その日以来、桜の人生は完全に制御不能となり、奈落の底へと転がり落ちていった。
カズキは彼女に、ほぼ毎週四〜五回のパーティーへの参加を強要した。
最初の頃は「今回だけ」と自分に言い聞かせていた。
だが、今となってはそんな言い訳さえ意味を失っていた。
パーティーに参加するたび、借金は少しずつ減っているように思えた。
しかし実際には、むしろ増え続けていた。
パーティーの後に溜まったストレスを、ブランド品を買うことで発散する。
その金もまたカズキから借りる。
そんなことを繰り返しているのだから、借金が減るはずもなかった。
カズキは桜が金を貸してほしいと頼むたび、恩を着せるような態度で金を渡した。
だが彼が桜の身体を利用して稼いでいる金は、その何倍にもなっていた。
桜はすでに、薬物なしでは一日さえまともに過ごせない身体になっていた。
朝、目を覚ますと手が激しく震え、全身から冷や汗が流れた。
胸が締めつけられるように苦しくなり、不安が極限まで高まると、まともに呼吸することさえできなかった。
そんなとき、桜はカズキから送られてきた白い袋を取り出し、急いで中身を鼻から吸い込んだ。
薬物とコカインを混ぜたその粉は、彼女の頭の中を真っ白にすると同時に、身体を熱く火照らせた。
今ではカズキが、桜に薬を無料で渡すことなどなかった。
当然のように高額な値段をつけ、パーティーで使わせる薬まで桜の借金として計上していた。
だから桜がどれだけパーティーへ通ったところで、カズキへの借金を完済することなど最初から不可能だった。
桜は自己嫌悪に陥りながら、自分の身体を抱きしめた。
「なんで私……こんなになっちゃったんだろう……」
シャワーを浴び、身体をこするたびに涙が流れた。
だが、その涙さえ次第に少なくなっていった。
代わりに薬が効き始めると、昨夜の屈辱的な光景が脳裏に蘇り、奇妙な熱が下腹部から込み上げてきた。
桜はその感覚を必死に押し殺そうとした。
しかし、身体はすでに彼女の意思を裏切るようになっていた。
土曜日の夜。
カズキが桜を連れて行ったのは、池袋にある超高級ペントハウスだった。
そこには十二人を超える年配の男たちが集まっていた。
ほとんどが五十代後半から六十代前半の実業家、医師、高級官僚だった。
皆、高価なスーツに身を包んでいた。
だが桜を見る彼らの目は、明らかに獣のそれだった。
カズキが桜の耳元で低く囁いた。
「今日は特別な日だ。客が多いから、しっかりやれ。うまくやれば、今日だけで百万円分は引いてやる」
桜は到着する前から、すでに強い薬を使わされていた。
彼女はソファに座っていた男の膝の上に座らされた。
男の分厚い手がすぐにブラウスの中へ入り込み、胸を強く揉みしだいた。
すぐに他の男たちも集まり、桜の服を脱がせ始めた。
スカートがまくり上げられ、下着も乱暴に脱がされた。
「おお……本当にいい身体だな」
一人の男が、彼女の胸に噛みつくように口をつけながら言った。
桜は堪えきれず、声を漏らした。
男たちは代わる代わる、時には同時に彼女を抱いた。
一人は彼女の口を使い、別の男は後ろから身体を押しつけ、さらに別の男が胸や首筋を貪った。
荒い息遣い。
汗の匂い。
皺の刻まれた肌。
それらが桜を押し潰すように覆いかぶさった。
苦痛が限界に近づくたび、薬の作用がその感覚を奇妙な快感へと歪めていった。
「だめ……」
桜は小さく呟いた。
しかし、その声はやがて喘ぎ声に変わっていった。
男たちは何度も彼女の体勢を変えながら、好きなように身体を扱った。
ある男は髪を強く引きながら罵声を浴びせ、別の男は彼女の身体を強く叩きながら興奮していた。
カズキはペントハウスの隅に設置されたモニターで、その一部始終を見ていた。
満足げな笑みを浮かべながら、冷静に桜の商品価値を計算していた。
――この女は本当に使える。
容姿もいい。
身体の反応もいい。
泣きながらも逆らえなくなっている姿は、金を惜しまない客たちにとって格好の商品になる。
午前四時を過ぎて、ようやく桜は解放された。
タクシーの中で身体を丸めたまま、彼女はずっと震えていた。
家に着くとシャワーを浴び、全身に残った痣や痕を確認した。
鏡に映った自分の姿を見た瞬間、桜は力なくその場に座り込んだ。
それでも身体の奥には、薬物によって残された熱が消えずに残っていた。
翌日、カズキは桜を自分のオフィスへ呼び出した。
彼は桜の顎を持ち上げ、冷たい笑みを浮かべた。
「桜。お前、最近かなりうまくやってるな」
桜は黙ったまま彼を見た。
「だが、まだ足りない。次からはもっと積極的にやれ。客が望むことは全部やってやるんだ」
カズキは鼻で笑った。
「自分が今いくら借金してるか分かってるか? まだ全然足りないんだよ。そんなやり方じゃ、俺が大損することになる」
彼は桜のスマートフォンを取り上げ、画面を見せた。
そこには、これまでのパーティーで撮影された大量の映像が保存されていた。
「もし俺の言うことを聞かずに逃げたら、これをお前の両親にも、大学の友達にも、お前をフォローしてる連中にも全部ばら撒く」
桜の身体が震えた。
その瞬間、ようやく理解した。
自分はもう、完全にカズキの掌の中にいる。
逃げることもできない。
抵抗することもできない。
桜はただ俯いたまま、何も答えなかった。
それから彼女の日常は完全に崩壊した。
大学にはほとんど行かなくなった。
友人との連絡も途絶えた。
昼間は薬に酔ったまま、ぼんやりと天井を見つめる。
夜になれば、カズキに命じられた場所へ向かい、客を相手にする。
桜の身体は今や、年配の客たちの欲望に合わせて徹底的に利用されていた。
ある深夜。
特に酷いパーティーが終わった後、桜は家へ戻り、鏡の前に立った。
映っている目からは、もうほとんど生気が消えていた。
かつての明るく、野心に満ちた桜はどこにもいない。
そこにいるのは、空っぽの人形のような女だった。
桜は静かに呟いた。
「……これが、私が選んだ道なの……?」
だが、もう遅かった。
甘い毒は彼女の身体の奥深くまで染み込み、心までも蝕んでいた。
カズキに逆らう力はほとんど残っていなかった。
ただ彼に命じられるまま動いている自分を、どこか他人事のように眺めるだけだった。
また一つのパーティーが終わった夜。
カズキは桜だけを別室へ呼び出した。
彼はソファに深く腰掛け、桜を見上げながら静かに言った。
「桜。お前も、もうだいぶ慣れたみたいだな」
少し間を置き、口元を歪める。
「だから、一つ提案がある」
桜は黙ったまま彼を見た。
カズキは二つの道を提示した。
「一つ目だ。これからお前を『特別管理』にする」
「……特別管理?」
「客の相手をする回数を少し減らす。その代わり、新しい女子大生を連れてくる役をやってもらう」
桜の表情が強張った。
カズキは構わず続けた。
「そうすれば借金も今より早く減らしてやるし、薬もいいものを用意してやる。それから今後は俺と一緒に住め」
「……」
「俺と暮らしながら若い女を連れてこい。そして俺の愛人としての役目も果たせ」
カズキは笑った。
「お前の借金はもう簡単に返せる額じゃない。身体で利息を返していくと思えばいい。どうだ? できるだろ?」
桜は何も答えなかった。
「二つ目は、今までどおりだ」
カズキは指を二本立てた。
「毎日のようにパーティーへ出て、客を取る。それだけだ。ただし、こっちを選ぶなら特別扱いはない」
彼の声が低くなる。
「借金を返すために、今まで以上に身体を使ってもらう。分かってるだろ? 今のままじゃ借金は増える一方だ。毎日パーティーに出たところで、お前が簡単に返せる額じゃないんだよ」
カズキは桜の目をじっと見つめた。
その眼差しは、獲物を前にした獣のようだった。
桜は、初めてカズキに会った日のことを思い出した。
背が低く、小太りで、髪の薄い年配の男。
それが当時の第一印象だった。
――こんな老人が、私に何をできるというのだろう。
あの日の自分は、本気でそう思っていた。
だが今、その男が自分を人生の底まで追い込んでいる。
そして今度は、自分の愛人として暮らしながら、友人や後輩の女子大生をこの地獄へ連れてこいと要求している。
初めて会った日、カズキは散々、自分の身の上話をしていた。
桜を「末娘のようで放っておけない」と言った。
家族写真を見せながら、自分の娘について自慢もしていた。
桜はその娘を偶然見かけたことがあった。
父親によく似た、地味な女の子だった。
――あの子は、自分の父親がこんな怪物だと知っているのだろうか。
カズキは昔、自分は大して稼いでいないと言っていた。
闇金をしながらも多くの人を助け、ろくに金を受け取っていないのだとも話した。
最初の妻に離婚された話から始まり、数え切れないほどの話を桜に聞かせた。
当時の桜は、それをただ退屈な老人の自慢話程度にしか思っていなかった。
だが今なら分かる。
ほとんどが嘘だった。
確かなことが一つだけあった。
カズキが本格的に大金を稼ぎ始めたのは、数年前から女子大生を狙った闇金を始めてからだった。
返済能力のない若い女に金を貸し、借金を膨らませる。
逃げられなくなったところで男たちの接待へ送り込み、そこで得た金を使って、また次の女を罠にかける。
同じことを繰り返していた。
だが、そんなことを理解したところで、もう何の意味もなかった。
桜が置かれた状況は、あまりにも深刻だったからだ。
――でも、こんな男の愛人として生きるなんて……。
桜は唇を噛んだ。
――これは選択なんかじゃない。ただの強要と同じじゃない……。
新しい女を連れてこいということは、自分が落ちたのと同じ地獄へ、別の誰かを引きずり込めということだ。
だが拒否すれば、今以上の苦痛が待っているかもしれない。
桜は長い時間、答えを出せずにいた。
そして今、彼女は一つの重大な選択を迫られていた。
あなたの選択は?(第1分岐点)
カズキに二つの道を強要された桜。
彼女は、どちらを選ぶのか。
【選択1】新しい女子大生たちを誘い込む役割を受け入れる。
【選択2】新しい女子大生たちを誘い込むことを拒否する。