あるパーティーが終わった翌朝、桜は自分の部屋のベッドで呻きながら、ようやく目を覚ました。
全身が重く、痛んでいた。特に太ももの内側、胸、そして首がひどく疼いていた。
昨夜の記憶が、破片のように脳裏をかすめた。
五十代後半から六十代前半の年老いた男たち。彼らの皺だらけの手、汗にまみれた身体、乱暴に自分を押さえつけていた重み。
桜はたまらずトイレへ駆け込み、便器に向かって嘔吐した。胃がひっくり返るような感覚だった。
シャワーを浴びながら、彼女は自分の身体を見下ろした。
胸には男たちが吸いついてできた赤い痕がいくつも残り、太ももの内側は痣だらけだった。鏡に映る自分の目は虚ろで、唇も腫れていた。
桜はシャワーの水を強くし、何度も身体をこすった。彼らの体液や匂いを消そうと必死になったが、身体はまだ男たちの手つきを覚えていた。
妙なことに、その記憶が蘇るたび、下腹部が微かに痺れるような感覚が走った。
桜はそんな自分自身に嫌悪感を抱いた。
「狂ってる……私、何してるんだろう……」
桜に男性経験がまったくなかったわけではない。
恋人と同棲した経験もあり、セックスそのものにはさほど抵抗がなかったものの、複数の男と関係を持つのはパーティーが初めてだった。
何より、自分の父親よりもずっと年上の男たちと関係を持っていることへの羞恥心が、全身を包み込んでいた。
パーティーへ行くたびに男たちを相手にしている。
そんな自分の姿が、ひどく見知らぬものに思えた。
薬に酔い、快楽に翻弄され、喘ぎ声を上げていた自分の姿が何度も頭に浮かんだ。
「どうしよう……私、本当におかしくなったみたい……」
パーティーに参加し始めてから、桜は付き合っていた彼氏とも別れることになった。
もともと頻繁に連絡を取り合うような関係ではなかったが、パーティーへ通うようになってから桜がほとんど連絡を返さなくなり、ついに彼氏のほうが痺れを切らして別れを告げてきたのだ。
桜自身、彼氏に強い愛情を抱いていたわけではない。
ただ、一緒に歩いていれば友人たちが羨ましがるような男だった。
だから彼氏から別れを告げられても、桜はさほど反応しなかった。
その頃にはもう、彼女の頭の中は薬への渇望と、それによって得られる快感への思いでかき乱されていた。
その日の午後、カズキからメッセージが届いた。
【昨日はお疲れ様。利子として三十万円分、負けておくよ。次のパーティーは今週の木曜日だ。しっかり準備しておいて】
桜はしばらく画面を見つめていた。
断りたかった。
しかし、追加の借り入れを重ねた結果、借金はすでに六百万円にまで膨れ上がっていた。
カズキに呼ばれるたびに出向いて接待をしているのに、借金は減らない。
むしろ、最初の頃から倍近くに膨れ上がっていた。
桜はもう贅沢をやめようと思いながらも、その習慣から抜け出すことができなかった。
ストレスを感じるたびにカズキへ連絡して追加で金を借り、その金でブランド品を買い、SNSにアップする。
それだけが、いつしか彼女にとって生きる喜びであり、ストレスを発散する方法になっていた。
結局、桜は震える手で短く返信した。
【はい……】
カズキは六十二歳の老練な闇金業者だった。
彼はそのメッセージを確認すると、冷ややかな笑みを浮かべた。
「やはり従順だな。もう俺の獲物も同然だ」
彼は三十年以上もこの仕事を続け、数え切れないほどの女子大生を破滅へ追い込んできた。
カズキにとって、この仕事は単なる金儲けではなかった。
若い女たちが次第に依存し、プライドを失い、自分の意思では抜け出せなくなっていく。
その過程を見ることそのものが、彼にとって大きな快感だった。
特に桜のように美しく、スタイルのいい女には長く使い道がある。
彼はいつも、特に気に入った女を一人ずつマンションに囲い、自分の管理下で暮らさせていた。
木曜日の夜。
今回のパーティーは六本木の高級ヴィラで開かれた。
カズキは桜を連れて行く途中、彼女の耳元で低く囁いた。
「今日は重要なお客さんが多い。特に田中会長の機嫌は絶対に損ねるな。うまくやれば、今日だけで五十万円分は引いてやるよ」
桜が到着したとき、ヴィラの中はすでに熱気に包まれていた。
今回も五十代後半から六十代前半の男たちが六人ほどおり、その前には桜と同年代の綺麗な女子大生が三、四人座っていた。
カズキは桜に、強い薬と少量のコカインを混ぜたものを渡した。
「これをやれば身体がほぐれるから」
桜はためらうことなく、それを鼻から吸い込んだ。
頭の中が真っ白に弾け、強烈な快感が押し寄せてきた。
田中会長は六十代後半で、白髪交じりの髪に、大きく突き出した腹を持つ男だった。
薬に酔った状態の桜でさえ、思わずヒキガエルを連想した。
田中は桜を見るなり貪欲な笑みを浮かべ、彼女を自分の膝の上に座らせた。
分厚い手がすぐにブラウスの中へ入り込み、胸を乱暴に揉みしだいた。
「ふむ……若い女は本当に肌がいいな」
田中は桜の首筋を舐めながら呟いた。
ヒキガエルに舐められているような感覚に、桜は鳥肌を立てて身体を震わせた。
しかし、薬のせいでまともに抵抗することもできなかった。
やがて、さらに二人の年老いた男が加わった。
彼らは桜を寝室へ連れ込み、ベッドに横たえた。
三人の男たちは同時に桜の身体を乱暴に貪った。
一人は彼女の口を使い、もう一人は胸を噛みつくように吸い、田中は彼女の脚を開いて身体を重ねた。
桜は喘ぎ声を漏らしながら涙を流した。
なぜ涙が出るのか、自分でも分からなかった。
男たちの荒々しい動き。
汗の匂い。
皺だらけの皮膚。
それらが彼女を押し潰すように覆いかぶさった。
しかし薬は、桜の感覚を大きく歪ませていた。
苦痛と快感が入り混じり、彼女自身にも何を感じているのか分からなくなっていった。
「あ……そんなに……激しく……」
すすり泣くような声が部屋に響いた。
男たちはむしろその声を楽しみ、さらに激しく彼女を扱った。
彼らは何度も体勢を変えながら、長い時間、桜の身体を好きなように扱い続けた。
意識が朦朧としていく中、桜は自分の身体に男たちの汗や体液がまとわりついていくのを感じた。
田中たちが満足した様子で部屋を出ていくと、今度は別の男たちが入ってきた。
やがて桜は、自分が何人を相手にしたのかさえ分からなくなった。
頭の中は完全に薬に支配されていた。
カズキは部屋の外にあるモニターで、その一部始終を見ていた。
その目には満足感とともに、冷酷な計算が浮かんでいた。
「これなら映像の出来もかなりいいな。年老いた男たちに囲まれる若い女の映像なら、金を出す客も多い」
カズキはこうした光景を見るたびに、自らの欲望と同時に、商売としての満足感を覚えていた。
彼の表向きの主な収入源は闇金だった。
だが実際には、それ以上の金を生み出しているのが、こうしたパーティーだった。
闇金で罠を仕掛け、借金を抱えた女を誘い込む。
客から金を取り、女からは利息を取り続ける。
さらに、その場で撮影した映像さえ金に換える。
一人の女から何重にも利益を生み出す。
それがカズキのやり方だった。
夜明けになって、ようやく桜は解放された。
タクシーで家へ帰る間、彼女はずっと身体を震わせていた。
家に着くと、そのままシャワーを浴びた。
身体に残った痣や赤い痕を確認しながら、桜は鏡の中の自分を見つめ、静かに泣いた。
しかし、その涙の中にも、薬のせいで残った奇妙な熱がまだ消えずに残っていた。
桜は少しずつ悟り始めていた。
自分が進んでいるこの道が、どれほど危険なものなのかを。
しかし、もう手遅れなのかもしれなかった。
すでに彼女の心も身体も、その甘い毒に深く染まり始めていたのだ。