ラッキースケベ・トラップダンジョン ~外れスキル『ラッキースケベ』のせいで転生早々追放された俺が、踏破率0%の鬼畜迷宮をエロトラップ化したら、いつの間にか王女と剣聖に激重感情を向けられてました~ 作:マテリ-AL
ギルドから出たコウヤとラピスは、王都からずいぶん離れた森にある祠のような場所に来ていた。祠の前に立ったラピスは冒険者カードを取り出すと、コウヤへ手を差し出した。
「ここが『万呪の遺跡』よ。冒険者カードを渡して、ダンジョンと契約するから」
言われるがままコウヤがカードを渡すと、ラピスは自身とコウヤのカードを並べて祠の上にある祭壇のような場所に置いた。すると、祠が低音を響かせて鳴動し、魔力でできた門が開いた。それを確認したラピスが冒険者カードを回収し、コウヤへ返す。
「はい、契約完了。これで、私たちはダンジョンに登録されたわ」
「あ、ありがとう。……なんというか、ちゃんと契約とか必要なんだな」
コウヤは、ダンジョンとは勝手に開いている場所を探索するものだと思っていた。そのため、魔法的な契約によって厳重に管理されていることを意外に感じた。
「当然よ。『魔族・魔物が人類を襲えるのは、原則としてダンジョン内のみ』だけど、『人類は、ダンジョン内で死んでも自己責任』が、ダンジョン法の基本原則。だからこそ、ダンジョンに入る前には契約が必要なのよ」
「……なんか、人の命が軽いな。いや、確かに、覚悟ある人しか入れないようになってるんだろうけど……」
「嫌なら入るな、って考え方のようね。それに、ダンジョン法が施行される前は人類と魔族で戦争してたらしいし。それに比べたら幾分かマシって話でしょ」
「確かに、ダンジョン以外で死ぬ人は減るだろうけどさ……」
前世の平和的な倫理観を引き継いでいるせいか、コウヤは釈然としないように眉をひそめる。そんな彼の様子を全く意に介さず、ラピスは門へ足を進めた。
「1層が終わる頃に役に立つかを判断してあげる。役に立たなかったら外に放り出すから……せいぜい役に立ちなさい」
「……オレを外に出して、その後どうするんだ?」
「…………」
ラピスが押し黙ったことで、コウヤは……自分が頼れなかった場合、ラピスは単騎一人でダンジョンに強行するつもりだと察した。もう、その選択肢しか残されていないのとも。
そんなことを考えながらコウヤは足を進め、門の前に立つ。ラピスに合わせる形で足を一歩進めると……そこはもう、閉ざされた遺跡の内部だった。
「警戒しなさい。ここから先は、昨日の違法ダンジョンとは格が違うわ」
ラピスの声が、冷たい石造りの遺跡の中で反響する。換気が全くされていないためか、コウヤは何かよくないものが滞留しているような息苦しさを感じた。
「このダンジョンの特徴は、呪いによる罠が張り巡らされていること。気づいたら手遅れ……なんて事態を避けるために、危険な目に遭ったらすぐに叫びなさい。命だけは助けてあげるわ」
腰の剣に手を当てながら、胸を張って鼻を鳴らし、ダンジョンの奥へ向かって歩き出すラピス。その姿には、Aランク冒険者として、『剣聖』として……同行者を死なせるわけがないという矜持のようなものが見て取れる。
ラピスの後を追うように、コウヤの静寂に満ちた石の道を歩いていると……何やら獣の唸り声のようなものが聞こえた。
「……この扉の向こうね」
角を曲がると、人間の数倍はあろうかという荘厳な石扉。扉に近づくにつれ、唸り声が大きくなっていく。扉の前に立ったラピスが腰から剣を引き抜くと……青色の閃光が走り、扉がバラバラに砕け散った。
開かれた扉の先の大部屋にいたのは、巨大な斧を持った、体長数メートルはある、筋骨隆々な牛型の怪物……ミノタウロスの群れだった。群れはコウヤたちの姿を視認すると、雄叫びをあげながら突進を始めた。
「後ろ、警戒してなさい。高位のダンジョンは入るたびに構造が変わるから、経験があんまり通用しないの」
コウヤへ短くそう告げると、ラピスは青色の魔力を纏いながら、ミノタウロスの群れの真ん中に飛び込んだ。当然、それに反応して斧がラピスへ向かって振り下ろされる。だが、斧はラピスへ届くことなく……青色の閃光に裂かれ、ミノタウロスごとバラバラになった。
その後も、ミノタウロスはラピスへの攻撃を何度も続けたが……ラピスの放った剣閃、青色の光はそのすべてを正面から打ち砕き、ミノタウロスを肉片と化した。
(……流石、『剣聖』と呼ばれるだけはある。滅茶苦茶強いな)
コウヤが最初に抱いたのは、そんな感想だった。今なぎ倒されているミノタウロスの一体一体が、低ランクダンジョンならボスを張れそうなほどの実力を備えている。それが全て雑魚扱いなら、本当に、誰かの助けなんて必要なのか? コウヤは、首を傾げてしまった。
バラバラになったミノタウロスの肉片が、黒い靄になって消滅する。かなり異様なその現象にコウヤが目を奪われていると、すぐそばから戦闘を終えて戻ってきたラピスの、冷ややかな声が聞こえてきた。
「ちゃんと警戒しなさい。ダンジョンは、魔族の腹の中。魔物は死ねばすぐに消滅するし、人間の死体も肉と魔力が分解されて、骨だけ残る。そういう場所なのよ、早く慣れなさい」
「ああ、悪い……」
申し訳なさそうにラピスの方を向いたコウヤは……ラピスが切り裂いた肉片のうちの一片が、ラピスのすぐ後ろで妖しく黒光りしているのを見た。
「――ラピス!」
「――っ!?」
コウヤが声をかけたその瞬間、肉片が破裂。辺りに黒き光がまき散らされた。ラピスはすぐに飛び退いたが、光を浴びてしまう。すると、ラピスが纏う青色の魔力に黒色の澱みが混じり……その身体がふわりと浮いた。
「…………え?」
いきなりの異常にラピスの目が見開かれる。手足を動かして地面へ降りようとするが、何にもつかまれず、空を切るばかりだった。自力で地面に降りるのは不可能だと判断したラピスが魔力を放出させようとするが……黒色の澱みに阻まれ、魔力が霧散してしまう。
「何もできない。これじゃ……!」
「グロォオオオオオオオッ!!」
ラピスが危機感に満ちた叫びをするのと、大部屋の奥にある扉を突き破ってミノタウロスが飛び出してくるのは、ほぼ同時だった。しかも、そのミノタウロスはこれまでのと比べてひときわ大きく……鎧まで身に着けている。
「……まずいな」
だが、ラピスは既に結構な高度に至っている。これ以上高く浮かび上がられたら、手が届かなくなる。そう察したコウヤは迷わず地面を蹴って飛び、空中に浮くラピスへ背中から組み付いた。
「……はっ!」
「きゃっ……!?」
その手に重くて肉厚な感触がし、ラピスが驚きの声をあげるが、コウヤは気にしている場合ではなかった。組み付いたまま可能な限り身体を後ろにそらし、重心を下へ向ける。すると、ゆっくりとラピスの身体が下がっていく。だが、そうしている間にもミノタウロスは確実に一歩一歩、舌なめずりしながらこちらへ近づいている。
(あの斧の範囲に入ったら終わりだぞ……)
内心で焦りながら、コウヤは腕の力でラピスの身体に組み付き続ける。そうして……ラピスの足が地面に触れたその瞬間、ラピスの魔力に混ざっていた黒色の澱みが地面へ流れ出し、その身体が重さを取り戻した。
「おわっ……!」
当然、下から組み付いていたコウヤはその下敷きになる。背中とお尻に痛みを感じながら、ラピスに怪我がないかを確認すると……。
「あ、んぅ……そこ、食い込んで……だめっ……! おっぱいも、そんな強く揉まないで……んぁ……!」
コウヤの右手はラピスの豊満な胸を鷲掴みにしており、左手はピンク色のリボンがついた下着を引っ張り、ラピスの秘部へ深く食い込ませてしまっていた。特に胸の方は、手の中では、何やら小さな突起が徐々に硬くなっていく感触まで伝わってきた。そう認識した瞬間、コウヤは慌てて手を離し、ラピスの身体を自由にする。
ミノタウロスはもう、コウヤたちの目の前まで迫っている。その斧が二人へ振り下ろされそうになった、その瞬間……コウヤの眼前で蒼光が弾け、ミノタウロスの脳天を貫いた。
ミノタウロスが地面に倒れる重低音と、斧が地面に落ちる金属音が重なる。青銀の軌跡が消え、そこに立っていたのは……頬を赤く染めて剣を構える蒼銀髪の美人、ラピスだった。
「感謝なんてしないから……ヘンタイ」
ぷいっと顔を背け、ラピスが扉の奥へ進んでいく。コウヤはその姿に強さよりも……美しさと、それ以上の申し訳なさを感じてしまっていた。
*
その後もコウヤたちは遺跡を進んでいたが……やがて、ラピスが首を傾げ始めた。どうしたのかとコウヤが聞いてみると、じろりと睨まれた。
「よくよく考えたらさっきの罠、いつものと違ったのよ。ああいう呪いって普通、もっと解除手順が複雑で……」
冒険者としての勘か、経験か……どうにもしっくりときていないようだ。だが、コウヤの顔を探るように見つめると、渋い顔をして首を振った。
「いや、流石にないわね。行くわよ」
ふん、と鼻を鳴らし、歩を進めるラピスの後をコウヤはついていく。あれでいつもよりも簡単なんだったら、やっぱり一人でこのダンジョンは進めないんじゃ……とコウヤは思ったが、声には出さなかった。
しばらく進んでいると、再び開けた部屋に出た。部屋の中央には台座が設置され、壁には絡み合う二人の人影が彫り込まれている。
「なんなのかしら、この部屋……? このダンジョンで壁画なんて、初めて見たけど……」
身体から魔力を迸らせ、最大限に警戒しながらラピスが部屋へ入っていく。それに続いてコウヤが部屋へ入ると……二人の警戒を嘲笑うかのように、出入り口が閉じ、地面から黒色の光が沸き上がった。
「――っ!?」
「なんだ、コレ……!?」
光に触れた瞬間、手の甲に500という数字が浮かび上がる。何の数字か考えている間に、数字は499、498……と確実に減っていく。それでコウヤはすぐに理解した。
「カウントダウンかこれ。0になった時どうなるかは……あんまり、考えたくはないな」
「――はぁっ!!」
ラピスが数十本の剣閃を扉や壁に放つが、傷一つついていない。恐らく、条件を満たさないと出られず、呪いも解除できないタイプの罠なのだろう。その条件に、心当たりがあるとすれば……。
「祭壇と、壁画か……」
すごく単純に考えれば、二人で協力をし、祭壇の上で壁画に示された姿勢をすれば何かが進むのだろう。
(ただ、この体勢はちょっと……過激じゃないか? 別の道があるならそっちを使いたいんだが……)
念のためコウヤがドアを強く押してみるが、全く反応はなかった。ラピスも同じことを考えたようで、壁などに魔力を飛ばし、別の脱出方法がないかを探している。そうしている間にカウントダウンが400になった――瞬間、二人の腕にまるで酸でもかけられたような痺れた痛みが走った。
「――っ!」
痛みは一瞬で消えたが、記憶には焼き付いてしまう。コウヤもラピスも、それで察してしまった。このタイムリミットが0になった時、何が起きるのかを。
「……っ、やるしか、ないようね」
ラピスの表情が一気に険しくなる。口の端を歪め、心底嫌そうにしながらも、ラピスは服のボタンを外し……乳房を放り出した。当然、ピンク色の突起――乳首も丸見えになる。
「――ほら、私のおっぱいに顔、うずめて」
そう、壁画には、男が女の生乳に顔をうずめる絵が彫られていたのだ。だが、コウヤはまだ覚悟を決められず、眉をひそめて首を振った。
「いや、ちょっと落ち着いてくれ、まだ探せるところが……」
「いいから! 早く、私のおっぱいに顔をうずめなさい!! 私があなたに、お金を出しているのよ!?」
美少女が自身の巨乳に顔をうずめるよう命令してくるという、謎な場面にコウヤは混乱しながらも、観念したように祭壇へ足を進める。コウヤが祭壇に入ると、ラピスはその首根っこを掴んで自らの胸へ押し付けた。
「ぐむっ……!」
コウヤが視界が真っ暗になり、顔全体が柔らかくぽわぽわした感触に包まれる。鼻腔が甘い匂いに埋め尽くされるが、吸ったら最後、ラピスに殺されそうな気がして、コウヤは息をつい止めてしまった。そのまま十秒くらいぱふぱふされ続けただろうか。ガタンという、壁画が地面に落ちる音がした。
「終わり、次行くわよ」
ラピスがコウヤを突き飛ばして胸から離す。その勢いに負け、コウヤは地面に倒れ込んでしまった。
「次は……。……はぁ」
他の壁画を確認したラピスが、大きくため息をつく。そして次の瞬間、コウヤの顔にピンク色の布で隠された尻がすごい勢いで迫ってきた。
「むごっ……!?」
むっちりと柔らかく、それでいて確かな暖かさを持った丸尻を顔に押し付けられ、コウヤは再び息ができなくなる。
(まずい。流石に息が苦しくなってきた。少しだけでも、息継ぎを……)
「むがっ、ぐっ、もごっ……」
「ひゃっ……な、なに口を動かしてるのよ! 今すぐやめなさ……ひぁあ……!」
コウヤが口を動かしたのがくすぐったかったのか、ラピスの腰が少しだけ浮く。コウヤはその間に息を可能な限り吸い込むが……その一瞬後、ラピスはさらに体重をかけ、むぎゅぅううと、コウヤへお尻を押し付けた。
「動いたらやり直しじゃない……大人しく尻に敷かれてなさい! あと、もし匂いとか嗅いだら、叩き切るから……!」
「ぐ、む、ぐぅう……」
むちむちと柔らかい肉圧に押しつぶされ、息ができない。だが、息をしたらラピスに殺されるかもしれない。コウヤはどっちにしても死が待つ幸福な地獄に引きずりこまれてしまった。
尻に潰されて昇天しそうになるのを、コウヤが必死に耐えていると……やっと、壁画が地面に落ちた。すぐに尻がコウヤの顔から離れ、息ができるようになった。
「はぁ、はぁっ……!」
空でも飛んでいるかのような解放感と共に、コウヤが新鮮な空気を肺へ取り込み続けていると、ラピスが背中を向けた。
「……次は、あなたの番よ」
ラピスの視線の先にある、三枚目の壁画には男が女の身体を持ち上げている絵が描かれていた。これまでのように死にかけたり、誰かを脱がせたりする姿勢ではない。それを見たコウヤがほっと息を吐く。
コウヤが立ち上がると、ラピスはしぶしぶと言わんばかりに足を開き、コウヤへ身体を預けた。
「ふんぬっ……!」
むっちりとした感触と共にコウヤはラピスの太腿を掴み、その身体を持ち上げる。そのまま壁画のような体勢になるように調整すると……ラピスがM字開脚をし、股間を強調するような体勢になってしまった。
思ったより恥ずかしい体勢になってしまったことを自覚したコウヤが目を逸らしていると、ラピスが後頭部でコウヤの胸を叩いた。
「……まだ、壁画通りの姿勢になってない。私が調整するから、目、瞑って」
「そうなのか? どこを間違えて……」
「いいから! 目を閉じてなさい!」
ラピスの気迫に圧され、コウヤは咄嗟に目を閉じる。そのままラピスは、コウヤに持ち上げられながら、もぞもぞと身体を動かした。そうして、ラピスが身体を動かすのをやめた、つまり、壁画通りの体勢になったと分かったその時……。
カウントダウンの進む右手から魔力が逆流した。瞬間、目を閉じていても明確に分かるほど、コウヤの意識が薄れ、『自分』を手放しそうになる。
「…………っ!」
唇を噛んで、どうにか持ちこたえる。だが、不味いことに、ふらついたことでコウヤは体のバランスを崩してしまった。このままだと倒れそうだ。それを自覚したコウヤは、目を開いてどうにか平衡感覚を取り戻そうとした。そんな彼の目に入ってきたのは……。
「ふ、むー……」
スカートを口に咥え、手を内腿に当て、下着越しに秘部をくぱぁ、と開くラピスの姿だった。瞬間、コウヤの視線が泳ぐ。そんな彼の視線の先、壁画女性側の姿勢は、今のラピスと重なっていた。どうやらこのあられもない姿をしてやっと、壁画と同じ体勢になるようだ。
流石に見ているのは悪いと思い、コウヤが再び目を閉じようとしたその時、壁画が落ちた。
「終わりね」
それを見たラピスが、まるで矢が放たれるような勢いでコウヤの手から降りる。改めてコウヤが手の甲を見ると、235というカウントを刻んでいた。恐らく先程の意識消失現象は、250……制限時間の半分で発生するペナルティなのだろう。
次のペナルティで何が起きるか分からない以上、早めに終わらせないと……という思いと共にコウヤは四枚目、最後の壁画へ視線を向ける。
そこでは、男が女を包み込むように抱きしめていた。
「……なんか、急に楽になったわね。さっさと終わらせるわよ」
ラピスが釈然としない顔をしながら両手を広げる。どうやら、楽すぎて何か裏があるんじゃないかと疑っているようだ。
「変なところ触ったら叩き切るから」
「分かってるよ」
壁画の姿勢に合わせるように、コウヤがラピスとの距離を縮める。ほぼ密着状態になると、二人は互いにその背中へ手を回した。
本気で抱きしめているわけではない緩い密着なのだが、衣服が乱れているせいかラピスの無防備で豊満な胸がコウヤの身体で押しつぶされ、その柔らかさを主張し続けている。
だが、変な反応をしたらまたラピスに怒られるとコウヤは分かっているため、心を無にしてひたすらに壁画が落ちるのを待っていた。
「………………」
(なんか、長いな。これまでなら既に終わっているぐらい時間が経っているのに、まだ壁画は落ちないのか?)
不審に思ったコウヤは顔を上げ、改めて壁画を観察する。壁画を注意深く観察したコウヤは、壁画の男が、女の頭を撫でていることに気づいた。
「悪い、ちょっと壁画の体勢になるようにするから」
ラピスの頭に手を乗せ、なるべく髪の毛を乱さないように優しく動かす。
「……ん」
頭を撫でられたラピスは一瞬ぴくりと身体を震わせたが、すぐに落ち着いてコウヤの手に身を任せた。
初対面で見せた苛烈さや、『剣聖』という称号、そして圧倒的な強さ。そうしたもののせいで、コウヤはラピスをどこか超越した存在のように思っていた。だが、抱きしめてみれば、その身体は驚くほど華奢だった。彼女もまた、一人の少女なのだ。
(……よくよく考えたらこの子、この若さで母親の病気を治すために命を賭けるっていうかなりの無理をしてるんだよな)
そんなことを思いながらコウヤがラピスの頭を撫でていると……壁画の落ちる音がして、二人の手からカウントダウンが消滅した。
「よし、これで終わりみたいだな。きっと道も開けて……ない?」
急いでラピスの身体から離れたコウヤが出入り口を見たが、扉は開いてなかった。カウントダウンが止まったのなら、罠は終わったのではないか。そんな疑問と共にコウヤがラピスの方を向く。
「なんで、やめるの……?」
すると、ラピスは迷子になった子供みたいな不安に満ちた目で、コウヤをじっと見つめていた。その両手はまだ開かれており、まるで再び抱きしめられるのを待っているかのようだ。
「え……」
コウヤがラピスを抱きしめてたのはあくまで壁画に合わせるため。終わったら、抱きしめる理由はない。そう言おうと思ってもできないほど、ラピスの瞳は熱を帯びていて……互いの間に形容しがたい空気が流れる。
ガタンッ!
瞬間、何かが外れる音が部屋に響いた。
「――っ!?」
微妙な空気が壊れ、ラピスが臨戦態勢に入る。音源は祭壇の中央。目を向けると、床が抜けていた。はしごがかかっており、下の階へ繋がっているようだ。
「こっから脱出しろってことだな。これならついでに、次の階に降りれるだろうし」
コウヤがラピスを見やると……ラピスは何かを言いよどむように口をもごもごと動かしていた。
「このダンジョンの階層移動って、階段のはず。つまりこれは、天然ダンジョンによる『裏道』? Aランクダンジョンで『裏道』なんて、聞いたことない。何が原因かって言われたら……」
「ど、どうしたんだ?」
「…………」
コウヤの顔を見たラピスはふぅと息を吐くと……ゆっくりとはしごへ向かって歩きだした。
「……何でもない。それより、早く来なさい。次の階層に行くわよ」
「お、おう……?」
首を傾げながら、コウヤははしごの前に立つラピスのもとへ走る。その瞬間、彼の頭の中で、このダンジョンに入る時ラピスが放った一言がフラッシュバックした。
『1層が終わる頃に役に立つかを判断してあげる。役に立たなかったら外に放り出すから……せいぜい役に立ちなさい』
(あれ? 次の階層に行けるってことは、ラピスはオレを役に立つと認めてるってことか?)
首を傾げるコウヤに対し、ラピスはそれが当然だと言わんばかりにコウヤが来るのを待っていた。
【罠解説】
『浮遊の呪い』
身体を浮かせる呪い。
地面を踏ん張れないため身動きが取れず、ついでにスキルも封じてくる。
対象者が接地すると、解除される。
『ポージングトラップ』
制限時間以内に所定のポージングをすることを強いる罠。
本来であれば、関節を逆向きに曲げたり、腕を切り落としたりしないとできないポーズを強いてくる。