【R18】英梨々が処女卒業するまで終わらない話【画像付き】 作:きりぼー
作中年令は16~17歳なわけだけど、あえて※18歳以上ですと付け加えたい
世の中がゴールデンウイークで浮かれているのに、特進クラスを選んだ俺は今日も学校だった。
初夏の新緑が美しく、からりと晴れ上がっていて気持ちがいい。こんな日ぐらい外でデートをしたらさぞかし気分がいいだろう。
木漏れ日の下を散策したり、スワンボートで池の上を揺蕩ったり、それこそ芝生の上に寝ころんだりするだけでもいい。
「まったく何が楽しくって学校いくんだか、こっちの身にもなりなさいよ」
ブーたれているのは金髪ツインテールの英梨々である。澤村家の地下室で正式に恋人になったが、それで関係性が大きく変わるかと言えばあまり変わらない。正直、どう変えていいのかよくわからない。
「まぁせっかく恋人になったんだし、そういうなよ」
もちろん英梨々に頼んで一緒に学校へ来てもらっているわけではない。
だからといって、「来てくれと頼んだ覚えは一度もないんだが?」など言ったら機嫌も悪くなるだろう。それぐらいの空気が読める男になったつもりだ。
「それにな、休日の学校もなかなかいいもんだぞ?気楽で」
「なんで勉強しに来て気楽なのか気が知れないわね・・・」
「誰もいない美術室で絵を描くなんて素敵なことだろ?」
「そうかしら・・・こんなに天気がいいのに?」
「それはそうな・・・」
俺は特進クラスで勉強。英梨々は美術室で部活動を名目に絵を描くつもりらしい。顧問がいなくても職員室にいけば美術室の鍵ぐらいは開けてくれる。
「とにかくお昼ぐらいは美術室にきなさいよね。お弁当もってきたから」
「わかった。楽しみにしておく」
「いっておくけど、あたしの手作りじゃないからね、変なこと期待しないでよね」
「ふむ・・・」
澤村家の従業員は柔軟性がある。英梨々が頼めばお弁当ぐらいは作ってくれるのだろう。アニメでお嬢様のお弁当といえばおせち料理みたいなお重と決まっているが、荷物の量を見る限りは普通のものだろう。
登校時間がいつもより遅いのでゆったりできるのもいい。午前と午後に二時限づつ授業があるだけでスケジュールは楽だ。自習室が開放されていて18時まで使用可能だ。家だとなかなか勉強できなかったり、ついついスマホを見てしまう人にはお勧めの環境だ。
学校の最寄りの駅からも一緒に歩いて登校した。登校する人数が少ない上に時間をずらしているのでほとんど生徒を見かけない。もっとも英梨々はかなり目立つのでそのうち噂はたつだろう。
「毎日がこんな感じなら悪くないわね」
「平日なら無理だろうなぁ」
「案外みんな慣れるかもしれないわよ?あたしたちが自意識過剰なだけかもしれないじゃない」
「反対はしない」
「ふん、倫也が一緒に登校したくないならいいわよ」
言い争ってもしょうがないので適当にスルーする。やがて学校が見えてくる。部活動で校庭を使っている生徒がいる。受験生も大変だが、運動部もなかなか大変なのだろう。そういう熱血な青春を送ってこなかったので実情はわからない。
部活でも勉強でも、自分で熱中できるものがある人は周りのことをあまり気にしない。俺と英梨々を見ている視線は強く感じなかった。
「じゃあ、後でね」
下駄箱で英梨々と別れた。英梨々はこのあと職員室で鍵を借りて適当に美術室で過ごすのだろう。俺は教室へと向かう。教室にはすでに数名の生徒がいて自習していた。話しかけている生徒はいない。少しピリッとした雰囲気が特徴だ。
俺も参考書を開いて授業が始まる前に予習をしておく。授業のペースはかなり早くて、通常の授業とはかなり違う。生徒に問題を解かせることもないし、質問の時間もない。個別に時間はさかないのだ。淡々と粛々とただ授業が展開されていく。授業が終わった後は個別に質問などを受け付けてくれる。
先生方も熱心で全力で生徒を応援してくれる。そうでなければわざわざ連休時に授業など行わないだろう。しかも授業料が上がるわけでもないから塾に通うよりもだいぶお得である。
※ ※ ※
お昼休みになった。渡り廊下を歩いて特別校舎に向かう。美術室は専攻ではないので立ち入ることはなかった。扉をこっそり開けて中をのぞくと英梨々がまだ黙々と絵を描いている。
「おい英梨々・・・入っていいか」
少し小さい声で話しかけた。英梨々は集中力が深いのであまり大きく声をかけると驚かせてしまう。返事はないが扉を開けて中へと入る。
「あっ倫也。ちょっと待ってて」
「待ってるのはいいが・・・」
「大丈夫、ちょっとだけだから」
英梨々のちょっとがちょっとでないことは多い。昼休みが1時間あるとはいえ油断するとすぐになくなってしまう。
ただ今日の場合はほんとうにちょっとだった。英梨々は筆をおいて、油絵具にラップをかぶせるとすぐに作業を休止した。
手を専用の石鹸で洗って保湿クリームを塗る。それから鞄をあけて弁当箱を二つ取り出した。
「ここじゃオイル臭いから場所変えましょ」
英梨々から弁当を預かって美術室をあとにした。そのまま特別校舎の階段を一番上まであがっていく。
「じゃん!」
英梨々が自慢気にポケットから鍵を出した。
「まさかそれは・・・」
「ふふふっ、そのまさかよ」
「屋上の鍵か!」
「先生に話をしたら貸し出してくれたわ」
「何て言ったんだよ」
「屋上から写生したいって」
「俺も屋上で射精したい」
「唐突な下ネタはひくわよ?」
「お約束だろ・・・」
英梨々が鍵をガチャリと回して鉄の重たい扉を開けた。眩しい光が中へと入ってくる。
「へぇ・・・こうなってるんだ」
「今時だな・・・」
そこにはソーラーパネルが並んでいた。平日の本校舎の屋上は開放されていて昼食時にはランチを食べることもできる。なかなか素晴らしい憩いの場なのだが人気が高くて混雑しているのが難点だ。
特別校舎の屋上は普段は出入り禁止なのでかなりレアだ。
「敷物とか持ってこなかったわ」
「その辺の段差に座ればいいんじゃねーか」
「あと日光が思ったより強いわね・・・」
「なら日陰側だな・・・」
生憎と正午なので適当な日陰がなかった。
「階段で食うか」
「それが妥当ね」
まずもって誰もこないような場所だ。もう一度校舎内にもどって階段に座った。かなり暗い場所なので物をはさんで扉を開けたままにしておいた。適度に風もはいってきて気持ちがいい。
渡された弁当箱は木製でレトロな感じだ。
「これはなかなか趣きのある弁当箱だな」
「いいでしょ、曲げわっぱっていうのよ」
「ほうほう・・・」
木でできた楕円形のお弁当箱で、開けてみるとシンプルなそぼろの三色弁当だった。ピンクのでんぶが少し入っているので四色か。
「いただきます!」
「お茶いれるからちょっと待ちなさいよ」
英梨々が水筒から紙コップにお茶をいれた。
「ほうじ茶?」
「ほうじ茶みたいね・・・」
「知らないのかよ」
「知らないわよ。そぼろ弁当なのも今知ったわ」
「せめてそれぐらいは監修するのかと思ったぞ」
「バカね、こういうのは専門の人に任せておくのが一番いいのよ」
「なるほど・・・」
「だいたい発想が貧相なんだから、タコさんウインナーと卵焼きみたいのしか想像できないでしょ」
「それはそうだな」
「いただきます」
「いただきます」
丸い割り箸だ。割らなくても使い捨てなら割り箸というらしい。正式には祝箸と言うこともある。
「美味いなっ!」
「くぅ・・・流石ねぇ・・・」
「この肉の上質さを損なわない甘辛のそぼろ煮がたまらんな」
「知ってる?この曲げわっぱだと余計な水分を吸収するからご飯もおいしくなるんだって」
「そうなのか・・・たしかにちょうどいい固さだな」
そぼろ煮がご飯にしみ込んでいて美味しい。ご飯の粒が立っている。隣の炒り卵ゾーンもいい。そぼろがしっかりと甘いのに対して、卵の方はふんわりとした優しい甘さだ。食べるとなんだかほっこりと穏やかな気分になる。
「ふむふむ・・・勉強になるなぁ」
「シンプルな方が極めていくと深いのよねぇ」
「ポリポリ・・・なんでもない普通のインゲンなんだろうか?」
「どうかしらねぇ、うちの人は妙なところに拘りがあるから」
三色の緑ゾーンは斜め切りしたインゲン豆だ。色が鮮やかで軽く塩茹でしただけだと思う。食感が残っていて、そぼろや卵と違っていいアクセントになっている。
「これ好きなのよねぇ・・・」
「いいよな、でんぶ」
「この甘いのが好きだけど、たくさん食べるものじゃないのよねぇ。この少しってところが名残り惜しさがあって」
「そうなんだよなぁ・・・」
でんぶというのは白身魚のすり身を甘く煮て、ピンク色に着色したものだ。色気のない三色弁当に明るい彩りを与えてくれる。
ご飯はそれほど多く盛っておらず、食べ盛りの俺には少し物足りないような量だった。しかし食べ終わった後の満足感は高い。
「なによりもほうじ茶がうめぇなぁ・・・」
「ずずずっ」
英梨々もお茶をすすって満足そうにうなずいた。
「もう少し量が合った方がいいかしら?」
「いやこれぐらいでちょうどいいよ。あんまり腹一杯になると眠くなってたまらんからな」
「確かにそうね・・・」
英梨々が弁当を片付け始めた。
「はい。これ」
「ん?サンキュー」
口臭予防のミント味のタブレットラムネをくれた。口に放り込むと爽やかな香りが広がる。
「倫也、あとどれくらい時間あるの?」
「次の授業は13時だから、まだ30分ぐらいあるな」
「そう・・・なら、少し屋上散策していい?」
「それは別に構わんぞ?
英梨々が弁当箱と荷物を端の方へおいて、また屋上へ入っていった。太陽が眩しい。
※ ※ ※
南側の金網からは校庭が見える。ソーラーパネルの反射が思ったよりも厳しいので北側に移動する。北側からは住宅街と少し離れた第二グラウンドが確認できる。大きなマンションもいくつかあるが、距離はそこそこあるのでよほど暇人でないとこの屋上を観察している人はいないだろう。
「なんかこう・・・情緒にかけるわね・・・」
「情緒?」
「そうよ。アニメで校舎の屋上で2人きりって何かいい感じの雰囲気があるじゃないの」
「それはまぁアニメだしな。基本は立ち入り禁止だし」
「そんなことわかってるわよ。でも、この破廉恥なソーラーパネルをみているとげんなりするのもわかるでしょ?」
「そうだな・・・」
英梨々が何をそんなに不満なのかはいまいちわからない。男の子の俺としてはこういう普段これない場所ってだけでそこそこワクワクするが。なんならこんな場所でもコンクリートの端には雑草が生えていて、蟻ぐらいはいるかもしれないし。
「あたしはね倫也。この場所が思い出の場所として相応しいかどうかを考えているのよ」
「思い出?」
「はぁ?あんたバカなの?死ぬの?少しは察しなさいよ」
「何を」
「・・・なんであたしだけがこんなに空回りをしなきゃならないのよ。ほんと・・・」
英梨々が何かをしたいらしいが俺としてはよくわからない。仮にボールがあったとしてもキャッチボールすらやりにくい場所なのだ。屋上から絵を描きたいわけでもなさそうだし。
「いい?倫也。あたしたちは無事に恋人になったのよ。あんたにその自覚はあるのかしら?」
「ふむ?」
「恋人として次に何をするかぐらい考えなさいよ」
「ああ、英梨々はキスしたいのか」
「ばかあああああああぁあぁ!!」
「えっ、違った?」
英梨々が顔を赤くして怒っている。でもってモジモジと照れはじめた。情緒がジェットコースターである。
「なるほど・・・確かにキスすると考えると・・・微妙だな。それにな英梨々・・・」
「何よ」
「おそらく時間帯も悪いぞ?」
「それね・・・あたしもうすうすは感じてたわよ」
「これで沈む夕日でも見れたらだいぶ違うだろうけど・・・、今日の日没はだいたい18時半だ・・・」
「日が長いわね・・・」
「俺の授業が終わるのが15時10分。自習室の利用が18時までだしな・・・」
「ああ、聞きたくない。あんた今すぐ夕日にしなさいよ」
「無茶いうなよ」
「まったく・・・」
夕暮れや星空の下だとやっぱりロマンティックだと思う。秘め事は夜にするものだからだろうか。
こんなに眩しい太陽の下ではなかなか難しい。ここが海辺なら明るいキスもあるかもしれないが・・・初キスをするには照れ臭い。
「と・・・とにかく、先送りにしてもしょうがないんだからするわよ」
「わかった。しよう。英梨々好きだ」
「気持ちがこもってないわね・・・はぁ・・・」
「まてまて、まずはこうして向かい合ってだな・・・」
英梨々と少し離れて正面に向き合う。俺もだいぶ背が伸びたので英梨々より頭一つ分以上は大きい。必然的に英梨々が少しこちらを見上げる形になる。陽光に照り返されて金髪に白い天使の輪が浮かび上がっている。
「英梨々。大事な事がある」
「何よ」
「俺は英梨々から聞いてない」
「何を」
「気持ちを」
「はぁ?」
「英梨々。俺は英梨々が好きだ」
「・・・」
「・・・」
こうなったら太陽に負けない空気を作るしかない。先日の密室では怪しい雰囲気まで発展したのだから、その気になれば二人だけの世界にだってなれるはずだ。
「あたしだって・・ごにょごにょ」
「・・・」
「なによー」
ぽんぽんっ
英梨々の丸い小さな頭に手を置いて撫でてやる。お互いに大人の体になっているけれど、いつまでたっても子供の頃の印象は変わらない。
「よし、目をつぶって。英梨々が言えなくてもいいから」
「別に言えないわけじゃないわよ」
「じゃあ、聞こうか」
「なんか余裕のある感じがむかつくわね」
余裕があるわけじゃなくて現実味に薄いのだ。英梨々はいつも近くにいたけど、それは恋人としてでない時間が長すぎた。なんだか妹が背伸びしてがんばっているようなくすぐったさがある。妹がいないのであくまでもアニメ基準のお兄ちゃん大好きな妹のことだが。
「サファイヤブルーの大きな瞳が綺麗だ」
「ちょ・・・ちょっと待って・・・」
「白皙の肌も綺麗だし、整った眉も綺麗だし、薄い唇も綺麗だと思う」
「だから、待ちなさいって」
右手を伸ばして英梨々の耳の後ろに回す。それから顔を近づけた。
「ともやぁ・・・」
「あせることなんてないだろ」
「・・・うん」
「目を閉じて」
風が少し強い。英梨々のツインテールとネービーブルーの長いリボンがたなびいている。
英梨々が諦めたのか目をつぶった。言葉にする必要があるわけではないだろう。あんまり『倫也好き好き』いうような英梨々もキャラが違う。
『チュ』
左手で前髪をあげて、英梨々のおでこにキスをした。わざと音が少しなるように吸うようなキスだ。
これでもけっこうドキドキする。
英梨々が目を開けた。瞳が潤んでいる。英梨々なりに緊張していたのだと思う。
「ともやぁ・・・」
ぽんぽんっと頭を撫でてやる。幼稚園の時の泣き虫だった英梨々を思い出す。これでエロ同人作家でなければ、俺も完全にまいってしまうのだろうが、中身が腐っていてよかった。
英梨々が胸の中に顔をうずめてきたので、腕を回して軽く抱きしめた。英梨々も腕を下に回して俺を抱きしめている。
英梨々の日向ぼっこみたいな温かい香りがする。
(了)