「近所の冴えないおじさんに、ねちっこく愛撫されて堕ちた人妻」 —冴えないおじさんシリーズ Vol.1— 作:境彩華
彩華が次に配信したのは、それから四日後の夜だった。
夫は出張で帰らない。家は静まり返り、彼女はいつもより大胆にカメラの位置を調整した。
黒いレースのランジェリーに着替え、マスクと帽子で顔を隠す。照明は暖色を落とし、胸元と腰から下だけが、淡く浮かび上がるようにした。
「……今夜は、時間がゆっくりあるから」
配信を開始すると、すぐに視聴者数が伸びた。
彩華は自分の指をゆっくりと腿の内側に這わせ、すでに熱を帯びた秘部に触れる。見られているという感覚が、背筋を震わせた。
「んっ……はぁ……もっと、見て……」
指を沈めるたび、ぴちゃぴちゃと水音が小さく響く。彼女は腰をくねらせ、普段より声を漏らした。達する瞬間、膝が内側に寄り、長く甘い吐息がマイクに乗った。
配信を終えてしばらくした頃——。
玄関のチャイムが、短く鳴った。
彩華はスマホを置き、少し慌ててガウンを羽織った。時計を見ると、すでに夜の十時を過ぎている。
誰だろう、と思いながらドアを開けた瞬間、彼女は固まった。
隣に住む男が立っていた。
健二だった。少し疲れた目元に地味なシャツを着て、手にはスマートフォンを握っている。
「……山本、さん?」
「夜分にすみません。少しお話があります」
声は低く、しかし意外なほど落ち着いていた。彩華は反射的に戸惑い、それでも「どうぞ」とドアを開けてしまう。
リビングに通すと、健二はソファの端に座り、彼女の顔をまっすぐに見た。
「突然で驚かせてしまいましたね。でも、もう黙っていられなくて」
彼はスマホの画面を彼女に向けた。そこに映っていたのは、先ほど彼女が配信していた映像の録画だった。顔は隠れている。
だが、部屋の模様、照明の色、そして——喘ぎ声。録画の女性と彩華が同一人物だと分かる動画だった。
彩華の顔から、血の気が引いた。
「……これ……」
「はい。隣の家から聞こえる声と、配信の声が一致したんです。最初は気のせいかと思いました。でも、何度も確認して、間違いありませんでした」
健二は画面を止めて、静かに息を吐いた。
「僕はあなたが引っ越してきたときから、あなたのことがずっと好きでした。僕は近づけるような男じゃないと、ずっと思っていました。でも……あなたが、ああして自分を慰めているのを知ってしまったら、もう何もせずにはいられなくなって」
彩華は後ずさりした。
頭の中が真っ白になる。
夫に知られたら——いや、それ以前に、この男に知られているという事実が、彼女の足元を崩した。
「……消してください。お願いですから」
「消します。約束します」
健二は素直に言った。
そして、続けた。
「ただ、一回だけお願いがあります。挿入もしません。口でさせるつもりもありません。ただ……あなたの身体を、触らせてほしいんです。それだけでいい」
彩華は目を見開いた。予想していた「脅迫」とは、少し違っていた。
彼の声には、欲望と同時に、どこか真摯な響きがあった。
「……ふざけないでください」
「本気です。あなたが嫌なら、すぐに帰ります。でも、もし少しでも……疼いているなら。僕に触らせてくれませんか」
沈黙が落ちた。
彩華の胸の奥で、何かが小さく軋んだ。夫との夜では決して届かない場所が、今、熱を持ち始めている。
嫌だ、と思っているのに、下半身が正直に反応しているのが自分でもわかった。
「……一回だけですよ」
掠れた声で、彼女は言った。
健二は深く頷き、ゆっくりと立ち上がった。
彩華が後ずさると、彼は距離を詰めず、ただ手を伸ばして彼女のガウンの合わせ目に触れた。彼の指先がわずかに震えている。
「ありがとう」
健二は感謝して彼女をソファに座らせ、自らは床に膝をついた。
まず、ゆっくりとガウンを開いた。
次に肩から二の腕へ、ゆっくりと掌を滑らせた。皮膚の温度を確かめるように、何度も同じ場所を往復する。
レースの下着に包まれた白い肌が、部屋の明かりに浮かぶ。
健二はすぐに激しく触れなかった。まず、鎖骨のくぼみに指を滑らせ、ゆっくりと胸のふくらみの外側を撫でた。
「彩華さん……いい匂いがします」
健二は顔を寄せ、彼女の首筋に鼻先を近づけた。クン、クン、と小さく音を立てて嗅ぐ。自分の加齢臭が混ざるのを気にしているのか、少し申し訳なさそうな吐息が漏れた。
「あぁ……ずっと、彩華さんを嗅いでいたいです。……こんなに甘い匂いだなんて」
対照的に彼の額から落ちた汗が、バーコード状の薄い髪をさらに湿らせていた。
部屋の空気の中で、若い女の甘い香りと、中年男のきつい匂いが混じり合う。
「……っ」
健二の舌が、鎖骨に触れた。熱く、少しざらついている。
ゆっくりと、ねっとりと舐め上げ、喉のくぼみまでを丁寧に湿らせていく。彩華は肩をすくめそうになって、それでも動かなかった。
「んっ……」
「ここも柔らかい。彩華さんに触れられて幸せです」
彼はブラの肩紐をずらし、ゆっくりとカップを下げた。
こぼれ出た白い乳房を、両手で下から優しく支える。親指で外側を円を描くように撫で、徐々に輪を小さくして中心へ向かう。
乳首にはまだ直接触れない。周囲だけを、執拗に優しく刺激し続ける。
「あ……ん、やっ……」
「もう硬くなってますよ。こんなに素直で……可愛い」
ようやく舌が乳首に触れた。先端だけを、軽くペロリと舐める。
すぐに吸わず、転がさず、ただ湿った舌表面で何度も優しく撫でる。
左右交互に。片方を舐めている間、もう片方を指の腹でそっと摘まみ、離す。強さを変えず、一定のリズムで繰り返す。
彩華の呼吸が、徐々に乱れていった。
健二は乳房から腹へ、臍の周りを舌でゆっくりと円を描き、腰骨の際まで降りていく。
下着の端に指をかけ、確認するように彼女の顔を見た。彩華は目を逸らし、微かに頷いた。
下着が腿まで下ろされる。すでに布はぐっしょりと濡れていた。秘部から溢れた愛液が、太ももの内側を伝っている。
「彩華さん。あなたの、あそこが……すごいことになってますよ」
「いやぁ……」
健二は顔を近づけ鼻先でクンクンと匂いを嗅ぎ、甘い匂いを深く吸い込んだ。
「……舐めてもいいですか」
彩華は否定も肯定もできなかった。ただ、火照った顔を背けたまま、小さく息を詰めるだけだった。
「もっと、僕に見せつけるように足を広げて……いかせてあげますから」
彩華の膝が、内側から開かれていく。健二は両手で彼女の腿を支え、秘部を正面から見つめた。
「ああ……なんて、綺麗なんだ。こんなに濡れて、ひくひくして……」
舌が触れた。
最初は外側だけ。大陰唇を下から上へ、べローン、べローンとねっとりと舐め上げる。
何度も同じ場所を往復し、愛液を音を立ててじゅるるっとすくい取る。徐々に内側へ。
割れ目に舌を沈め、ゆっくりと上下に動かす。
クリトリスにはまだ直接触れない。周囲を舌で囲むように責め、時折、入り口を浅くツンツンと優しく突く。
「んあっ……あっ、やっ……そこ……」
「感じてますね。声、我慢しなくていいですよ」
健二の言葉は優しく、しかし容赦がない。舌の動きは一定で執拗で、彼女の反応を一つずつ拾っていく。腰が浮かぶと両手で腰を押さえて固定し、さらに密着するように深く顔を埋めた。
「ふあぁっ……! ん、あっ、あっ、だめ……気持ち、いぃ……」
彩華の声が、徐々に高くなっていく。自分でも制御できないよがり声が、静かなリビングに響いた。
「指、入れてもいいですか。……入れますよ」
答を待たず、中指がゆっくりと沈む。内側の柔らかい壁を確認するようにかき回し、すぐにGスポットの位置を探り当てる。
ぐちゅぐちゅっ、ぴちゃぴちゃ。
そこを指の腹で繰り返し押しながら、舌をクリトリスに集中させた。
「ひあっ……!そこ、だめ、だめぇ……!」
「もっと感じて。そのままいっていいですよ」
にゅぷっにゅぷっ……れろれろっ……
指の動きが速くなり、舌がクリトリスを捉え続ける。彩華の太ももが大きく痙攣し、背中が弓なりに反った。
「いく……あっ、出る、出ちゃう……!」
ビチャァー!
熱い飛沫が大きく迸った。透明な潮が、健二の口元と顎を濡らし、ソファの縁まで飛び散る。彩華は目を見開いたまま、長く、細かく身を震わせ続けた。
健二は顔を上げず、しばらくその秘部に顔を寄せたまま、残った愛液を丁寧に舐め取った。額のバーコード状の髪はさらに汗で光り、加齢臭が熱を帯びて濃くなっている。
彼はようやく顔を上げ、穏やかに、しかし満たされた目で彩華を見た。
「……嬉しいです。こんなに僕で感じてくれて」
彩華は天井を見つめたまま、しばらく動けなかった。
股の間はまだひくついて、熱いものが太ももを伝っている。
自分の意志とは無関係に、こんなにも激しく反応してしまった事実が、怖かった。
(嫌だったはずなのに……。あんな男に、舐められていかされて……)
夫との夜では、一度もここまで熱くなったことがない。なのに、冴えない中年男の指と舌で、初めて潮まで吹いてしまった。その事実が、胸の奥に重く沈む。
「……もう帰って」
「また、いつでも気持ちよくしてあげますよ」
「……」
掠れた声でそう言うと、健二は静かに彩華に囁いて服を整えた。
ドアが閉まる音がしたあと、彩華は顔を両手で覆った。
(こんなの、おかしい……。私、一体どうなっちゃうの)
身体の疼きは、まだ完全には消えていなかった。
否定の言葉が喉まで出かかって、しかし出てこない。
身体の芯がまだ熱く、甘く、疼いたままだった。
健二が帰ったあと、彩華はしばらくソファに座ったまま動けなかった。
股の間はまだひくついて、太ももを伝う熱が生々しく残っている。自分の意志とは無関係に、あんなにも激しく反応してしまった事実が、胸の奥に重く沈んでいた。
翌朝のことだった。 出勤前の夫・翔太が、「彩華、ゴミ袋重いだろうから僕が持っていくよ」と爽やかに笑い、二人は並んでアパートの階段を降りた。
朝の清々しい光が差し込むゴミステーションの前で、その男とばったり顔を合わせた。
夜勤明けの、くたびれた紺色の作業着。 少し伸びたボサボサの髪に、無精髭の浮いた冴えない輪郭。山本健二だった。
「あ、おはようございます。お隣の山本さんですよね」
翔太が屈託のない笑顔で、自分から爽やかに挨拶を交わす。
「あ……ご主人、おはようございます。いつも、どうも……」
健二は猫背のまま視線を落とし、いかにも気弱で冴えない中年男の愛想笑いを浮かべて小さく頭を下げた。
その瞬間、彩華の全身の血がサッと逆流した。
(――嘘……)
夫のすぐ隣で彩華の足がすくみ、息が喉の奥で詰まった。昨夜、健二の熱い舌と指の感触に強い加齢臭。
「また、いつでも気持ちよくしてあげますよ」と、耳元で吐き出された囁きが、鮮烈なフラッシュバックとなって脳内を埋め尽くす。
健二が頭を上げた瞬間、作業着の襟元から覗く首筋の血管と、まくり上げた袖から伸びる太い前腕が視界に入った。
そして――ほんの一瞬だけ、健二の瞳の奥がスッと細まり、彩華の顔を捉えた。
冴えないおじさんの仮面の奥底に宿る、あの「昨夜の雄の目」だった。
「……っ」
彩華の心臓が早鐘のように肋骨を叩き、スカートの中の秘部がじんじんと熱くなっているのを感じた。だが、夫の翔太は妻の異変に微塵も気づいていない。
「いつもマンション周り綺麗にしていただいて、ありがとうございます」
夫が無邪気に感謝を述べる声が、まるで遠い異国の言葉のように耳を通り抜けていく。 何食わぬ顔で頭を下げる健二と、すべてを知りながら夫の隣で「貞淑な妻」を演じなければならない自分。
夫が「行ってきます」と扉を閉めたあと、彩華は玄関のドアに背中を預けてへたり込んだ。
健二に触れられた場所が、すでにびしょびしょに濡れているのを感じた。
(私、おかしくなってる……)
自己嫌悪が、静かに胸を満たしていく。夫に申し訳ない。自分でも自分が嫌になる。
なのに身体の奥では、すでに次の昼を待っているような疼きが、小さく脈打っていた。