桜が新しい女たちを連れてくる役目を担うようになってから、すでに一ヶ月以上が過ぎていた。
同時に、カズキの愛人として彼のマンションで暮らし始めてからも、一ヶ月ほどが経っていた。
年老いたカズキは、桜を愛人としてだけでなく、自分だけの奴隷として完全に所有しようとしているようだった。ほとんど毎日のように、彼女の体を求めた。
桜が初めてカズキの高級マンションへ足を踏み入れた時、そこには自分と同年代くらいの女がいた。
彼女は桜の姿を見るなり絶望したような表情を浮かべ、カズキの足にすがりついた。
「私を捨てないで」
必死に懇願する彼女を、カズキは冷たく突き放した。それでも女が離れようとしなかったため、ついには暴力まで振るって追い出した。
出ていく間際、彼女は桜を恨めしそうに見つめ、低い声で一言だけ残した。
「私が情けなく見える? あんたもすぐ、私みたいになるわ……」
その姿を見ながら、桜は自分だけは絶対にああはならないと思っていた。
自分はカズキの愛人という立場に満足しているわけではない。いつか彼のもとから離れること、それだけが自分の望みであり、意志なのだ。
だから、あの女のようにカズキへすがりつくことなど絶対にない。
そう信じていた。
桜がここへ来る以前から管理役を任されていたその女の名は、ナナミといった。
初めて見た時、桜はモデルかと思ったほどだった。
長身で豊かな胸を持ち、引き締まったウエストにグラマラスなヒップ。現実離れしたほど整ったスタイルの美女だった。
ナナミは桜より一歳年上で、いつもカズキのそばにいたため、「第二夫人なのではないか」という噂まであった。
もっとも、カズキの第一夫人を実際に見た者は誰もいなかった。
それほど美しいナナミがカズキの足元にすがりつく姿を見て、桜は情けないとすら思った。
『あんなに綺麗な人なのに、どうしてあんなふうにカズキにすがりつくの?』
どう見ても自分とほとんど変わらない年齢なのに、なぜあんな年老いた男に執着するのか、まるで理解できなかった。
自分なら、あの状況になれば喜んで出ていく。
そう思っていた。
そもそも自分がカズキと暮らしているのだって、自分から望んだわけではない。半ば強制的に連れてこられたからにすぎない。
桜はそう考えていた。
今の桜は、単なる接待役ではなかった。
女たちを管理する「管理者」であると同時に、カズキの妻という立場まで与えられていた。
表面上だけ見れば、以前より状況は良くなったようにも思えた。
カズキは以前より質のいい薬を与え、代金も請求せずに供給した。借金も、ほかの女たちより早いペースで減らしてくれていた。
だが、それらすべてが本当の意味での安定などではなく、さらに深く自分を従わせるための餌にすぎないことを、桜は少しずつ理解し始めていた。
その夜も、カズキは桜をベッドへ横たえ、その上に重い体を覆いかぶせた。
しわの刻まれた手で胸を強く掴み、首筋や肩へ噛みつくように唇を這わせる。
桜は堪えきれずに声を漏らした。
するとカズキは、これまでほかの男には一度も触れさせたことのない場所まで、自分に差し出すよう要求した。
彼女をトイレへ連れていき、何度も体内を洗わせた。
すでに疲れ切っていた桜を再びベッドへ連れ戻し、うつ伏せにさせる。
そして目の前に用意した器具へ潤滑剤を塗り、これまで何も入ったことのない小さな場所へ、ゆっくりと、時間をかけて挿入していった。
十分に慣らしたところで、カズキは桜の脚を開かせた。
そしてゆっくりと深く入り込みながら、低く笑った。
「後ろからだと、お前の中がもっと狭くなったみたいだな。最高だぞ」
しばらく体勢を変えながら続けた後、カズキは桜を四つん這いにさせた。
そして、誰にも触れられたことのない場所へ潤滑剤を塗った指を這わせ、自分にも十分に塗りつける。
そうして、桜にとって初めてとなる場所まで征服していった。
初めてのことに、桜は恐怖と激しい苦痛を感じていた。
だが、それを口に出すことすらできなかった。
カズキは自分の思い通りにならないと、手がつけられないほど怒る。
だから桜は、演技をしてでも受け入れているように見せなければならなかった。
カズキは桜の反応を確かめながら、少しずつ進めていった。
そしてついに彼女のその場所まで自分のものにすると、満足そうに口元を歪めた。
「お前の中は、本当に温かくて狭いな……。お前の体は癖になる。他の男たちがどれだけお前を使っても、ここだけは俺が最初だ。お前の初めては俺がもらったんだ」
それから二時間近く、カズキは何度も体勢を変えながら、桜の新たな場所を執拗に求め続けた。
優しく扱っているかと思えば、突然髪を引っ張り、乱暴に動くこともあった。
桜は老いた男の体の下で震え、涙を流した。
苦痛を感じている一方で、すでに飼い慣らされつつあった体は、少しずつ彼の刺激に反応してしまう。
その様子を見て、カズキは満足そうに笑った。
『こいつはもう完全に俺のものだ。魂までな』
「いい子だ。これで本当に俺の女になったな」
すべてが終わった後も、彼は桜を抱き寄せ、耳元で囁いた。
「お前はほかの男たちに体を売る商品だ。でも魂も、一番深いところも俺のものだ。分かったか? お前の初めては全部、俺に捧げたんだ」
桜は力なく頷いた。
カズキによる精神的な支配は、恐ろしいほど深くなっていた。
彼は桜に何度も愛を告白させ、自分だけの女であることを口に出して認めさせた。
桜は今や、夜になればカズキの欲望を受け入れ、昼間は新しい女たちを誘い込むという二つの役目を同時にこなしていた。
最初に連れてきたユキが日に日に壊れていく姿を見ることは、今でも桜の心を蝕んだ。
だが彼女は、その罪悪感を薬とカズキとの関係で忘れようとした。
まるで自分自身へ罰を与えているかのようだった。
『明治大学に通う私が保証します。お客様にお酒を注いでお話しするだけで、簡単にお金を稼げる仕事です。たくさんのご応募をお待ちしています』
『SNSで人気のお姉さんがおすすめするアルバイト。気軽に大金を稼げるチャンスをお見逃しなく』
新しい女を連れてくるたび、桜のやり方はますます手慣れたものになっていった。
大学のカフェやSNSだけではない。
ついには闇金系のアプリにまで目を通し、「簡単に稼げる方法がある」と女たちを誘うようになった。
自分が連れてきた女たちがパーティーで薬に酔い、男たちに連れていかれる姿を遠くから見ていると、今でも胸が痛んだ。
しかし、その痛みを押し殺すことにも慣れてしまっていた。
「ごめんね……私も、どうしようもないの……」
そう自分へ言い聞かせながら、桜はますます深く、この仕組みの中へ飲み込まれていった。
夜はカズキのマンションで老いた彼の相手をし、昼は新たな被害者を作る。
そんな毎日が続いた。
桜はすでに、ほとんど逆らうことのできない状態まで追い込まれていた。
瞳は日に日に虚ろになり、笑顔も完全に作り物のようになっていく。
その変化を見て、カズキはますます満足していた。
彼は桜を抱くたび、耳元で囁いた。
「今日もよくやってるな。俺の可愛い子」
カズキは、桜を完全に征服したと思っていた。
彼女は文句一つ言わず、命じられたことをすべてこなす。
どんな指示にも黙って従う桜は、彼にとってこれ以上ないほど都合のいい玩具だった。
自分の歪んだ欲望を満たす存在として、桜はあまりにも都合よく出来上がっていた。
カズキは、従うようになった桜へ次々と新たな要求を突きつけた。
彼女のまだ慣れていない場所をさらに広げるため、さまざまな器具まで使うようになった。
最初は桜自身、到底無理だと思える大きさの物を見せられるたびに「あり得ない」と思った。
だが、やがてそれすら受け入れさせられるようになった。
毎日のようにカズキとマンションへ戻ると、桜はその場所を広げるという名目で、彼に指定された器具を入れたまま過ごすことまで強いられた。
カズキの歪んだ欲望には際限がなかった。
犬用の首輪を桜につけ、尻尾を模した器具をつけさせたまま、夜の街を犬のような格好で歩かせることまであった。
通りすがりの人間が驚いて目を逸らすほどだった。
それでも桜は、もはやカズキの行為に逆らうことができなかった。
気づけば彼女は、完全に彼の性奴隷同然の存在へと転落していた。
時間が経つにつれ、桜はさらに深い泥沼へ沈んでいった。
従うことで得られたものは、わずかな安定。
その代わりに失っていったのは、自分の心と体だった。
今では、自分が何者になってしまったのかすらまともに考えられず、ただ一日一日をやり過ごしていた。
ある夜、いつにも増して多くの客を相手にした後、桜はカズキとマンションへ戻った。
その日も彼は桜をベッドへ寝かせ、長い時間をかけて、ゆっくりと、しかし執拗に彼女の新たに慣らされた場所を求めた。
桜は彼の重みに押さえ込まれたまま、静かに涙を流した。
カズキはその涙を舐めながら、低く笑った。
「いつまで泣いてるんだ? 泣くなよ。お前、今はいい暮らししてるじゃないか。借金も減って、いい薬も飲めて、俺みたいに頼りになる旦那までいるんだから」
桜は何も答えられなかった。
今の彼女は被害者であると同時に加害者でもあり、カズキの妻でありながら、一方では商品でもあった。
人生そのものが、すでに彼の手の中にあった。
「明日は俺と一緒に、お前の大学へ行ってもらうぞ」
大学へ一緒に行く。
その言葉を聞いた瞬間、桜は恐怖を覚えた。
だが、カズキが「行く」と言えば必ずそうなる。
何も言えず、ただ頷くしかなかった。
翌日。
カズキと大学へやって来た桜は、すれ違う同級生や後輩たちに彼を父親だと紹介した。
カズキはそんな桜の隣を歩きながら、
「あの子はいい」
「こっちはイマイチだな」
などと、女学生たちを勝手に品評していた。
その時だった。
通りかかった一人の女の子を見た瞬間、カズキの目つきが変わった。
「おい、あの子だ。あの子。ちょっと呼んでこい」
急かされるまま桜が目を向けると、そこにいたのは新入生のユイだった。
明るく華やかな雰囲気を持つ、可愛らしい女の子だった。
男子学生たちからも非常に人気がある。
桜とも多少面識があり、ユイのほうも彼女を慕っていた。
しかし、ユイの家庭は裕福だった。
金に困っているユキとは違う。
到底、これまでと同じやり方で連れてこられるような相手ではない。
桜はそのことをカズキへ説明しようとした。
だが、すでに彼の目は異様なほど血走っていた。
「いいから呼べ」
強引に命じられ、桜は仕方なくユイを呼び止めた。
軽く挨拶を交わし、その場ではそれだけで別れた。
しかし帰り道になっても、カズキはユイのことばかり口にしていた。
「どうしてもあの子だけは連れてこい」
何度もそう言われたが、桜にはどうすればいいのか分からなかった。
夜になればカズキのマンションで彼の欲望を受け入れ、昼間は新しい女たちを地獄へ引きずり込む。
そんな日常。
それでも、もう後戻りすることはできなかった。
屈服することで得たのは、ほんのわずかな安定。
その代償として、心はすでに壊れかけていた。
カズキに抱かれながら揺れる自分の体と同じように、自分の人生そのものも、もう奈落の底まで落ちてしまったのだと桜は分かっていた。
『どこから間違ってしまったんだろう……』
だが、今さら後悔したところで何も変わらないことも知っていた。
桜は次第に自暴自棄になっていった。
そして結局、ユイまで引き入れることを決めてしまった。
ユキの時と同じだった。
自分の知名度と、ユイから向けられている信頼を利用した。
そうして桜は、ユイまで地獄へ引きずり込んだ。
ユイがパーティーへやって来た日、彼女はカズキに映像を撮られ、それを弱みとして握られた。
そして桜とほとんど同じ境遇へと転落していった。
美しく、何不自由なく育ってきたユイは、桜を信じたというただ一つの過ちによって、一瞬にして奈落へ落ちた。
ユイの初めてを奪ったのはカズキだった。
まるで誰にも渡さないとでも言うように、薬で意識の朦朧としたユイを自分のものにしていった。
ユイは、それまで何一つ不自由なく生きてきた世間知らずの少女だった。
高校を卒業したばかりで、周囲から秀才と呼ばれていたような女の子でもあった。
そんな彼女が、今では年老いた男たちに囲まれ、声を上げている。
桜には、その光景が現実とは思えないほど異様に見えた。
目を向け続けることもできない。
だが、目を逸らすこともできなかった。
自分が連れてきたのだ。
この地獄を、ユイに与えたのは自分だった。
桜は小さく呟いた。
『耐えなきゃ。耐えていれば大丈夫……。それなら、いっそ楽しんだほうが……』
男たちは、新しく現れた獲物を前にした豪華な晩餐でも楽しむかのようだった。
薬で朦朧としているユイへ、さらに薬と酒を混ぜたものを飲ませる。
まるで完全に薬漬けにするつもりなのではないかと思えるほどだった。
何人いるのかも分からないほど多くの参加者が、次々とユイを相手にした。
ユイは薬に溺れ、さまざまな声を漏らしながら男たちに翻弄されていた。
その表情は異様なほど快楽に染まっているように、桜には見えた。
少なくとも、悲しんでいるようには見えなかった。
本当にこれは、ユイ自身が望んでいる快楽なのだろうか。
桜は考えたくなかった。
そこまで考えてしまえば、自分の罪悪感に耐えられなくなる。
長い宴が終わった頃、ユイの体には男たちの痕跡が残されていた。
何人もの男が彼女の中へ残したものが溢れ出しているのを見て、桜は目を逸らした。
息を整えているユイのもとへ、カズキが近づいていった。
彼は彼女へキスをし、まるで恋人を労わるような声で言った。
「よく頑張ったな」
そしてアフターピルを手渡した。
「妊娠しちゃ困るからな。ちゃんと飲めよ」
「……」
薬のせいで意識が朦朧としているユイを、カズキは再び自分のもとへ引き寄せた。
その日、カズキは桜にはほとんど関心を示さなかった。
今日はすべてがユイ中心だった。
ユイが目を覚ましかけるたび、カズキは再び薬を与えた。
まるで本気で彼女を薬物依存へ追い込むつもりなのではないかとさえ思えた。
桜ですら、パーティーが終われば一度は帰宅を許されていた。
だがユイには、それすらなかった。
金曜日から月曜日までの四日間、次々と客が訪れた。
パーティーを終わらせるつもりなどないかのように、ユイが眠っている時間以外は薬を与え続け、男たちの相手をさせた。
そして火曜日になって、カズキはようやくユイを帰すことにした。
火曜日の午前。
目を覚ましたユイをカズキはオフィスへ連れていった。
しばらく二人で話した後、薬と金を渡す。
そして尻を軽く叩き、キスをすると、
「家まで送ってやる」
と言ってユイを連れ出した。
カズキがユイに夢中になっていた間、彼は一度も桜を求めなかった。
その様子を見ていた桜の胸に、理由の分からない不安が広がっていった。
家へ帰る直前、ユイは一度だけ桜を見た。
その瞳には、はっきりと軽蔑が浮かんでいた。
桜は申し訳なさと罪悪感で何も言えなかった。
それでも何か慰めの言葉だけでもかけようと口を開いた。
「大丈夫だった……?」
だがユイは聞く耳を持たなかった。
何も答えず、カズキとともに出ていった。
カズキはまるで大切な恋人を抱くようにユイの腰を引き寄せ、そのまま桜の前から去っていった。
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