進め!アシスタント道 作:ろくりん
真夏の祭典、コミックマーケットの長い一日が終わりを告げようとしていた。
西の空に傾きかけた太陽が、巨大な展示会場のガラス張りの外壁をオレンジ色に染め上げている。数万人もの熱気と欲望を飲み込んだ空間は、閉会の館内放送と拍手とともに、祭りの後の独特の気怠さと心地よい疲労感に包まれていた。
葛城ヨウ、秦谷ヒナ、早坂ユイの三人は、大量の段ボールが積まれていたはずの空っぽになった机を片付け、帰路についていた。今回発行した新刊は、持ち込んだ数千部が瞬く間に完売するという大成功を収めたのだ。ヨウの背負うリュックには、分厚い札束がずっしりと詰め込まれており、その暴力的なまでの重みが彼らの完全勝利を何よりも雄弁に物語っている。
「いやあ、完売して本当に良かったですね。俺、こんなにたくさんのお金が入ったリュック背負うの初めてですよ。なんだか現金輸送車の警備員か、ただのパシリにでもなった気分です」
ヨウが肩に食い込むリュックの紐を直しながら言うと、前を歩いていたヒナが振り返って小さく息を吐いた。彼女はすでにボンデージ風のシスター服から私服に着替えており、シンプルな白いブラウスに黒いタイトスカートという、クールな出で立ちに戻っていた。
「当然の結果です。あれだけの熱量と時間を注ぎ込んで、完璧な作品を作り上げたんですから。葛城さんの背景のサポートと体力には助けられました」
「えへへ。先生に褒められちゃった。でも一番こき使われてたのは、やっぱりアッシーくんだよね。作画のサポートだけじゃなくて、私たちの気付けから眠気覚まし、それにトイレでの在庫確認まで、ずーっと下半身フル稼働だったもんね」
ユイが悪戯っぽい笑みを浮かべ、ヨウの脇腹をツンツンと小突いてきた。彼女も私服に着替えているが、薄手のオフショルダーのトップスからは、その巨大な双眸の存在感が全く隠しきれていなかった。歩くたびにブルンブルンと揺れる様は、周囲のオタクたちの視線を無差別に刈り取っている。
「ちょ、ユイちゃん。声が大きいって。周りの人に聞こえたらどうするの」
ヨウが慌てて周囲を見回すと、ヒナが涼しげな顔で二人の会話に割って入った。
「事実ですから恥じることはありません。とにかく、今日は私たちの完全勝利です。このまま真っ直ぐ家に帰るのも味気ないですし、打ち上げに行きましょう。葛城さん、ユイ。何が食べたいですか」
「焼肉。絶対に焼肉。もう三日間まともなご飯食べてないから、上質なお肉食べないと死んじゃう」
ユイの即答にヨウも激しく同意した。ブラック企業時代は深夜のコンビニ飯ばかりだったヨウの胃袋も、上質なタンパク質を猛烈に欲している。
「いいですね。では、奮発して叙々苑に行きましょう。葛城さん、タクシーを止めてください」
「はいっ、ただいま」
すっかり身についたアシスタント気質で、ヨウは大量の現金が入ったリュックを揺らしながら大通りへと駆け出した。
数十分後。三人は都内の高級焼肉店の個室に陣取っていた。
大理石のテーブルの中央に設置された無煙ロースターで、美しいサシの入った特上カルビや極厚の牛タンがジュージューと音を立てて焼かれている。香ばしい脂の匂いが個室内に充満し、三人の食欲を限界まで刺激していた。
「んんーっ。美味しいっ。お肉が口の中で溶けるぅ」
ユイは両手で頬を押さえ、幸福の絶頂といった表情で肉を咀嚼している。彼女が嬉しそうに身体を揺らすたびに、オフショルダーの胸元が大きく波打ち、肉を焼く係に徹しているヨウの視線を釘付けにした。
「ユイ、焦って食べると胃が驚きますよ。ちゃんと噛んでください。葛城さん、私の網の上のロース、焦げる前に引き上げてください」
ヒナは自身はウーロン茶のグラスを傾けながら、ヨウに的確な焼き加減の指示を出して肉を口に運んでいる。その食べるスピードはユイに負けず劣らず速かった。極限の修羅場を乗り越えた現役女子高生の食欲は、底なしである。
「はい、先生。ロース上がりました。いやぁ、でも本当に最高です。ブラック企業を辞めて数日で、こんな高級焼肉を美少女二人と一緒に食べられるなんて。俺、アシスタントになって良かったです」
ヨウが冷えたビールを喉の奥に流し込みながら言うと、ヒナは満足げにコクリと頷いた。
「ええ。葛城さんには、次の秋のイベント、そして冬のコミケに向けて、さらに技術と体力を向上してもらわないといけませんからね。しっかり食べてスタミナをつけてください」
和やかな雰囲気の中、最高級の肉と冷麺、デザートのシャーベットまでを平らげ、三人の胃袋は完全に満たされた。
お会計を済ませて店の外に出ると、すっかり日は落ちていた。東京の街はきらびやかなネオンの光に包まれ、夏の夜の生ぬるい風が、火照った身体を優しく撫でていく。
「ふう、お腹いっぱい。大満足だね。さてと」
ユイが大きく背伸びをして豊かな胸を強調させた後、ニヤリと肉食獣のような笑みを浮かべてヨウとヒナを交互に見つめた。
「イベントの打ち上げの後は、オフパコがお約束だよね」
「えっ」
ヨウの口から、素っ頓狂な声が漏れた。オフパコ。ネットのスラングとしては知っているが、現実世界で、しかも女子高生の口からそんな単語が飛び出すとは予想もしていなかった。
「オフパコって、ユイちゃん。いくらなんでもそれは」
「なんで。私たち、もう何度も一緒にえっちしてるじゃん」
ユイの直球すぎる言葉に、ヨウはヒナの顔をチラリと伺った。さすがのクールなヒナ先生も、この奔放すぎる後輩の提案にはストップをかけるだろう。
しかし、ヒナの反応はヨウの常識的な予想をあっさりと飛び越えていった。
「何を戸惑っているんですか、葛城さん。同人イベントの後は、サークル主と売り子やコスプレイヤーでオフパコをするのが、この界隈の絶対的なお約束ですよね」
ヒナはウーロン茶のグラスを置き、大真面目な顔でとんでもないことを言い放った。
「え、お約束って。誰がそんなこと」
「ネットにそう書いてありました。それに、せっかく苦労して本を完成させたんですから、ただご飯を食べて解散なんて味気ないじゃないですか。打ち上げの二次会として、今回私たちが描いた新刊の絡みシーンを、実際に三人で再現して楽しみましょう」
どうやらこの美少女二人は、ネットの偏った知識を真に受け、イベント後のオフパコを一種の神聖な儀式か何かだと勘違いしているらしい。
普通なら誤解を解くべき場面だが、ヨウのスケベな脳髄が瞬時に計算を弾き出した。ここで常識人ぶって訂正すれば、極上の美少女二人とホテルでえっちできる千載一遇のチャンスを逃すことになる。何か決定的に間違った認識をしている気もするが、男としてこれほどの役得はない。文句などあろうはずがないのだ。
「……なるほど、そういう文化なら仕方ないですね。アシスタントとして、最後までしっかりお付き合いしますよ」
ヨウが悟ったような顔で力強く頷くと、ヒナは満足げに立ち上がった。
「決まりですね。葛城さん、タクシーを止めてください。一番良いホテルに行きましょう」
到着したのは、都心にそびえ立つ超高級ホテルのスイートルームだった。
広々としたリビングの奥には、大人三人が余裕で寝転がれる巨大なキングサイズのベッドが鎮座している。床から天井まである大きな窓からは、宝石箱をひっくり返したような東京の夜景がパノラマで広がっていた。
「うわぁ、すっごい夜景。ベッドもふかふかぁっ」
ユイは部屋に入るなり歓声を上げ、ベッドに向かってダイブした。彼女の身体が跳ねるたびに、シーツが波打ち、その上の爆乳が豊かに揺れる。
ヒナは静かにドアの鍵を閉めると、振り返ることなく自分のブラウスのボタンに手をかけた。
「葛城さん、ユイ。早速始めましょう。新刊の十五ページ目、三人が複雑に絡み合うあのシーンの完全再現です」
ヒナの言葉を合図に、三人は次々と服を脱ぎ捨てていった。
エアコンが快適に効いている室内だが、全裸になった三人の間に漂う熱気は、瞬く間に部屋の温度を数度引き上げたような錯覚を起こさせた。
ヒナの身体は、どこまでも白く滑らかだった。無駄な肉が一切ない引き締まったウエストから、理想的なお椀型を描く胸の膨らみ。桜色の突起はすでに冷気と興奮で硬く尖り、彼女のクールな表情とは裏腹に、下半身の秘部はすでに愛液で艶やかに光っている。
対照的に、ユイの身体は本能に直接訴えかけてくる暴力的な魅力に溢れていた。小柄な身長の半分を占めているのではないかと思えるほどの巨大な双眸。彼女はベッドの上に仰向けに転がり、両脚を大きく開いてヨウを誘惑している。
「アッシーくん、早く来て。もう待ちきれないよ」
ユイの甘い声に導かれるように、ヨウはベッドへと上がり、彼女の両脚の間に身を沈めた。
「じゃあ、いくよユイちゃん」
「うんっ。奥の奥まで、一気に入れて」
ヨウはユイの柔らかな入り口に自身の熱く硬い分身を当てがい、一気に腰を前へと押し込んだ。
「ああっ。すっごい、奥までぎっしり入ってきたぁっ」
ユイは背中を大きく反らせて甲高い声を上げた。彼女の狭く熱い内部がヨウの分身を四方八方からきつく締め上げ、極上の快感が下腹部から脳天へと駆け抜ける。ヨウはそのまま、ユイの華奢な腰を両手でしっかりと掴み、激しいピストンを開始した。
パンッ、パンッと肉が打ち据え合う卑猥な音が、静かなスイートルームに響き渡る。
「あっ、ああんっ。アッシーくん、すごい、お肉の奥が、熱いよぉっ」
ユイが快感に溺れて喘いでいると、ヒナがベッドの上を這うようにして近づいてきた。彼女はヨウとユイの側面に回り込み、自らの顔をヨウの顔へと近づけた。
「葛城さん。ここからは作品の再現ですよ」
ヒナはクールな声でそう問いかけながら、ヨウの首に腕を絡ませ、自らの柔らかい唇をヨウの唇に激しく重ね合わせたのだ。
「んっ、んちゅ、ぷはっ。先生、いきなり」
「口づけを交わしながら下半身で別の女性と繋がる。この背徳感がたまりません。葛城さん、そのままユイを突き続けてください」
ヒナはそう言いながら、自らの豊かな胸をヨウの腕に擦り付け、再び深く舌を絡ませてきた。
前からはユイの極上の締め付け、そして上からはヒナの滑らかな舌と胸の感触。二種類の全く異なる快感が同時に押し寄せ、ヨウの理性のストッパーは完全に粉砕された。
「ひゃんっ。先生、アッシーくんの口、一人占めしないでっ」
ユイは腰をビクンビクンと跳ねさせながら、ヨウの背中に両腕を回し、自分の身体をさらに強くヨウに密着させてくる。
「では、次は葛城さんのさらなる限界を引き出します」
ヒナは身体を起こすと、ヨウの背後に回り込み、彼がユイを突くその腰の動きに合わせて、背中からピタリと抱きついてきた。そして、ヒナの白い手がヨウの脇腹を通り抜け、ユイと繋がっている結合部へと伸びてきたのだ。
「先生、なにして」
「葛城さんの腰の動きをサポートします。もっと深く、ユイの奥を抉るように」
ヒナの細い指先が、ヨウの分身の根元とユイの秘部を同時に撫で回す。ユイの愛液で滑りやすくなった指先が、二人の急所を的確に刺激し、ヨウの腰の動きはヒナに操られるようにしてさらに激しさを増していった。
「ああっ、ダメ、先生の指、そこ擦られたら、私、イッちゃうぅっ」
「ユイ、もっと声を出して。私たちの作品のヒロインのように」
ヒナのクールな、しかし確実に熱を帯びた囁きが耳元で響く。彼女自身も、ヨウの背中に擦り付けた胸の突起を硬く尖らせ、荒い息を吐き出している。
ヨウはもはや、二人の美少女に完全に主導権を握られ、ただ快楽の波に翻弄されるしかなかった。前からはユイの底なしの性欲が、後ろからはヒナのお約束を楽しむ貪欲な指先が、ヨウの精力を一滴残らず絞り取ろうと襲いかかってくる。
「俺、もう、限界です。出ますっ」
「出してっ、アッシーくんの全部、私の中にっ」
「ええ、出し切ってください。打ち上げのフィナーレを飾りましょう」
ヨウはユイの最も深い場所を的確に突き上げ、ヒナの手のサポートを受けながら、渾身の力を込めて自らの欲望を解き放った。ドクン、ドクンと熱い液体がユイの奥底へと注ぎ込まれ、ユイもまた全身をガクガクと震わせて強烈な絶頂を迎えた。ヒナもヨウの背中にしがみついたまま、その痙攣を共有して小さく甲高い声を上げた。
広いキングサイズのベッドの上には、三人の荒い呼吸音と、汗ばんだ肌が擦れ合う微かな音だけが響いていた。窓の外の東京の夜景が、彼らの狂乱の宴を静かに見下ろしている。
「……終わったぁ。作品の再現、すっごく気持ちよかったね」
数分後、ユイがヨウの胸にすり寄りながら、満足げな声で呟いた。彼女の身体はまだ熱を持っており、甘い匂いがヨウの鼻腔をくすぐる。
「ええ。打ち上げのオフパコという文化、素晴らしいですね。次のイベントの後も必ずやりましょう」
ヒナもまた、ヨウの反対側の腕枕にすっぽりと収まり、ヨウの胸板に頬を擦り付けた。彼女のクールな表情はすっかり崩れ去り、ただ快楽に酔いしれる女の子の顔になっている。
両脇に極上の美少女を抱き、完全に精力を絞り取られてベッドにへたり込む葛城ヨウ。
「……二人とも、体力おばけすぎでしょ。俺、もう一歩も動けないよ」
ヨウが乾いた笑いを浮かべて天井を仰ぐと、ヒナが不敵な笑みを浮かべてヨウの胸を指先でなぞった。
「何を言っているんですか。秋のイベントの申し込みはすでに済ませてあります。数日後には次の新刊に向けたプロット会議と、新たなシチュエーションの準備が始まりますよ。葛城さんのその絶倫な体力には、今後も大いに期待していますからね」
「えへへ、次はどんなえっちなことになっちゃうか、楽しみだねアッシーくん」
二人の美少女からの容赦ない宣告に、ヨウは背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。
この理不尽で過酷な修羅場は、決して終わらないらしい。数日後にはまた、彼女たちの終わりのない同人制作に振り回され、下半身を酷使される日々が始まるのだ。
だが、両脇から伝わってくる柔らかい肌の感触と、甘い匂いに包まれていると、不思議と嫌な気は全くしなかった。
「……まあ、美少女とヤレるし最高だからいっか」
ヨウは誰に言うでもなく呟き、されるがままに二人の美少女に抱きつかれて目を閉じた。
ブラック企業を脱出して飛び込んだ葛城ヨウのアシスタント生活。それは想像を絶する過酷な修羅場と、それを遥かに凌駕する快楽の連続だった。彼らの終わりのないドタバタなアシスタント道は、こうして明るく騒がしく、次の季節へと続いていくのだった。