ラッキースケベ・トラップダンジョン ~外れスキル『ラッキースケベ』のせいで転生早々追放された俺が、踏破率0%の鬼畜迷宮をエロトラップ化したら、いつの間にか王女と剣聖に激重感情を向けられてました~ 作:マテリ-AL
ラピスに続くように、コウヤも炎竜が守っていた巨大な扉の向こうへ足を踏み入れる。靴底越しの、柔らかな土の感触。雑草まで生い茂るその空間は、石造りの遺跡の内部とは思えない。二人が奥へ進むと……まるで闇の中で一等輝く星のような光が見えた。瞬間、コウヤはラピスが息を飲む音を聞いた。
「もしかして、あの光り輝いている花が……」
「ええ。あれが、魔吸のアイリスよ」
コウヤが近づき、光り輝く花を詳しく見る。青色の花弁に金色の線が入ったそれは、周囲を包み込むような熱と見ているだけで吸い込まれるような恐怖を併せ持ち、コウヤからすると、花というより、魔力を吸収する力を持った神秘の塊であるように見えた。
「……あれ?」
だが、コウヤと同じように近づいて見たラピスは口に手を当て、不審げに首を傾げた。意図が分からず、コウヤがラピスの顔を覗き込んでいると……ラピスが口を開いた。
「一本しか生えてない……? ダンジョンの説明には、二本あるって書いてあったのに……」
「……あ」
コウヤの口から、小さく声が漏れる。思い出したのだ。踏破報酬には、魔吸のアイリスが『二本』あると書いてあった。なのに彼の目の前には一本しか花が生えていない。
「何かの拍子に倒れて、雑草に紛れてるとか……?」
すぐにコウヤは雑草をかき分け、花がもう一本ないかを調べだした。だが、しばらく草むらをかき分けて探しても、それらしいものは見つからない。
「……やめなさい。魔力反応がない以上、多分、もう一本はどこにもないわ。それに、こういうことはないわけじゃないから」
「え、報酬が予定より少ないって、あるのか?」
「……ええ。管理が甘かったり、他の人が先に持って行ったり……そもそも不正があったり、予定より報酬が少ないことは稀にあるわ。でも、なにも、なんで、こんな時に起こらなくたって。二本ないと、魔核症は完治まで行かないのに……」
ぐっと唇を噛んだラピスからは、強い悔しさがにじみ出ている。そんな彼女へ、コウヤは……前を向けるよう、背中を押すことにした。
「分かった。まずはこの一本をラピスのお母さんへ届けよう。それで病状を和らげて、時間の猶予を持たせてから……頑張って、また探していこう。オレも、最後まで手伝うから」
ラピスへ正面から向き合ったコウヤは、励ましの言葉をかけた。当然コウヤは、ラピスがこれまで頑張り続けたことを知っている。これ以上頑張れと声をかけるのは心苦しいが……それでも、今は前を向き続けることが必要だと、コウヤは考えていた。
コウヤの言葉を受けたラピスはこくりと頷くと……魔吸のアイリスを摘み取った。
「そうね。あなたの言うとおりだわ。最後まで付き合うって、絶対、裏切らないって約束してくれた、から……」
「ああ、最後まで一緒だ」
「……そう。なら、いいわ」
ここでやっと、ラピスは表情を緩め……コウヤへ薄い笑みを向けた。
それを見たコウヤは、肩の力を抜いた。
「じゃあ――帰ろうか」
「ええ、早くこんなダンジョンから出ましょう」
コウヤとラピスは隣に並び……薄暗い部屋から、光が漏れる外へ歩き出した。
*
磨き上げられた石造りの出口の向こうに、夕焼けで赤く染まった空が見える。鳥の鳴く声で、コウヤの中でダンジョンから出られた解放感が育っていった。そうして、コウヤとラピスが完全にダンジョンから出て、祠から十数歩離れたその時……コウヤの背後から轟音が鳴り出した。
「な、なんだ……地震……!?」
振り向いたコウヤが見たのは、ダンジョンが凄い勢いで揺れ、今にも崩落を始めそうな様子だった。思わず後ずさるコウヤに対し、ラピスはなんでもないように腕を組んでその様子を眺めている。
「これは、踏破報酬が持ちだされて、役目を終えたダンジョンが崩れ出しただけよ。ただ、心して見なさい。ここからが……本番だから」
「……本番?」
ダンジョンが崩れる音に混じり、なにかがぶつかり合う音が聞こえる。その正体を聞く前に……ダンジョンから噴水のように白色の塊が吹き出し、地面に着弾してバラバラになった。足元にまで転がり込んできたその破片の正体を見たコウヤの身体は縮み上がった。
「これは……骨? それもこの大きさ、人間の……」
そう。ダンジョンから放出された白色の正体は――人骨だったのだ。ダンジョンの中で死んだ人の骨が……無造作に外へ放り出されたのだ。
「……あっちからしたら温情、なのかもね。骨だけでも返してくれるのは。ギルドタグで、照合だってできる。けど、それでも……何度見ても、慣れないわ」
口の端を歪め、吐き捨てるように呟くラピス。その姿には、目の前の光景への不快感と、一歩間違えれば自分もこうなったかもという恐怖が見え隠れしていた。
だが、いつの間にか……ラピスの視線はコウヤへ向いていた。
「でも、あなたがいれば……どんなダンジョンでも……」
「……どうした?」
「……なんでもない。こういう骨は『骨拾い』が回収してくれるけど、念のため結界で守っておきましょう」
そうして、ラピスが道具を使って結界を形成している間、手持ち無沙汰になったコウヤが辺りを見渡していると……何か人影がこちらへ走り寄ってくるのが見えた。
夕日の逆光で輪郭しか見えないその人影に、コウヤは覚えがあった。コウヤが記憶を掘り返していると……ふと人影のほうを見たラピスが驚きの声をあげた。
「ルゥリィ……っ!? なんで、ここに!?」
「えっ!? ルゥリィ!?」
ラピスの言葉を受けてコウヤが人影を凝視する。長い前髪に目元を隠した姿は、間違いなくルゥリィだった。なんでここに――と聞く前にルゥリィが叫ぶ。
「は……っ、は……っ。お姉ちゃん、コウヤさん! お母さんが……お母さんがぁ……!!」
「……え?」
肩で激しく息をするルゥリィの第一声で、コウヤたちは察してしまった。
ラピスの母親の容態が芳しくないことを。
*
コウヤたちが王都にあるラピスの別邸に辿り着いた頃には既に、太陽は山の向こうへ沈み、夕焼けの赤が宵闇の黒で塗りつぶされ……世界は闇に沈んでしまっていた。
見上げるほどの豪邸だが、今のコウヤにそんなことを気にしている余裕はない。蹴破る勢いで入口の扉を開き階段を駆け上っていくラピスに置いて行かれないよう、全力で追いかける。
二階の一番奥の部屋に入ったラピスの後に続くように、コウヤとルゥリィもその部屋に入った。
「ごほっ……ごぱぁっ!」
瞬間、生々しい血の匂いが鼻を突く。見ると、ダブルベッドの中心に……全身から濃い藍色の棘を生やした銀髪の女性が、口から血を吐き出しながら咳き込んでいた。
ベッドの傍らには、白衣姿の女医が立ち、銀髪の女性へ魔力を放出し続けている。部屋に入ったラピスはすぐに、女医へ駆け寄った。
「先生! ……お母様は!?」
「手は尽くすけど……明日を迎えられるかは、怪しいかもしれない」
「そんな……っ!」
無慈悲な宣告に、ルゥリィが絶句して床に崩れ落ちる。対するラピスは、ぐっと歯を食いしばると、懐から『魔吸のアイリス』を一輪取り出し、女医へ突きつけた。
「――これで、お母さんを助けて!!」
「『魔吸のアイリス』……っ!? まさか、本当に手に入れたのか! ただ……」
女医は一本しかない『魔吸のアイリス』を見て、わずかに顔をしかめた。
「正直に言おう。この一本だけじゃ、今の危篤状態から脱せるかも怪しい。確かに、『魔吸のアイリス』で『魔核症』を治せたという実績はあるが、それはもっとマシな病状の時で……」
「――分かってる! それでも!!」
「……ああ、やるよ」
魔吸のアイリスを受け取った女医が、魔力を込めた手でその花を握りつぶす。すると、潰れた花を中心に魔法陣が展開され……そこから放たれた魔力を受けた棘が細かく分解され、塵となって魔法陣へ飲みこまれ始めた。
「ダメだ。自己増殖の方が早い。これじゃ、危篤状態すら……」
女医の言葉通り、棘は消滅する傍からまた新しいのが生えてしまっている。このままだと、時間が経てば経つほど棘の本数は増えてしまうだろう。ラピスは、自身に棘が刺さるのもいとわず……銀髪の女性に、母親に、すがってしまっていた。
「……治ってよ。なんで、どうして、治らないのよ。私は、できることをやった。もう、これ以上はないのよ! なのに、どうして、ねえ――どうしてっ!?」
……理不尽だ。
それが、血と涙にまみれながら叫ぶラピスへ、コウヤが最初に抱いた感想だった。
命を賭けたのに、十全に報酬が手に入らないのも。
薬がようやく手に入った途端に、手遅れになってしまうことも。
……きっと全部、よくあること。『不運』という名の理不尽なのだろう。
コウヤにも覚えがある。この世界に来る前のコウヤは、不運の塊だったのだから、当然だ。
だからこそ――。
(オレ以外の人間が、あんな思いをすることなんて、あっちゃダメだ)
コウヤは、せめて、祈った。
不幸に見舞われるのはオレだけでいいから……せめてこの子たちに幸福をください、と。
瞬間、コウヤの内側から膨大な力が湧き上がった。
それは――摂理の反転と解放。これまで山のように積み上げられていた『何か』が一斉に解き放たれ、荒れ狂う濁流となって世界へ溢れ出す。
意識の底で、祝詞が弾ける。
それは、言葉にならない無意識の詠唱。
コウヤの持つスキルの――秘められた一端!
『
*
『それ』に気づいたのは、ルゥリィだけだった。
地面に崩れ落ち、後悔に苛まれ、ただボロボロと大粒の涙を流し続けていた彼女が、感受性の高いルゥリィだからこそ――自分から何か薄い魔力が放たれていることに、気付けたのだ。
(これ……は……?)
まるで水底から浮かび上がる泡のように、ルゥリィの身体から魔力が湧き出す。魔力は、ちょっとだけ濁っていて先が見通せず……窓の外を覆う宵闇の黒をうやむやにするような白さを誇っている。
全てを照らすほどの強さは持っていない、けれど、黒を、悪意を希釈する優しい白に、ルゥリィは覚えがあった。
(この魔力、コウヤさんの……?)
ダンジョンの悪意をうやむやにする、コウヤの力。それと同じ何かがルゥリィの身体から湧き出している。だが、結局それが何を意味するのか分からず、涙目で淡い白光を見ていると……ラピスからも、同質の魔力が放たれているのに気づいた。
だが、よくよく見ると、魔力が吸い込まれていく先が違う。ルゥリィから吹き出す魔力は上空からこちらを睥睨する魔法陣へ飲み込まれているのに対し、ラピスから放たれる魔力は、川の流れのような自然さで母親であるラズウェルの身体へと吸い込まれていく。
この魔力の正体は何だろう、と、ルゥリィが女医へ聞こうとした瞬間――魔法陣とラズウェルの身体の両方が、ぱぁあと強く瞬いた。
淡く、柔らかいその光の美しさに、ルゥリィは悲しみすら忘れて見入ってしまう。
光が収束したその時、彼女は確かに見た。
ラズウェルの身体から、棘が消失しているのを。
それはつまり、母親の病が治ったということで……。
「…………え?」
役目を終えた魔法陣が消滅すると同時に、悲しみに満ちていた世界が、困惑で塗りつぶされる。数秒、いや、数十秒だろうか。誰も、なにも、言葉を発せなかった。いや、そもそも何が起こったかの理解もできていなかったのかもしれない。
そんな中、最初に動いたのは……ラズウェルだった。目を覚ました彼女は、一番近くにいたラピスの背中へ手を回すと……ぎゅっと、抱き寄せた。
「おはよう、ラピス」
「……ぁ、おかあ、さ……」
目をこれ以上ないほどに開き、驚きをあらわにするラピス。そんな彼女を祝福するかのように、ラズウェルはラピスを抱きしめながら、言葉を続けた。
「またこうして、ラピスを抱きしめられる日が来るなんて思わなかったわ。本当に、よく頑張ったわね……さすが、私の自慢の娘よ」
「うん……うん……っ!!」
これまで堪えてきた感情が決壊してしまったかのように、まるで幼子のように涙で顔をボロボロにするラピス。そんな彼女を見て、女医もようやく我に返り、目の前で起きた現象を必死に整理し始めた。
「これは、もしかして……『魔核症』が小康状態になると同時に、『魔吸のアイリス』が超活性を起こして、一気に棘を消失させたのか? いや、理屈としては通るが……どんな奇跡だ!? 誰かが運命の糸を無理やり引っ張りでもしたのか? いや、もう……分からん! 今は、この奇跡を喜ぶことしかできない!!」
女医の顔には、喜びと困惑が半分ずつ浮かんでいた。そんな女医の言葉を聞いたコウヤは……。
「なんか、ものすごく運がよかったみたいだな。ラピスたちは散々酷い目に遭ってきたんだし、その帳尻が合ったのかも」
小さくそう呟き、安堵したように息を吐いた。そんな彼へ、陽光より熱い視線を送る少女がいた。ルゥリィだ。
「奇跡……では、ありません。これは、コウヤさんの……!!」
「……? どうした、ルゥリィ?」
「コウヤさん……っ!!」
「うぉわっ!?」
感極まり、コウヤへ飛びつくルゥリィ。いきなり遠慮のないタックルを食らったコウヤは後ろに倒れ……その顔の上に勢い余ったルゥリィのお尻が乗る形になった。
「本当に……ありがとうございます!! 全部、ぜんぶ……コウヤさんの……お陰です……っ!!」
「むーっ! むーっ!」
「ひゃっ……!? く、くすぐったいですよ、コウヤさん……!!」
ルゥリィの心からの感謝に対しコウヤは何かを必死に訴えているようだったが……彼女のお尻のむっちりとした柔らかさとすべすべした下着に塞がれた声は、誰にも聞き取れなかった。
ラピス編(外れダンジョン攻略)で一番好みだった罠をアンケートします。軽い気持ちで、ご参加ください。
-
浮遊の呪い
-
ポージングトラップ
-
壁尻罠
-
呪い入り拘束縄
-
白き解呪の間
-
鍵穴罠 Lv2