※この作品はR-18です。

東方蛇精譚・夜話   作:窓@

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蛇、風呂にて妖怪の賢者と戯れる、の巻

「冬の寒さは堪らんが、風呂だけは格別よ、そうおもわんか?」

「そうね」

 

夜智王の庵の風呂は、半露天である。

脱衣所から風呂場に入ると、前方の壁が無く、里山の景色を堪能できるようになっている。

質素な庵に比べて随分凝った造りなっており、大岩をくりぬいた見事な浴槽が据えられている、大人が三人は入れる大きさはあるのだろうか?

普段は地下水脈から汲み上げた水を貯めて、妖術で沸かしているの、だが今日は一味違う。

浴槽は乳白色の湯で満たされていた、紫がスキマを使って外界の温泉を取り寄せたのだ。

湯煙の中に美女が二人、白磁のような肌をほんのりと紅く染めて、湯に浸かっていた。

金髪美女は紫、黒髪美女は夜智王の変化だ。

共に普段は流している長い髪を結い上げており、覗くうなじと、後れ毛が艶かしい。

 

「時に紫、まだ脱がんのか?」

「脱がないわよ」

 

沐浴用の麻製の湯帷子を纏い、きっちりと肩まで浸かる紫に、半身浴で惜しげもなく胸を晒した夜智王が言う。

 

「ヒトが気を使って女に化けたのに、無粋だぞ」

「天狗にでも隠し撮りされたら嫌なのよ」

「そんな度胸のある天狗なぞおるのか?」

「う・る・さ・い」

「・・・・・・まぁいいがな」

 

目を細めた夜智王は、ちらと紫の艶姿を盗み見る。

別に堂々とガン見しても良いのだが、盗み見たほうが風情がある。

僅かに透ける肌色。

布が張り付いて、浮き彫りになった紫の肢体の凹凸。

良いな。と夜智王はうっとりとした様子で嘆息する

ともすれば、着ている方が全裸よりも劣情を誘う、と言うことを紫は分かっていないのだ。

彼女の肢体を肴に、夜智王は浮かべた桶から徳利を取り、杯を満たして、くいと一杯飲み干す。

 

「ん~うまいなぁ、冬枯れの森の侘しさ。舞う風花の風情。そして何より極上の湯煙美人。最高の肴ぞ」

「人を肴にしないで頂戴」

 

ツンケンした様子もまた良い。

もっとも、この蛇にしてみれば、女のどんな仕草も「良い」になるのだが。

 

「固いことを言うな・・・ほれ紫も呑め・・・よし。しかし地底か、元は地獄だったな」

「そうよ、地上に居場所を無くした妖怪達が移り住んだ場所……本来は相互不可侵の約束になっているのだけど」

「間欠泉に怨霊か…灼熱地獄が一枚噛んでいるのだろうが…ま、解決は巫女殿に任せよう」

 

旧知の鬼でも探してふらふらすれば良いのだろう?と夜智王は紫に問う。

紫も夜智王に過剰な期待はしていないので、それで構わないと返した。

本来ならば、地上の妖怪が地底に侵入するのはマズイのだが、この蛇は例外である。

 

「そのまま帰ってこなくて結構よ」

「酷いことを言うな。そんなことをしたら地上の女子が何人悲しむことか」

 

私は嬉しくってよ。と紫はツンとした様子で言い返した。

夜智王は、不満そうな表情で「えー」と抗議する。

 

「そんなにイケズなことばかり言うなら、ワシにも考えがあるぞ?」

「何を…きゃぁ!?」

「紫の身体は柔らかいのぉ」

 

まるで瞬間移動のように、夜智王が紫の背後に回り込み、後ろから抱きついていた。

脇の下から腕を回し、胸を掴み。

細い腰に脚を絡めて拘束する。

 

「やめっ!放しなさい!」

「嫌だ」

「あっ!」

 

湯帷子が張り付く紫の豊かな乳房を、夜智王が揉み始める。

 

「ほほ、ふよんふよんだの」

 

優しく乳房を揉まれ、紫が堪らずぴくんっ!と体を小さく痙攣させてしまう。

何気ない手つきだというのに、夜智王は女の官能を刺激するのはお手の物だろう、紫が反応してしまうのも無理のないことであった。

 

「やめなさいよ、風呂ではしないのではなかったの!?」

 

じたばたと暴れる紫だが、子泣き爺のように背中に張り付いた夜智王は放れない。

紫が動くたび、揉まれる紫の乳と、紫の背中に当たる夜智王の乳が暴れる。

女同士が乳繰りあう、真に眼福な光景、いや絶景である。

 

「これは女同士のすきんしっぷだろう?」

「ひ・・・っ・・・ゅ!」

 

紫の肩のあたりに顔を埋めて、自分の手で寄席あげた紫の乳を凝視しつつ、紫の甘い香りを胸いっぱいに吸い込む。

やりたい放題である。

 

「やめなさいよ・・・っ!」

 

やや遠慮の無い動きに夜智王の手つきが変わる。

くにゅくにゅと紫の乳房が、形を変える。

 

「紫の乳は相変わらずデカイな、というか少し垂れたか?」

「し、死にたいの!?」

「寝てばかりおるからだぞ?そこをいくとワシの乳は弾力が違うぞ?ほれほれ」

 

ぎゅうぎゅうと背中に自分の乳房を押し付けてくる夜智王、に紫の堪忍袋の緒がぶつり、と切れる。

 

「本当にぶっ、きゃぁ!」

 

怒気を顕にしようとした紫、その意識の隙を突いて湯帷子を夜智王はずるりと剥く。

ぼろり、と見事な双乳がこぼれ出る。

悲鳴をあげた紫が手を回すより早く、夜智王はその乳房を掴む。

 

「うぅむ、やはり生だと迫力が違うな」

「やぁ、あっ!…ふぁぁ」

 

いやらしく乳を揉みし抱いた夜智王の手技に、耐えきれず紫の口から色っぽい喘ぎが漏れる。

乳を掴んで、全体を捏ね回しながら、夜智王は紫のうなじに口をよせると、啄み始める。

 

「やめっ、やめて夜智王、そこは!」

「知っておるぞ、紫はここを愛撫されるのが好きだものな」

「やだっ!吸うな!痕がついちゃう!」

 

紫の制止を無視し、首の真後ろにキスマークを残す。

まるで所有印を付けられた様で、紫の顔が羞恥と屈辱で紅潮する。

しかし、身体は意思に反して、否応がなく夜智王の愛撫に反応し、快楽に溶けてゆく。

 

「なぁ紫」

「な、何よ!」

 

唐突に愛撫を止め、紫と向かいあった夜智王がやけに真剣な表情で紫を見詰める。

内心でドキリとしながらも、拘束を解かれた紫は、腕で胸をガードする。

いつの間にか湯帷子は剥ぎ取られていた。

 

「お主、大丈夫か?」

「何がよ!」

「疲れておらんか?体ではなくて…心がだぞ」

 

労るような、心配するような、聞いたこともない夜智王の声音に、どきりと紫の心臓が高鳴る。

 

「別に、何も…」

「嘘だな、普段のお主ならば、何があろうと、取引だろうと、鬼がおろうと、ワシに抱かれるのを承諾せん」

 

それこそ可愛い式を生贄にしてでも、紫は夜智王と交わるのを嫌がる。

 

「何が言いたいのよ・・・」

「お主がワシに抱かれることを承知するのは、何かあって、お主が誰かに甘えたい時、弱っている時だ」

「そんなのことないわ!たまたま、ちょっと欲求不満だったり!あんたがあんまり可哀想だからお情けで抱かれてやったのよ!」

 

はぁ、と夜智王は重い溜息を吐いた。

 

「なぁ紫・・・ワシはお主のことが心配なのだ。皆はお主をやれ妖怪の賢者だとか、境界を操る大妖と言うがな」

 

ワシはお主が案外に傷つきやすい心をもった、ただの少女の八雲紫だと知っておるよ。

まじめくさった声で夜智王はそう言い切った。

どくんどくんと紫の心臓が高鳴り始める、いったいこの蛇は何をいっているのか、理解できない、したくない。

 

「お主が冬眠するようになった時はな、結構真剣に焦ったぞ?代々の巫女殿が儚くなると、密かに落ち込むことは知っておったが、あれには参った」

「……」

「置いて逝かれるのは、生き汚く長く生きる者の宿命だがな・・・ワシはお主の心が壊れてしまうのを見るのは、嫌なのだ」

 

紫にも覚えがあった。

身は滅びずとも、長い生に耐えきれず心が死んでしまう妖怪も居る。

往々にしてそういう妖怪は強い力を持ってるものだ。

肉体的な要因で死ににくい、ということなのだが。精神までもが強くあるとは限らない。

力弱くとも、ふてぶてしく生きる妖怪も居るというのは、皮肉な話だ。

神代の昔から生きる夜智王、それも好んで他者と交わるこの蛇は、どれだけの死を看取って来たのだろうか。

 

「お主とは長い付き合いだ。お主を喪うのが嫌なのだよワシは」

「あ、あなたに心配されなくたって、平気よ」

 

うわずった声で紫は強がる。

その顔は、まるで愛の告白のようなことを言う夜智王の言に、真っ赤になっていた。

頬が異常に熱い。湯中りしたわけではない。

内心で紫は、必死に自分に「落ち着け、冷静になれ」と言い聞かせる。

 

「(蛇の策略よ、こうやって甘い言葉を吐いて、人を騙すんだかた!落ち着くのよ紫。なんだっけそうKOOLになるのよ!)」

「九尾を使うようになったり、幽々子と仲良くしているから、大丈夫だとは思うのだがな」

「そ、そうよ!だからにあんたに」

 

心配されなくても大丈夫よ!と続けようとし。

どこか寂しそうな表情を浮かべた夜智王に、紫は言葉が紡げなかった。

 

「だがな、二人にまるきり甘えることはできまい?」

「う…」

 

それはそうだ。

藍に対してふざけて甘えるフリはできても、あくまで紫が主人であり、対等の関係ではない。

幽々子はほぼ対等の友人である。やはり威厳も虚栄も捨て去って甘えたり、弱音を吐くことなど出来ない。

まして紫は彼女に負い目が有る。

 

「なぁ紫、だからワシの腕の中では意地を張らずに。ただの可愛い八雲紫でいておくれ」

「何を…ばかな…別に、私は」

「演技でも良いのだ、ワシを安心させてくれ」

「う…あ…」

 

だから夜智王と交わるのは嫌なのだ。

この蛇が本気で情交を要求するのは、だいたいこんな時だ。

前は幽々子が死んだ時だった、その前は月と戦争してコテンパンにされた時だっただろうか。

紫が参っている時ばかり。

今回は、この蛇が幻想郷に長くよりつかなくなって、五百年近く。その間、誰かに素の自分で寄りかかったことなど、あっただろうか?

先代の博霊の巫女が死んで、そう長い時が経った、とも言えない。

厭らしい、性悪な蛇め。

女が弱っている時に付け込むなんて最低。

そう内心で悪態を吐く。

だが、夜智王に抱かれて眠るあの安心感も。

我を忘れて快楽に狂うのも。

嫌ではないのだ。正気に帰った後、恐怖するほどの心地好さに身を委ねると、不安や痛みや悲しみが、僅かに和らぐのだ。

この蛇にかかれば、どんな妖婦もただの少女に帰ってしまう。だから、紫は夜智王に抱かれるのが大嫌いなのだ。

 

「いいわよ。怖がりでヘタレの貴方のために。うんと甘えてあげる、感謝しなさいよ」

 

声の震えを必死に隠しながら、傲慢に紫は言う。

そういうことにしておく。

 

「紫は優しいな」

「う…」

 

感謝を返すように、夜智王が紫の頬に口づけをする。

幼い恋人達がするような、何気ない接吻。

反射的に夜智王の唇が触れた所を手で押さえる、首まで肌を紅潮させる紫。

ばればれの強がりを、夜智王は黙って受け入れると、そっと紫を抱き、豊満な胸に顔を埋める。

ひゃぁ!と小さく悲鳴を上げながらも、上ずった声で紫は怒鳴る。

 

「あんたが、あ、甘えてどうするのよ!」

「紫の胸が魅力的すぎるにがいけない。ふかふかだぞ」

「どうせ、幽々子あたりにも同じこと言ったくせに…きゃ!」

 

ふてくされたような紫のセリフに対し、胸元、谷間辺りに、ちゅっと接吻する。

 

「幽々子には幽々子の、紫には紫の、それぞれの良さがあるぞ」

「胸に向かって喋るな!」

「すまんすまん……そろそろあがるか、湯中りしそうに真っ赤だぞ」

「これは……もうっ!」

 

羞恥と怒りを込めて、紫は思いきり夜智王を突き飛ばした。

ばっしゃーん、と派手な水音を立てて夜智王が水没してゆく。

脱兎のごとく逃げ出した紫は、脱衣所に駆け込み、バシンと扉を閉めると、乾いた布を纏いながら、ずるずると、扉にもたれながら崩れ落ち、ぺちんと尻餅をついてしまうのだった。

 

「あのスケベ蛇・・・ばか」

 

そんなことを言いながらも、この後の情事を考えると、紫は胸の高鳴りが押さえられないのだった。

 

 

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