ラッキースケベ・トラップダンジョン ~外れスキル『ラッキースケベ』のせいで転生早々追放された俺が、踏破率0%の鬼畜迷宮をエロトラップ化したら、いつの間にか王女と剣聖に激重感情を向けられてました~ 作:マテリ-AL
「……まず、人払いをお願いします。コウヤ様と、護衛であるリラだけでお話しさせてください」
それが、フィニアの第一声だった。その表情は真剣そのもので、これからする話が、少なくともティータイムで交わすようなものではないことを予感させた。
「待ちなさい、いきなり来て挨拶もなしにそれはないでしょう。せめて……私も同席させなさい」
だが、ラピスは納得できなかったようで、王女様へ一歩詰め寄ろうとした。その行く手を、赤髪の女性――リラが遮った。
「ラピス・サイレントハート『元』男爵令嬢。これからする話は貴様程度じゃ聞かせられないとフィニア様はおっしゃったんだ。『剣聖』だかなんだか知らないが、貴様は大人しく下がれ」
「元」を明らかに強調し、敵意を孕んだリラの言葉に、ラピスの額に青筋が走る。
「……そんな事言って、コウヤを殺すつもりじゃないでしょうね。聞いたわよ、数日前に王城へ召喚されて、姫様に不敬を働いて即追放された転生者の噂。それがコウヤだとしたら……今更追いかけてくるなんて、変な話じゃない?」
「フィニア様はただ話をしたいと言っているのに、それを疑うのか?」
「だとしたら、そんな敵意むき出しの態度は0点ね。姫様の意図を全く汲めてない。それでも従者かしら?」
「――――!!」
ラピスの煽り返しが相当癪に障ったのか、リラは腰の剣に手をかけ、殺気を放ち始めた。それを見たラピスも腰の剣に触れる。すると、剣が青色の光を帯びた。
(……いや待て、ここでやり合うつもりか!? ルゥリィもフィニア様もいるんだぞ!?)
「待ってくれ!」
危険を予感したコウヤが二人の間へ身体を滑り込ませ、これ以上近づけないよう左右へ腕を突き出す。だが、その瞬間、ラピスとリラも同時に一歩踏み込んだ。
「ひゃっ……!?」
「……んっ」
左右の手のひらが、むにゅっとした、柔らかく確かな重みのある膨らみへ深く沈み込む。右手に触れたリラのほうが、わずかに弾力が強かった。
ラピスは頬を赤くしながらも、コウヤの手を無言で退けるだけだった。しかし、リラの表情には屈辱が浮かんでいて……。
「お、おのれ……やはり貴様は、追放だけでは生温かったようだな……っ!!」
迷わず腰の剣を引き抜いて、コウヤへ向かって振り上げた――。
「――おやめなさい!」
瞬間、フィニアの一喝が部屋中に響き渡る。その気迫に圧されたのか、リラは剣を下ろした。そんな彼女をよそにフィニアはラピスへ歩み寄り……その頭を深く下げた。
「まずは……従者の非礼を詫びさせてください」
「…………っ!?」
「フィニア様!?」
王女様に頭を下げられたラピスは明らかに怯み、一歩後ずさった。そんな彼女へ、フィニアはさらに言葉を続ける。
「私は今、国家の命令ではなく、私個人の意思でここにいます。その上で、私は……コウヤ様の力をお借りしたいのです。ラピス様を支え、『万呪の遺跡』の踏破へ導いた、コウヤ様の力を。なので我らがコウヤ様を害することは絶対にありません。ただ、大変申し訳ないのですが、私が話せるのはここまでです。これからのことは、あなた方には話せません。……ご理解いただけますでしょうか」
「……それ、は」
フィニアの懇願に、何か察するところがあったのか、ラピスの歯切れが悪くなる。ラピスはしばし逡巡すると……縋るようにコウヤへ視線を向けてきた。
(オレは……フィニア様にギルドの紹介と路銀を貰った恩がある。それに、今のフィニア様には強い焦りが見える。だから……話をちゃんと聞きたい)
視線を向けられたコウヤはほぼ迷うことなく、首を縦に振った。
「……そう」
するとラピスは、ふぅと小さくため息をつき、張りつめていた肩から力を抜き、剣に溜めていた魔力を霧散させた。
「分かった。最高級の客間には防諜の結界が張ってあるわ。話はそこでしなさい」
「ご理解いただき、ありがとうございます。では……案内をお願いします。行きましょう、コウヤ様」
ラピスの許可を得たフィニアは、これまで厳しかった表情を緩め……コウヤへ薄い笑みを見せた。
*
そうして、客間へ移ったコウヤとフィニアは、テーブルを挟んで向かい合うようにソファーへ腰を下ろした。
「じゃ、せいぜい不敬罪で断頭台送りにならないよう気を付けなさい」
口をとがらせ、心配しているのか突き放しているのか分からない言葉を残し、ラピスが部屋から立ち去る。出て行った後の扉を塞ぐように、リラが出入り口に立った。それを確認したフィニアは懐から一枚の羊皮紙を取り出すと、コウヤへ差し出すようにテーブルへ置いた。
それは、とあるダンジョンの依頼書だった。
『ダンジョン名:黒牢宝窟』
ランク――A→EX(特殊危険指定)
踏破報酬――★秘密★
その他取得物――魔界の武器/防具、金銀財宝
階層数――4層
未帰還者数――9993人
残顕現可能日数――22891日
「なんだ、このダンジョン……。ランクEXって……?」
「通常のランクでは表せない脅威があると国が認定した場合に与えられるランクです。ダンジョンから採取される魔力はAランクの範疇ですが、実際の脅威度はSランクに比肩しております」
豪華すぎる報酬、九千人を超える未帰還者、そしてEXという見慣れないランク。規格外の情報を一度に突きつけられ、コウヤは思わず身震いした。そんな彼の様子を見て、フィニアはゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「ダンジョン法成立後、踏破や法令違反による処分、魔力不足など、さまざまな理由でダンジョンが消えていきました。そんな中、このダンジョンは……数百年間誰にも踏破されず、残り続けています。巷では、『踏破率0%ダンジョン』と言われているそうです」
「……つまり、それだけ多くの人を殺し続けてるんですよね。何か問題になったりはしないんですか?」
「ダンジョン自体は法令を守って運用されております。それに、ダンジョンには『残顕現可能日数』がございます。ダンジョンは死んだ人の肉や魔力を食らって存続する。逆に言えば、誰も挑まない理不尽なダンジョンは剪定されるはずなのです」
「……なるほど」
(だから、外れダンジョン呼ばわりされていた『万呪の遺跡』は残顕現可能日数が3日なんて限界を迎えていたわけか)
そこまで考えたコウヤは、ある一つの可能性に思い至った。
「つまり、このダンジョン……それだけ人気があるってことですか?」
「はい。このダンジョンを『踏破』した者はおりませんが、『生還』した者は歴史上複数人いらっしゃいます。その方々は皆……目も眩むほどの財宝を持ち帰っておりました。踏破しなくてもそれだけの報酬を得られるダンジョンは他にありません。多くの冒険者が夢を見てこのダンジョンへ飛び込んでいきました。ただ……」
「……ただ?」
コウヤの問い返しに、フィニアは目をぎゅっと瞑り、首を横に振って応えた。
「……帰ってきた人は例外なく、二度とダンジョンへ潜れなくなっていたそうです。お金を得たからではなく、ダンジョンへ強い拒否感を示して。それでも、まだ軽いほうです。中には一生をベッドの上で過ごすことになった者や、自ら命を絶った者まで……」
「人の心を壊すことに特化したダンジョン、ということですか……」
そこでコウヤは、二つのことに気づいた。
このダンジョンが、人の心を破壊する異常な場所であること。
そして、フィニア様たちがそこへ挑もうとしていることだに
「……では、どうしてフィニア様たちは誰にも知らせずにこのダンジョンに? 凶悪なダンジョンを攻略するのならば、国を挙げて行うべきではないでしょうか?」
「そ、それは……」
コウヤの言葉を受けたフィニアの目が見るからに泳ぐ。だが、やがて観念したかのように息を吐いた彼女は、ぐっと唇を噛み、コウヤへ視線を戻した。
「私は今、脅迫を受けているのです。そして、相手の要求はただ一つ、このダンジョンに入ること……なんです」
「脅迫……!? もしかして、誰かがこのダンジョンに囚われたりしているんですか!?」
「いえ、違います。囚われているのは物です。コウヤ様は……『白王紋』をご存知ですか?」
「びゃく、おうもん……?」
聞いただけでは何なのか分からず、どうしても首を傾げてしまう。そんなコウヤを見たフィニアは、何故かほっと息を吐いて、言葉を続けた。
「『白王紋』とは、我らホワイトグレイス王国の建国王が遺した、特殊な魔法紋章を刻んだ王家の印璽です。伝統として、王位継承と同時に王へ渡されます。つまり、それを所持することは、王位継承の正統性を示すに等しいのです。そして、先王である私のおじい様の治世に、行方知れずになりました。なった……はずでした」
「行方知れずだったのが、脅迫の道具に使われてるんですか……?」
コウヤの問いに深く頷いたフィニアが、懐からもう一枚……今度は真っ黒な布切れのようなものを取り出して、震える手でコウヤへ差しだした。
そこに書かれていたのは……魔族からの脅迫文だった。
『やあ、清純なる姫様。やっと、身体にいっぱい肉が付いてくれたね。そんな君を僕の最高傑作、『黒牢宝窟』に招待するよ。報酬に『白王紋』を紛れ込ませといた。もし100日以内に招待を受けなかったら、僕は悲しくて、他の国に渡しちゃうかもね! それは嫌だろ? お父さんみたいに、きょうだいで殺し合いなんてしたくないだろ?
――さあ、次は君の番だ!!』
「…………っ!!」
あまりに身勝手で、生理的な嫌悪を催すほど歪みきった文章にコウヤは最初、絶句することしかできなかった。ただ、何度も読み返しているうちに……ある一文字が目に付くようになった。
「……次? ということは、前があるのか?」
「……お母様は私が幼かったころ、このダンジョンに挑んで消えました。その理由を……私はずっと知りませんでした。この文を、見るまでは」
ぽつりぽつりと語るフィニアの方へ顔を上げたコウヤは……再び、絶句した。フィニアの目は今にも泣きだしそうなほど潤み、何か強い感情の表出を押しとどめているようで……何と言葉をかければいいか分からなくなってしまったのだ。
「さらに、『白王紋』の紛失により、王位継承権が不安定になりました。結果、お父様は王座に就くまでに……王位継承権を持つ兄弟姉妹と血で血を洗う殺し合いをすることになり、そして恐らく、私たちも同じ運命を……」
「だったらもう……オレなんかに頼ってる場合じゃないでしょう! 国の精鋭を集めたり、魔王軍とか、王様に頼ったり……もっとこう、色んな手段を使ってでも……」
コウヤはついに、ソファーから立ち上がって叫んでしまった。だが、フィニアは暗い表情を崩さないまま、首を横に振った。
「できません。民草は皆、『白王紋』が紛失していることを知りません。もし知ったら……王家の正統性は崩れるでしょう。魔王軍も、信用していないわけではありませんが、最重要機密を国外の軍事組織へ明かすわけにはいきません。そして、お父様が知れば……監禁してでも私をダンジョンに向かわせないでしょう。要求を拒むということは、この国の急所である『白王紋』が他国へ渡ること。王女として、その『最悪』だけは……絶対に避けなければなりません!!」
その断言は、フィニアがこれまで発した中で一番強い語気だった。いつの間にか、さっきまでの目の潤みも、暗い表情も、身体の震えも消えていた。一人の少女としての感情をすべて心の奥底へ押し込んだ、純然たる『王女』がそこにいた。
「だから私は『黒牢宝窟』を踏破し、脅迫を仕掛けてきた魔族をこの手で倒すことにしました。ですが、Sランク冒険者のパーティすら退けたダンジョンを攻略するのならば、世界の摂理すら踏み越える力が必要でしょう……」
ここでやっとフィニアは表情を緩め、コウヤへ微笑みかけた。その視線には何やら、期待のようなものが含まれている。
「――だから私は、コウヤ様をこの世界に呼んだのです。転生者は希少なスキルを得るという伝承を信じて。結構、大変だったのですよ? 古い文献をひっくり返し……転生者召喚の儀を今の世に復活させるのは」
「…………!」
はにかむフィニアの言葉に、コウヤはまるで胸を矢でぶち抜かれたような衝撃を覚えた。
(……オレの転生は、偶然じゃなかったのか。目の前の少女が、フィニア様が、オレをこの世界へ呼んだんだ。だから、オレのスキルが判明した時……この人だけめっちゃ庇ってくれたのか)
「……ですが、私の都合でこの世界へお呼びしたにもかかわらず、私はコウヤ様を守ることすらできませんでした。本来であれば国を挙げて歓待した後、国のために力を貸してほしいとお願いするつもりでしたが……今のコウヤ様にそれを言うのは、滑稽以外の何でもありませんね」
フィニアはゆっくりと立ち上がり、そして、深く、本当に深くコウヤへ頭を下げた。
「……お願いします。私と共に、ダンジョンに潜っていただけないでしょうか。私にできることであれば、なんでもします。あなたの力を私に貸してください。私にはもう……あなたしか、いないんです」
頭を下げながらもその澄んだ声は凛と張りつめていて、王女様に頭を下げられていると自覚してしまったコウヤは、再び身震いしてしまった。
(確かに、ラピスと一緒にダンジョンの踏破はしたが、そんな、踏破率0%ダンジョンをどうにかできるほどの力を、オレは持っているのか……?)
しばらく逡巡していると、フィニアは顔を上げ……再び、柔らかい笑顔をコウヤへ向けた。ただ、何故か扉を背にしているリラだけはコウヤを睨みつけている。コウヤはそれを、目の前で姫様が頭を下げていたら従者としては気に入らないだろうと合点した。
「……とはいっても、いきなりこんなこと言われても困るでしょう。ただ、転生者召喚の準備に時間を使いすぎました。100日の期限まで、もう10日も残されていません。それに、あまり長く王城から離れると怪しまれます。なので、明日までに回答をください。もし、コウヤ様が私と共にダンジョンに潜ってくださるのであれば、あなたが懇意にしているギルドの受付嬢に伝えてください。詳細は伏せたまま、話は通してありますので」
「……はい、分かりました」
頭の中で情報が処理しきれず、そんな回答しかできない自分を、コウヤは少し情けなく思った。それでも、一つだけ気になったことがあった。。
「……そういえば、フィニア様を脅迫している魔族って、どういうのなんですか?」
「『黒牢公』オルドレア、人と魔族が戦争していた時代から生きる長命の魔族で……魔王軍とはまた別種の権力を持つ、魔界の貴族です」
*
「はっ、はっ、はっ、はっ……!!」
薄暗い洞窟を、赤紫色の髪を振り乱したザミアが走る。ラピスを強く敵視する尊大なAランク冒険者の面影は、今の彼女にはほとんど残っていない。
「なんなのよ……この、ダンジョンはぁ……!」
心の奥底から絞り出したような、今すぐにでも泣き出しそうな叫び。そんな声が出るのも当然だろう。何故なら……彼女はパーティメンバーである騎士気取りの男たちから、襲われそうになったのだから。
このダンジョンに入ってすぐ始まった、命を賭けた陽気なクイズ。『第一問! ザミアちゃんは、頼もしい仲間たちのことをどう思っているでしょうか?』の答えが発表された時、空気が凍り付いた。
そのクイズによって、ザミアの本音はすべて暴露された。下心ありきで自分に尽くす仲間たちを内心では嫌悪し、十分に金を貢がせたあとは、適当なところで囮にして口を封じるつもりだったことまで。当然、大げんかになり……襲われかけたザミアは脇目も振らずに逃げ出し、今や全身傷だらけで洞窟を駆けていた。
「もう、やだぁ……こんなことになるなら……こんなダンジョン来なきゃよかった……」
ラピスを見返したい。ついでに一獲千金できれば儲けもの。そんな軽い気持ちでEXランクダンジョンへ入ったのが、運の尽きだった。数々の罠によって、ザミアの精神はすでに限界を迎えていた。
もはや莫大な財宝のことも忘れ、出口を目指して走り続けたザミアの目に……光が映った。薄暗いダンジョンに似つかわしくない、太陽を思わせる自然光が。
「あれは、もしかして……出口……!?」
光に導かれるように、一心不乱に走り出すザミア。途中にいた三つ目の蛇型の魔物を紫炎で焼き払い、光に辿り着いた彼女が見たのは……。
出口っぽく見えただけの、ただの壁だった。
「ぁ……う、ぁああああ……!!」
絶望で壁に頭を叩きつけ、言葉にならない叫びをあげるザミアは、確かに聞いた。自分の背後から、噴き出すような笑い声を。
「くくっ――あっははははは!」
振り返った先に立っていたのは、不気味なほど青白い肌をし、人形のように美しい顔だちを笑みによって歪めた、紳士装の魔族だった。
その手に掲げられた剣に突き刺さった、つい先ほどまで人間だったとは思えないほど白く磨かれた三つの頭蓋骨には、見覚えのある兜や首飾りが引っかかっていた。
「ほら、君のお仲間だ。いや、もう仲間じゃないかな? ……二重の意味で」
半笑いの魔族が剣を投げ捨てる。硬い石床へ叩きつけられた頭蓋骨は、粉々に砕けて白い破片へ変わった。だが、ザミアが白片へ目を向けることはなかった。それよりも……対面している魔族の方が何倍も恐ろしかったのだ。
魔族が纏う雰囲気はダンジョンに満ちた悪意をさらに濃縮したようで、ザミアの本能が死の危険を訴え、頭の中で警鐘を鳴らし続ける。
逃れられない死と対面したザミアが、それでも自らの命を守るために選んだのは……服を脱ぎ捨てての土下座――全裸での、無条件降伏だった。最後に彼女は、何人もの男を魅了してきた自らの身体に縋ったのだ。
「なんでもします! 一生の忠誠を誓います……! なので、命だけは、命だけは許してください……!!」
赤紫色の髪を振り乱し、豊満な裸身を地面へこすりつけ、ザミアは必死に懇願を続ける。それを受けた魔族は……ザミアを見下したまま、肩をすくめた。
「おいおい、やめてくれよ。僕は美食家なんだ。君みたいな下賤で不味い肉なんて食べたら、腹を壊してしまうじゃないか」
「だったら……許して、命だけは……!!」
「あー、はいはい。分かった、分かったよ。ごちそうが待ってるんだ、今は君なんかに構ってる暇はない。君を食べないであげるよ」
踵を返し、魔族は悠々と歩き去る。その背中が小さくなり、ザミアがほっと一息ついた瞬間……どこに息を潜めていたのか数十体の魔物が現れ、彼女へ襲いかかった。
「……僕は、ね」
「あ、いやっ、いやぁあああああああっ!!」
魔物の呻き声とザミアの叫びを背に、魔族――オルドレアは、懐から白色の王璽、『白王紋』を取り出し……紫色の舌で舐め上げた。
「れぇろ。やっぱり王族は……プレーンな聖属性魔法持ちに限るなぁ……!」
その日、『黒牢宝窟』の未帰還者は……9997人に増加した。