二年ほど前のちょっと眼病を患って長期休載した際のお詫びだった気がします。
もとは友人(漫画家さん)との与太話で東方の同人誌を出さないか
みたいな話をした際に原作として書いたものがベースです。
「何よ、あんなに邪険にしなくてもいいじゃない」
ぶちぶちと文句を垂れながら、少女は空を行く。
空飛ぶ大岩に腰かけた少女、名を比那名居天子という。
天人である。
「本気で嫌がらなくたっていいじゃない……」
暇を持て余し、異変を起こした時ならいざ知らず、間欠泉が湧いた、と聞いてちょっと遊びに行っただけ。
だと言うのに巫女を筆頭に皆、蜚蠊でも見たような扱いに、密かに天子は傷付いていた。
ぶちぶちと文句を垂れつつ、何気なく髪を手で梳く。
じゃりとした感触に表情を歪める。
段幕ごっこで巻き上がった砂埃が付着しているのだ。
「やだなぁもぅ……あれ?」
ふと地上を見ると山中から湯気が上がっている。
「あんなところに家?なんだろう?」
興味を引かれた彼女は一軒の庵へと降下してゆく。
まず、湯気の源を確認する、庵に隣接する半露天風呂がそれであった。
「へぇ~地上の物にしちゃ風情があるじゃない」
大岩をくりぬいた立派な浴槽から、ほかほかと湯気が上がっている。
「ちょうど良いわ」
弾幕ごっこで汗もかいたし、髪も埃っぽい、どこかで水浴びでもしよう。
そう思っていた矢先だったのだ。
主の許可を得ようと言う発想は無いらしく、天子はぽいぽいと服を脱ぎ捨てると浴槽に飛び込む。
「あ~ちょうどいい湯加減だわぁ、気持ちい~!」
ぐ~と伸びをすれば、惜し気もなく裸身が晒す。
生憎胸はさほど大きく無い、正確にはか、なり残念な大きさ、しかし均整のとれた肢体は、若い牝鹿を連想させる健康的な美しさに溢れていた。
鼻歌を歌いながら髪を梳いて砂埃を落とす。
「お酒の一杯もあれば完璧なのに~♪」
「呑むか?」
「え?あるの、ちょうだい……ひいっ!」
全く気配を感じさせず一人の男が天子の後ろで座って居た。
庵の主なのだろう、風呂に入りに来たのか当然全裸、手には酒器が一式。
「きゃぁ!ちょっと何見てんのよ!」
慌てて胸と恥部を手で隠す天子、男の視線から逃げるように背を向け、体を縮ませる。
「人様の家の風呂を無断使用しとるくせに何をいっておる」
まぁいいがな。そう男は笑い、ざぶりと風呂に入る。
「呑まんのか?遠慮はいらんぞ?」
「うぅ~~何よ何よ何よ!私の体を見て無反応なわけ?逆に失礼よっ!」
「ワシは風呂場では欲情せん性質なのさ、浴場だけにな」
カカカと下らない冗談を言って男が笑う。
「ワシは夜智王、ご覧のとおりの蛇だ、お主は?」
「……」
「だんまりか?まぁ神社を倒壊させたと噂の天人殿であることは知っとるがな。ほれやらしいことはせんから、出会いを記念して一杯呑もう」
「嫌よ!ばか!すけべっ!」
そう言って天子は風呂を飛び出すと服を拾い隣接する脱衣所へと逃げていった。
おやおやと蛇は楽しそうにその後ろ(と形の良い尻を)見送り、また一杯盃を干した。
「おや天女殿、まだおったのか?」
「私の裸見て、ただで済むと思ってるわけ?罰としてお酒とご馳走を用意しなさい!」
「酒はともかくこんなあばら屋でご馳走は無理ぞ?味噌でも舐めるか?」
「しみったれた話ね!まぁ良いわ、お酒!ほら早く!」
「ははは、いかにも天人らしい高慢ちきだの、まぁそんな女子もワシは嫌いではないがな」
先日香霖堂で買った旧式(氷を入れて冷やす型)の冷蔵庫から麦酒の瓶を出し、壺中天からジョッキを取り出し天子に渡す。
「上手い具合に冷えておるぞ、風呂上がりはこれに限る」
黄金色の液体が泡を立てながら酒杯に注がれる。
「何これ?泡?面白い!」
「ほれ乾杯だ」
「乾杯!」
ころころと良く表情の変わる娘だな、可愛らしい、そう蛇は思う。
炭酸の刺激にビックリしている様はどこかあどけなくも見える。
「くぅ~冷た~い、にが~い、でもこのしゅわしゅわがおいし~」
「それは良かった、いまいち受けが良くなくての」
幻想郷では麦酒を製造している物がおらず、これは夜智王の手製だった。
幾人かに呑ませたがあまり評判が芳しく無い。
夏になれば評価も変わろう、その時は天狗と河童を誘って、大量生産し一儲けしようか。などと考えているのだった。
「でもあんまり強くないのね」
「その分沢山呑める、ほれもう一杯」
「そっか、それもそうね」
「らいたいひろいとおもふぁない?みんなひててんひのことひゃけんいして!」
「そうだのぉ天子はこんなに可愛いのにのぉ」
完全に呂律が回っていない天子が何度目になるのかわからない愚痴を吐き、ぐいっ!とまた酒をあおる。
空になったジョッキにとぽとぽと夜智王は酒を注いでやる。
酒精ではなく、炭酸に酔っているらしく、天子はへべれけになっていた。
夜智王の膝の上に座り、くてんと背を預けている有り様である。
「ひぅ……やひおうはやふぁひいね」
「おお何故に泣く?天子。ワシは女子の涙が弱点じゃ、泣かんでおくれや」
「らって……」
急に涙声になり始めた天子がぽつぽつと語り出す。
それは天界でのことらしかった。
偶然だった、男達が集まり酒を呑んでい近くを通りがかったのは。
漏れ聞こえてきたのは、聞くのが不快になるような、女の品定めのだった。
あちらの娘がどうの、こちらの娘はどうの。
暇を持て余す天人がする、どうでもよい話。
下世話な内容に顔をしかめ、その場を離れようとした、その時、不意に天子の名前が出た。
比那名居の総領娘はどうか?
一瞬の沈黙後、男達は大笑いを始める。
嘲りを含んだ、嫌な笑いであった。
「それはあり得ぬ」
「おこぼれで天人になった小娘ぞ」
「それにしても不良すぎる」
「せめもう少し器量が良ければなぁ」
「器量は悪くはないさ、だがあの貧相な体では」
耳を疑うような言葉の数々と嘲笑が響く。
ぐらりと地面が揺れた、いや天子がそう感じただけであり、実際はあまりの精神的な衝撃に天子がよろめいたのだ。
弾けるように天子は走ってその場を去る。
自室に閉じ籠り、寝具を被っても、男たちの嫌な笑い声が耳にこびりついて離れない。
耐えかねたように天子は天界を飛び出し、地上へと降りたのだ。
「嫌な事を思い出せてしまったな」
えぐえぐと幼子のようにぐずる天子を抱きよせ、背中をさする。
酔っぱらってタガがはずれているのか?泣きじゃくりはじめた、天子をあやす。
「そう泣くな。天子は十分過ぎるほどに可愛いぞ」
「ほんろ……?」
「本当だ、まぁ乳は控えめだがな」
「ひどいよ、ひにしてるのに……」
天子はおためごかしを言う男は好きか?
そう問う夜智王に、ふるふると天子は首を振る。
「乳の大きさで女の器量が決まるわけではあるまい」
「……やひおうははどっひがふき?」
「でかい方が好きだ」
「ばかっ!」
即答した夜智王を天子が思いきり殴りはじめる。
「痛い痛い、やめておくれや」
「おっぱひなんれ、たらのにふのからまりひゃない!」
「悲しい事を言うで無いよ天子、女子の乳にはな、男の夢が詰まっておるのだぞ」
「わるかったふぁね!ふまってなふって!」
「ん?」
ふと天子が目を覚ますと、秋の太陽は既に落ち、外は闇の帳が落ちていた。
ぱちぱちと音を立てて燃える囲炉裏の炎と、部屋の隅に置かれた、灯籠の淡い明かりだけが辺りを照らしている。
「(あたし、いつのまに眠って……なんだかあったかい……)って!?」
「目が覚めたか天女殿」
「や、夜智王……」
身を包み込む、幼子の頃父親の膝の上で眠った時にも似た、心地好い温もり。
酔って、泣いて、怒って、疲れ果てた天子は、夜智王の膝の上、その胸に背中を預けて眠ってしまっていたのだ。
粗末だが清潔な毛布が掛けられており、屋内に忍び込んでくる冷たい夜気から天子を保護していた。
この程度の寒さで天人が風邪を引くことは無い、だが女が体を冷やすと良くない、という夜智王の配慮だった。
「(あたし……なんで……あ、ああああああぁぁ!!)」
酔っていたとはいえ、晒した醜態を一気に思い出した天子の全身から血の気が引く。
次いで叫びだしそうな程の恥ずかしさに、首まで真っ赤に染まった天子は、そんな様を見られまいと、ぐいっと毛布を引っ張り顔隠す。
「段幕ごっこで疲れたのであろ?布団を敷こうか?」
「う……あ……えと……」
「どうした?」
泣き疲れて寝てしまったことを知っていながら、わざと夜智王はそんなことを言った。
気遣いが優しさが、身に染みる。
天子には分かっていた、夜智王は確かに優しい、だがその優しさには、下心がある、女を「その気にさせる」嫌らしい優しさなのだ。
しかし、心の隙にするりと忍び込んでくる“それ”に抗うのはひどく難しかった。
「夜智王」
「なんだ?」
「あたしのこと可愛いって言ったよね?」
「ああ、天子は可愛い、お世辞ではないぞ?」
「おっぱい小さいよ?」
「乳の大小で女の器量が決まるわけではないよ。天子を笑った男共、モテぬ男の戯れ言など気にするな」
「うん、ありがと……でも、夜智王はおっぱいの大きい、艶っぽい女の方が好きでしょ」
「そうだな」
「……少しはおべっかも使おうよ」
「ふふ、すまんな、これも性分よ。そんなに乳のサイズが気になるのか?」
「ふぇ?」
天子の胸を、ごく自然に夜智王の両手が包む、突然のことに天子がすっとんきょうな悲鳴を上げる。
「やぁっ」
殆ど起伏の無い天子の胸を、すっぽりと包んだ夜智王の手が、やわやわとマッサージし始める。
優しげなその動きに、天子が堪え切れず、甘い声をあげる。
心地よさに、はぁぁと熱い吐息が漏れる。
「敏感な可愛い乳ではないか、ん?」
「だめっ、て……動かすな、ひぅっ!」
「小さなおっぱいには希望が詰まっておるのだぞ?可愛い女子の可愛いおっぱいを育てる楽しみは、また格別でなぁ」
きゅうっと夜智王の手が嫌らしく天子の胸を揉みしだく。
びくん!と天子の体が痙攣する。
「ふぁっ!……だめ、やらしいのだめ、やめてぇ」
「可愛い声でそんな事を言われても説得力が無いぞ?」
「あっ……やめっ!はずかしいよぉ」
すっかり涙腺が弛んでいるせいか、ぽろぽろと泣き出す天子。
夜智王は手を止めると、そんな天子の涙を拭ってやり、なでなでと、童にするように頭を撫でてやる。
「の?小さい乳でも気持ち良いだろ?」
「やちおうのすけべ……」
「男の膝の上でそんなことを言っても説得力は無いぞ」
「……お尻になんかかたいのが当たってる」
「天子があんまり可愛く喘ぐから、愚息が元気になってしまったわ」
ははは、と悪びれもせず夜智王は笑う。
「あたしに、欲情してるの?」
男達に嘲笑されたのがよほどに堪えたのか、天子はか細い声で夜智王に問う。
恥ずかしいのだろう、顔を見られたくないのか、体をずらして、夜智王の胸に顔を埋めてしまう。
なんともいえず愛らしい様子だったが、意地悪をするように夜智王は、くいと天子の顔を上に向けさせる。
潤んだ瞳で天子は夜智王を見つめてくる。
「身体は正直だぞ?」
「あたしを……抱きたい?」
「ああ、天子が諾と言うならな」
「い……良い」
つっかえがちに、了承の返事を返そうとする天子の唇を、指で押さえ夜智王は黙らせた。
「そんなに簡単に男に体を委ねてはだめだぞ、天子。世の中には初な女を騙すのが得意な悪い男が多いのだからな」
その筆頭のくせに、いけしゃあしゃあと夜智王は説教をする。
「……いや」
「何が?」
「あたしが可愛いっていうなら、あたしを抱いて証明してよ、夜智王」
頭にこびりついた、男達の嘲笑を忘れさせて頂戴?
そう掠れた声で、だが傲慢な口調で呟いて、天子は夜智王を見やる。
その瞳に宿った力強さが、夜智王には惹かれた。
「承ろう」
「気持ち良くしてくれなかったら、承知しないんだからね、こんなボロ屋、すぐに潰しちゃうんだから」
「それは困るな」
強がるような天子のセリフを塞ぐように、夜智王は天子の唇を啄ばんだ。
「んっ……ん~……ふえ?」
季節感の無い、常春の天界では感じられない、晩秋の冷気が少女の頬をなぜる。
それは、懐かしい感触、かつて常人《ただびと》であった頃を少女に思い出させた。
「あっつ……ぃ?」
清々しい冷気が火照る顔を心地よく冷やす。
何故こんなにも体が熱を持っており、また気だるいのか?
寝惚けた頭を捻る。
粗末な寝具の感触もまたおかしい、それは普段少女が使う、上等の布を使った物とは、比べるべきもない。
しかし不思議と嫌ではない。
「(おひさまのにおいだぁ……)」
そして何より、隣に居る誰か、その人肌の妙に心地よい温もり。
まどろみの淵で天人の少女……天子はその感触にくすぐったそうに身をよじった。
「(なんだっけぇ……えっとぉ……あ。あああああぁ!)」
昨晩の秘め事が次々と脳裏をよぎる。
当然の様に自分の醜態、痴態もである。
「(うわぁぁぁぁぁ、私ってば、なにやってるのよぉぉ!)」
ざぁっと全身の血の気が引く、だが青ざめた頬は、すぐさま押さえがたい羞恥によって朱に染め直された。
あまりの恥ずかしさに脳内でごろごろと悶え転がる少女。
「天子の胸は可愛いぞ」
接吻の後。そう言いながら、蛇は丹念に天子の未成熟な膨らみを愛撫しはじめた。
コンプレックスである“やや控え目”な胸を散々に弄られ、天子は乱れに乱れた。
思い出すのも恥ずかしい、甘えた声で鳴いて、夜智王にすがりついた。
「(ううう、私のばか……)」
男と夜を共にするのは初めてではない。
遠い昔、まだヒトであった頃、幼馴染みの男の子と、初めて同士の不器用な交歓を数度経験している。
それ以来の久方ぶりの情交、それに加えて夜智王の手練手管が巧みだったとはいえ、あの恥態は酷すぎる。
昨夜の自分を脳内で何度も張り倒す、たがやってしまったことは消えるはずもない。
「(し、しかも……)」
何度も絶頂に達し、気絶するように眠りに落ちてしまった。
つまり――
「のぉ?さっきから何を百面相しておるのだ?」
「や、やちおう……?」
目を開け、恐る恐る声をかける。
とっくに目が覚めていたのか、閨を共にした蛇妖が返事を返す。
「おはよう天子、まぁまだ夜は明けておらんがな」
「お、おはよう……」
「天子の寝顔、愛らしかったぞ?」
「は、恥ずかしいこと言わないでよぉ!」
抱き合って眠っていたので、無防備な天子の寝顔を夜智王は見放題だったらしい。
恥ずかしそうに天子は顔を逸らそうとするが、夜智王は天子を抱き寄せてそれを阻む。
むーむーと可愛らしく唸りながら、夜智王の胸に顔を埋めて隠すことで羞恥を誤魔化す。
「素敵な一夜であったぞ、ん?」
恥らう天子が可愛くてしかたないのだろう。優しく天子の寝乱れた髪を梳いてやりながら夜智王は、甘い声で囁きかける。
「天子は良くなかったか?」
「……それは……まぁ、悪くなかったというか、まぁまぁというか……」
「素直でないな、昨夜はあんなにも甘えた声で鳴いてくれたというのに」
「は、はずかしこと言うなぁ!!もうっ!ばか!えっち!」
昨夜の情事を思い出せるような、淫らな夜智王の物言いを、どんどんと天子は頭突きを夜智王の胸板に叩きつけ、黙らせようとする。
しかし「痛い、痛い」とちっとも痛そうにない口調で言う夜智王は、愉快そうに笑うばかりだ。
ぐいと天子を抱き寄せ仰向けに寝転がり、天子を自分の上に乗せると、その尻に手を伸ばす。
「やぁ、なにしてんのよぉ!」
「旨そうな桃があるのでな」
「もー!夜智王のすけべ!」
「はは、何を今更」
はぁ、と悩ましく天子が息を吐く。
火照る体に、どこかひんやりとした夜智王の体が触れると、たまらなく心地好い。
まだ昨夜の愛撫の余韻が残る乳房を、無意識に夜智王に押し付けてしまい、ちりちりとした淡い快楽に、艶めいた嘆息がまた漏れる。
「やん、あたってるよ……」
「わざとだ」
「すけべ……」
天子の腹部に押し当てられた夜智王の逸物。
びんびんにいきり立ったそれの熱が、天子の快楽を煽る。
それが怖くなった天子は、身を浮かして肉棒をから離れる。
不自然な姿勢と、尻を撫でられる感触にぷるぷると震えながら、天子は恐る恐るの口調で夜智王に問うた。
「……ねぇ」
「なんだ?」
「……夜智王は……その、だ、だして……ないけど」
先刻気がついた事実。
昨晩の交わりで、一度も夜智王は精を放っていない。
挿入《いれ》た途端に天子が立て続けに絶頂に達し、そのまま果ててしまったからだ。
男とはそんなでも良い物なのだろうか?そうではないはずだ。
「ああ、心配せんでも、天子のなか《・・》はとてもに良かったぞ?」
天子がそちらの心配していないことを承知の上で、にやにやと意地悪そうな笑みを浮かべ蛇は囁く。
「そ、そんなこと聞いていないし!」
真っ赤の顔を、さらなる羞恥で朱に染めた天子が、噛み付くように言い返す。
予想通りの反応に満足しつつ、夜智王が愉快そうに笑う。
「ははは、接して漏らさずは房中術の基本中の基本。たっぷりワシの中で練った気をくれてやるつもりだったのだがなぁ」
当然、気を“吸われて”いる天子が先に果てるのも仕方の無いことよ。と夜智王は天子が悪く無いと言う。
「だが、まさに“蛇の生殺し”よの」
カカカと下らない冗談を言って笑う。
「……それで、いいの?」
「まぁ昨晩は傷心の天子を慰めるのが目的だったからな、ワシの愉しみは二の次でよかろ」
にっ、と一見は屈託のない笑みを浮かべる夜智王。
天子は言葉に詰まってしまう。
「もちろん、これからもう一戦するのはやぶさかではないぞ?うん?」
「うぇ……」
到底「嫌」と言える状況では無い。
だが昨夜ねちっこい夜智王の愛撫と責めを考えると「夜智王が愉しむ」という行為はどれ程のなのか?
いったい何をされるのか?
それを想像すると、恐怖がまず先に立つ。
怖いのだが……
「嫌か?」
「い、いいよ……?」
「ほぉ言質は取ったぞ?」
「変態的なのはやだよ!鞭で叩くとか、ローソクとか」
「ははは、なんだ興味が有るのか?」
「無いよ!有るわけないでしょ!」
「ふぅん……えすえむごっこが良いか、そうかそうか」
「ひ、人の話を聞きなさいよぉ!」
憤慨する天子を無視し、掛け布を跳ね飛ばし、身起こした夜智王が天子を引き寄せる。
昨夜のまま、一糸纏わぬ天子は恥ずかしくて仕方が無い。
ぎゅっと目を瞑り震える天子の瞳を、どこから取り出した布で巻いて隠す。
「ひっ、やぁ!何?何してんのよぉ!」
「目隠し位なら、痛くは無いし初心者には丁度よかろ?なんなら腕も縛るか?」
「やだ!ばかっ!……やぁ!」
勝手に解こうとする天子を強く抱きしめて阻む。
急に強く抱擁された天子の体温が急上昇し、心臓がドクンと鼓動を大きくする。
「ふふん。興奮しておるのか?心の臓がドクドクと鳴いておるぞ?」
抱いた天子の耳と首筋をゆるゆると唇で愛撫し始める。
「あっ……やだぁ、やだよぉ、んっ!……やちおう、いじわるしないでぇ」
「なんだ怖いのか?」
「こわっ……こわくなんてないわよっ!……あ、んっ」
「ほれ、怖いなら遠慮無くワシに抱きついてこい」
囁かれる夜智王の蠱惑的な声と睦言、肌に触れる熱、舌や唇の感触、上等の美酒のように甘くくらくらする不思議な夜智王の体臭。
視覚を封じられ、他の感覚が敏感になっているせいだろう、それら全てが天子の官能を疼かせる。
昨夜の情事の余韻が残る身体は、すぐさま火が付き、みっともないほどに、より強い刺激を求める。
それが、ひどく天子には恐ろしかった。
まるで自分の身体では無いようで。
それを許容しようとしている牝の本能を理性が拒絶する。
ごまかすように、促されるままに夜智王の身体に抱きつけば、ちりちりと疼き始めた胸がぐにゅりとつぶれ、淡い快楽が体を満たす。
「ふふ、天子の身体は抱いているだけで良いな、とても佳いぞ」
「ふぁ……やぁ、やちおうのばかぁ、すけべぇ」
夜智王の股間の剛直が熱と硬さを増し、密着する天子の腹部を犯す。
男の欲望の象徴である熱に、天子は耐え難い快楽を覚えてしまう。
「あっついよぉ、やちおうの……やだぁ、うごこさないでぇ」
「天子の女陰を割りたくて仕方ないのだろう、なにせおあずけが長かったからなぁ」
「こんなの……はいらないよぉ」
昨夜よりも強く怒張した肉棒は、逆に恐怖を誘う。
ふるふると首を振り怖がる天子。
そのわななく唇を啄み、安心感を与えながら夜智王は笑う。
「では一度出すか?膣中に注げんのは残念だが、天子が苦しい思いをするよりもよかろうて」
「だ、出すって……」
「昨夜は散々ワシが天子にご奉仕したのだ、今度は少しは天子が返す番であろ?」
「う……あ……そうだけどぉ……うまくできないよ?」
生娘でこそ無いが天子の男性経験は、まだ人間であったころ、幼馴染の少年との幼い情交のみ。
当然だが、男性を喜ばす手練手管など持っていない。
「ふふ、それがかえって良いやもな、ほれまずは手で」
震える天子の手を取り、そっと自身の分身へと導く。
「ねぇ、めかくし、とって。ほんとにうまく、できないよ?」
「いや、下手に見えるよりいいさ。指先の感覚に集中するのだ」
「ひぅ!」
天子の繊手が剛直に触れる、焼ける様な熱にびくっと天子が震えるが、構わず夜智王天子に肉棒を握らせる。
「ふふ、天子の手が触れただけで心地好いぞ。手淫はしたことはあるか?」
「は、はじめてにきまってるじゃない!きのう、せつめい、したでしょ!」
「そうか、では天子の手の処女はワシが頂いたということだな」
「な、なによそれぇ」
「どうだ?ワシの愚息は、天子の初めてを奪ったのと比較して?」
恥ずかしい事を言わせようとする夜智王に、ふるふると天子が首を振って拒否するが、許さんとばかりに夜智王は天子へ愛撫をして責める。
くりくりと乳首を弄られた天子が甲高い嬌声を上げて身を捩る。
発狂しそうな快楽に理性が悲鳴を上げる。
「ほれ、言うのだ?それとも一度イクか?胸を苛められてイクのが天子のお好みか?」
「はぁ……やぁ……んっ……だめぇ」
「ふふ、すっかり芯までほぐれたな?小さいのは確かだが、ほんに敏感な良い胸だぞ?」
「ふぅ……おっぱぃ……いいのぉ……おかしくなっちゃうよぉ……やめてぇ……ふぁ……んんっ!」
不意打ち気味に、夜智王が天子の口を塞ぐ。
天子の唇を貪った後、薄く開かれた天子の唇を割って、夜智王の舌が天子の口内を犯す。
つんつんと天子の舌をつついて促し、おずおずと動きだした天子の舌に、夜智王の舌が絡みつく。
甘い吐息と唾液が交わる度、天子の頬が上気し、表情がとろんとしてゆく。
当然手は留守となるが、構わず夜智王は天子といやらしい接吻を続ける。
「ちゅ……んっ……はぁ……やちぉ」
長い接吻の後、ようやく夜智王が顔を引くと、二人の間に唾液がいやらしい橋を作る。
「天子の唇は桃の味がする、甘くて旨い、いくらでも吸っていたいのぉ」
薄く笑った夜智王はそんな感想を漏らし、軽い接吻で天子の唇を奪い涎を舐めとる。
「ふぇ……なんか……からだが、あっついよぉ」
これまでも身体は火照っていた、だが接吻の最中から、どんどん体温があがり、まるで熱病に罹った様に身体が熱い。
「なに……したの?……こんなの、へんだよぉ」
「ワシの体内にある媚毒を、今散々飲ませた唾液に混ぜた」
天子の表情からさっと血の気が引いてゆく。
いったいどんな影響が有るのか、今は酩酊感と、発熱、疼痛があるだけだ、このまま夜智王と交わり続ければ、一層その“媚毒”とやらを摂取することになるのか。
想像するだけで、恐ろしい。
「なに、それぇ、ばかばかばかぁ」
力無くぱたぱたと天子が暴れる。
可愛いのぉ、と嘯いて夜智王はそんな天子のおでこに接吻をする。
「怒った顔も可愛いな」
「おこらせてるのはあんたでしょ……ばかぁ……いじわるぅ!」
「既に一夜を交わしたと言うのに、やたら遠慮するお主が悪いのだぞ、うん?すっかりお手々はお留守だしなぁ」
ひょいと天子を抱き上げ、ひっくり返すと後ろ抱きの格好で抱きなおす。
「やっ!やっ!お、おしりに……かたいのびくびくって……やぁ、だめぇ!……うぅ……やぁ……きもちいいよぉ……」
「天子の尻肉は良いなぁ?ここは乳と違って解さんでも柔らかい。そのくせ弾力がある。ほれ、ワシの愚息も喜んでおるぞ」
尻の割れ目を割って、押し付けられた夜智王の剛直が、ぴくんぴくんと動く。
本能的それを押し出そうとした天子の白桃のような尻肉が果たせず、ぎゅうと剛直を挟む。
「あんっ!……だめぇ……うごかさないでぇ……こすっちゃだめぇ」
天子の尻肉の感触を楽しむように、夜智王が腰を使う。
焼け串のように熱い怒張に、ちりちりとうずく菊門が刺激され。
排泄器官を責められ快楽を覚える背徳感が、かえって天子の官能を刺激する。
だが、それでも足りなかった。
媚薬に浮かされた体は、さらなる快楽を求めて、天子に焦燥感を募らせてゆく。
「や、やちぉ……おっぱい、あついよ、ちりちりするのぉ……おかしくなっちゃうよぉ……なんとかしてぇ」
先端の突起……乳首が「いじってくれ」と言わんばかりに、つんと勃ってしまっている。
いっそ自分で弄りたい程だったが、後ろ抱きに夜智王が拘束しているため、それも叶わない。
羞恥心をかなぐり捨て、天子は夜智王に懇願する他、術がなかった。
「天子はやらしい娘だな」
「やちおうのせいでしょ!ばか!いじわる!どえす!なんとかしなさいよぉ!」
半泣きで天子が叫ぶが、それは夜智王の嗜虐心を煽るばかりだった。
「わかったわかった」
さわさわと、おざなりに夜智王が、天子の薄い胸を愛撫し始める。
「やぁ……もっと……まじめにぃ」
気持良くなる直前に力を抜く、絶妙に外した夜智王の焦らしに、天子が甘い悲鳴をあげる。
朧気な快楽はかえって焦燥を募らせる。
僅かに満たされる疼きも、緩やかな愛撫によって昂り「もっともっと」と言わんばかりに、より大きな疼きとなって天子を苛む。
「まったく天子の胸は敏感でいやらしいな」
下手にでかいだけの乳よりずっとよいぞ。
と心底愛おしいそうに天子の胸を誉めそやす。
「はぁ……んんっ……やちお……いじわる、やだぁ、もっとぉ」
「もっとなんだ?」
「やぁ!はずかしいこと……ふぁ!……いわせないでぇ!きのうみたいに、やさしくしてよぉ」
「そういうわりには、ワシに虐めれる度、天子の心の臓はどくんどくんと言っておるではないか」
「そ、それはぁ……ひぅっ!……おねがい、いじわるしないでぇ、もっとつよくしてぇ」
「もっと強く乳を苛めて欲しいのか?」
「いじめてぇ、おっぱい、もっとつよく、ちくびもちょくせつさわって、いじめてよぉ」
「まったく、天子はいやらしく、可愛いな」
夜智王の言葉責めに、羞恥に染まりながらも、興奮を募らせてゆく天子。
はぁはぁと喘ぐ彼女を寝具にそっと押し倒し、薄紅色に染まった白皙の肌に舌を伸ばす。
吸い付くような感触を楽しみながら、天子の胸の最も敏感な突起へと舌を這わしてゆく。
「くぅ……く、くすぐったいよぉ」
「ほんに愛いらしい胸だ。敏感で、すっぽり男の掌に収まって、ほれふにふにとやらかい。見る目の無い男共に感謝せねばな」
まだ未開発の、それゆえに育て甲斐、仕込み甲斐のある、淡い膨らみを舐め、つつき、摘まみ、揉みしだき、存分に弄ぶ。
それでもまだ足りないのか、天子は甘い喘ぎを切なそうに漏らしながらも、いやいやと首を降る。
「もっとつよくしていいよぉ……ほんとに、おかしくなっちゃう……ねぇやちおぉ」
「これ以上は痛いぞ?」
「いたくても……いいよ……んんっ!」
乳輪をなぞるように舐めながら、きゅっと少し強めに夜智王が胸を掴む。
「これくらいか?」
「もっとぉ……さきっぽも……じらさないでぇ。そこがいちばん、ちりちりするのぉ」
「痛いくらいが良いとはなぁ。天子は変態《マゾ》か?」
「ちがうもん!てんしまぞじゃないもん!やちおうが……ふぁぁ!」
ぐにゅっと夜智王の手が天子の胸を絞り、懇願するように震える乳首を、甘噛みすると天子が甲高い喘ぎを漏らした。
「いいよぉ……いまくらい……ひぅ!」
唇で乳首をやや乱暴にしごいてやるたび、あんっ!やぁ!と嬉しそうに天子が声を上げる。
「やはりそうだな、天子は苛められるのが好きなのだろ?」
「ちがうもん!やちおうがいじわるなだけだもん!あんっ!」
ぎゅっと乳房を絞りながら、乳首を咥えた夜智王が、ちゅうちゅうと音を立てて、乳首を吸う。
「ひゃ……ぁ!……すっちゃ!……だめぇ!おっぱいのびちゃうよぉ!」
吸引したまま乳房を引っ張ると、初めての刺激に肢体を仰け反らせて天子が大きく痙攣する。
「ほほふぁひひはひもひひょふぁほうふぁ」
「しゃべっちゃ……やっ!あっ…・・・ひぅ!……いっ!……だ、だめ…いっ…あっ!」
甘い喘ぎと吐息を吐き出し、一層大きく天子の体が仰け反り、次いで力を失いぐったりと寝台に身を投げる。
乳首から口を離した夜智王は、くすりと意地悪な笑みを浮かべると、涙で涎でぐずぐずの天子の顔を舌で清めてやる。
「イったな」
耳元で囁かれた天子が、羞恥に顔を歪め、ぽかぽかと力なく夜智王の胸元を叩く。
「いじわるぅ!やちおうのばかぁ……やさしくしてよぉ」
「それは昨晩たっぷりしたろう?」
今度はワシを愉しませてくれや、と夜智王が蠱惑的な声で囁く。
耳に触れる吐息すら心地良い、天子の意思とは裏腹に体は快楽の海へと深く、深く溺れていくようだった。
恐ろしいのに、天子の胸の奥を、抑えがたい感情で塗りつぶされてゆく。
「それに天子。そなた昨晩より快楽に覚えておろう?」
認めたくない事実を指摘された天子が「ひぅ」と息を飲む。
「いいではないか、ワシは普段は優しいが“する”時は結構女子に意地悪だし、相性ばっちりだぞ」
「やだぁ、そんなのやだよぉ」
「ふふ、口ではなんとでもいえるが、体は素直だな?ほれ、びしょびしょだぞ?」
天子の秘裂から溢れでる蜜で、股間はしとどに濡れていた。
それを指摘された、天子の顔がくしゃりと歪み、ぽろぽろと大粒の涙が零れ始める。
「ひどいよぉ……やちおうのばかぁ、いじわるぅ……ひっく!うぇ……ひぅ……」
「泣かんでも良いだろう。ワシの愛撫で天子が気持よくなった証だぞ」
絶頂後でまだ敏感な体を、やわやわと夜智王は愛撫する。
絶妙な快美感に天子は打ち震える。
「だって、だってぇ……はずかしいんだよ?だからぁ」
「ワシと天子の秘め事だろう?何を思い悩み、恥ずかしがる必要がある、」
「ひめ……ごと?」
陰々と響く、蠱惑的な夜智王の声が、催眠術のように天子の意識を朧にしてゆく。
「そうだ、ワシは閨での秘事を誰かに言い触らすような下衆ではないぞ?一夜の情事《ゆめ》だ、溺れれば良い」
「ゆ……め?」
「そうだ、夢だよ、天子は悪い蛇に誑かされただけだ」
「だよ……ね?てんしは……」
「そうだ、天子は何も悪くない」
だから、ほれ“素直になれ”
そう夜智王が囁くと、天子の理性が溶け落ちた。
「あっ……やぁ……もぉ、やちぉ、あかちゃんみたいだよぉ……おっぱい、そんなに、んっ!すきぃ?」
「ああ、好きだな、言ったろう?小さな乳を大きくするのが好きだと」
寝具の上で二人の男女が淫らに交わる。
夜智王は、膝の上に乗せた天子の胸を強く愛撫してやる。
芯からほぐれ、ぷっくりと膨らんだ可愛らしい天子の乳房が、ぐにぐにといやらしく形を変える。
天子は、愛撫に喘ぎながらも、拙い手技で夜智王の肉棒を責める。
自分の愛液でべとべとにした剛直をにゅるにゅると上下にしごきあげる。
「てんしのおっぱい……おおきくなる?……ひぅ!やぁ、すっちゃだめぇ!!てんしおちちでないよぉ!」
よほどに気持ちが良いのか、ちゅうちゅうとわざとらしく夜智王が音を立てて吸う度に天子が嬌声をあげる。
「天子は吸われるのが好きなのだな」
「そんなんじゃ……あ、んっ、かむの、だめぇ!」
くりくりと乳首を甘噛みされると、強烈な刺激に天子がびくびくと小刻みに痙攣する。
赤く歯形の付いた乳首を労るようにぺろりと舐め、夜智王は一度胸から顔を離す。
荒く肩で呼吸する天子の耳元に顔を寄せると、喜悦を含んだ声で囁きかける。
「やはり痛いのが良いのだな」
「またいじわるぅ……てんしまぞじゃないもん……ひぅ!」
耳朶に噛み付かれた天子が黄色い悲鳴を上げる。
「みみぃ……いやぁ……かまないでぇ……なめちゃだめぇ」
ふるふると震える天子。その耳を存分に弄び満足したのか、ようやく夜智王が口を離す。
「少なくともワシを満足させる程度にはマゾだな」
「もぉ……どっちでもいいよぉ……やちおうのばかぁ」
拗ねたように天子は言うと、反撃とばかりに思い切り夜智王の肉棒をしごき始める。
負けじと夜智王もゆるやかに天子の胸を撫で回す。
「はやくだしてよぉ……ふぁぁ……しろいの、せーえきだして、ちっさくしてぇ、もう……はぁ……てんしがまんできないよぉ」
すっかり「恥ずかしい」とは言わなくなった天子だが、まだ怒張しきった剛直を受け入れるのは怖いらしかった。
上気した頬、甘く熱く荒い呼吸、すっかり発情した様子で、懸命に夜智王の男根を愛撫する。
しかし、びくんびくんと断続的に震えてこそいるが、夜智王の肉棒はまだまだ余裕らしく、一向に精を吐き出す気配は無い。
「やちぉ……」
「そんなに頑張らんでも、このままでも平気ではないか?」
しとどに濡れた天子の女陰へ、夜智王の指が触れる。
「ひぅ!あっ!……はぁぁ……だめぇ、いま、さわっちゃ、やっ!……くぅぅん!」
紅く染まった陰唇をなぞってやると、切なそう喘ぎを天子があげる。
視覚が封じられているせいか、触覚が鋭敏になっているのだろう、触れられただけで、まるで挿入れたかのように、天子が喘甲高い喘ぎ声をあげる。
「んっ……だめっ……やっ、あ……んぅ!」
「何がだめ、だ。もうここは我慢ならんと言っておるぞ?別に一度抜かんでも挿入《はい》るのではないか?」
「やだっ!こわいの!……あっ、やっ、ゆび、いれ、きゅぅぅん!」
天子の懇願を無視し、つぷり、つぷりと、何の抵抗もしない秘裂へ、ゆっくり指が挿入れてゆく。
「ほれ、もうとろとろだ、このまま手を全て飲むのではないか?」
「やっ……ふぁっ!……そんなの、むりだよ」
「冗談だよ、そんなに嬉しそうにするな」
「うれしそうに、んっ……くぅ、してない、やぁ!そこ、こすっちゃだめぇ!」
「もっとして欲しいのだな、わかったぞ」
一本から二本に増えた指が、膣中の敏感な部分をぐりぐりと弄り、その度天子がひぃひぃと喘ぐ。
鋭敏になった感覚のせいで、体内を弄られている感触が、はっきりと分かる。
淫らな水音もまるで耳元で鳴っているかのように感じられる。
むせかえるような、発情した自分の体臭に溺れそうになる。
「大丈夫そうだな」
指を抜いた夜智王が天子の上に覆い被さってくる。
「やだっ、むりだよ、ばか!やちおうのばか!いじわる!いじめっこ!どえす!」
恐怖をごまかすように、ぐいぐいと夜智王を押し退け、口汚く罵る天子。
「いきなり突っ込んだりはせん、そう怖がるな」
そう言い、目隠しを取る。
ようやく暗闇から脱した天子の視界に、優しげな笑みを浮かべた夜智王が写る。
それが内心のいやらしさと意地悪な加虐性癖を隠す笑顔だと、分かっているのに天子はその笑顔に魅了されてしまう。
媚びた表情を作り、眼を涙で潤ませて、甘えた声で夜智王に懇願する。
「ゆっくり……だよ?……むりやりはやだよ」
「そう怯えるな、大丈夫だといったろう?」
「ひっ!」
夜智王が腰を進めると、濡れぼそった秘裂に亀頭が触れ、ちゅく、と淫らな音を立てる。
指とは比べ物にならない、粘膜同士の接触がもたらす快楽に、びくんと大きく震えた天子は、ぎゅっと目と口を閉じて、男根の侵入に耐える。
「力を抜け、かえって苦しいぞ?」
「む………りぃ」
労るように、焦らすように、ずりゅずりゅと先端で秘裂を愛撫しながら、ゆっくりと先端を天子の膣内へ侵入させてゆく。
「は、はぁ……くぅ……だめ、だめぇ……やっぱりだめ、やめて、やちぉ」
「無理矢理突っ込んだりせんと言ったろう?」
「ふぇ?」
すっぽりと亀頭が埋まった辺りで夜智王が侵入をやめる。
「あっついよぉ、やちぉの……やけどしちゃいそうだよぉ」
「天子のここも熱いぞ?おあいこだ」
極々浅く抽送を開始する。
前後だけでなく、上下左右に肉棒の先端を使って、ぐりぐりと天子の膣口を弄くり始める。
「あ……んっ!……あんっ!や、やちおぉ……」
当初は女陰への愛撫に喜悦を含んだ喘ぎを天子が漏らす。
だが、徐々にそれは変化し始める。
「(やだ……おくのほぉが……うううう)」
膣内の最も鋭敏な部分や、最奥《しきゅう》がずくずくと疼く。
丹念な入り口への愛撫に昂た密壺が、否応なしに男の訪れを求め始めたのだ。
「あ……あんっ……いっ……ああぁ」
なのにソコには一向に刺激が訪れない。
もう少し、ほんの少し奥まで突いてくれればいいのに。
先刻指で苛めてくれた場所を、先端のエラで擦って欲しいのに。
「や、やち……あぁ……もう、だいじょぶ……ふぁ!……もちょっとおくまでぇ」
顔を紅潮させた天子が潤んだ瞳を向けて必死に訴えるが、夜智王は応えず、入り口の愛撫ばかりを続ける。
優しい笑み、しかし瞳は底意地の悪い光を孕みながら“嗤って”いた。
「いじわるぅ」
「何がだ?」
「(や、やだぁ……こしが、かってにぃ……こわいのにぃ!)」
耐えかねたように天子の腰が、肉棒をより深く飲み込もうと天子の意思に反し蠢く。
「おっと」
「あんっ!」
さっと夜智王が腰を引いて、肉棒が先に進まないように妨害する。
「やぁ……やちおぉ」
「怖い怖いと言いながら、腰を使いおって」
悪い子だなぁ、と愉しそうに蛇が囁いてくる。
「だって、だってぇ……いじわるしないでよぉ、おくのほうが、うずうずして、じんじんするのぉ」
「我慢せい、もう少しで慣らしてからだ」
「がまんできないぃ……んっ……もうちょっと……やぁ!いじわるぅ」
「わがままだのぉ」
呆れ果てた様子でそう言った夜智王が動きを止める。
「……本当に良いのか?」
「うん……もぉじらさないでぇ」
「どうして欲しい?ん?言ってみるといい?」
揶揄うような口調で夜智王が問う。
恐怖よりも快楽が勝ったのか、震える唇で天子が淫らな言葉を紡ぐ。
「お、おくまでちょうだい……」
「何を?」
畳み掛けるように、夜智王が問う。
「ふ……ふとくて、あっついの……やちおうの、ち…・・・つっこんで、ぐ、ぐりぐりして……てんしの……なか、かきまぜて、いじめてぇ!」
「いやらしい娘だな」
だが、よく言えたな、ご褒美だ。
そう囁き、夜智王は腰を一気に進めた。
「ふぁ!んっ……あっつくて……はぁぁ……かたいのぉ……やちおうのが、あたしのなかにはいってるよぉ」
「するりと挿入ったな」
怖がっていたわりには、散々に焦らされたせいだろう、あっさりと男根を飲み込んだ。
先端が膣中の奥、子宮口と接吻を果たすと、びくん!と大きく天子が震え、弓なりに体を仰け反らせ、ようやく満たされた快楽を受け止める。
そこまではぬるりと肉棒を飲み込んだ柔肉が一気に締り、逃がさないとばかりに蠢く。
「えらく淫らに動いておるぞ?」
「あんっ……だってあんなにいじめられたらぁ……あんっ!おくに、あたったてるよぉ、ぐにぐにしちゃだめぇ」
「天子の中の口は最高に気持ち良いぞ?さきっぽをきちきちと締めてくるくせに、とろとろに柔らかい」
「だめっ!そんなについたらぁぁ」
「ここを苛めて欲しかったのだろう?安心せい、まだ出さんから、一度イッてしまえ」
子宮内を犯すような強さで、ぐりぐりと亀頭が奥を突く。
「いいのぉ……きのちいいのぉ……おくに、おくにはいっちゃいそうなのにぃ…きもちいいよぉ!」
「さよか」
「んっ……だめぇ……また、またいっちゃうよ…やちおう、て、てにぎってぇ」
胸を苛めようとしていた夜智王だが、伸ばされた天子の手を取ると、ぎゅうっと天子が握り返す。
「は、んんっ!いく、いっちゃうの、や、やちおうも、いっしょにぃ」
「んーワシまだ平気なのだがなぁ」
「やぁ!やだぁ!いっしょにいってぇ!あっつくて、しろい、せーえき、だしてぇ!」
しかたないのぉ。と笑った夜智王が、ぐいっと腰を進める。
先端が子宮内へとめり込む。
「あっ!やぁ!だめぇ、なかに、なにかはいってるぅ!いっ、あっ!やっ、んんっ!!」
「まぁ、いいか、ほれ」
必死に絶頂を迎えまいと耐える天子の子宮内に、あっさりと夜智王は精を吐き出した。
間欠泉のような勢いで、一晩中溜め込まれた精が放たれ、子宮の壁にびしゃりと叩きつけられる。
「っ!!!」
子宮の中に熱湯を注ぎこまれたような刺激に、全身を痙攣させ天子が絶頂を迎える。
爪が食い込むほどに夜智王の手を強く握り締めその快楽に耐える。
「やっ!まだ、でてるぅ!ああんっ!」
痙攣し、収縮し肉棒から精を絞りとる膣肉の感触を楽しみながら、鼻歌交じりに夜智王は延々と精を吐き出し続ける。
「やぁ、こんなにだされたらぁ、あかちゃん、ひぅ!できちゃうよぉ」
「孕め、孕め。乳もでかくなるし、存分に吸ってやるぞ」
「やぁ、へんたい、やちおのばかぁ!」
ようやく射精が止まり、内部を責められるのが終わり、ぐったりと天子が寝台に身を投げ出す。
「こらこら、一休みは早いぞ?まだまったく腰をふっとらんのだから、このまま抜かず三発とまいろうか?」
「や……あぁ、ちょっとやすませてぇ」
「なに、体の頑丈な天人殿なら平気だろう」
嬉しそうに「だめぇ」と鳴く天子を抱き寄せ、夜智王は腰を使い始めた。
「夜智王の意地悪ぅ……」
灯り取りの窓から日の光が差し込む。
時刻はすっかり昼である。
前から後ろから、散々に責められ、蜜壺を突かれ、天子は喘ぎ、乱れに乱れて、何度も絶頂を迎えた。
夜智王もたっぷりと天子の膣中を味わい、大量の精をその最奥にぶちまけた。
限界を向かえた天子は、再度気絶するように意識を手放し、夜智王の腕の中で眠りに落ちた。
夜智王の手を握り締め離さない天子に微笑しつつ。
器用に片手で、体液で汚れた天子の体を清める。
涙で腫れた顔に絞った手拭いを置いて冷やし、乱れた髪を手櫛で鋤いてやっていると、天子が寝言で夜智王の悪態を吐いた。
どうやら夢でも見ているらしい。
「てんし……まぞじゃないもん……ばかぁ」
可愛らしい寝言に「どんな夢をみておるのだ」と苦笑しつつ、夜智王は引き寄せた壺中天から銀色の香炉を取り出す。
「まぞじゃないよぉ」
「わかった、わかった…まぁ天人は体が頑丈な分“鈍い”のだろうな」
「やちおうのちろー」
おいおい、と思いながらも、準備の出来た香炉に、練香を放り込むと、何やら妖しい薫りが香炉から立ち上ぼり、部屋を満たして行く。
ぴくり、と反応した天子だが、二三度鼻をぐずらせたのち、香の効果なのか、すぅと深い眠りに落ちて行く。
責め立てられ憔悴しきった表情が、和らぎ、すやすやと健やかな寝顔に変わる。
「(ちと、やりすぎたな……ワシとしたことが……)」
天子の痴態が可愛らしかったとはいえ、素人娘には少々過ぎる責めだったな。
そんなことを考え、自嘲気味な苦笑を浮かべている夜智王の耳に、トントンと扉を叩く音が響いた。
戸口の外に誰かの気配がある。
「開いとるぞ」
すっと、目を細め、返事を返すと、扉が引かれ、女が一人入って来た。
フリルの付いた羽衣、と悩ましげな肢体が目についた。
「(丁度良い、よりはややでかいが、でかすぎない、うむ絶妙。つんと澄ました感じが、ワシ好みだな)」
幾重にも重ねられたフリフリが邪魔くさいが、それでも女の胸部を押し上げる、豊かな膨らみが目を引く。
そんな夜智王の視線を遮るように。
帽子を取り胸元に当て、慇懃に女が礼をする。
「お初にお目にかかります夜智王蛇殿。私は龍神様のお使いをしております。永江衣玖と申します」
「ああ……話には聞いておるよ。天子のお目付け役をやらされとるようだな」
夜智王だ、敬語はいらんよ。と返すが、衣玖は慇懃な態度を崩すことなく「ええ、まぁ」と微苦笑で返す。
「で何用だ?」
「この度は総領娘様がご迷惑を……かけてはいないようですね?」
眠る天子を見て衣玖は敏感に状況を察したらしく、どうしたものか、という顔をする。
「そうだな、ワシは寂しがり屋で甘えん坊な、傷心の天子を、慰めるフリをして、だまくらかして喰っただけだ」
迷惑ではないなぁ。と偽悪的な態度で夜智王は嘯く。
「寂しがり屋の甘えん坊……ですか?」
突拍子もない夜智王の言に、表情を取り繕うに失敗した衣玖が酢でも飲んだような、微妙な表情で問う。
夜智王は無視して、慈しむように天子の頭を撫でる。
くすぐったそうに身をよじった天子が、ふわりと、無邪気な笑顔を浮かべ、それを見た衣玖は、言葉を失う。
傲岸不遜にして有頂天変な天人の少女は、そこに居ない。
「(これが夜智王蛇……幻想郷一の“女誑し”ですか)」
背中に冷たいものが伝う。
そんな衣玖を無視し、蛇は大仰な仕草で自説を唱え始める。
「それにな、女子の迷惑を掛けられるのは、男の甲斐性であろ?まして天子のような可愛い娘ならば、むしろ歓迎してしかるべきというものよ」
「……さすがは夜智王殿。噂以上の大物でいらっしゃいますね」
「はは、世辞はやめい、こそばゆいぞ?……さて衣玖殿や、そなたとも親交を深めたいのは山々なのだが……今は取り込み中でな?これからワシは天子といちゃいちゃしながら一眠りせんといかんのだ」
だからまた後日改めて、ああ無論夜も更けてから訪ねてきてくれるかな?
と衣玖の豊かな胸に向かって夜智王が笑顔を向ける。
逆に笑顔を凍り付かせた衣玖は、恐る恐る夜智王に訪ねる。
「では一つだけ……夜智王殿……この香は何です?」
衣玖がのこのこと夜智王の許に訪れた理由。
それは夜智王が焚き染め始めたこの香だった。
明らかに尋常の香ではない。
好きでお目付け役をしているわけではないが、天子が妖しげな香の虜になるのを見過ごす訳にもいかない。
「ああ、そなた存外天子の事を大事に思うておるのだな?」
「……」
「安心せい、ただの安眠の香だよ」
「嘘ですね?」
「嘘ではないよ。“悪い夢”を喰ってくれる香さ」
敏感に「悪い夢」というのが何かを衣玖は察した。
「ワシとしたことが天子があまりに可愛かったので、少々やり過ぎた。正気に帰った後発狂しそうで怖い」
「無かったことにする……忘却の香ですか?」
「そんなもったいないことをするものか。昨夜の醜態をうすぼんやりとさせる程度のものだ。名にかけて、誓っても良いぞ」
なんと傲慢な、衣玖は内心で吐き捨てる。
散々に弄んだ癖に、親切ごかしてそれを無かったことにするなど、男のエゴそのもではないか。
だが同時に、それが天子の為であろう、とも思う。
この蛇が「やりすぎた」というのは、相当のことだろう。
プライドの高い天人の少女が果たして耐えられるか?
「……嘘では無いようですね」
零落したとはいえ元は神。それが誓う、というのだから、真実なのだろう。
「さぁこれ以上は野暮だぞ衣玖殿。また今度な」
爛と夜智王の金色の光彩が妖しい光を放つ。
「これは失礼を致しました」
再び慇懃な態度の鎧を纏い、丁寧に退去の礼をしながらも。まっぴらごめんです。そう内心で呟き、早々に衣玖は退散を決め込む。
二度とあの蛇に関わらないよう、そう天子に言い聞かせなければ。
「とばっちりはごめんですよ……」
そう呟かざるを得なかった。
あの時の与太話はなぜか今年の冬コミ、艦これの同人誌を出すこととなって帰ってきました……