【R18】英梨々が処女卒業するまで終わらない話【画像付き】 作:きりぼー
東京ネズミーランド。費用は全額ブレッシングソフト持ち、要するに俺の貯金だ。俺と英梨々だけなら別に問題ないが、総勢10名の分となるただ事ではない。クイズ番組の賞金みたいな金額がふっとんだ。
「そういうところでケチケチしたらダメなのよ」
英梨々はそういうが、次のゲーム作りの予算に回したかった。
「次もただで働かせるのがゲームジゴロってもんでしょ」
英梨々は俺のことをなんだと思っているんだ・・・
そういうわけで卒業旅行を口実にブレッシングソフト並びにICYーTAILに関わった人を全員招待した。一泊二日でオフィシャルホテルに宿泊してのネズミーランドとネズミーシーの二日間フリーパスだ。
参加メンバーは、俺と英梨々。加藤、詩羽先輩、美智留。ここまでは大変お世話になったのでわからんでもない。ICY-TAILメンバーのトキ、エチカ、ランコ。フルネームと担当楽器をついつい忘れがち。そのマネージャーを俺から受け継いだ波島伊織。その妹の出海ちゃんもついてきた。
この世界線では出海ちゃんは関係者ではないのだが・・・伊織が連れてきたので邪険にはできない。俺は受験の時はブレッシングソフトの活動を停止したが、美智留のICY-TAILは継続して活動し、地下アイドルとしては集客もよく人気が出ている。そのマネージャーを務めたのが伊織だ。収益の一部が俺にも還元されているため、俺としては出海ちゃんの分ぐらいでもめる気は起きない。
「あの・・・私は関係者じゃないという目でみてますけど・・・」
「いや、そんなことはないよ?」
「ジャケットのデザインやパンフレット作っているの私ですから」
「ああ・・・なるほど」
伊織の下請けをしていたのか、それにバイト代が出ているのか、ただ働きされているのかまでは首を突っ込むのはやめておこう。
「それに、こんな美少女とデートできるんだから、普通は感謝するのでは?」
「その自信はどこから!?」
出海ちゃんは明るくていい子だ。学校でも人気が高く、英梨々の後を継ぐポスト学園アイドルだろう。英梨々との違いは運動神経も抜群に良いところだ。あと胸もでかい。
そういうわけで、このメンバーで現地のホテルで集まり、俺と英梨々が代表で手続きを済ませた。
「今日は倫也とは2人で行動しないわよ」
英梨々の宣言が何を意味するのかよくわからなかった。みんなとの交流に重点を置くならカップルの俺らが2人で行動するのは浮くだろうから、別に反対はしない。
中では自由行動で集団では動かないことにした。夕食だけホテルで予約したので一緒に食べることにする。
各自でケータイアプリをダウンロードしてもらい、もらったデジタルチケットを読み取ってもらう。これであとは各々で予約やサービスを受けることができる。
「では・・・夕食までご自由に。17時でいったんここに集合で」
「はーい」
なんかまとまりがないが別にいいだろう。お堅い挨拶よりもアプリの機能を最大限利用してアトラクションの予約を取る方が大事なのもわかる。
「ランドかシーのどちらかは決めた方がいいんじゃないかしら?」
詩羽先輩が提案した。多数決をとると決めない方が多数派だった。個人主義が多いというよりは、すでにどう回るかで意見が分かれていたのでしょうがない。
「じゃ・・・バラバラで」
「困ったわね・・・」
「なにかありました?詩羽先輩」
「私はこういうところが初めてなのよ。勝手がわからないから、誰かについていこうと思ったのだけど」
「心配ないわよ。詩羽」
英梨々が自信あり気に言ってきた。
「この年間パスポートを子供の頃から持っているあたしが案内してあげるわ」
「そういえばおまえは持ってたよな・・・」
「さっきフロントで2daysチケットを受け取った時に気が付いたわ」
「無駄な出費じゃねーか・・・」
「過ぎたことをくよくよしてもしょうがないでしょ」
「そこ、痴話喧嘩はあとにしてくれるかしら?」
「先いってるねー」
「おう」
こっちが話合っているうちに、美智留たちICY-TAIL組が移動を開始した。伊織はあっち側で回るらしい。マネージャーとして板がついてきた。迷った末に出海ちゃんもついていった。
加藤はポツンと立って待っている。
「とりあえず、この4人で回るか」
「ランドからね」
「任せる」
加藤は何も言わずに少しアクビをした。今日も可愛いし、マイペースだ。
俺と英梨々と詩羽先輩と加藤でランドのゲート前に並んだ。これでようやく朝の役割からほぼ解放された俺に余裕ができた。せっかくなのでみんなのファッションチェックをする。
今日の最低気温は6度と低い。日中の予想温度は16度で暖かいから、寒暖差が激しい。みんな薄手のコートを着ている。
まずは詩羽先輩から。
モスグリーンの落ち着いたカラーのトレンチコート。長さは膝上ぐらいで丈は少し短い。
黒のタイトスカートはかなり短い。黒のパンストをはいていて、足をかなり強調した着こなしだ。スタイルの良さが際立つ。足元は黒のスニーカータイプで歩くこともちゃんと計算にいれている。上は白地に細いパステルカラーのボーダーラインの入ったトレーナーだ。ゆったり着ている。首元は出ていてそこにネックレスが輝いている。ダイヤっぽいがたぶん本物だろう。何しろ大学一年生とはいえ自分で稼ぐ売れっ子ライトノベル作家なのだ。金は持っている。
ぱっと見た感じはシックにまとまったお姉さんなのだが、コートを脱げばまた印象が変わるだろう。ミスマッチでややダサい感じがしなくもない・・・
相変わらず麗しい黒髪ロングを風になびかせている。トレードマークだった白いカチューシャは今日はしていない。ヘアピンで少し止めているだけだ。
油断すると物思いに耽ってしまう人なので、ネズミーランドを楽しく過ごせるのかは今のところ謎だ。
2人目は加藤。
加藤は加藤らしいパステルカラーでまとめている。でも以前ほどフェミニンな印象を前面には出さず、大学生を意識していると思う。どことなくアクティブなスタイルなのはスニーカーだからだろう。白いニーハイに水色のスニーカーだ。やる気がなさそうに見えて動きやすさ重視なので、それなりに気合が入っているのだろう。
淡い青色のカーディガンに白いブラウス。スカートこそピンクだが、リボンやフリルはついていないので落ち着いた印象に思える。胸元のネックレスもチャーミングだ。
「ねぇ、安芸くん・・・ちょっと視線が下からすぎない?」
俺がしゃがんでカメラを向けると加藤が反応した。パンチラを期待したわけではないが、たしかに際どい画角になってしまった。
「いや、気のせい・・・ほら」
写した写真を見せる。
「セーフじゃないと思うけど」
「英梨々の資料になるから・・・」
「なんでも資料になるなら許されるわけじゃないから」
「消そうか」
「そうは言ってないけど」
とりあえず小言が言いたかったのかな。
そして最期に紹介するのが英梨々だ。
これは一言で『姫様』と言える。童話のヒロイン衣装そのものだ。青ベースの華やかなロングドレス。それにカチューシャ。パフスリーブといわれるふんわりした白い型の部分がいかにもって感じだ。
周りから注目されているが英梨々に気にした様子はない。見られることに慣れているからだろう。
これがコスプレを意識しているなら、ツインテールをやめてストレートやアップにした方がいいと思うが、そこまでコスプレを前面にだしているわけでもないようだ。メイクもほとんどしていない。
小柄なのでネズミーキャラの西洋のヒロインとは異なる印象になっている。お人形に近いかもしれない。
ちなみに俺の衣装は白いシャツにジーンズ。一応ジャケットを羽織っている。それにリュックだ。見事なモブ感であり、存在感は極力消している。
※ ※ ※
順調だったのは最初の1時間ぐらい。テンション高めで人気アトラクションまで走ったのは良かった。続いて予約をとりつつ、効率よくアトラクションを回る。平日なのでそこまで混んでいないので過ごしやすい。
失敗だったのは、1時間待ちのアトラクションに並んでしまったことだ。
「ねぇ・・・安芸くんさ・・・」
「言うな・・・加藤・・・」
「他人のふりでいいよね・・・」
「そうだな・・・」
待ち時間に英梨々と詩羽先輩が創作の話をし始めたのが失敗だった。この二人を離すべきだったが、組み合わせが難しかった。どういうわけか英梨々は俺と詩羽先輩が2人でいると嫉妬する。加藤だと大丈夫なのだ。
「だから、さっきも言った通り現代的なキャラクターは出しつくているから、デザインが複雑になるのはしょうがないのよ」
「でも、こんな風にギザギザの髪型って現実は無理よね」
「そこをなんとかするのも含めてコスプレファンだし、コスプレのためのデザインなんて最初からしないわよ」
「そうは言ってないの。澤村さんのキャラデザは目立ちすぎるのよ。もっと落ち着いた普通の子でいいのに」
「あんたわかってないわね・・・普通のデザインなんて存在しないのよ。そりゃいうのは易いわよ?ならもっと具体的に描写しなさいよ」
「描写したら文章が重くなってキレが悪くなることもあることぐらいわかるでしょ。それができるなら挿絵なんて多用しないわよ」
「はぁ、挿絵なんてってどういう意味よ」
「あら、口がすべったわ」
「ふん!」
列の前でヒートアップする2人の議論を仲裁すべきか、スルーすべきかは迷いどころだ。加藤などこっそりと速度を遅めて、後ろのカップルに前をゆずってしまった。俺も加藤にならって他人のふりをする・・・
「って、倫也!」
「・・・はい」
「紙とえんぴつ出して」
「それはホテルの部屋においてきたが?」
「はぁ?あんたバカなの?死ぬの?」
「今日ぐらい仕事の事は忘れてさ・・・」
「安芸くん・・・前の人に迷惑だから・・・」
「英梨々、そういうわけで少しは静かにしてろ」
「何よ・・・」
「そうよ、澤村さん。すぐに熱くなるのはよくないわ」
「誰のせいよ・・・誰の!」
やれやれ。
英梨々が少し大人しくなった。5分くらい。頭の中で作戦でも練っていたのかもしれないが、相手は言葉のスペシャリストである。何かを言い返しては、また言い負かされている。
英梨々が説得力を出すには紙に描いて直接示すしかないのだ。百聞は一見に如かずという言葉通りだ。
加藤は完全に他人になってケータイをいじっている。俺も諦めてテーマパークのアプリを開いて昼食の場所を考えはじめた。
※ ※ ※
俺は諦めた。
加藤はすでに悟っていたようで何も言わない。
「ちょっとホテルの部屋に戻るわ」
「まったく澤村さんは子供ね。これだけ説明してわからないなんて」
「あんたこそ、あたしの言ってることぜんぜん理解してないじゃないの」
「まぁまぁ・・・ふたりとも」
そういうわけで、英梨々と詩羽先輩は途中でホテルに帰ってしまった。仕事人間はこれだから困る。
「安芸くん予約の時間」
「うおっそうだな・・・急ごう」
加藤はネズミーランドを漫喫する気らしい。途中でチュロスを買って2人で半分ずつ食べた。
加藤はジェットコースタータイプも好きなので、英梨々が離脱したので午後の予約は激しめのものから選んでいった。
「なんであんな風に仕事に戻ってしまのかな」
「どちらも最前線で戦っているからじゃないか?」
「なら安芸くんも一緒かな・・・」
「・・・これは、ほら。記念だから。って普通に写真ぐらい撮るよね!?」
「普通はケータイで撮影するだけだよね。構図とか、ポーズとか、シチュエーションとか考えないよね」
「ふむ・・・笑顔頼む。」
「・・・」
なんやかんやいいながら加藤がポーズを撮って笑った。作り笑顔なのか、素の笑顔なのかはわからないが、俺のハートに突き刺さる。
加藤と2人デートみたいになってしまった。なんだかゲーム作りを一緒にしていた頃を思い出す。ゲームを口実にデートしていた。今はなんだろう?卒業旅行という名の思い出作りだっけ。
気はとても合うんだよな。沈黙でも苦痛にならないし。
※ ※ ※
夕方。みんな一度ホテルのロビーに約束通り集まった。あの2名をのぞいて。
「あたしたちはルームサービス頼むから気にしないで行ってきて」
「・・・おう」
俺は説得する気も起きなかった。すでにホテルの部屋は2人によって散らかって、資料が散乱している。短時間で英梨々も描きに描いたラフの量がすさまじい。
ちなみに部屋は2部屋借りて5人宿泊できる大部屋なのだが、この2つは仕切りを外すことでくっついて10人宿泊が可能なのだ。乱交するわけでもないし、俺と伊織を別の部屋にするよりもいいだろう。出海ちゃんと英梨々以外は18歳以上なのだし、出海ちゃんは伊織が同伴しているわけだから問題なかろうなのだ。
夕食はバイキング形式の人気店だ。途中でネズミーやドナドルなどのキャラクターが登場して写真を一緒に撮ってくれる。
出海ちゃんは素直に喜んでくれて俺としては嬉しい。ICY-TAILのメンバーもテンション高めなのでよく笑っている。そうそう、こういう旅行を望んでいたのだが、どうしてあの2人は仕事をしてしまうのか。それならお互いの部屋でもいいのに。
加藤は無表情のまま黙々と食べている。バイキングでも大きな品は半分に切り分けて、無言で俺の皿に半分置いていく。全種類味をみたいのだろう。すごく美味しい料理というわけでもないから、料理で感動するということはなかった。
「トモ~」
「どうした?」
「このあとまだネズミーランド戻れるよね?」
「戻れるぞ」
「部屋でカラオケってできる?」
「残念だがネズミーランド関連ホテルにカラオケという娯楽はないぞ」
「そうなんだ」
「どーしても歌いたかったら、浜舞駅の裏側にあることはある」
「ん~アカペラでいいや」
「・・・だが、あの2人が仕事しているぞ」
「こっちも歌が仕事だからいいっしょ?」
「俺は知らん」
食事を食べ終え、たらふくスイーツも詰め込んだみんなは少しぐったりしている。ネズミーランドではそろそろエキセントリックパレードが始まる頃だ。アトラクションは空きはじめる。泊り客は時間を気にせず最期まで目一杯遊べるのもメリットの一つだ。
美智留がランドに戻るか、部屋で歌うかで多数決をとっている。加藤はいつのまにかいなくなって店の外に立っていた。
「美智留、とりあえず店から出るぞ」
「了解」
俺がカードで会計を済ませる。人数が人数だけにけっこうな金額になる。ゲームが売れてほんと良かった。詩羽先輩や英梨々ならサクッと払えるだろう。稼ぎだしている美智留も払えるかもしれない。
加藤がスタスタと歩いてしまうので、俺は後を追う。
「おーい加藤。どこ行くんだ?」
「夕涼み」
「待ってくれ」
俺は追いついて隣を歩く。それからランドに戻った。
加藤はパレードを見ずに外周にそって歩き、静かな場所を見つけるとベンチに座った。遠くではパレードの音が賑やかに聴こえる。
「いやぁ、食ったよな~」
「うん。またダイエットしなきゃ」
「余剰カロリーは排泄されるから大丈夫だろ」
「そういう問題じゃないかな」
「心構えの問題か」
「うん。ケジメというか、マイルールというか」
加藤が空を見上げている。ネズミーランドは周りが華やかなので、空があることをついつい忘れてしまう。
「わたしたちって今・・・」
加藤が呟いた。
「高校生でも大学生でもないんだね」
「そうだな」
「サークルメンバーでもないし」
「解散した記憶はないが・・・」
「恋人でもないし」
「・・・」
加藤がこっちを向いた。
「メインヒロインでもないし」
俺は何も言えない。
「もうすぐ結婚する人と、なんで私はこんなところにいるんだろうね?」
何かよい返しができればいいのだが、俺は言葉が見つからなかった。加藤も別に返事を期待しているわけでもないようで、空を見上げて小さな溜息をついた。
※ ※ ※
ホテルで過ごす夜は実に騒がしかった。美智留達はアカペラでもぜんぜん歌えてしまった。英梨々がうるさいと文句を言ったが辞める気配はない。
そういうわけで英梨々と詩羽先輩は寝室にこもってしまった。
疲れていた俺も喧噪を離れて、さっさとシャワーを浴びて寝る事にした。寝室の部屋割りは決めていないので早い者勝ちだろう。寝室は4つある、ベッドが3つとベッドが2つの部屋だ。
俺は3つの部屋を選んで窓側のベッドに眠ることにした。
少したつとドアが開いて加藤が入ってきた。お風呂を済ませて備え付けのパジャマを着ている。加藤のお風呂後の姿をみるのはずいぶんと久しぶりだ。昔はよくうちに泊りにきて風呂に入っていった。
今思うと何もエッチなことは何もしなかったわけで、ずいぶんと健全な関係だった。
最近は英梨々と同棲を初めて、毎日エッチなことをしている。
「安芸くん窓側?」
「加藤が窓側がいいなら変わるが」
「ううん」
加藤は少し迷って反対側の壁側のベッドを選んだ。部屋はベッドランプだけがついて薄暗い。
何か話そうかと思ったが加藤は何も話しかけてこなかった。しばらくすると寝息が少し聴こえた。部屋の外からまだ騒いでいる音が聴こえる。
俺は目を閉じて創作の構想を練ろうと思ったが、疲れていたのか眠ってしまった。
(了)