの様な基準で分かれ方をすれば宜しいでしょうか?」
【青山】
「見て!僕のこのマント、エレガントでヤバくない?☆」
全員が口々に一斉に質問を投げかける。
いや、青山のは質問ですらなく自己主張なのだが、オールマイトは苦笑いを浮かべながら悶えた。
【オールマイト】
「んんん〜……聖徳太子……!!」
オールマイトはこうなる事態をあらかじめ予測していたのだろう。
ポケットから小さなカンペ用の紙を取り出し、それを広げて読み上げ始めた。
【オールマイト】
「さて……良いかい?」
【緑谷】
(思いっきりカンペ読んでる!?)
【オールマイト】
「状況設定はこうだ!ヴィラン側がアジトのどこかに極秘の核兵器を隠していて、ヒーロー側はその危険な兵器を処理しようとしている!ヒーロー側の勝利条件は、制限時間内にヴィランを全員捕獲するか、核兵器を回収する事!!ヴィラン側の勝利条件は、制限時間まで核兵器を守り抜くか、ヒーロー側を全員捕獲すること!!」
非常にアメリカンコミックライクな設定に戸惑いつつも、胸を躍らせる生徒達。
そしてチーム分けが完全な『クジ引き』で行われる事に飯田が疑問を呈するが、緑谷が「実際の現場では、他事務所のヒーローと事前情報なしで急遽チームアップする事が多いから、その現場対応力を養う為だと思うよ!」と説明すると、飯田はプロの現場を見据えた深い計らいだと納得した。
そして、緊張のクジ引きの結果、割り振られたチームは────。
チームA、緑谷&麗日。
チームB、障子&轟。
チームC、峰田&八百万。
チームD、爆豪&飯田。
チームE、芦戸&青山。
チームF、口田&砂藤。
チームG、上鳴&耳郎。
チームH、常闇&蛙吹。
チームI、尾白&ストーン&葉隠。
そしてチームJ、瀬呂&切島。
【麗日】
「凄い!!デク君何かと縁があるね!宜しくねっ!」
【緑谷】
「よ、宜しく…!(ま、マママジか!女の子とチーム……ちゃんと取り乱さずに喋らないと……!!)」
【耳郎】
(ふー……何とかストーンや爆豪と同じ地獄のチームにならなくて良かった……命拾いしたわ……)
【上鳴】
(尾白はもう大丈夫そうだけど……葉隠、本当にご愁傷様……生きて帰ってこいよ……)
【常闇】
「……Iチームは三人編成か。しかも、個々の身体能力や潜在能力が極めて高い」
【ストーン】
「ガハハハハハハハ!!!尾白!!お前とは何かと縁があるな!!宜しく頼むぜ同胞よ!!」
【尾白】
「う、うん!こちらこそ宜しくねストーン。葉隠さんも一緒に頑張ろうね」
【葉隠】
「う…えっと…うん…えへへへ… (ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!?最悪の引きじゃんかぁあああ!?尾白君が居るからまだメンタル保てるけど、よりによってストーン君と同じチーム!!?どどどどどうしよう…!?一言間違えたら噛み殺される…!?)」
【ストーン】
「…何だぁ!? おい尾白、この空気女、何だか嫌な匂いがするぜ。こりゃあ俺様を化け物扱いしてる差別主義者のクソ共と同じ匂いだ…!!訓練中だから今のうちに叩きのめして分からせt」
【尾白】
「ちょっと待って待って!!す、ストーン!!ちょっとだけあっちで葉隠さんと話してきて良いかな!?このチームの作戦にとって、凄く大事な話し合いなんだ!!」
【ストーン】
「……チッ、まぁ構わねえぞ(どうせ離れても、俺様の地獄耳ならある程度なら聞こえるからな)」
尾白は焦りながら葉隠の手首を引っ張り、物陰となる出入口の壁裏側まで連れて行き、声をひそめて話し始めた。
その様子をオールマイトは静かに気付いていたが、変に介入せずとも大丈夫だと察し、対戦チームを決める為のボックスの準備を進めていた。
【オールマイト】
(む…ストーン少年、やはりあの凶暴さから周囲に怖がられ、孤立しかけているが……少なくとも彼の素直さや拘りを正しく見抜いている生徒も確実に居るみたいだな。これなら大丈夫だろう。いざとなれば私も居るからね)
【尾白】
「は、葉隠さん、その……落ち着いて。そりゃストーンと組むのは怖いよね?」
【葉隠】
「うぅ…凄く怖いよ。だってあんなに乱暴で怒りっぽくて…身体も大きいし、言葉一つ気を使わないとすぐパンチが飛んでくるから、私凄く神経使っちゃって訓練に集中出来ないよ…クラスの皆もきっとそう思ってるよ……」
【尾白】
「うん…まぁ皆の気持ちもわかるよ。でもさ、あいつ……自分の感情に凄く極端なだけなんだと思う。一見すると近寄りがたい奴に見えるけど、ちゃんと筋を通して打ち解けたら案外良い所もあるんだよ。俺もまだ二日目だからそこまで詳しくは分からないけど……」
【葉隠】
「で、でもぉ…さっきだって青山君の机を壊した上に、本気で殴ろうとしたんだよ!?」
【尾白】
「確かに、何でも暴力で解決しようとするのは絶対に良くない事だけど……でも臆さずに筋を通して、落ち着いて理由を話せばちゃんと分かってくれるんだ。筋を通す、これがストーンと接する上で一番大事だよ。それに……青山の件で怒った時、昨日より凄まじかっただろ?多分あいつ、自分の見た目の事を悪く言われたり貶されたりするのが一番頭に来るんだと思うんだ。……後さ、これからプロヒーローとして活動する時、必ずしもチームアップする相手が優しい人ばかりとは限らないよ。色々な性格のヒーローが居るからね。そういう面でのコミュニケーション能力を養う機会としても、すごく大事な訓練だと思うんだ」
【葉隠】
「そうだけど…うぅ、やっぱりあの人圧が凄くて……」
【尾白】
「実際、さっき教室で見ただろ?蛙吹も多分凄く怖かったと思うけど、ストーンの気持ちに寄り添う感じに説得したら、一回手を止めて耳を傾けたし、爆豪の説得は……言い方は乱暴だったけど『訓練で合法的にぶっ飛ばせ』って筋が通ってたから納得して青山を放したよね?だからこっちが変に媚びたり、わざわざ不愉快な言い方をしなければ無闇に怒ったりしないんだ。そうだな……『物凄く怒りっぽくて怖いけど、きちんと筋を通して話せば分かる奴』って認識すれば、きっと大丈夫だと思うな」
【葉隠】
「うん………分かった、私、逃げずに頑張ってみる……!」
尾白は更に声を潜め、ストーンを動かす為の最も有効なフレーズを伝えた。
【尾白】
「…あとさ、多分ストーンはお父さんに憧れていて、『最強』になる事に強いこだわりを持ってるんだと思う。だから説得したり作戦の説明をする時は、なるべく『最強』ってワードに繋がるように話してみて。あ、勿論デタラメはすぐ見破られるから、ちゃんと筋が通る感じにね」
【葉隠】
「わ、分かった…尾白君、アドバイスありがとね!」
ヒソヒソ話が終わり、少し表情のほぐれた尾白と葉隠がストーンの元へと戻ってきた。
【ストーン】
「………おうお二人さんよ。密会はもう済んだか?」
【尾白】
「みっっっ!!? い、いやそんな不純で破廉恥なものじゃないよっ……!?」
【ストーン】
「フン。分かってらぁ」
【葉隠】
「ストーン君!!」
【ストーン】
「あ?何だ空気女。またふざけた態度したらぶっ殺……」
【葉隠】
「同じチーム、宜しくね!!尾白君の尻尾パワーとストーン君の噛みつきパワー、凄く頼りにしてるからね!!」
【ストーン】
「…………………あぁ?テメェには一体何が出来んだ空気女」
【葉隠】
「私、こう見えて運動神経には結構自信があるんだよ!!それに身体が透明だから、敵のアジトへの潜入とか不意打ちは大の大得意!!直接の戦闘は二人を頼っちゃうかもだけど、サポートなら任せて!!三人で『最強チーム』として頑張っちゃおうよ!!」
【尾白】
(……よし……どう出る……!?)
最強を目指す者として、周囲から真っ直ぐ頼られる事、評価される事は決して悪い気はしないのだろう。
ストーンの口が、ニヤリと歪んだ。
【ストーン】
「……………そうか!!! なら任せた!!目の前の敵をブチのめすのは俺様と尾白に任せておけ!!サポートはお前に全て任せる!!よぉし!!!俺様と尾白、空気女の『最強チーム』で一番になってやるぞ!!!」
やはり根は非常に単純であった。
裏のある媚びや恐怖からの取り繕いではなく、ストレートに友好的かつリスペクトを持って接された事で、ストーンのご機嫌は一気に直った。
しかも、『最強チーム』という響きが思いのほか気に入ったのか、ストーンは尾白と葉隠の肩を太い腕で強引に引き寄せ、ガシッと組んだ。
【尾白】
「あははは…よし、頑張ろう二人共!」
【葉隠】
「ストーン君!!私は葉隠!!空気女じゃなくて葉隠透だよ!!」
【ストーン】
「そうかそうか!!なら改めて俺様、尾白、葉隠の『最強チーム』の出陣だ!!相手が誰であろうとも全員残らずぶち殺……」
【葉隠】
「あっ!あとストーン君!これはチームの訓練なんだから『チームワーク』が一番大事だからね!本当の『最強』の人は単に強いだけじゃなくて、お互いの助け合いも重要なの!えーと……か、勝つ為には手段を選ばないって言うでしょ!?」
【尾白】
(!?葉隠さん!?それは流石にちょっと強引で雑な説明じゃ……)
【ストーン】
「成る程な……確かに勝つ為には手段なんて選ばねぇ!それこそが最強の秘訣の一つだ!!よし分かった!!ピンチになったらお前等すぐ俺様を頼れ!!敵をぶっ殺してお前等を助けてやるからな!!」
【尾白】
(通じた!?ま、まぁ葉隠さんの言葉に変な嘘や裏を感じなかったから納得した……のかな?)
【葉隠】
「ありが……って殺しちゃ駄目だよ!?助けるのが目的だからね!?」
【ストーン】
「分かってる分かってる!!殺さずにぶっ殺して助ける!!ガハハハハハハハ!!!」
【葉隠】
「えええ!? だから殺しちゃ駄目だってばー!!!」
【オールマイト】
「(うむうむ、周りの生徒達が実に良い影響を与えていっているな。素晴らしいぞ!))さて!ではヴィランチームとヒーローチーム、記念すべき第1戦の組み合わせを引くぞ!!」
【爆豪】
(………あのバカワニ、よく試験合格出来たな……)
[今回のステータス]
●ストーン:
オールマイトとの挨拶で大満足し、葉隠からのストレートな信頼と『最強チーム』の言葉に上機嫌。チームメイトを味方として認識。
しかし実戦訓練で己の強さを示す気満々。
大丈夫だろうか。
●尾白:
葉隠との連携でストーンの手綱を見事に引き、チームの仲介役としての役割を完璧に遂行した。
●葉隠:
最初はパニック寸前だったが、尾白のアドバイス通りに接してストーンと少し打ち解けられた事で自信がついた……が、やっぱりまだちょっと怖い。
●オールマイト:
ストーンの独特な挨拶を受け止めつつ、生徒同士が歩み寄り成長する姿を温かい眼差しで見守っている。
●緑谷:
ストーンのコスチュームに対するポリシーに共感しつつ、迫りくる戦闘訓練に向けて集中を高めている。