ラッキースケベ・トラップダンジョン ~外れスキル『ラッキースケベ』のせいで転生早々追放された俺が、踏破率0%の鬼畜迷宮をエロトラップ化したら、いつの間にか王女と剣聖に激重感情を向けられてました~ 作:マテリ-AL
「コウヤ様には――スキルを、『使って』頂きたいのです!」
四層に降りる前、フィニアから力強くかけられた言葉に、コウヤはまず……訝しげに眉をひそめた。
「……使う? オレのスキル、使う使わない以前に自分でも制御できないんだが」
「確かに、コウヤ様のスキルにはそういう一面もあります。ですが、それ以上に……明確に『使える』時がある、私はそう思っております」
「……うーん?」
自信満々のフィニアに対し、コウヤはピンとくるものがないようで、訳が分からないと言わんばかりに首を傾げている。その言葉で何かスイッチが入ったのか、フィニアはない眼鏡を上げるような仕草をした。
「――では、検証を行いましょうコウヤ様! まず、そうですね。私たちがオルドレアから逃げ出した時。飛ばされた私が地面に落下する寸前、いきなり地面からスライムが湧き出しましたよね。その時、コウヤ様は何をされてましたか?」
「何って言われても……全然大したことできてませんでしたよ。ただ、二人の無事を祈っていただけで……」
「いえ、あんな凶悪な魔族を相手にして逃げずにいてくださっただけで、十分凄いと思いますよ。では、続いて……」
フィニアの目線が自らの右手に向かう。人差し指に嵌められた母親の形見を数秒間じっくり見たフィニアは、改めて真っすぐにコウヤを見据えた。
「コウヤ様とラピス様が『万呪の遺跡』を踏破された日のことを、教えていただきたいです。踏破した後、具体的に何があったのかを」
「え? えーと……危篤のラズウェルさんに魔吸のアイリスを届けたんだっけ。お医者さんは一本じゃ治らないと言ってたけど、なんか奇跡が起きたとかで治って……」
「……っ!! ラズウェル様に奇跡が起こった時、コウヤ様は何をしておりましたか!?」
「え? その時もオレは何もできてなかった気がするな。何というか、ただ祈ってただけっていうか。ルゥリィはオレのお陰だって言ってたけど、正直分からない――」
「――そうですか、ありがとうございます!!」
困惑交じりのコウヤの返答を受けたフィニアは、何か確信を得たように深く頷いた。フィニアが言いたいことが分からないことに痺れを切らしたコウヤがフィニアへ問いを投げかけようとする寸前――フィニアの口が、暗唱するように動いた。
『自身に降りかかる不運を、えっちな事故へ変換する。
変換された不運の帳尻は、対象となった異性の側で合わせられる』
「それは……」
「コウヤ様のスキル、『ラッキースケベ』の全文です。ずっと、引っかかっていたんですよ。不運の帳尻という言葉が。そして、これまで起こった『理不尽なまでの幸運』はいずれも、コウヤ様が祈りをささげた際に発生しております。ここから導き出される、コウヤ様のスキルの本質は――」
フィニアが告げる一言一言に確かな重みがある。王女として、スキル研究に携わる者としての誇りを胸に、全身全霊でコウヤへ向き合っていた。
「――スキルの対象となった異性に幸運を蓄積し、スキル行使によって解放させる。蓄積された量によって、起こる幸運の質が変わる。共にダンジョンへ戻り、多量の蓄積があったルゥリィ様とラピス様には、重病のお母様を救えるほどの幸運が。追放前に一度接触しただけの私には、紛失物の発見という小さな幸運が訪れたんです」
「それは、そんな、ことが……」
「――と、いうのが私の仮説なのですが。いかがですか、コウヤ様!!」
「…………!!」
あまりの話に息を忘れたように、コウヤの口が何度か開いては閉じる。言葉が喉から出てこない。その苦悶交じりの表情は、否定したくても、その材料を見つけられずにいるようだった。
そんなコウヤへ向けてフィニアは真剣な表情に戻り、言葉を続けた。
「私のこれは、あくまで仮説です。二例分しか検証できていない以上、その全てが偶然ということもあり得るでしょう。ですが――もしもの緊急事態には、頼りに、させてください。我らが縋れる、最後の糸として」
「フィニア様……」
「――まぁ、コウヤ様がもたらしてくださった装備の力で、私もリラも強化されましたし、案外あっさり倒せてしまうかもしれませんが!!」
ぱっと何かを隠すようにフィニアの表情が明るくなる。その時丁度、階段前を覆いつくしていた魔物キメラ、その最後の一体がリラの大剣によって両断された。
「あ、リラの方が終わったようですね。行きましょう、と言いたいですがその前に……」
「その前に……?」
ここでフィニアはコウヤへぐっと距離を詰め――。
「……ちゅっ」
その頬へ、優しく口づけをした。
「――――!?!?」
身をのけ反らせて動揺するコウヤを見て、フィニアがくすりと優しい笑みを浮かべ……右手の指輪を、コウヤへ向かって突き出した。
「もし私の仮説が正しければ、母の形見であるこの指輪が見つかったのは……コウヤ様のスキルのお陰です。その、お礼をさせてください」
「いやでも、オレのお陰と決まったわけでは……」
「だとしても、ですよ。行きましょう、コウヤ様!」
強引な王女様はコウヤの手をとって引き、リラへ向かって駆け出した。
*
三層でのフィニアとの対話を思い返しながら、コウヤが祈りの体勢に入る。その胸中に渦巻いていた想いは……。
(正直、オレなんかがフィニア様の言うような奇跡を起こせる力を持っているとは、まだ信じられない。そもそも、ずっと不運に塗れ続けたオレが今更幸運の力を手に入れるなんてどういう冗談だ? ただ、それでも……フィニア様はオレを信じてくれた。考えてみれば、フィニア様はずっと、オレのことを信じてくれてばかりだな。だったら――それに応えるために、オレは今できることを、全力でするだけだ! あの魔族を倒すための幸運を呼び寄せるために!)
コウヤがぐっと両手を合わせ、祈りの体勢になる。すると、リラやフィニアの身体が淡く発光した。例えるなら、枕元のランプが落とす程度の薄明かり。二人がそれに気づいた様子もないあたり、それが見えているのはコウヤだけのようだ。
(この力で――『オルドレアを倒す』んだ!)
コウヤが祈りを強めると、光が彼の身体に収束。コウヤ自身の身体が発光を始めた。そして、光がシャボン玉のように弾けた、その時――。
……特に、何も起こらなかった。
「…………え?」
コウヤの目が驚愕で見開かれる。
刹那、肥大化した黒き触腕が――リラの脇腹を大きく抉り、空中へ弾き飛ばした。
「――ぁ、ぐぁあああああっ……!!」
騎士の肢体が鮮血をまき散らしながら宙を舞う。
赤黒い液体を浴びながら、フィニアはリラの落下予想地点へ向かって聖属性魔法の展開を行った。
『――ホーリーエクスヒールッ!!』
魔法陣の上に落ちたリラの傷がみるみるうちに治っていく。だが、全方位から迫りくる黒き触腕の猛攻は収まることを知らず、リラは傷が完治する前に魔法陣から出て対処せざるを得なくなってしまった。
対するオルドレアは自身を触腕で作った黒き牢獄で守りながら、触腕を束ねて肥大化させたり、電撃のような速さで突撃する触腕を生み出したりと……数百年の経験を活かし、自らの魔法を凄まじい勢いで進化させている。
攻撃を全て触腕に任せながら、オルドレアは再生させた両手を上に掲げ、演説を始めた。
「ま、本気を出したらこんなもんか。なあ、なんで『人魔迷宮協定』なんて下らない条約が締結されたか知ってるかい? それはね、魔王様が人間と魔族の『拮抗した戦い』を見るのが好きだったからなんだよ。だから、ランクによって対等な戦いを行えるダンジョン制度ができたんだ」
無数の触腕を束ねて極大まで肥大化させながら、オルドレアが嘲るように言葉を続ける。
「で、それができる前は人と魔で戦争してたわけなんだけど……魔族が強すぎて人間を一方的に蹂躙しちゃってたんだ。だから、魔王は戦争に飽きて勝手に和平条約を結んだ。分かるよな? 今、君達が文明を継続できているのは魔王様の温情なんだよ。なのに逆らうなんて――下等種族の癖に随分と身の程が分かってないみたいだなぁ!!」
「……その言葉は信用に値しません。人間側には違う伝承が伝わっておりますので」
「おいおい、当時を直接見てきた僕が言うんだぜ? それに実力差を見れば、どっちが正しいかなんて一目瞭然だろぉ? なぁっ!!」
強い語気と共に、成人男性数人分にまで肥大化した触腕がリラへ放たれる。リラは大剣の腹で強大な一撃を受け止めたが……。
「ぐ、う、あぁっ……!!」
脇腹の傷などが響き、受け止め切れていない。じわりじわりと限界が近づくリラの後ろからフィニアが抱きしめるように手を回し――結界を展開した。
『ホーリー・バインドバリア!!』
大剣の守護と聖属性の結界、二重の防壁によってやっと……巨大な黒拳はその動きを止めた。
「フィニア様……」
「二人で、耐えましょう。コウヤ様がスキルを行使されるまで!」
(――もう使っている!! オレは、スキルを使っているはずなのに――なんで、何も起きないんだ!?)
期待をかけられているのに、成功できない。前世でも何度もあったはずのそれが、なぜか今回だけひどく恐ろしくて堪らない。胃がきゅぅうと締まる。背中を冷や汗が伝い、異様な寒気が全身を走る。歯の根が合わず、カチカチと音を立てる。
そんなコウヤの脳裏に、三層でのフィニアの言葉が去来した。
『蓄積された量によって、起こる幸運の質が変わります』
『飛ばされた私が地面に落下する寸前、いきなり地面からスライムが湧き出しましたよね』
(――まさか、一回目オルドレアから逃げる時に蓄積された幸運を解放してしまったせいで、今使える幸運が足りていないのか?)
その可能性に気づいた瞬間、コウヤの顔がさぁと青くなる。だが、それでも、祈りの体勢を崩すことはなかった。
(……いや、諦めるな。オレのスキルなんだから、オレ自身の力で融通を利かせられるはずだ! フィニア様もリラも、オレなら何とかできると信じて戦ってる。だったら……その期待に応えたいんだ!!)
もう一度、コウヤが身を捧げる覚悟でスキルを行使しようとした、その時――。
優しい光が――幸運が黒に満ちた世界へ落ちてきた。
*
ほぼ同刻、ルゥリィはラピスに連れられて『黒牢宝窟』のある山に訪れていた。理由は、彼女自身にも分かっていない。コウヤが家を発って少しした後、ラピスが急に行くと言い出したのだ。
(お姉ちゃん……コウヤさんのことが心配なのでしょうか……?)
そうして山に到着したラピスは、何をするでもなくただじっと山の方を見ているだけ。姉の考えが分からずその後ろ姿をじっと見ていたルゥリィはさらに後ろから声をかけられた。
「いやー、ラピっちゃんの言葉足らずはいつもの事だけど、今回は極まってるねぇ! ま、無理やりダンジョンに入ろうとしないだけ大分マシだけどさ。感謝しなよ? アタシが休みの日だったことにさ」
その正体は金髪ショートな冒険者ギルドの受付嬢。ラピスが『黒牢宝窟』へ向かったことを察知してついてきた彼女は、にぱっとした笑顔のまま悠々とルゥリィを通り越すと……ラピスの肩に肘を置いた。
「これ、あれでしょ? コウヤのことが心配になっていても立ってもいられなくなった!!
――ってのが普通の人の回答なんだろうけど、ラピっちゃんは違うよね?」
「……なんで、そう思うの」
「結構付き合い長いから分かるんだけどさ。ラピっちゃんって、コウヤ君のこと心から信頼してるよね。つまり、『コウヤ君がダンジョン内で横死する』なんて可能性はまっったく考えていない」
「……え? そうなんですか……?」
呆気にとられるようなルゥリィへ受付嬢が横顔を見せる。口角は上がり、頬肉は緩んでいたが……その目は全く笑っていなかった。
「ラピっちゃんが怖いのは……『コウヤ君しか帰ってこない』場合。政治的にコウヤ君を守る方法がないんだ。だから、そんな最悪の場合には、ラピっちゃんはルゥリィちゃんとコウヤ君を連れ、爛れた逃避行を――へぶっ!!」
ラピスの頭突きが受付嬢の顔にクリーンヒットする。
顔を抑えのけ反った受付嬢は、不満気な視線をラピスへ向けた。
「い、いったいなぁ!! ……間違ったことは言ってないだろ?」
「『爛れた』逃避行なんてするつもりはない。……それに、ルゥリィには秘密にしてたのに、何で言うのよ」
「だからさあ、ラピっちゃん。そうやって隠すところが良くないんじゃないかい? それをやりすぎた結果、ルゥリィちゃんは自分が必要にされてないって思ったんだろうに」
「…………っ」
口を尖らせる受付嬢の言葉に反論できず、ラピスはぐっと押し黙る。
そんな口下手な姉の近くにルゥリィが寄ると……姉は怯えたように身体を竦めた。
「ルゥリィ、その。ちゃんと事前にお母様とは話し合ってて……」
若干ずれた釈明をするラピスを見て、ルゥリィは僅かに口角を上げた。
「コウヤさんなら大丈夫ですよ、お姉ちゃん。お母さんを救ってくれた時のようにきっと、みんなを救って……」
ズゥンッ!!
「…………!」
地の底で『何か』が鳴動するような感覚がして、ルゥリィの言葉が止まる。
だが他の二人は何も感じていないようで、むしろ急に口を閉ざしたルゥリィの方を不思議そうに眺めていた。
「うん? どうしたんだい? お腹すいた?」
「…………いえ」
(この感覚、覚えがあります……!)
地の底で脈動する『何か』へ、ルゥリィがその意識を集中させる。例えるなら、悪意という黒に満ちた世界を優しく照らすカンテラ。だが、今は光を灯すだけの燃料が足りず、身の回りのものを火にくべているような焦燥感に満ちている。そのカンテラの、持ち主は……。
「コウヤさんが、困ってます……!」
「……! どういうこと!? 私たちに出来ることはある!?」
ラピスがルゥリィに視線を合わせ、問いかける。ルゥリィはしどろもどろになりながらも、自分にしか伝わらない感覚を言葉にし始めた。
「コウヤさんは今、奇跡を起こそうとしていて……。でも、そのための幸運が足りていないのです……。だから、無理やりどこかから調達しようとしていて……」
「…………そう」
「え、え? 何を言っているんだい? 言ってることがあんま分かんないんだけど!」
ルゥリィの感覚が理解できず右往左往する受付嬢に対し、ラピスは顎に手を当て目を閉じ、ルゥリィの言葉の咀嚼をするように、深い思考の海に潜り始めた。
数秒後、目を開いたラピスが告げたのは……。
「……だったら、私たちの幸運をコウヤに届けたい。できそう? ルゥリィ」
「できる……かもしれません……。コウヤ様は今強い祈りと共に、幸運を探しております。それに呼応させるように私たちもダンジョンへ祈りを捧げれば……」
「わかったわ。やりましょう」
「はい……!」
ラピスの言葉で、ルゥリィが祈りの体勢に入る。そんな二人のやり取りを見ていた受付嬢は頭を掻きむしりながらラピスを睨みつけた。
「ちょっとちょっと、何を言っているか全く分からないんだけど!?」
「――ダンジョンへ向かって、祈りを捧げて。コウヤたちの無事を祈って。それだけやってくれればいいわ」
「……はぁ、分かったよ。黙ってやればいいんだろ」
確信に満ちたラピスの言葉に受付嬢は理解を諦めたようにため息をつきながらも手を握り合わせ、ダンジョンへ向かって祈りをささげた。
「とっととダンジョンから帰ってきてよ、コウヤ君。キミには待っている人がいるんだからさ。あと、王女様たちも。ダンジョンで王国関係者が死んでギルドに監査とか入るの嫌だから、生きて帰ってきて欲しいなあ!!」
後半部分に明らかな私欲が混じった祈り。それでも、淡い白の光球が受付嬢の身体から放出される。唯一、その光景を目の当たりにできたルゥリィは、何か確信を得たように言葉を紡ぎ始めた。
「大丈夫です。私たちがついてます。だから必ず……皆で、帰ってこられますよ……!!」
ただ真っすぐで必死な祈り。
すると、ルゥリィの身体から受付嬢のと同じ大きさだが、数倍の濃さを持った白き光球が放たれた。ラピスもそれに続くように手を祈りの形にすると……ただ一言だけ、ぼそりと呟いた。
「……帰ってこなかったら、許さないから」
声量の小ささに反比例するような、極大の白光球がラピスの身体から放出される。そうして放たれた三つの光球は一つに集約し、まるで引き寄せられるようにダンジョンの入り口へと向かった。
「また、奇跡を起こしてください……。コウヤさん」
光球は既に、ダンジョンへ消えた。
それでもずっと、ルゥリィは祈りを捧げ続けていた。
*
「…………!」
手を掲げ、世界に落ちてきた光球を受け止める。
瞬間、コウヤの頭に光球に込められた祈りが去来した。
「……! ルゥリィ、ラピス、受付嬢まで……!」
コウヤが目を見開く。
「……ありがとう!」
一言、確かに口を動かしてお礼を言うと、祈りの体勢へと移る。
その視線の先には、強者の愉悦に浸りながら暴れまわるオルドレアの姿があった。
(……その上で、この力をどうやってアイツにぶつける? フィニアたちに幸運を届けたとして、それは一戦目の再演にならないか? 直接ぶつけたら、ただの攻撃魔法にならないか? それで本当に、アイツは倒せるのか? 逃げられないか?)
ここでコウヤは初めて、自分が今までいかに無軌道にスキルを振り回していたのかを知った。その上で強大な敵を倒すために、脳髄の果てまでアイデアを絞り続ける。
(とにかく、アイツを確実に倒すためには、何をしても上手くいかないって状態にしないと。それこそ、転生前の、オレの、よう、な……)
「…………ぁ」
瞬間、コウヤの頭に去来したのは――転生前の、それも幼少期の記憶だった。
幼い頃から、何をやっても上手くいかなかった。
積み木で塔を作ろうとすれば、隣の子が城を作れそうだからという理由で崩され、持っていかれ。
本を読んでみては、窓から入ってきたカラスにビリビリに破かれる。
何をしても失敗する彼に、大人たちが期待を寄せることもほとんどなかった。
だが、そんな彼でも一度だけ、褒められたことがある。
それは、木から落ちそうになった園児を受け止めた時のこと。
当然失敗し、その園児も彼も怪我を負った。だが、保育士の先生は「ナイスファイト! よく頑張ったね」と、彼を褒め称えたのだ。
あまりに意外だったせいか、彼は目が飛び出そうな程仰天し、何故褒めたのかを聞いた。
「――たとえ失敗したとしても、誰かを助けたいと想うその気持ちには、価値があるから」
……その日、彼の中に灯った光は淡く、それでも絶えず輝き続けている。
死んだ後も、ずっと。
――そして、転生した世界で。
初めて、自分を助けてくれる人ができた。
自分を信じてくれる人ができた。
その人たちを助けるためなら。
二葉幸夜は、どこまでも――。
コウヤの顔から、色が消えた。祈りを捧げる手がさらに固く結ばれ、まるで儀式のようにその口が動く。
スキルが花開く。もう、迷いはない。
これ以上ないほど鮮明に、イメージできてしまった。
黒牢公オルドレアが地獄へ落ちる姿を。
(そうだ。アイツを――オレと同じ所に落とせばいいんだ)
『