桜は長い間悩み続けた末、とうとう力なく頷いた。もうすべてを投げ出してしまったような気分だった。
「……やります。」
その言葉を口にした瞬間、胸の奥に最後まで残っていた何かが壊れる音がしたような気がした。
カズキは満足そうな笑みを浮かべ、桜の顎を持ち上げた。その目にはすでに、欲望と勝ち誇った色がぎらついていた。
「よく言った。これでお前は完全に俺の女だ。」
その夜、カズキは桜を六本木にある自分の高級マンションへ連れて行った。
寝室に入るなり、彼は桜を乱暴に壁へ押し付けた。しわの刻まれた手でブラウスを引き剥がすように脱がせ、ブラジャーを外す。桜は体を震わせたが、もう抵抗する意志も力も残っていなかった。
カズキは60代とは思えないほど激しい欲望を露わにした。桜をベッドに押し倒し、重い体で覆いかぶさる。舌で彼女の口の中を荒々しく貪りながら、その手は胸を乱暴に揉みしだいた。
長年にわたり数多くの女を相手にしてきた彼にとっても、桜のように若く、張りのある魅力的な体を手に入れることは、格別の快感だった。
「お前の体は本当に最高だ……。今日からこの体は俺のものだ。これからは、俺の言うことを全部聞いてもらうからな。」
彼は時に残酷に、時に執拗に桜を貪った。
桜は老いた男の体の下で涙を流しながらも、いつしか体だけはその行為に慣らされていった。カズキは彼女の口から声が漏れるたび、満足そうに笑った。
『こいつはもう完全に俺の女だ。他の男たちにも回すが、一番うまいところは俺が独占する。』
その日を境に、桜はカズキの愛人として扱われるようになった。
彼はほとんど毎日のように桜をマンションへ呼びつけ、夜を共にした。時には優しく抱き寄せることもあったが、その大半は乱暴で、歪んだ欲望を押し付けるようなものだった。
カズキは、自分の好みに合うよう桜を徹底的に飼い慣らしていった。
映像を撮りたがることも多く、桜が嫌がったり抵抗しようとしたりすれば、暴力を振るった。
自分を愛していると言わせ、無理やり愛の言葉を口にさせる。目の前で自慰をするよう命じることもあれば、朝昼夜を問わず、機会さえあれば外へ連れ出して露出させたり、路上で放尿させたりして、その様子をすべて映像に残した。
桜にとっては耐えがたいほどの屈辱だった。
それでもカズキが恐ろしく、逆らう勇気は出なかった。撮られた映像が何に使われるのかも分からない。
「お前を愛しすぎているから、全部残しておきたいんだ」
そんなカズキの言葉を、桜は一パーセントたりとも信じていなかった。それでも拒むことはできなかった。
そんなある日、カズキは彼女に新たな役割を与えた。
「これからは新しい女を連れてこい。お前自身が囮になるんだ。大学の後輩でも、SNSの友達でもいい。そのためにも、これからはちゃんと大学に通え。」
桜はその指示にしばらく悩んだ末、大学のサークルの後輩である20歳のユキを思い出した。
以前、悩みを相談されたことのある女の子だった。
ユキは桜をまるで芸能人のように慕っており、どこかお嬢様育ちらしい雰囲気を漂わせていた。
しかし父親の事業が傾き、生活が苦しくなったと相談してきたことがある。裕福な家庭で育ったせいか、アルバイトを探すことにすら苦労しているような子だった。
ユキなら、「大金を稼げる」と言えばきっと興味を示す。
桜はそう考えた。
久しぶりに連絡すると、ユキは芸能人から声をかけられたかのように大喜びした。
桜はカフェでユキと会い、優しい口調で誘いをかけた。
「最近、すごく大変なんだって? 私が知ってるところで、かなり稼げる仕事があるんだけど……一緒に行ってみない? たぶん、結構まとまったお金になると思うよ。」
ユキはどんな仕事なのかと尋ねた。
桜は、お金持ちの人たちがお酒を飲んで楽しむ場所で、隣に座って酒を注ぎ、話し相手をするだけだと誤魔化した。
ユキは、男たちの隣で酒を注いで話をするという説明に何となく抵抗を覚え、もう一度詳しく尋ねた。
それでも高額な報酬をもらえると聞くと、簡単には断れなかった。
何より、桜自身が「私も楽しく働いてるよ」と言うのだ。ずっと憧れていた先輩が実際に働いているという事実が、ユキを安心させた。
結局、ユキは桜について来た。
ユキが高級ヴィラへ足を踏み入れた瞬間、桜は胸が張り裂けそうな痛みを覚えた。
それでも、彼女はもう選んでしまっていた。
自分が初めてここへ連れてこられた時と同じだった。
酒が回り始めると、場の空気に流されるようにユキも薬に手を出した。そして薬で朦朧としたユキが年老いた男たちに連れていかれる姿を見ながら、桜は必死に自分へ言い聞かせた。
『ごめんね……ユキ……。私も生きていかなきゃいけないから。』
その夜、桜自身も男の相手をしながら、ずっとユキの様子を気にしていた。
男に抱かれていても、どうしてもユキから目を離せなかった。
ユキは何人もの男に囲まれ、声を上げていた。その表情は、まるで自分が初めてここへ来た夜の姿そのもののように見えた。
『私も最初は、あんなふうだったんだろうな……』
カズキは、そんな桜の変化を満足そうに眺めていた。
『これで完全に屈服したな。一度、人を裏切る側に回れば、あとはどんどん深みにハマっていく。』
桜が新しい女を連れてくるたび、罪悪感を少しずつ失っていく様子を見るのが、彼にはたまらなく愉快だった。
カズキにとって桜は、もはや単なる「商品」ではない。
新たな商品を連れてくる「工場」になりつつあった。
桜がSNSでそれなりの人気を持っていたことも、女たちを誘い込むうえで大きな武器となった。
二人目、三人目……。
桜は次々と後輩や知人をパーティーへ連れてくるようになった。
そして今では、彼女たちに同じ嘘を繰り返していた。
「この状況を楽しめば大丈夫だよ。私みたいに。」
その言葉を口にするたび、桜の中の何かが少しずつ死んでいった。
ユキは桜を見るたびに恨みのこもった視線を向け、ほかの女たちも彼女を「裏切り者」と見るようになった。
だが桜は、やがてその視線に耐える方法を覚えた。
薬をさらに多く使い、感情そのものを麻痺させることだった。
夜になれば、相変わらず年老いた男たちの相手をした。
荒々しい手つき。汗の匂い。のしかかる重い体。そして尽きることのない欲望。
桜はもう、それらをほとんど機械的に受け入れていた。
体は反応しても、心だけは少しずつ遠いところへ離れていった。
ある夜、いつにも増して多くの男たちを相手にした後、桜はカズキとマンションへ戻った。
浴室で体を洗い、ふと鏡を見る。
そして小さな声で呟いた。
「……私、もう何になっちゃったんだろう。」
涙はもう出なかった。
鏡の中に映っているのは、ただ空っぽで虚ろな目だけだった。
体を洗い終えて浴室から出ると、すぐにカズキが桜を抱き寄せた。
どれほど体が辛くても、彼を拒むことはできない。
今の桜は、もはやカズキの奴隷も同然だった。
「今日はいつもより興奮してたじゃないか。お前の体、どんどん熱くなってるみたいだな。」
その夜、すべてを終えたカズキは、汗ばんだ体で桜を見下ろしながら低く囁いた。
「お前はもう完全に俺のものだ。他の男に体を売ったって、お前の魂も、一番深いところも、俺が持ってるんだ。」
桜は彼の重い体の下で、静かに目を閉じた。
彼女は今や被害者でありながら、同時に加害者にもなっていた。
カズキの愛人として彼の欲望を日々受け入れ、自分と同じ場所へ別の女たちを引きずり込む存在になったのだ。
屈服はますます深くなっていった。
その代償として彼女が手にしたものは、ほんのわずかな安定と、それ以上に深い奈落だった。
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