「ひどい……やちおう……だして」
「だめじゃ……孕んだら……どうする?」
結局空が白み始めるまで二人は交わり続けた。
散々にイカされ、ぐったりと夜智王のしなだれかかり、もう指一本動かすのも億劫な文だが、結局一度も夜智王が射精してくれないのを責める。
夜智王も大分息が荒いが、さすがに生きることとスルことがほぼイコールの蛇だけあって、相当に我慢強い。
ついでに妙に常識的な処がある。
好色な割には肉の欲には溺れないところは、これの数少ない美点だった。
「ばかぁ……いじわるぅ」
「子供か……まったく」
「じゃぁかけてぇ、わたしのからだでイッってぇ」
淫らに懇願する文。
自分ばかり快楽を覚えていることもあるが、何より夜智王が自分で達してくれないのが不満らしい。
その痴態に夜智王が顔を顰める。さすがに堪え難い。
「まったく……後悔するなよ」
ひょいと文を抱き上げ、股間に肉棒を通す。
「ひゃぁ!」
とうの昔に素っ裸になった文の秘裂と陰核が触れた爆発寸前の肉棒の熱さに震える。
「イクぞ文」
「はい……」
返事をし、きゅうと股を閉じて熱い肉棒を挟む。
秘裂とすべすべの内腿の感触を堪能しながら、夜智王の肉棒が文の股座を犯す。
まるで文に男根が生えたかのような淫らな光景であった。
くちゅっ、くちゅっ、と粘膜がこすれ、その度にどくんどくんと肉棒が跳ねる。
「やぁ……ぁっ!わたしも……また……いっちゃうぅ!」
「もう……出るぞ文」
「だしてぇ……からだじゅう……やちおうのでベトベトにしてぇ」
後日思い出しただけで顔が真っ赤になるような淫らなことを、快楽でどろどろになった脳は気にせず吐き続ける。
「イく……イっちゃう!……やちおうは?……いっしょに、いっしょに!」
「ああ、一緒にイこう文」
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「くっぅ!」
文が夜智王の上で背を弓なりに仰け反らせ、後の絶頂を迎えるのと同時に、夜智王の肉棒が精を吐き出す。
「ひゃっ!ぁつぃ!あっぁぁぁぁぁ!」
まるで間欠泉のように噴出しだ大量の精液が、文の髪を、顔を、胸を、腹を汚していく。
「はぁ……はぁ、こんなのなかにだされたら……しんじゃう」
「しにゃぁせんわ、まぁ孕むかもしれんがな」
夜智王のぼやきを文は聞いていなかった。
幸せそうな表情で気絶している。
「……まったく、可愛い奴だ」
その頬に優しく接吻するとくすぐったそうに文が笑う。
おおむね優しくできた。
とりあえず、夜智王はそう思うことにした。
「んっ……」
心地よい暖かさに包まれていた文は差し込む日の光のまぶしさで目を覚ました。
ゆっくりと覚醒していく意識とは裏腹に、この心地よさに包まれたまま眠っていたいと体は弛緩したままだ。
「やちおう……?」
「おはよう文。後朝の歌でも詠もうか?」
「ばか……」
それは結婚の儀式である。
からかうような物言いと笑みに文が膨れる。それがまた可愛いので、夜智王はその膨らんだ頬に接吻をする。
顔を真っ赤にしながら、誤魔化すように文は言う。
「あなたが着せてくれたのですか?」
精液やら汗やら自分の愛液やらでべたべただった体は清められている。
素っ裸だったはずの格好も、ちゃんと寝間着の肌襦袢を着せられていた。
「もう寒いからの、悪い風に中てられたら大変じゃろう」
「はずかしい……夜智王のばか」
気絶していた自分の体を良い様にされたのが、よほど恥ずかしいらしい。
さらに顔を紅潮させつつ、膨れた文はぽかぽかと夜智王の胸を叩く。
「ふふ値千金の可愛い寝顔だったぞ」
「ばかぁ!」
ガブっ
「っ!咬むな!咬むのはやめい!」
「おかしい、普通はああいうと女子は喜ぶものだというのに」
「何か言いましたか?」
「いや、文の作るメシは旨いな」
「褒めても許しませんよ」
日はすっかり高くなり、二人は遅めの朝食をとる。
味噌汁に米をぶちこんだもの、いわゆるおじやである。
「本当に旨いぞ?絢は料理が割と不得手であったからな。似ないで良かったの」
祖母よりも旨いと言われて、文は表情が緩みそうになるのとを必死に抑える。
「……今日はどうするのです?残念ですが私は会合があるので一緒にはいけませんが」
「とりあえず山をぶらりとしてから。あちこち挨拶周りかの。そういえば稗田阿礼乙女は今おるのか?何代目だ?」
「居ます、阿求さん、九代目ですね」
「もうそんなにたったか。里で何か土産を買って、当代の博麗の巫女に挨拶して……幽香は昨日会ったし、そうそう白玉楼の女主人と久闊を叙すとするか」
「……むぅ……」
「なんじゃ膨れて、可愛いのぉ」
女の名前ばかり出てくることが不満でしかたない。
とはいえ、これはこういうモノだった。
何者にも縛られない自由な気質。
それこそが文が夜智王に惹かれる理由でもある。
「夜はどうするのです……」
「さてな。時間的には白玉楼で泊めてもらうかの……ああスキマが邪魔をしにきそうだな」
紫は白玉楼の女主人……西行寺幽々子に、友人というには少々過激な感情を抱いている。
よほど夜智王を警戒しているのか、二人でいると決まって紫が、物騒な目をして邪魔をしにくるのだ。
一方で文は、幽々子の美貌と肢体を思い出し、じぃっと険悪な視線で夜智王を睨む。
「……貴方は昔から胸のでかい女性が好みでしたね」
「うん?まぁそうだな、別に小さくても良いが、でかいほうが色々できていいじゃろ?」
「死ねばいいのに……」
なにやら物騒なことをブツブツと文はこぼしている。
「文、時間は大丈夫なのか?会合とやらがあるのだろう?」
「……」
「遅参すると天魔や他の連中が煩いぞ」
「そうですね、幸い天魔様は貴方との一件のせいか私に甘いので、色々と我侭が出来ますが」
その分他の連中が煩いのですよ。と文は嘆息する。
そりゃそうじゃろ、と夜智王は思う。
実力的にはもっと上の地位にいてもおかしくない文が、割とふらふらしてるのは、天魔の罪悪感からくるえこひいきらしい。
「ではまたな文。どうせこの先はずっと幻想郷暮らしだ。また存分にしような」
「ばかっ!」
「ぅぐ!!」
昨日同様、小さな風の礫を受けて悶絶する夜智王。
ふんっ!とそれを置いて文は家をでる。
その顔は喜びと恥ずかしさで真っ赤に染まっていた。
負傷から回復した夜智王は、文の家を出る。
山には鬼はいないそうだから、とりあえず昨日上空から見た神社と湖に向かうことにした。
なんだって妖怪の山にあんなものが出来たのか。
なかなかに面白そうだったからである。
山中を飛ぶように駆ける。
飛ぶのは不得手だが、こういった障害の多い山中を駆けるのは大の得意だった。
ざっと雑木林をぬけると、眼前に立派な鳥居が立っている。
「昨日遠目に見えたあれは御柱であろ……さてさて諏訪の神となにか関係のあるのか」
だとしたら早めに退散すべきか。
とりあえず鳥居をくぐり境内に入る。
抑えているのか、居ないのか、とまれ神が居るような威圧感は感じない。
参堂をぽてぽてと歩いていく。
鑓水でちゃんと手を洗い口をすすぐあたり、妙に律儀な蛇である。
社殿を伺うと、なぜか脇がむき出しの巫女が境内の落ち葉を掃いているのが見えた。
「おはよう……には少し遅いかな巫女殿」
「こんにちわ。初めてお見かけします方ですね……妖怪さんですか?」
さらりとこちらの正体を看破された。
まぁ尖った耳や縦に裂けた瞳孔を隠しもしないのだから無理も無い。
まぁそうだな、と返す。
「何か御用ですか?」
「いや、久方ぶりに幻想郷に戻ってみれば、御山に神社が出来ていたのでな。気になって見に参った」
そうですか。と巫女は朗らかに笑った。
最近越してきたんです。と、まるで気軽な引越しの様にのたまう。
内心で「いやいやいや」と思いつつ。夜智王は形式通り完璧なお参りをすます。
「参ってからいうのもなんじゃが、どなた様をお祀りなのかな?」
「はい、山の神八坂神奈子様と湖の神洩矢諏訪子様を」
「……」
なんちゃらの命ではなく、名前と来た。これはどうやら顕現されているらしい。
しかも「モレヤ」と来たではないか、蛇の本能が「危険だ」と告げる。
「それはそれは……ではまた」
「待って下さい」
がしっ
触らぬ神に祟りなし、冗談抜きで祟られそうだったので、踵を返した夜智王の腕を、巫女さんが掴む。
がっちり掴んで放さない。
「……なにか」
「お二人とも最近お忙しいみたいで、ずっとお留守で……暇だったんです。少しお話をしていきましょう」
だが、断る。
そう言いたかった。
だが、なにやら悪い方向にイっちゃった瞳をしている巫女に逆らうのが怖かったのか
「はぁ」
夜智王はそう気の無い返事をするしかなかった。
巫女は東風谷早苗と名乗った。
「へぇ夜智王さんは蛇の妖怪さんですか、じゃぁウチの神様たちはご利益がありますよ!」
今すぐ氏子契約しませんか?
と言わんばかりの勢いに、夜智王は虚ろな目で「そうですな、はははは」と返す。
専ら早苗がグチやら、幻想郷にやってきた経緯、その時の騒動などをまくし立て。
夜智王は心を空にして、相槌を返す。
もう逃げたい。
今、ここの祭神達が帰ってきたら詰む。完璧に詰む。
だが、蛇お得意の口車がこの巫女には通用しない。
無理に逃げると「どうしたんですか?」とあの無邪気な顔と声のまま。
だが娘道明寺の清姫もびっくりの執念で追ってきそうで怖い。
「(心を無にするのじゃ、そして祈るのじゃ、ここの祭神殿達が帰ってこんことを)」
夜智王が悟りを開く寸前。
「ただいまー」
「早苗?誰か来ているのか?」
希望は砕け散った。