※この作品はR-18です。

東方蛇精譚・夜話   作:窓@

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蛇、白黒魔法使いを誘惑す、の巻

「こっちくんなよぉ!」

「そんなに邪険にせんでもよかろうが」

 

本当に何をしたのかしら?

ことの次第を説明したが、何故か弾幕ごっこをすることなったので、ルールを勇儀に説明しながら、箒をぶんぶんと振り回して夜智王を近づけまいと威嚇する魔理沙を見て霊夢は思った。

 

「れ、れぇむ!見てないで助けてくれよぉ!」

 

半泣きの魔理沙が助けを求めてくるが霊夢は無視した。

なんというか、傍目にはいちゃいちゃしてるようにしか見えず、少し苛立ちを覚える。

代わって魔理沙を助けたのは勇儀だった。

スパン!と夜智王の後頭部を張り飛ばす。

 

「やめろ、話が進まんだろうが、この好色蛇め」

 

とまぁ、しごくまともなつっこみだったが、いかんせん鬼の腕力でそれをやられた夜智王はたまったものではない。

ぐき、と何やら異音が夜智王の首から響き、地に倒れ伏す。

そのままぴくりとも動かない。

 

「お、おい?夜智王?大丈夫か」

 

よせばいいのに……霊夢が止める暇もなく、案外にお人好しの魔理沙が夜智王に話しかける。

返事がない。

 

「まり……」「ひやぁぁぁぁ!」「ばか……」

 

よろよろと夜智王に歩み寄った魔理沙が捕まった。

 

「や、やぁ!離せ!はなせよぉ!」

「魔理沙はやさしいのぉ、感謝の接吻をしてもいいか?」

「だめ!ぜったいだめぇ!」

 

魔理沙の可愛らしい悲鳴が地底に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

弾幕ごっこを始めた霊夢と勇儀を見物するべく、夜智王は路傍の石に腰掛けた。

無論、魔理沙は捕まえたままである。

 

「は、はなせよぉ!」

「そんなに嫌がらんでもいいだろう。こんな所でいやらしいことなどせんよ」

 

なんとか逃げようとばたばたしていた魔理沙を膝の上に乗せる。

細い腰にスルリと腕を回し拘束すると、トレードマークの三角帽子を取り自分の頭に乗せ、顎をちょいと魔理沙の頭に乗せる。

ふわりと、年若い少女の柔らかな匂いが、夜智王の鼻孔を刺激した。

 

「魔理沙は良い匂いがするな」

「か、嗅ぐなよぉ……」

 

すっぽりと夜智王の腕の内に納められてしまった魔理沙は、弱々しく抗議する。

子供じゃあるまいし、異性の膝の上に座らせひどく気恥ずかしい。

 

「へ、変な所さわんなよ!」

「変な所、とは何処だ?具体的に言ってくれんとワシの主観で判断するが?」

 

ニヤニヤと笑いながら、魔理沙にいやらしいこと言わせようとする夜智王。

顔を真っ赤にした魔理沙が意地悪ぅ、馬鹿ぁ、助平ぇと夜智王を弱々しく罵倒する。

 

「あの夜もそうであったが、ほんに魔理沙は可愛いのぉ」

「あ、あの時の話はやめろよぉ」

 

通信機の人形を通してアリスやにとりに聞かれてしまいそうになり魔理沙が慌てる。

とはいえ既に手遅れの様で、地上では

「ねぇ、あの夜って、どういうことなのかしら?」

「あなたには関係無いわアリス」

「私の目を見て話なさいよパチュリー」

と、既に空気は一触即発である。

 

「なんじゃアリス。仲間外れにされて拗ねておるのか?」

 

火に油を注ぐように、夜智王がアリスをからかう。

 

『夜智王……月の明るい晩ばかりじゃないわよ……』

 

返答は底冷えする声音。

暗に闇討ちを示唆するアリス。

意に介さず夜智王はくつくつと笑う。

 

「夜這いは大歓迎だぞ?」

 

今度は返事が無かった、むろん呑気な夜智王に閉口したわけではない。

 

『や、夜智王さん。だめです謝って、はやく、あわ、あわわわ』

 

と傍に居るにとりが震える声で進言する程に、無言の殺意を募らせているからである。

ただ、今はその場にいない夜智王よりも糾弾すべき人物が側に居る。

上海人形が抜刀する金属音に続き、パチュリーがお得意の多彩なスペルカードを次々とキャストする声が聞こえてくる。

耳をつんざく爆音、何かが壊れる耳障りな騒音。

巻き込まれたにとりがあげる「ひゅいー!」という奇妙な悲鳴が通信人形から響いてくる。

 

「やかましいな」

 

人形を壺中天に放り込んで黙らせた、夜智王はあらためて魔理沙に「それで?気持ち良かったのだろう?」と問う。

 

「な、何の話ぜよ!?」

 

動揺のあまり土佐弁になるほど魔理沙の心臓が跳ねる。

それに対して夜智王はぁと嘆息して勝手には話し始める。

 

 

 

 

「む」

「どうされました?」

「扉の外に誰かいるな」

「え!」

 

魔理沙とパチュリーを残して部屋を出ようとした夜智王は、扉の外に気配を感じ取った。

今回の企みをレミリアに知られると、色々とうるさそうだったので、霊夢に賽銭を貢ぎ神社で宴会を催してもらい、上手く紅魔館からは人払いをしたはずだったのだ。

念には念をいれて扉には結界を張って音の遮断と、無理矢理押し入られないようしていたのが効を奏したようだった。

 

「小悪魔、とりあえず服を着ろ」

「えー」

「万が一レミリアだったら少々面倒だ」

「う。それもそうですね……」

 

結界のせいで、こちらからも外にいるのが誰かも良くは判らない。

不満そうだった小悪魔も、さすがにお嬢様が居るとなるとまずいと、いそいそと服を着込む。

それを待って夜智王は外に向けて強烈な気配を放つ、わざとこれから夜智王が出てくる、と外の者に知らせたのだ、一拍の後扉を開ける。

さっと外に出た夜智王は小悪魔を抱えたまま、後ろ手で扉を閉めると、また結界を張る。

 

「何をしとるのだ?ん?」

 

扉の外には、不意打ちの気に当てられ腰を抜かした美鈴と、立てた膝に顔を突っ込み小さく丸まったガード姿勢でぷるぷると震える少女が居た。

両手掴む可愛らしい帽子からこぼれる髪は金糸のような金髪。

枯れ枝に宝石の生えたような、少々変わった羽がピンと立ってこちらを威嚇している。

 

「(そういえばレミィもあんな格好をしておったな)」

 

姉妹ゆえか、それともスカーレット家に伝わる防御の奥義なのか。

少女……レミリアの妹フランドールをひょいと夜智王は抱き上げる。

びくりと震え、一層身を縮こませるフランをあやすように優しく夜智王は話しかけた。

 

「何を怯えておるのだフラン」

「だって、夜智王、怒ってる?」

 

先日、少々お痛が過ぎたフランをこっぴどく叱ったせいか?

基本的には夜智王になついているフランだが、同時に怒らすと非常に怖い存在と思われているようだった。

安心するようにフランをあやしてやりながら、優しい声で話しかける。

 

「別に?」

「ほんと?おしりぶたない?」

「ああ、本当だ」

 

恐る恐る顔を上げたフランの頬に接吻してやつと、くすぐったそうにし、ふわりと笑みを浮かべる。

 

「博麗神社の宴会はどうしたのだ?」

「フランはお留守番だって、あいつが」

 

ぶーと唇を尖らせてフランドールは言った。

そういえば今宵は満月、この愛らしい外見からは想像もできない、フランドール抱える狂気が最も強まる時期だ。

いささか妹に対して過保護なレミリアはそれを心配して宴には連れて行かなかったのだろう。

しかし生意気な盛りのフランは姉の心妹知らず、毒を込めてレミリアを「あいつ」などと呼び捨た。

 

「フランや」

「なぁに?」

「汚い言葉を使ってはいかんぞ」

「ぶー」

「ぶーではない、そういった言葉はフランの心も汚くする。そういうものだと覚えておけ」

「難しいこといわれてもわかんないよ……それより夜智王、パチュリーの部屋で何してたの?」

「それは、もう少しフランが大人になったら教えてやる」

「フラン子供じゃないよ?」

 

不満そうに唇を尖らせるフランドール。そんなふてくされた表情もひどく愛らしい少女であった。

 

「時に美鈴も留守番か?」

「うん、美鈴は元々お留守番だよ?」

「……」

「やめてください!その哀れな者を見るみたいな目は!」

 

床につっぷした美鈴がわっと泣き始める。

その様子に苦笑しつつ、夜智王は小悪魔に目配せする。

フランドールの登場で、どうやら今宵は夜智王と情夜を過ごすのは無理そうと残念そうにしていた小悪魔だが、夜智王のアイコンタクトをすぐさま理解する。

にやりと、二匹の淫獣が笑みを交わす。

 

「ではな小悪魔、ワシはこれからフランと月夜の散歩と洒落込むから、後は任すぞ」

「はい、お任せください夜智王様」

「よぉく仕込んでおいてくれ」

「かしこまりました」

 

お散歩ー!と嬉しそうにはしゃぐフランをよそに、不穏な空気を感じ取った美鈴がひっと短い悲鳴を上げる。

逃げたいが、腰が抜けたままである。

 

「まぁ大変美鈴さん、お部屋までお送りしますわ」

「え、いや、平気ですから」

「遠慮なさらないで」

「遠慮じゃなくてですね……ちょ、どこを触ってるんですかぁ!」

「うふふふふ、相変わらず素敵なおっぱいですわね」

「い、いや、助けて……って夜智王さんも妹さまもいなーい!」

「さぁ行きましょう」

「いーやぁぁぁぁぁぁ!」

 

美鈴の切羽詰った悲鳴が虚しく響き渡った。

 

 

 

「と、そんな訳でなぁ、結局小悪魔とはできずじまいよ」

 

しぶる霊夢にお賽銭を貢いで宴会を催してもらうという、それなりに手間のかかった計略だったが、そうそう思う通りにはコトは運ばないものである。

魔理沙達の所にフランが乱入しないよう、フランを連れて夜空の散歩と洒落こむことになったのだ。

小悪魔とはできなかったし、勝手にフランを館から連れ出したとレミリアの癇癪は食らうしと散々な目にあったわ、と夜智王はぼやく。

それだけに、魔理沙とパチュリーが上手くいったのかが気になる、無論下世話な興味も有るから、囁くように魔理沙の耳元に口を寄せて重ねて訪ねた。

 

「で?」

「だ、だれが言うか!」

「ふぅん?ま、聞かずともだいたいは推し測れるがなぁ」

 

パチュリーの肢体は溺れるようであったろう?と夜智王が囁くと、あの夜、己の腕の中で恥じらいながらも、薬のせいで乱れていたパチュリーの姿を思いだし、魔理沙の体が内からカっと熱くなる。

瞼の裏に焼き付いてしまった、薄暗闇に浮かび上がる白い肢体。それを振り払うようにぶんぶんと魔理沙は首を降り、半泣きの様相で声を絞り出す。

 

「し、知るかよぉ」

「秘するほどにめくるめく一夜であったか、そうかそうか」

 

何を言おうと暖簾に腕押し、勝手に夜智王は納得してしまう。

 

「人の話を……ひやぁ!や、やだ、変なとこ触んなぁ!」

 

弱々しく抗議しようとした魔理沙の尻をつるりと夜智王は撫でた。

 

「ずいぶんとまろみが増したな?」

「な、なにを」

 

動揺し上ずった声をあげる魔理沙、その胸をちょんと夜智王がつついた。

 

「ひやぁ!」

「ふむ」

「きゅぅ!……やっ、やめて、んっ、やぁ、さ、さきは、そこはつついちゃだめ、やだ……夜智王やだぁ!」

 

つんつんと悪戯をくりかえす度、可愛らしい声で魔理沙がやめてと懇願する。

いよいよ魔理沙が泣きそうになった辺りで夜智王は手を止めると、ふっと笑う。

 

「やちぉ……ばかぁ!ひどい、こんな――」

「魔理沙……お主自慰を覚えたな」

「――!!」

 

どうも図星らしく、羞恥心で魔理沙の白い肌が薄紅色に染まる。

よほどに恥ずかしいのだろう、ぎゅっとつぶった魔理沙の目からじわりと涙が溢れてくる。

それをぺろりとなめとり、魔理沙の耳元に唇を寄せ、夜智王はそっと囁きかける。

 

「随分と芯がほぐれたではないか?」

 

夜智王が幻想郷にやってきたばかりのころ、軽いセクハラで魔理沙の乳を触ったことがあったが、その時に比べてやけに柔らかさが増していた。

それぐらいせっせと揉んだ、ということだろう。まぁ相当に強烈な初体験であったわけだし、無理も無い。

 

「綻びかけの青い蕾の風情だな、今の魔理沙は。とても愛らしいぞ」

「やらしいこというなぁ!」

「いやらしいのは魔理沙であろう?うん?あれから毎夜のようにシタのだろう?」

「ひぅっ」

「別に恥ずかしがらんでもいいではないか、年頃の娘なら誰でも通る道だ」

「う、うるさいやい!乙女のセンサイなココロがお前にわかるか!ばか!すけべ!いんらん!」

「ふふ、若いうちに揉むのは大事だぞ、大きく育てるためにはな」

「……そ、そうなのか!?」

「そうだ思春期の乳腺の発達に乳の大きさは左右されるそうだからな、せっせと刺激するのは大事なことだぞ」

 

霖之助を誘惑するためにもな。と夜智王が笑いながら囁きかける。

想い人の名を出された魔理沙の脳裏がちりっと音を立てた。

 

「こ、こーりんは関係ないぞ!」

 

パチュリーとの一夜を、自然己と霖之助に置き換えてしまい、そのあまりに甘い想像を振り払うように魔理沙は声を荒げた。

 

「またそのような強情をはりおって」

 

頑なな理性を溶かそうと、夜智王は乙女心を煽り続ける。

 

「あの朴念仁を堕すにはそんなことではダメだぞ?朱鷺の妖怪娘、慧音殿や咲夜とも仲が良いと聞くし、恋敵がいないわけではないのだぞ?……巫女殿辺りも伏兵っぽいしな」

「う……ううう……」

 

ダメだ、こいつの口車にのっちゃいけない。

アダムとイブを楽園から追放させるに至った蛇の誘惑だ。

しっかりしろ魔理沙、と必死に自分を鼓舞する。

だが

 

「なんならワシが手伝ってやろうか?」

「う……ぇ?」

「霖之助と無事結ばれるところまで、きっちりお膳立てして導いてやるぞ?」

 

想像してむるといい、霖之助の腕に抱かれるところを。

蛇の囁きが魔理沙の思考をマヒさせてゆく。

 

「え……や、だめ……」

「遠慮せんでええのだぞ?一言“是”といえばいいのだ」

 

あ、だめだ。あたしおちちゃう……

魔理沙の唇が決定的な言葉を紡ごうと戦慄く。

それを見て取り、笑みを浮かべる夜智王だが、唐突に飛来した何かが頭部に皆中、破滅的な音が発して夜智王の細い首がひん曲がる。

悲鳴もあげることもできず夜智王は崩れ落ちた。

 

「魔理沙あんた何やってるのよ」

 

そこに現れたのは、少しは抵抗しなさいよ、と呆れた様子で言う霊夢であった。

飛来した何かは霊夢が投擲した陰陽玉だったのだ。

その横にはスペルカード戦の決着が着いたのだろう、勇儀の姿も有る。

勇儀は夜智王を一瞥したが、興味無さげに視線を戻す。

 

「れぇむぅ!」

 

窮地を脱っした魔理沙は転がるように霊夢に駆け寄り、ひしと抱きつくと、その薄い胸に顔をうずめ、めそめそ泣き始める。

 

「ちょっと!どこ触ってんのよ!くすぐったいって!」

「こわっ、こわかったよぉ、ぐすっ、ありがとうれぇむぅ」

「……うっとうしいわねぇ」

 

と憎まれ口を叩きつつも、泣きじゃくる魔理沙をあやすように背中をさすってやる霊夢。

仲睦まじい二人の様子に勇儀が口を挟んだ。

 

「なんだお前らそういう仲なのか?」

「違います」

「れいむあいしてるよぉ」

「だそうだが?」

「……何言ってるのあんたは」

 

仲睦まじい二人を余所に、地面に伏した夜智王の意識は回復する気配も無い。そうとう良い所に入ったのだろう。

また一方では

 

『やはり最大の敵は霊夢なのね……』

 

自力で壺中天から這い出した通信用の人形から呪詛のごとき声が漏れる。

霊夢にすがり付く魔理沙を見たアリスの放つ殺意に、にとりが震え上がる。

ただうまいことに矛先が逸れたパチュリーはほっと安堵の息を漏らすのだった。

 

「酷いな巫女殿、首が千切れるかと思ったぞ?」

 

ようやく復活してきた夜智王が首を据え直しながらぼやく。

 

「どうせすぐ、くっつくくせに」

「だからといって気軽に首を飛ばされてはかなわんな」

 

なぁ魔理沙と親しげに話しかけるが、魔理沙はぎゅっと霊夢にしがみつきぷるぷると震えるばかりである。

 

「なんとも仲睦まじいな」

「やめてください!だいたい夜智王さんのせいでしょう!」

 

またぞろ二人は爛れた仲だとか言い出しそうな夜智王に、霊夢が顔を真っ赤にして食って掛かる。

 

「魔理沙もいつまでくっついてるのよ!次はあんたの番でしょ!」

「や、やぁ」

 

しがみつく魔理沙を振りほどき、ぺいっと勇儀に押し付ける。

ふらふらの千鳥足の魔理沙はこんどはひしと勇儀に抱きつく。

 

「お前、大丈夫か?」

「ちょ、ちょっとまってくれ……」

「あ、ああ、まぁ構わんよ。あたしも少し休みたい」

「ふぅん、その様子だと……」

 

勇儀の物言いに、夜智王がなにやら含みのある笑みを向ける。

 

「ああ、そうだよあたしの負けだよ!うっとおしい蛇だねあんたは」

 

不機嫌そうに勇儀は答えた。かっかっかと蛇は笑い「さすがは巫女殿だな」と霊夢を誉めそやす。

だが、霊夢も渋い顔である。

 

「まぁ……あっちも本気じゃなかったみたいだけど」

 

勇儀は手に大盃を持ったまま、それを一滴もこぼすこと無く段幕ごっこに興じていた。

とんだハンディキャップマッチだったのだ。

 

「ちょいと体調が悪くてねぇ……うまく寸止めできなくて博麗の巫女を殺めたらコトだろ?」

 

なぁスキマと勇儀は通信機の陰陽玉に話しかけるが、あまり折り合いの良くない紫から返事は無い。

 

『殴り合いなら勇儀の圧勝だったろうけどなぁ』

「ちょっと萃香!?鬼と肉弾戦なんて私はごめんよ!」

 

代わって答えた萃香の言葉に、霊夢がもっともな抗議な声をあげる。

 

「そうだぞ伊吹童子、こんな華奢な巫女殿が殴り合いなどしてみろ、ぺしゃんと潰されてしまうわ」

 

そう言いながら、夜智王が霊夢の後ろに回り込み、その細い腰に腕を回してきゅうと抱き締める。

不意打ちの抱擁に、思わず「きゃぁ!」と悲鳴をあげる霊夢、可愛らしい反応に夜智王が相好を崩す。

 

「ほんに巫女殿は華奢だの」

「な、なななな」

 

何をしてるんです!と叫びたいが、舌がもつれ声にならない霊夢。顔を恥じらいに染めながらぷるぷると戦慄く。

調子にのった夜智王の手先がやらしく蠢く。

ひぅ!っと息を飲んだ霊夢は首筋まで真っ赤になる。

 

「恥じらう巫女殿もあ」

 

皆まで言わせず、霊夢は霊力をたっぷり乗せた肘鉄を夜智王の腹にぶちこんだ。

強烈な一撃にうめき声も漏らさず夜智王は腹部を押さえて地面に崩れ落ちる。

びくんびくんと断続的に痙攣する夜智王に、思わず萃香も勇儀も黙りこむ。

 

「もうっ!夜智王さんのすけべ!」

 

一人顔が真っ赤のままの霊夢がばしばしと愛用のお祓い棒で夜智王を叩く。

よほどに肘鉄が堪えたのか、夜智王は一言も発さず、叩かれる度にびくんびくんと痙攣するばかりであった。

 

「いけるんじゃないか?殴り合いでも」

『あたしもそんな気がするぞ』

「何いってんのよ!無理に決まってるでしょ!」

 

説得力に欠ける霊夢の絶叫が響いた。

 

 

 

「そろそろ、や、やれるぜ?」

「大丈夫なのかい、あんた」

 

何とか持ち直した魔理沙がそう宣言するが、勇儀は疑わしげに問うた。

少しでも夜智王から離れたい魔理沙は、がくがくと首を縦に振って承諾の意を示すが、肝心の足腰に力が入っていない。

あまり期待できそうにないな、と顔にでた勇儀に夜智王が笑いながら話しかける。

 

「気を抜くなや星熊の、それは魅魔の弟子だぞ」

「へぇ……」

 

きゅぅっと勇儀の表情が喜悦に歪む。

最強の悪霊と称される魅魔も弟子ならば、それなりに楽しませてくれるそうだ、そう勇儀は愉しげに笑う。

一方魔理沙は夜智王の口から出た師匠の名前に、また動揺する。

 

「や、夜智王は師匠と知り合いなのか?」

「まぁ、そうだな……控えめに言って“爛れた仲”だ、詳しく聞きたいか?」

「い、いい!」

 

ぶんぶんと魔理沙が首を振る。

 

「ふふ、あれはいい女だからな。一緒に悪さしたり、酒を飲んだり……」

「わー!わー!言わなくていい!」

 

まぁ言わずとも知れた関係であるらしい。

 

「よし、とにかく始めよう!」

「ああ、わかったよ」

 

逃げるように魔理沙は箒を飛ばして上空へと舞い上がる。

勇儀もそれを追っていく。

頭上に弾幕の花が咲き乱れ始めた。

 

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