進め!アシスタント道 作:ろくりん
「ちょうど今、仕事が行き詰まって手が止まっていたところなんです」
ヒナの口からこぼれたその言葉は、アシスタントとして採用されたヨウにとって、すぐにでも背景のトーン貼りかベタ塗りの指示が飛んでくる前兆にしか聞こえなかった。
ヨウは力強く頷き、ブラック企業で鍛え抜かれた社畜根性をいかんなく発揮しようと身構えた。どんな面倒なパース計算でも、何百枚のモブキャラクターのペン入れでも、この美少女作家のためなら徹夜でこなしてやる。
しかし、ヒナが次にとった行動は、ヨウの予想の斜め上を光の速さで突き抜けていった。
彼女はおもむろに立ち上がると、無表情のまま自分の制服の胸元に手を伸ばした。そして、真っ白なブラウスの第一ボタンを、なんの躊躇いもなく指先で外したのだ。
「え」
ヨウの口から、間抜けな声が漏れる。
ヒナの細く白い指は止まらない。第二ボタン、第三ボタンと、流れるような動作で次々とブラウスの前が開かれていく。夏の強い日差しを遮るために閉め切られたカーテンのせいで、作業部屋は薄暗い。しかし、液晶タブレットの青白い光に照らされた彼女の肌は、息を呑むほどに白く、そして滑らかだった。
ボタンがすべて外され、ヒナが肩を少し揺らすと、ブラウスはふわりと床に滑り落ちた。
あらわになったのは、淡いピンク色のレースが施された清楚なブラジャーと、それに包まれながらも隠しきれない柔らかな胸の膨らみだ。ヨウが初対面で推測した八十台半ばというサイズ感は間違っていなかった。いや、ブラウスという布地の縛りから解放されたことで、その暴力的なまでの存在感はさらに増している。呼吸に合わせて上下する胸元、鎖骨の華奢なライン、そして引き締まった腹部。
現役女子高生という記号が持つ若さと瑞々しさが、ヨウの視覚を容赦なく打ち据えていた。
「な、なにをしてるんですか先生。いくらなんでも、初対面の男の前で急に服を脱ぐなんて」
ヨウは必死に理性を総動員し、視線を泳がせながら言葉を絞り出した。
しかし彼の心の中のスケベな部分は、突如として目の前に展開されたこの圧倒的かつ幸運すぎる状況に、歓喜のタップダンスを激しく踊り狂っていた。なんだこれ。最高かよ。ブラック企業を辞めて数日で、こんな美少女の下着姿を合法的に拝める日が来るなんて。神様、俺は今日死ぬのかもしれないが、全く悔いはない。
内心の狂喜乱舞とは裏腹に、ヨウはあくまで常識的な大人の男を装って戸惑いを口にする。しかし、ヒナの表情には一片の羞恥も焦りも見当たらない。彼女の黒曜石のような瞳は、どこまでも真剣に、未完成の原稿をどうやって完成させるかという一点のみを見据えていた。
「初対面とか男とか、そういうのは今はどうでもいいんです。私は最高の作品を作りたい。読者の性欲を限界まで引き出すような、生々しくてリアルな肉体の絡みを描きたいんです」
淡々と語りながら、ヒナは制服のプリーツスカートのホックに手をかけた。
ジッパーが下ろされる微かな音が、静まり返った部屋に異常なほど大きく響く。
「でも、頭の中の想像だけじゃ限界がある。特に、男女の体格差による肉の沈み込みとか、肌の密着感とか」
「だからって、先生が自分で脱ぐ必要は」
「物理的な資料が必要なんです。葛城さん、なんでもやるって言いましたよね」
反論する隙も与えず、ヒナはスカートを脱ぎ捨てた。
すらりとした長い脚が露わになり、ブラジャーとセットアップになった淡いピンク色のショーツが目に飛び込んでくる。細い腰つきから滑らかに広がるヒップの曲線、そして太ももの内側の、誰も触れたことのないような柔らかな肌。彼女自身が描くエロ同人誌のヒロインよりも、ずっと扇情的で破壊力のある光景がそこにあった。
「ユイ、カメラお願い。広角と接写、両方で撮って」
ヒナが突然、部屋の奥に向かって声をかけた。
ヨウがビクッと肩を揺らして振り返ると、壁際にうずたかく積まれた段ボールの山の陰から、一人の少女がひょっこりと顔を出した。
「はいはーい。準備できてるよー」
明るく弾んだ声とともに現れたのは、ヒナとは対照的な雰囲気を持つ少女だった。
ウェーブのかかったストロベリーブロンドの髪を頭の左右で二つのシニヨンにまとめ、ダボダボの大きめのTシャツにショートパンツというラフな出立ち。身長はヒナよりもさらに低く、百五十センチを少し超える程度だろう。
しかし、ヨウの目を再び強烈に釘付けにしたのは、彼女の身長にまったく見合っていない、常軌を逸した胸の質量だった。
歩くたびに、Tシャツの生地がはち切れんばかりに前後に揺れる。小柄な体に不釣り合いなほどの爆乳。おそらく九十に迫るほどのサイズがあるに違いない。それでいてウエストはキュッと細く、ショートパンツから伸びる健康的な脚は適度な肉付きをしており、ヒナの洗練されたプロポーションとはまた違う、本能に直接訴えかけてくるような圧倒的な魅力があった。
「あ、あなたが葛城さん。先生の新しいアシスタントさんだよね。私、早坂ユイ。先生の後輩で、アシスタントやってるの。よろしくね、アッシーくん」
屈託のない笑顔でウインクを飛ばしてくるユイの手には、いかにも高そうな一眼レフカメラがしっかりと握られていた。
アッシーくんという唐突すぎるあだ名に戸惑う暇もなく、ユイはカメラの大きなレンズをヨウに向けた。
「ほらほら、アッシーくんも早く脱いで。先生の創作意欲が燃え上がってる時は、一秒のロスも命取りなんだから。モタモタしてると私が脱がせちゃうよ」
「え。いや、ちょっと待って。俺も脱ぐの。君もアシスタントなんだよね。なら、君がモデルになればいいんじゃ」
ヨウが必死に抵抗を試みると、ユイは呆れたように息を吐き、豊満な胸を揺らして首を横に振った。
「ダメだよ。女の子同士じゃ、骨格も筋肉の付き方も全然違うでしょ。先生が今描きたいのは、男のゴツゴツした体と女の子の柔らかい体が密着した時の、あの絶妙なコントラストなんだから」
ユイは楽しそうにケラケラと笑いながら、ヨウの背中をぐいぐいと押して部屋の中央にある広いスペースへと追いやる。そこには、仮眠用と思われる大きなマットレスが敷かれていた。
「さあさあ、覚悟を決めて。男の子でしょ。こんな可愛い先生と密着できるんだから、むしろラッキーでしょ」
ユイの言う通りだった。ヨウの内心は「超ラッキー」の五文字で埋め尽くされている。しかし、ここでデレデレと鼻の下を伸ばして喜んでしまえば、ただの変態として通報されかねない。ヨウはあくまで仕事として、仕方なく巻き込まれたのだというスタンスを保つため、わざとらしく深いため息をついた。
「わかりました。やりますよ、モデル。なんでもやるって言っちゃったし」
半ばヤケクソ気味を装いながら、ヨウは自身のシャツのボタンに手をかけ、素早く脱ぎ捨てた。ベルトを外し、ズボンを下ろす。ヨウは学生時代からスポーツで鍛えていたため、ブラック企業で酷使されていたとはいえ、それなりに引き締まった体つきをしていた。
適度に筋肉のついた腕や胸板、うっすらと割れた腹筋が露わになると、ファインダー越しに覗いていたユイがほう、と感嘆の声を上げた。
「アッシーくん、意外といい体してるじゃん。社畜だったって聞いてたけど、これは先生も描き甲斐があるね」
「ボクサーパンツも脱いでください。布の厚みが邪魔です」
ヒナの容赦ない言葉に、ヨウは顔を真っ赤にして両手で股間を隠した。内心は狂喜乱舞していても、さすがに初対面の美少女二人の前でいきなり全裸になるのはハードルが高すぎる。
「そ、それは勘弁してください。いくらなんでも、パンツまで脱いだらただの公然わいせつですよ」
ヨウの必死の抵抗を前に、ヒナは少しだけ眉をひそめて思考を巡らせるような仕草を見せた。
「仕方ないですね。結合部を描く時は私が頭の中で補完します。とりあえず、その状態でマットレスの上に仰向けになってください」
ヒナの指示に従い、ヨウはマットレスの上に仰向けに寝転がった。
天井のシミを見つめながら、これから何が起こるのかという期待で心臓がバクバクと暴れ狂っている。すると、ヒナが静かな足取りで近づいてきた。
彼女はヨウの右側に膝をつくと、少しだけ躊躇うような素振りを見せた後、ゆっくりとヨウの体の上に跨った。
「うおっ」
思わずヨウの口から素っ頓狂な声が漏れた。
下着姿の現役女子高生が、自分の上に馬乗りになっているのだ。淡いピンク色のショーツ越しに、彼女の秘部の柔らかな感触が、ヨウの下腹部に直接伝わってくる。ヒナの体重は驚くほど軽く、羽のように柔らかかったが、それがもたらす破壊力はヨウの理性を粉砕するのに十分すぎるものだった。
「ユイ、シャッターよろしく。葛城さんは、私の腰に手を回してください」
「え、腰に」
「早く。シチュエーションとしては、押し倒されたヒロインが、上に乗ってきた男に反撃して逆に押し倒した、みたいな感じです」
ヒナの真剣な声に、ヨウは恐る恐る手を伸ばし、彼女の華奢な腰に両手を添えた。
指先に触れた肌は、信じられないほど滑らかで温かかった。微かに汗ばんだ肌が指に吸い付くような感覚があり、ヨウの体温が急激に上昇していくのを感じる。
カシャッ、カシャッ、カシャッ。
ユイが軽快なリズムでシャッターを切り始める。フラッシュの光が部屋を断続的に照らし出し、その度にヒナの透き通るような白い肌とピンク色の下着が鮮明に浮かび上がった。
「んー、ちょっと違うわね」
ヒナは自分のアゴに指を当て、不満そうにつぶやいた。
「葛城さん、もっと力を入れて私の腰を抱き寄せてください。男の太い指が、女の子の柔らかい肉に食い込むような表現が欲しいんです。遠慮はいりません」
「え、遠慮はいらないって言われても」
「いいから、やって」
強い口調で促され、ヨウは意を決してヒナの腰を強く引き寄せた。
ムニュッ、という柔らかい感触とともに、ヨウの指がヒナの腰肉に沈み込む。それと同時に、彼女の体がヨウの胸板にペタリと密着した。
ヒナの豊かな胸が、ブラジャー越しにヨウの胸に押し付けられる。二つの柔らかな膨らみが押し潰され、形を変える感触がダイレクトに伝わってきた。ヒナのシャンプーの甘い香りと、女の子特有の甘ったるい体臭がヨウの鼻腔をくすぐり、脳髄を強烈に麻痺させていく。
「あ、いいですね、それ。ユイ、今の指の食い込み方、アップで撮っておいて」
「了解。アッシーくん、なかなか筋がいいんじゃない。先生の肌、気持ちいいでしょ」
ユイがカメラを構えながら、からかうような口調で言った。ヨウは返事をする余裕すらない。密着した下半身からは、ヒナの体温がジワジワと伝わってくる。ヨウのボクサーパンツの中では、健康的な若い男として当然の生理現象が、すでに隠しきれないほどの大きさに成長し始めていた。
「次は、顔の距離。もっと近づけて」
ヒナはヨウの首に両腕を回し、顔を近づけてきた。
彼女の顔が、ヨウの目の前数センチのところにある。黒曜石のような瞳が、至近距離からヨウを真っ直ぐに見つめている。彼女の吐息がヨウの唇にかかり、甘い匂いが肺の奥深くまで満たされていく。
「葛城さん、顔が赤いですけど。大丈夫ですか」
ヒナが不思議そうに首を傾げる。彼女の唇が動くたびに、ヨウの唇に触れそうになる。
「だ、大丈夫です。ただ、ちょっと暑くて」
「そうですか。じゃあ、もう少しこのままで。ユイ、この角度から二人の顔の距離感を撮って」
「はーい。でも先生、アッシーくんの下半身、さっきからすごい元気になっちゃってるよ。ショーツ越しでもわかるくらい」
ユイの爆弾発言に、ヨウは全身の血が沸騰するような羞恥心を覚えた。
完全にバレている。だが当たり前だ。こんな極上の美少女と肌を密着させて、しかも下腹部には柔らかい感触が押し付けられているのだ。これで無反応な男などこの世に存在しない。ヨウの内心は「もっと見ろ!そしてもっと密着させろ!」と雄叫びを上げていたが、表面上はなんとか必死に平静を装おうとした。
しかし、ヒナの反応はヨウのスケベな期待をさらに上回るものだった。
「ああ、なるほど。これがリアルな男の反応なんですね」
ヒナは嫌悪感を示すどころか、まるで興味深い観察対象でも見つけたかのように、自分の腰をさらにぐっと押し付けてきたのだ。
「うおっ」
ヨウの口から、今度は隠しきれない歓喜の籠もった声が漏れる。
ヒナのショーツの布地越しに、ヨウの硬く反り上がったモノが彼女の秘部の割れ目にピタリと収まる感触があった。ヒナはそれを確かめるように、ゆっくりと腰を前後に擦り付けるように動かしてみせる。
たまらない。最高だ。布一枚隔てているとはいえ、女子高生の柔らかい肉の感触がダイレクトに股間を刺激してくる。ヨウはヒナの動きを止めるどころか、本能の赴くままに自分の腰をわずかに浮かせ、彼女の動きを迎え撃つように擦り返してしまった。
「待って。この状態の時の、下腹部の密着感と、筋肉の緊張具合。すごく参考になる。葛城さん、そのまま動かないで」
ヒナの目は、完全にクリエイターのそれに切り替わっていた。
彼女はヨウのモノの硬さと熱さを冷静に分析し、それをどうやって二次元の原稿に落とし込むかという思考の海に深く潜り込んでいる。そのためには、自分の体が今、見知らぬ男の興奮した凶器に擦り付けられているという事実すら、些末な問題でしかないのだ。
「ユイ、この下半身の密着具合、真横から撮って。男のモノが当たって、女の子の下腹部がどう反り返るか、そのラインが欲しい」
「オッケー。アッシーくん、そのまま我慢してねー。いやー、役得だねえ」
ユイは楽しそうに笑いながら、マットレスの横に這いつくばり、二人の下半身にカメラのレンズを向けた。
カシャッ、カシャッ、カシャッ。
フラッシュが焚かれるたびに、ヒナの腰の動きがヨウの急所を的確に刺激し、快感の波が下腹部から脳天へと駆け上がっていく。
ブラック企業で死んだようになっていたヨウの細胞が、爆発的な勢いで蘇っていくのを感じた。
いや、蘇りすぎている。長年溜め込んできたマグマが、今にも噴火しようとしている。仕事の面接に来たはずなのに、なぜか下着姿の美少女に跨られ、腰を振られている。状況は全く理解できないが、気持ちいいから全てオーケーだ。
葛城ヨウの理性が、歓喜の悲鳴とともに完全な崩壊のカウントダウンを始めようとしていた。