―――翌日、早朝。いつも通りに目が覚めていつも通りに支度をして走って学校へ向かった。
莉己「おはようございます。お疲れ様です。滝先生。」
滝「相変わらず早いですね。きちんと眠れていますか?」
莉己「はい、その辺は大丈夫です。では行ってきます。」
音楽室で支度をする。今日も『ultra soul』の演奏を繰り返す。扉が開く。
莉己「おはようございます。鎧塚先輩。」
みぞれ「おはよう…。」
繰り返す内に無駄な部分がそぎ落とされる感覚、悪くなかった。トントンと鎧塚先輩に肩を叩かれる。
みぞれ「君がまだ吹いてない曲があったら吹いてほしい…。いいかな…?」
莉己「洋楽でもいいですか? 楽譜はありませんが。」
みぞれ「うん、いいよ…。」
記憶を手繰り寄せてイメージする。音符を重ねる。よし…準備は出来た。
莉己「では、いきます。」
最初から力強く吹く。曲の最初から最後までサビみたいな曲だ。俺の想うがままに力一杯吹いた。
莉己「如何でしたか?」
みぞれ「凄くいい曲で…演奏も凄かった…⁉ 何ていう曲…?」
莉己「『I Was Born To Love You』という曲です。」
みぞれ「まだ吹ける…? もっと聴きたい…⁉」
莉己「わかりました。では…いきます。」
こうして残りの朝練は俺の洋楽メドレーとなった。鎧塚先輩の練習はいいのだろうかという思いはあったが先輩が望むならいくらでも吹ける気がした。
みぞれ「今日はありがとう…。」
莉己「どういたしまして。それでは失礼します。」
職員室へ向かう。滝先生へ鍵を返す。
滝「今日は洋楽ですか。どれも素晴らしい演奏でしたよ。自信を持ってください。」
莉己「ありがとうございます。滝先生にそう言っていただけて励みになります。失礼します。」
一礼して教室へ向かう。麗奈さんに挨拶する。
莉己「おはようございます。麗奈さん。」
麗奈「おはよう。聴いたことのない曲が多い気がしたけど何の曲だったの?」
莉己「鎧塚先輩に頼まれて洋楽メドレーに変更しました。」
麗奈「そこまで吹けるの…⁉ もう初心者のド素人って言うの禁止ね。」
莉己「はい。あ、それと今日は松本先生の付き添いで病院へ行くことになりました。早退すると思うので部活の皆さんにはよろしく伝えておいていただけますか?」
麗奈「わかった。気をつけてね。」
そして1時限目が終了した。
「神坂、いるか?」
目を向ける。松本先生だった。
莉己「はい、もう時間ですか?」
松本「そうだ、準備をしろ。」
莉己「わかりました。では行ってきます。」
麗奈「うん、いってらっしゃい。」
それから正門で松本先生の運転する車に乗せていただき病院まで案内された。予約したというだけあって大して待たずに済んだ。松本先生が隣に座る中、精神科の先生の質問には正直に答えた。
「短く刈り上げられた髪、薄い体毛、剃った眉に加え、1日に過剰な程の運動量から診て鬱病と不眠症に加えて強迫症も併発している可能性が高いです。薬を処方します。副作用は頭痛と倦怠感です。来月にまたお越しください。では今回は以上です、お大事に。」
「「ありがとうございました。」」
診察料&薬代は先生が支払ってくださった。
莉己「すみません、病院に案内してくださった上にお金まで払っていただいて、ありがとうございました。」
松本「気にするな。私たちが好きでやっていることだ。お前は何も気にしなくていい。それから…お前の部屋の様子も見たい。入っていいか?」
莉己「はい、構いません。」
最寄り駅の駐車場に車を駐車してそこから俺の住むボロアパートへ案内した。部屋に入る。
松本「意外と片付いているな。」
莉己「必要最低限の物しか用意していないので。それと昨日、一応掃除しました。」
松本「落ち込んでいないか?」
莉己「麗奈さん…高坂さんにスマホで短時間の睡眠の影響について症状を前もって読まされたので予想はしてましたから大丈夫です。」
松本「これからの予定は?」
莉己「とりあえず走り込みと筋トレしまくります。」
松本「それはいいが夜9時には布団で眠れるように調整しろ。わかったな?」
莉己「はい、かしこまりました。」
松本「ならいい、薬を飲むのを忘れるなよ。私は帰る、見送りはいいぞ。」
莉己「はい、お疲れ様でした。」
先生は帰っていった。俺も着替えて外に出た。念入りに柔軟体操してから走りまくった。シャドーボクシングの真似事もした。それから筋トレしまくった。ポケットに入れた安物の時計を見る。午後7時30分、まだ動けるが先生の言われた通りにすることにした。走って部屋に戻って電子ジャーのスイッチを入れてシャワーを浴びる。腋も下の毛も念入りに剃って洗い流す。バスルームを出ると丁度電子ジャーのアラームが鳴った。晩飯をかき込んで食後用と寝る前用の薬を纏めて飲んで布団に入った。まだ9時にもなっていないが頭がボーっとしてきた。そのまま身を委ねて眠った。
目が覚める、体に上手く力が入らない。これが薬の副作用のせいなのか、思いっきり腹筋に力を入れて起き上がった。両脚が震える。屈伸運動して何とか力が入るようになった。歯磨き洗顔を済ませて制服に着替える。時計を見る。朝5時半過ぎ、いつもの習慣通りに行動出来ていることに安心した。走って学校へ向かう。
莉己「おはようございます。お疲れ様です。滝先生。」
滝「おはようございます。 昨日の病院の件は松本先生から聞きました。 無理はなさらないでくださいね。」
莉己「お気遣いいただきありがとうございます。あの…俺の事情を知っている方は他にいらっしゃいますか?」
滝「……部長と副部長と中世古さんだけです。幹部だけですね。」
莉己「これから俺はどうすればよろしいのでしょうか。病気のことは聞かれたら正直に話した方がいいのでしょうか?」
滝「聞かれたら話す程度でいいと思います。貴方自ら話すことでもないと思います。」
莉己「分かりました。そうさせていただきます。それでは行ってきます。」
一礼して音楽室へ向かった。支度をする。扉が開く。
莉己「おはようございます。鎧塚先輩。」
みぞれ「おはよう…。昨日はどうしたの…? 病院へ行ったって聞いたけど…?」
莉己「あーええと…病気の疑いがあると先生方に指摘されたので診察へ行きました。」
みぞれ「どこか悪いの…?」
莉己「うーん…精神的な問題ですね。鬱病と不眠症と強迫症と診断されました。」
みぞれ「そんなに…⁉ 眠れないの…⁉」
莉己「でも薬飲んだらぐっすり眠れました。問題ありません。」
みぞれ「そう…。具合が悪くなったらいつでも言って…。」
莉己「はい、そうさせていただきます。」
それから鎧塚先輩と合わせて『ultra soul』の演奏を繰り返した。1日休んだ程度では俺の勘と技術は鈍っていないことに安心した。朝練が終わった。
莉己「それでは失礼します。お疲れ様でした。」
みぞれ「うん…お大事に…。」
滝先生に鍵を返して教室へ向かう。
莉己「おはようございます。麗奈さん。」
麗奈「おはよう。病院での診断はどうだったの?」
莉己「鬱病と不眠症と強迫症と診断されました。でも薬もらってよく眠れたので大丈夫です。」
麗奈「食欲は?」
莉己「そこは変わらないですね。」
麗奈「そこも改善してほしかったんだけどなぁ…。」
莉己「あまり気を遣っていただかなくても大丈夫ですよ。」
麗奈「気は遣うわよ…⁉ 自覚がないって恐ろしいって思った…⁉」
莉己「見ての通りピンピンしてるので安心してください。」
麗奈「もう…⁉ 具合が悪くなったらすぐに言うように⁉ わかった⁉」
莉己「鎧塚先輩にも同じこと言われました。そうさせていただきます。」
その後、部活はひたすら合奏練習に明け暮れた。練習を重ねる度に完成度は増していっている気がした。そして約束の滝先生との合奏本番を迎えた。早くサンライズフェスティバルの練習がしたかったのでウズウズしていた。
滝「約束の日になりました。この1週間の成果が楽しみです。」
滝先生が微笑む。気合いが入った。先生の指揮に合わせてイントロから吹き始める。細かく…繊細に…メインのエレキギターパートに移る。力強く吹く。ボーカルパートはもっと力強く吹く。僅かな間奏、他のパートの方々に任せる。再びエレキギターパート、力強く…ボーカルパートも同じようにした。最後に全員の大合奏で締めくくる。滝先生の反応は…どうだろうか…?
滝「いいですね、素晴らしい。サンライズフェスティバルが楽しみです。」
音楽室に安堵の雰囲気が漂う。部長を中心にサンライズフェスティバルに向けての練習メニュー表が配られる。日程が練習でみっちり埋まっていた。気合いが入った。いつだか麗奈さんに語った目標、『観客の皆さんを歓声でいっぱいにしたい』と。その目標を達成する気満々だった。
翌日、本番の衣装を作るための身体測定が行われた。肺活量測定はブッちぎりだった。
「どうだった、莉己くん?」
彼の名は塚本秀一。数少ない男子部員の中でも会話を交わす程度の関係にある数少ない男子部員だ。
莉己「200㎝ジャスト、体重は103㎏でした。」
「去年は?」
彼の名は瀧川ちかお。塚本くんと同じく会話を交わす程度の関係にある数少ない男子部員だ。楽器は違うが同じサックスパート同士でもある。
莉己「195㎝、100㎏ジャストでした。」
ちかお「スッゲー⁉ 全然まだまだ成長中だね…⁉」
秀一「昼休みに体育館で鍛えてるんだっけ? 体育の時倉庫見てマジビビったよ。バーベル100㎏超えてるよね? あれでベンチプレスってやつやってるの?」
莉己「後はあれを担いでスクワットやってます。それぞれ50回ずつやってます。それから腹筋運動と拳立てと指立伏せしてます。たまに昼休み過ぎて授業に遅刻します。」
「「50⁉ スクワットも⁉ 他にも⁉」」
莉己「はい。小学生からの習慣みたいなもので運動しないと落ち着かないです。」
秀一「1年生…だよね…? 俺と同い年の。」
莉己「はい、そうですよ。留年とか年齢詐称とかしてません。」
そしてマーチングの練習に入った。ひとつの歩幅62.5㎝、通称ゴメハ、5mで8歩、慣れるのに苦労した。副部長に叱られまくった。俺ひとり列から外れてひたすら行進練習した。列に戻るのを許される頃には日が沈もうとしていた。これで演奏しながら歩幅を合わせないといけないのだから先が思いやられる。
麗奈「ふふっ、副部長に叱られまくってる莉己くんっていう貴重な光景が見られて面白かった。」
莉己「今までの人生で歩幅なんて気にしたことなかったから慣れるまで偉い苦労しましたよ。」
麗奈「でももうそんな光景見られなくなると思うと寂しいかな…。」
莉己「わかりませんよ。演奏しながらだと元に戻ってるかもしれません。」
麗奈「そうだね! ふふっ、期待してるね!」
莉己「俺が叱られてるの見て楽しいですか?」
麗奈「莉己くんにも苦手なことあるんだって発見があって楽しいかな。」
莉己「苦手な事くらいありますよ。病院行かなければ今頃眠るのも苦労してるでしょうね。」
麗奈「あ、それは…ごめん。」
莉己「麗奈さんが謝ることはないですよ。」
麗奈「どうすれば治るんだろうね…。」
莉己「さあ? 俺はいつも通りに過ごすだけですね。気にするだけ無駄ですよ。」
麗奈「自分の事なんだから真剣に考えてよ⁉」
莉己「体の怪我なら安静にしていれば治るでしょうけど精神疾患なんてどうすればいいのかわかりませんっていうのが正直な感想ですね。」
麗奈「それは…そうだけど…。」
莉己「麗奈さんも気にしないでください。これは俺からのお願いです。」
麗奈「気にするなって言う方が無理よ…⁉」
莉己「お気持ちだけ受け取らせていただきます。」
それ以上言葉は交わさなかった。分かれの挨拶だけして走って帰った。急いで着替えて川の土手を走りまくりシャドーボクシングしまくり適度に筋トレして引き上げた。シャワーを浴びて晩飯をかき込んで薬を飲んで布団に入る。夜9時には間に合った。麗奈さんの姿を思い浮かべる。すぐに眠れた。
来る日も来る日もサンライズフェスティバルに向けての練習に明け暮れた。演奏しながらの行進で相変わらず注意されまくったがそれも時間をかけてモノにした。自信はどんどん深まっていった。
本番の日を迎えた。早朝に目が覚めてバリカンで髪を刈り髭と眉を剃る。頭と顔を洗う。気合いが入った。走って学校へ向かう。張り切って楽器運搬をした。視界に低音楽器が入ってるであろう楽器ケースを重っっっそうに背負って運ぶ女子が映ったので駆け寄って代わりに持ち上げた。
莉己「大きなお世話だったら申し訳ございません。代わりにお運びいたします。」
「あ、うん…。」
全ての楽器を運び終え移動用バスに乗り込んだ。隣には麗奈さん。
麗奈「物凄い勢いで楽器運んでたけど大丈夫? 疲れてない?」
莉己「あの程度、どうってことないですよ。あんなので疲れてたら不眠症になんてなりません。」
麗奈「喜んでいいのやら心配すればいいのやら…分からないわね。」
莉己「前にも言いましたけど心配ご無用ですよ。」
麗奈「そう…緊張してない?」
莉己「いえ、全く。」
麗奈「本当に?」
莉己「はい、全然。」
麗奈「なら良かった。」
それっきり無言の間が続いたが悪くは無かった。会場に着き男子部員たちで固まって衣装に着替える。
秀一「うおっ⁉ 予想はしてたけどスッゲーガタイ⁉」
ちかお「腹筋も凄い…⁉ 生でシックスパックって初めて見た…⁉」
莉己「普段から鍛えてますからね。」
秀一「普段って…昼休み以外にも鍛えてるの?」
莉己「はい、部活が終わったら部屋に帰って着替えて外に出て走り込みやらシャドーボクシングの真似事やら筋トレやってます。」
「ねえ⁉ 見た見た⁉ シックスパックよシックスパック⁉」
「太ももも凄い…⁉ 丸太みたい…⁉」
「胸板も凄い…⁉ そこらの女子よりバストサイズ大きいよたぶん⁉」
女子部員からの視線が恥ずかしいのでさっさと着替えた。楽器を持って集合する。松本先生から喝を入れられる。
松本「いいかお前ら! いよいよ本番だぞ! 手を抜いたら承知しないからな!」
「「「「「はい!」」」」」
松本「練習通りやれば出来る!」
「「「「「はい!」」」」」
松本「気合いを入れろ! 声が小さい!」
「「「「「はい‼」」」」」
松本「よぉーし、私からは以上だ。」
滝先生が遅れてやってくる。
滝「私からは…特にありません。皆さんの演奏を楽しみにしています。」
滝先生が微笑む。気合いが入った。整列する。俺は先頭から2番目、ドラムメジャー…副部長の後ろにひとりで立つ。何でも「北宇治で1番背が高くて音量も大きいので」という理由らしい。よくわからないが納得することにした。北宇治の前の学校…立華高校とかいったか…その学校のマーチングが始まると歓声が沸き起こる。
「全く外さない…⁉」
「俺…何か自信が無くなってきた…⁉」
晴香「ちょっと…⁉ もう出番だよ⁉ みんな――――。」
「押 忍 ‼」
振り返って皆さんの前で力の限り叫んだ。周囲の皆さんが静まり返り視線が集中する。
莉己「生意気な事を言いますのでお先にお詫び申し上げます。去年も一昨年も北宇治のことは知りません。ですが…今年の北宇治は違います。夢中で練習してきました。練習通りやれば上手くいきます。俺は今から思いっきり吹きます。皆さんも思いっきりやってください。ここらで北宇治の真の力を見せつけてやろうではありませんか。」
一礼して振り向く。
「……そうよ⁉ 神坂くんの言う通りよ⁉ やれば出来る⁉」
「『神坂莉己』っていう存在をアピールするために私、頑張る⁉」
「私も…⁉ 神坂くんの演奏に惚れこんだんだもん…⁉ 精一杯サポートする⁉」
北宇治の名がアナウンスされる。滝先生が前に出る。
滝「本来、音楽とはライバルに己の実力を見せつけるためにあるのではありません。ですが今ここにいる多くの他校の生徒や観客は北宇治の力を未だ知りません。ですから今日はそれを知ってもらういい機会だと先生は思います。さあ、北宇治の実力…見せつけてきなさい!」
「「「「「はい‼」」」」」
副部長の笛が鳴る。イントロは丁寧に…繊細に吹く。行進が始まる。歩幅良し、音量良し。出だしは好調、メインのギターパートから思いっきり吹く。ボーカルパートも思いっきり吹く。視界の端に映る観客の皆さんの視線が集中するのが見える。サビが終わり通り過ぎる、あるいは前方の観客の皆さんから『ハイッ!』か『ヘイッ!』の合いの手の大合唱が聞こえた。ニヤケそうな表情をグッと堪えて演奏に集中する。遠慮なく大音量で吹き続けた。サビが終わる度に聞こえる合いの手にテンションが上がった。最後の3連続合いの手も入れてくださった。シメに滑らかに素早くエレキギターパートを吹いて北宇治のマーチングは終了した。大歓声が起こった。最高だった。
無事にサンライズフェスティバルのパフォーマンスを終えて着替えようとしたところに
「あ、あの⁉ 神坂くん⁉ ちょっといいかな⁉」
どこかで聞いたようなそうでもないような声に呼ばれた。振り向く。確か低音パートの…名前が思い出せない…内心で詫びた。
莉己「はい、如何しましたか?」
よく見ると北宇治の女子の後ろに誰かが隠れている。あの衣装は確か…立華高校といったか。そこの学校の女子らしき人が隠れている。
「ほら、梓ちゃん。神坂くん来たよ。」
「う、うん…。」
俺に用があるみたいなので彼女の背中に回り込んで挨拶した。
莉己「はじめまして、神坂莉己と申します。俺に何か御用ですか?」
「は、はじめまして⁉ 佐々木梓と申します⁉ さっきの演奏素晴らしかったです⁉ 観客の盛り上がりも凄くて…⁉ よろしければ一緒に写真を撮っていただけませんか⁉」
莉己「え、俺でよろしいのですか?」
「はい⁉ ぜひお願いします⁉」
莉己「喜んでお引き受けいたします。」
そして色々な角度からツーショット写真を撮った。初めての経験なので恥ずかしかったが悪い気はしなかった。
「ありがとうございました⁉ 一生の宝物にします⁉」
莉己「こちらこそ貴重な体験をさせていただきありがとうございました。」
一礼する。帰ろうとしたところに
「あ、あの⁉」
振り向く。立華高校の皆さんが集合していた。
「私たちもご一緒させていただいてもよろしいでしょうか⁉」
莉己「喜んでお引き受けいたします。」
そして座る俺を中心に全体写真、各部員の皆さんとのツーショットを撮った。
「みんな! せーの!」
「「「「「ありがとうございました‼」」」」」
莉己「こちらこそ貴重な体験をさせていただき誠にありがとうございました。」
一礼する。今度こそ帰る支度をした。バスに乗り込む。麗奈さんの隣が空いていたので座らせてもらった。
麗奈「モテモテだったね。」
莉己「こんな眉無し坊主野郎のどこがいいんですかね?」
麗奈「外見は関係ないよ。演奏に惹かれたんだよ。」
莉己「そうですか?」
麗奈「そうだよ⁉ 聞こえなかった⁉ あの観客の大歓声⁉」
莉己「聞こえました。」
麗奈「もっと自信を持ってよ…⁉ もう…⁉」
それっきり会話はしなかった。気分は高揚していたので悪くはなかった。