ラッキースケベ・トラップダンジョン ~外れスキル『ラッキースケベ』のせいで転生早々追放された俺が、踏破率0%の鬼畜迷宮をエロトラップ化したら、いつの間にか王女と剣聖に激重感情を向けられてました~ 作:マテリ-AL
――情けない、人生だったな。
それが、自分へ降ってくる鉄骨を見て、彼が――
死に際にすらそんなことを想ってしまうほど、彼の人生は不運に満ち溢れていたのだ。
部活で努力すれば、試合当日に階段から落ちて大怪我をする。勉強で努力しても、受験当日に体調を崩して全力を出せない。
新品のズボンは初日にポケットが破れ、小銭が落ちていく。祭りへ行けば決まって財布を落とすか盗まれるかして、何も買えたことがない。
ソシャゲのガチャで最高レアなんて出たことがなく、ならばと据え置きゲームをやってみれば、チーターに巻き込まれて誤BANされ、ゲーム機が超高級文鎮と化した。
そんな、何も成し遂げられない彼を、前へ進み続ける周囲の人間は必要とせず、高校受験に失敗した時点で親すら彼を切り捨てた。
そんな哀れな男の人生が今、終わろうとしている。きっかけはバイトの帰り。異音がして上を見れば、工事現場の遥か上空で吊り下げられていた十本弱の鉄骨が落ちてきていた。だが、それは幸夜ではなく……数メートル前を歩く、二人の女子高生を目掛けていた。
「走れ! 危ないぞ!」
幸夜が咄嗟に声を荒げる。だが、女子高生は仲がいいのかイヤホンをシェアしており、異音にも彼の声にも気づいていない。それに気づいた彼は、女子高生へ向かって駆け出した。二人の背中を押して鉄骨の範囲外へ出し、彼自身も走り抜ける。それで、三人とも鉄骨の下敷きにならずに済む……はずだった。
だが、三歩走ったところで靴が脱げ、幸夜は女子高生の背中を押す前にすっころんだ。脱げた靴が二人の足元へ転がり、驚いた二人が左右へ飛び退く。同時に台風かと思うほどの突風が吹き、鉄骨の束を横殴りに押し流してその落下地点を幸夜の真上へずらした。そうして彼は、地べたを這いながらただ自分の死を待つだけの現状に至ったのだ。
女子高生二人は、足元へ飛んできた靴と、背後で倒れた幸夜に驚いたのか、怯えたようにその場から駆け出していく。もう、鉄骨に巻き込まれることはないだろう。
その後ろ姿を見ながら、幸夜は内心独り言ちる。
……ああ、本当に情けなくて、不運で、つまらない人生だった。
でも、その不運で最期に誰かを助けることができたなら……。
「まあ、いいか」
轟音と共に、鉄骨が男を覆い潰す。
最後に少しだけ慈悲をくれたのか、痛みはなかった。
*
『成功だ! やっと、転生者召喚の儀が成功したぞ!!』
意識が戻ると同時に、耳をつんざく歓声が飛び込んでくる。目を開けたコウヤは、これ以上ないほど瞠目した。視界に映っているのは、映画のセットと勘違いしそうなほど完璧な中世風の城の内部。なにか祭壇のような場所に立つ彼をぐるりと囲むように、白いひげを蓄えた男性やドレスを着た少女が好奇の視線を向けている。
(どこだここは? 死後の世界や地獄には見えないし、さっき聞こえた言葉的に、もしかしてこれは……)
「お目覚めになられましたか! 転生者様!」
思考をめぐらせる彼の耳に、オーロラを束ねたような豪華絢爛なドレスを着た少女の言葉が入ってくる。その金髪はまるで、陽光をそのまま編み込んだかのようで、煌びやかな装飾が施されたこの場でも一際強い輝きを放っている。そんな美しい少女の傍らには、腰に剣を帯び、大きな胸の谷間が強調された鎧を着た赤髪の女性が付き添うように立っていた。
(転生者って、もしかしてこれ……異世界転生ってやつか?)
少女の言葉に動揺する幸夜へ白いひげを蓄えた男性が、王座から声をかけた。その荘厳な在り方と冠から、幸夜にもすぐに目の前の男が国王だと分かった。
「ほっほっほ……よく召喚されてくれた。『剣神』か、『大賢者』か、それとも……『
「気が早すぎますよ、お父様。説明はまだなんですから」
王様っぽい人と金髪の少女がする話についていけず、幸夜は首を傾げる。そんな彼の気持ちを察してくれたのか、金髪の少女が幸夜の前に立ち、スカートの端をつまんで恭しく一礼をした。
「挨拶が遅れて申し訳ありません、転生者様。
「あ、はい。オレは
「えーと……コウヤ様、ですね! では、説明をさせて頂きます。まず、コウヤ様はこの世界に召喚されたことでスキルを得ました。スキルとは、神より与えられる固有能力で、世界の誰しもが生まれた時に与えられます。ですが、転生者……つまりコウヤ様は特に希少なスキルを得ると言われております。コウヤ様にはそのスキルを使って、我ら王家の力になって頂きたいのです! 当然、相応の報酬もお支払いします!」
説明を終えると、王女様は再び恭しく頭を下げた。その姿からは凛々しさの中にどこか必死さが見て取れ、コウヤは少なくとも冗談などではないと感じた。
(……そうか。オレにそんな力があるのか。うまくイメージとかできないんだけど、やっと幸運が回ってきたって考えていいのか? だとしたら、そうだな……誰かの役に立てる力とか、欲しいな)
前世のコウヤは、不運に足を引っ張られ、人助けをしようとしても空回りし、かえって迷惑をかけてきた。だからこそ、優れたスキルを得た暁には……まっとうに人を助けて、ちゃんと感謝されたい。コウヤはまず、そんな願望を抱いてしまった。
「――では早速、スキル鑑定を始めましょう!」
少女の傍らにいた赤髪の女性がコウヤへ羊皮紙を渡す。コウヤの指が羊皮紙に触れると、触れた箇所を起点に光が迸り、紙面を走った。
紙を走る光が段々と文字になっていく。数秒で終わったそれは、コウヤには永遠のように長く感じられた。
そうして、ついに浮かび上がったコウヤのスキルは――。
『スキル名:ラッキースケベ』
自身に降りかかる不運を、えっちな事故へ変換する。
変換された不運の帳尻は、対象となった異性の側で合わせられる。
「…………??」
(なんだコレ?)
紙に書いてある内容の意味が分からず、コウヤの目が丸くなり、氷漬けになったかのように身体が硬直する。彼自身、前世の体質的にスキルが『不運』とかになるのは心の端で覚悟していたのだが、その最悪の予想のさらに斜め下を行かれたのだ。
「スキルが出たようだな。姫様や他の者にも見せてくれ」
「あ、ちょっと待っ……」
少女の近くにいた赤髪の女騎士がコウヤの手から紙を持ち去り掲げると、同じ内容が数枚の紙に写し取られ、王様や姫様、大臣たちへ配られていく。
(待ってくれ。こんなスキル持ってるって知られたら……)
コウヤの心配は的中したようで、スキル用紙を見た者から順に疑問の声があがっていく。
「…………うん? なんだ、これは?」
「こんなスキル、戦闘にも生産にも使えないのでは……?」
「これが、転生者のスキル……? 正直……
ここから先の展開を、コウヤは何度も経験してきた。視線が段々彼から外れ、どこからともなくため息が聞こえる。彼がいつも向けられてきた……失望だ。
「――お待ちください!!」
だが、ここで王女様――フィニアが一喝し、澱んだ空気をぶっ飛ばす。そのままフィニアは手を広げ、庇うようにコウヤの前に立った。
「スキル鑑定は二文しか出ないから、その真価は我らの目で確かめなければならないというのは常識でしょう! もしかしたら、彼のスキルには世界を変えるだけの価値があるかもしれないじゃありませんか!」
「フィニア様、さすがに無理です。こんなスキルに世界を変える力など……」
「こんなとはなんですか! 少なくとも私は、運に干渉するスキルなど見たことないのですが!?」
(……な、なんかこのお姫様、めっちゃオレのこと擁護してくれてる。いや、正直オレ目線でも結構アレなスキルだから、そんなに庇わなくても……)
そのあまりの必死さは、庇われている当のコウヤですらちょっと引いてしまうほどだった。
「大体、検証もしてないスキルを――きゃっ!?」
「おわっと!?」
あまりにヒートアップしすぎたせいか、王女様はドレスを踏んづけてしまい、勢いを付けてコウヤの方へ転ぶ。彼はそれを受け止め切れず、王女様に巻き込まれる形で地面に倒れ込んだ。
ドレスに隠されたフィニアのお尻が、コウヤを下敷きにしたとき……確かにどむんっ、という重厚な肉の打ち付けられる音がした。
ほのかに暖かくて柔らかい、それでいてずっしりとした確かな重さを持った肉の塊が顔へ押し付けられたことで、コウヤは呼吸を塞がれてしまう。
「むぐっ、あむ……!」
どうにか酸素を確保しようと口を動かす。すると、何か肉感的な柔らかさとすべすべした布地の感触が同時に感じられ――。
「ひぅっ……ん、うぅ……そんなとこ舐めたら、いけ、ません……あぁ!」
嬌声と共に肉の塊がコウヤの顔から離れ、腹へ落ちる。そうして彼の視界に入ってきたのは、煌びやかなドレスの奥にある王女様の秘密の場所……純白の下着だった。
「んぅ……なるほど、これがコウヤ様の力、なんですね……」
コウヤの腹の上で鎮座する王女様の熱を帯びた蕩けた顔。広がった足から見える純白の下着は濡れ、コウヤの口と透明な架け橋ができている。
それでコウヤは理解した。多分、さっき彼の顔面にのしかかっていたのは王女様のお尻で、口を動かしたことで、彼女の下の唇へ布越しのキスをしてしまって――。
「――貴様ァッ!!」
どうやらそこで、赤髪の女騎士だけはなにが起こったかを察したようだ。彼女は怒りに顔を歪め、大剣を引き抜くと、コウヤへ斬りかかった。
「リラ。これは彼の意図したものでは……!」
「待ってくれ! これは、不可抗力で――!」
「問答無用!! ――ッ!?」
両手を前に出したコウヤの制止も聞かず、怒りのまま一直線に斬りかかるリラと呼ばれた女騎士は足元に落ちていた鑑定紙を踏んで、足を滑らせて転げ――。
「ひゃんっ!?」
転んだ先で、豊かな双丘が、まるで吸い込まれるようにコウヤの両手へ収まった。前のめりになっているせいで、巨大な柔肉の重みを、コウヤの両手だけで支える格好になっている。
「あんっ、んぁ、あ……だめ、だ、ゆび、うごかすなぁ……!」
リラは直ぐに身をよじらせ脱出しようとするが、快感を生む結果にしかならなかったようで……。
「あ、ふぁ、ん……もう、らめぇ……」
リラはコウヤへ体重を預けたまま、放心してしまった。
そうして、十秒以上の間、謁見の間をどうしようもない沈黙が覆った。それを最初に破ったのは、フィニアだった。
「これは、凄い力かもしれません。私もリラも、まるで彼に引き寄せられるように……お父様! さらに検証を――!!」
「追放だ! 速やかに王城から出ていけ!! そんな何の役に立たぬ上に下劣な力、我らには不要だ!!」
フィニアが提案を言い切る前に、王様が出口の方を指差しコウヤへ怒鳴りつけた。だが、彼女は納得がいかなかったようで……。
「――待ってください、お父様! こんなスキル、今まで見たこと――!!」
「すいません、もういいです! すぐに、出ていきますんで!!」
(これ以上やらかすと断頭台送りになる!!)
フィニアの反論を遮り、コウヤは両手を挙げながらそそくさと出口へ向かって歩き出す。
こうして不運な人生から転生を果たした男は……転生してから一時間も経たずに役立たずの烙印を押され、王城を追放されてしまった。