ラッキースケベ・トラップダンジョン ~外れスキル『ラッキースケベ』のせいで転生早々追放された俺が、踏破率0%の鬼畜迷宮をエロトラップ化したら、いつの間にか王女と剣聖に激重感情を向けられてました~ 作:マテリ-AL
藍色の岩壁に囲まれたダンジョンで、コウヤは銀灰色の前髪で目元を隠した少女、ルゥリィから、この世界のダンジョンの仕組みを教えてもらっていた。
「え? ギルドに来るダンジョンの依頼って……魔族が作ってんの?」
「は、はい……。魔族がダンジョンを作って依頼を出し、それを冒険者が攻略する。それが、人魔迷宮協定……通称ダンジョン法で定められた仕組みです」
「じゃあ、違法ダンジョンは……」
「依頼を出さず、こっそりダンジョンを表出させ……非戦闘員を取り込むことを目的としたダンジョンです。ちょうど……私たちのような人が標的、なんです……」
ルゥリィの声が段々と震えていく。真っ青な彼女の顔を見たコウヤはそれ以上の質問ができなかった。
「私……私のせいです……! 私がお姉ちゃんの言いつけを破ったから、罰が当たったんです……! あなたまで巻き込んで……本当に、すみません……!」
せき止められていた川が決壊するように大粒の涙をぽろぽろと流し、ルゥリィは懺悔するようにコウヤへ頭を下げた。だが、コウヤは……ただ、ゆっくりと顔を横に振るだけだった。
「いいや、違うな。これは……オレのせいだ」
「え……?」
顔を上げたルゥリィの、前髪に隠れた目元を見据えるようにほんのわずかだけ屈み、言葉を続けた。
「実はオレ、不幸体質でさ。道歩いてて金落としたりとか、ちょっとでも生モン食ったら腹壊すとか割と当たり前だったんだ」
「それは……大変ですね……」
「だろ? でな、たまにだが、もっと酷い目に遭って大怪我するんだよ。多分、それに巻き込んじまったんだ。本当に、迷惑かけちまって悪いな」
階段から落ちたり、車に轢かれたり……コウヤがこれまで受けてきた不幸を数えればキリがない。ただ、この世界へ来てから、コウヤの不幸体質は何やら別の形に変わっている。それを考えれば、このダンジョンに放り込まれたことだけは、純粋な不運だったのかもしれない。
……だとしても、絶対にこの子のせいではない。それが、コウヤの考えだった。
「巻き込んじまった立場で言える事じゃないんだけどさ。オレ、ダンジョン経験ないからこういうとこから出る方法知らなくてさ。だから……協力してほしいんだ」
ほぼ初期状態の冒険者カードをルゥリィへ見せる。『ダンジョン踏破実績:なし』の文字がコウヤにとっては妙に眩しく光っているように見えた。それを見たルゥリィは、出会ってから初めて、明らかに表情を綻ばせた。
「わ、わかりました……。私もできるだけ頑張ってみますので……よろしくお願いします、コウヤさん……!」
*
「こういう洞窟型のダンジョンはとにかく上を目指せば、出られるはず……」
「よし、とにかく上なら……こっちだな」
ルゥリィのアドバイスに従い、とにかく上り坂のある方へ進む。歩きながらもコウヤはルゥリィへ質問を投げかけ、ダンジョンに関する情報を集めることにした。
「こういうダンジョンで気を付けるべきものってなんだ?」
「罠と魔物……ですね。特に罠は、魔族が意図して仕掛けたものと、ダンジョンの魔力によって自動生成されるものがあります。自動生成された方は、稀にこちら側に利することもあるそうですが……あまり、期待してはいけません」
「なるほどな…………っ!? なんか、いるな」
何やら獣の唸り声のような音が聞こえたのでコウヤは会話を打ち切り、周囲を確認する。岩壁の陰から曲がり角の先を覗くと……そこには二足歩行する獣型の魔物が広間の一角に集まり、何かを食べているようだった。
「あれは……コボルトという魔物ですね……」
「何の戦闘力も持たないオレらじゃ見つかったらマズイ。音を立てずに離脱を……」
その時、話し声を不審に思ったのかそれとも偶然かは分からないが、コボルトのうちの一匹が二人の方を向く。その姿を正面から見たコウヤは、恐怖ですくみあがりながらも、どうにか叫び声だけは出さないよう口を押さえつけた。
……何故なら、そのコボルトは口に人間の頭蓋骨を咥えていたからだ。
「ひっ……!!」
だが、ルゥリィは恐怖に耐えきれなかったようで、叫び声をあげてしまう。すると、他のコボルトも一斉に二人の方を向いた。ほかのコボルトたちも、それぞれ人骨をくわえている。どうやら、ダンジョン内で斃れた人間の骨を弄んでいたらしい。
「ご、ごめんなさ……っ!」
「謝る前に逃げるぞ!」
ルゥリィの手を引いて走り出すと同時に、コボルトの集団が一斉にコウヤたちを追いかけてくる。距離はあるのだが、明らかにコボルトの方が走る速度が速いため、コウヤたちはすぐに追いつかれてしまうだろう。
どこかに隠れるか、二手に分かれるしかない。コウヤがそう考えたそのとき、二人の逃げる先に、緑色の光を放つ魔法陣が現れた。
「あれは……転移罠です……! ただ、どこに行くかは分かりませんが……」
「どこに飛ぼうが、即死さえしなければ今よりはマシだ! 行くしかない!」
二人が迷いなく緑色の魔法陣に乗ると、魔法陣から目を開けていられないほどの光が放たれる。視界が戻ると、同じ洞窟内ではあるが、これまでと全く違う場所にいた。
「ふぅ……とりあえず、一難去ったか」
「それどころか……魔力濃度的に、これまでより出口に近いです……。奥の方が魔力が濃いので……」
「おぉ、マジか」
スタート地点からのやり直しも覚悟していたコウヤは胸が軽くなるのを感じた。そのまま息を整え、一歩踏み出した――瞬間、カチッという音がして、二人の足元から風が吹きあがった。
どことなく覚えのある突風により、再びルゥリィのローブと前髪がめくれ上がる。だが、今度のコウヤは……前髪の下にある瞳ではなく、ローブの中に目を奪われてしまった。
ルゥリィはローブの中に……何も、穿いていなかったのだ。
ルゥリィの下腹部にうっすら生えている銀灰色の恥毛と何にも隠されていない秘部を目の当たりにした瞬間、あまりの衝撃にコウヤの頭は真っ白になった。顔へ一気に熱が集まっていく。
「あ、あぅ……」
だが、それでもルゥリィはローブの裾ではなく前髪を押さえたせいか、彼女の無防備な下半身は風が収まるまでの妙に長い時間、コウヤへ向けて晒され続けてしまった。
風が収まった後、ルゥリィは石像のように身体を硬直させたままなコウヤの視線に気づいたのか、慌てて前髪を押さえたまま、口を開いた。
「す、すいません……私、人と目を合わせて話すの苦手で……でも、目を逸らして話すのもバレたくなくて……つい、顔を隠しちゃうんです……」
(下半身をさしおいて!?)
コウヤは叫びかけたが、寸前で言葉を呑み込んだ。そして彼は、ルゥリィの下着がなぜ消えたのかに思考を巡らせた。
(ダンジョンに入った時は穿いてたから……まさか、さっきの転移罠か?)
「……そういや、さっきの転移罠踏んだ時、何か持ち物が消えたりしてないか? 何か対価を払わせるタイプの罠だったら怖い」
とりあえず当たりをつけたコウヤは、遠回しに確認をしてみることにした。ルゥリィは自分の持ち物を一通り確認する。その途中で、ふと背後の岩壁へ目を留めた。
「……あっ」
下着がないことに気づいたのかと、コウヤは思わず身を乗り出す。だが、ルゥリィはなぜか彼へ背中を向け、岩壁に空いた小さな穴を覗き込んだ。
「……ど、どうしたんだ?」
「ちょっと……この岩壁の奥に……何かが入ってるように見えたんです……」
低い位置にある穴を覗くため、ルゥリィは四つん這いになった。そのまま穴へ手を伸ばした少女のローブが捲れ、小ぶりながらも確実に肉のついている無防備な丸尻がコウヤへ向かって突き出される。ふりふりとまるで誘っているかのように丸尻が揺れる間、コウヤの思考は再び働かなくなってしまった。
「……とれました。これは……鍵、ですね……なにかに、使えるかも……」
穴から手を引き抜いたルゥリィは、何やら装飾の付いた鍵をコウヤへ差しだす。脱出の糸口を見つけたかもしれないためか、その口角は僅かに上がっている。
(いや、それより――結局下着が消えたのは気づいてないのか!? それとも、気づいたうえで放置してるのか!?)
だが、コウヤは……下着の行き先が気になってそれどころではなかった。
【罠解説】
『代償転移罠』
ランダムな所有物を対価として、転移を行う罠。
対価となった物の所有者に対し、失ったことに気づけなくする暗示もかけられる。
『風罠』
下から風を吹き上げる、古典的な罠。
もし何かしらの原因で下着を失っていた場合、破壊力は二倍どころでは済まなくなる。