俺は床に倒れたまま、背中の感触に集中せざるを得なかった。
ガンマの背中がスライムスーツ越しにぴったりと張り付いている。温かい。そして柔らかい。背骨の凹凸まで伝わってくる。こんな状況なのに、妙に意識してしまう自分が嫌になる。
「エロゲ様…痛くありませんか?」
ガンマの声がすぐ後ろから聞こえる。息遣いまで伝わってくる距離だ。
「ああ…大丈夫だ。お前こそ」
「はい。スライムが衝撃を吸収してくれましたから。でも…この体勢、なかなかきついですわね」
俺たちは背中合わせで床に転がっている。身動きが取れない。というか、身じろぎするたびに背中が擦れて変な感覚になる。
「ちょっと、その…動かないでください」
「悪い。でもお前が押してくるからだろ」
「押してませんわ! エロゲ様が体重かけてくるからです!」
背中越しにぎゃあぎゃあと騒いでいると、イータがすっとしゃがみ込んできた。
「…観察」
「観察すんな。まず助けてくれ」
「無理。…リンク安定。…興味深い」
イータはクリップボードに何かを書き込みながら、俺たちを見下ろしている。眠そうな目が、珍しく輝いている。
「なあイータ。これ、本当に3日かかるのか?」
「…データ不足。…もっと情報欲しい」
「情報って?」
「…魔力循環の様子。…ストレス反応。…生理的反応」イータの手が、俺の腰に伸びてきた。指先がスライムスーツの上をなぞる。
「ちょっ、何するんだ」
「…検査」
「検査って触るのかよ!」
「当たり前。…皮膚反応見る」
イータの指が俺の腰から背中にかけて移動する。爪が短く切りそろえられているのか、ひっかかりはない。だがスライムスーツ越しだからか、指先の感触が妙に伝わってくる。
「んっ…おい、くすぐったいだろ」
「我慢。…データ」
イータは淡々と言いながら、指を滑らせる。今度は胸元に移動してきた。
「そこは関係ないだろ!」
「関係ある。…心臓の鼓動。…ストレス指数」
確かに言われてみると、ガンマの心臓の音が背中越しに伝わってくる。ドクンドクンと早くなっているのがわかる。
「エロゲ様…あまり大きな声出さないでください。イータ様が調査中ですわ」
「お前が言うな! お前もくすぐったいだろ!」
「それは…そうですが」
ガンマの声が震えている。背中の感触がぴくぴくと動く。俺も背中を動かしたくなっているが、ガンマにくっついているせいで我慢しなければならない。
「…次はこっち」
イータの声が少し低くなった。
次の瞬間、彼女の手が俺の下半身に触れた。
「おい待て! そこは絶対関係ないだろ!」
「…関係ある。…副交感神経の反応。…性的興奮との相関」
「相関ってお前、実験じゃないんだから!」
「実験」
イータの指が、俺のスライムスーツの股間部分に潜り込んできた。冷たい指先が直接触れる。
「ひぃっ!」
「動くな。…データ乱れる」
「乱れるに決まってるだろ!」
俺は思わず背中を弓なりに反らした。その瞬間、背中のガンマとさらに密着してしまう。
「きゃっ! エロゲ様、急に動かないで!」
「すまん! でもお前のせいじゃない!」
「私のせいじゃ…ないですわ! でも…その…」
ガンマの声が途切れた。背中の感触がぴくっと動いた気がする。
「…面白い」
イータが無感情な声で言った。
彼女の指がゆっくりと動き始める。上下に、優しく撫でるように。
「ちょっ…マジでやめろ」
「やめない。…重要なデータ」
イータはクリップボードを見ながら、もう片方の手で何かを記録している。片手で手コキをしながら片手で記録するという器用さを見せている。
「エロゲ様…その…私、見ない方がいいですわね?」
「見なくていいから! ていうか見えてるのかよ!」
「はい。背中合わせですから…ちょうど視界に入ってしまいまして」
「入るなよ!」
ガンマが恥ずかしそうに息を詰める。背中越しに彼女の緊張が伝わってくる。
イータの指がさらに強く握り、ゆっくりとストロークを始める。冷たい指先が上下に動き、ぬるりとした感覚が広がる。
「んっ…くそ…」
「…反応良好。…血管拡張。…血流量増加」
イータが冷静に記録していく。無感情な声と手の動きのギャップが、異様な光景を作り出している。
「エロゲ様…その…気持ちいいんですか?」
「聞くな!」
「すみません。でも…背中が震えて…」
確かに背中を震わせるたびに、ガンマにも伝わってしまう。
「…ガンマもデータ採る」
イータがもう片方の手を伸ばし、今度はガンマの股間に触れた。
「きゃっ! イータ様、そこは違いますわ!」
「違う。…リンクした魔力の流れ確認。…局部からも」
「局部って!」
ガンマが必死で抵抗するが、背中合わせで動けない状態ではどうすることもできない。
イータの両手が、俺たちの股間をゆっくりと刺激し始める。左利きなのか右手なのか定かではないが、同時に行うなんて器用な奴だ。
「…データ一致。…リンク良好。…互いに影響し合ってる」
「影響してるどころじゃねえだろ!」
俺は背中を弓なりに反らして抵抗した。しかしガンマとの密着状態ではうまく動けない。
「あっ…エロゲ様…私…変な気分に…」
ガンマの声が上ずっている。背中の感触がさらに熱くなった気がする。
イータの手の動きが少し早くなる。ぬるりとした感触が強くなり、カリの周りを重点的に刺激してくる。
「んっ…くそ…やめろ…」
「やめない。…もう少しデータ欲しい」
イータは真剣な表情で記録を続けている。指の動きは緩急をつけながらも正確だ。
「エロゲ様…私…もう…」
ガンマの声が震えている。背中越しに彼女の絶頂が近いことが伝わってくる。
イータの指がさらに深く食い込んできた。鈴口を重点的に攻め立ててくる。
「あっ…くっ…!」
「…出る?」
「聞くな! …あっ…!」
限界だった。
イータの冷たい指先が鈴口を強く押した瞬間、堰が切れた。
ドクン、と体が痙攣する。同時に背中のガンマも大きく震えた。
「あっ…!」
二人の声が重なった。イータは手を止めることなく、最後の一滴まで絞り出すように搾り取ってくる。
「…データ採取完了」
彼女は淡々と言った。
俺はぐったりと床に沈み込んだ。背中のガンマも同じようにぐったりとしている。
「お疲れ様。…次は反応の違い見る」
イータが次の実験道具を取り出そうとした瞬間—-
ガシャン!
金属扉が勢いよく開いた。
そこに立っていたのはアルファだった。金髪が怒りで逆立っている。
「イータ!!」
「…アルファ様。今、いいところ」
「どこがいいところよ! 何してるの!」
アルファが魔力を爆発させながら怒鳴った。部屋中の器具が微かに震える。
「実験」
「実験で何やってるのよ!」
「…エロゲとガンマの感覚共有実験。…性的刺激との関係調査」
「調査って! なんでそんな…!」
「…有益なデータ取れる。…リンクの特性理解に必要」
アルファは額に手を当てた。
「とりあえず終わりなさい! 今すぐ!」
「…了解」
イータは名残惜しそうに手を引っ込めた。
俺は背中のガンマと視線を合わせないようにしながら、深く息を吐いた。
「…地獄だ」
ガンマも小声で言った。
「私も…こんな実験…初めてですわ」
背中越しに伝わる体温が、まだ熱いままだった。