暴食のインキュバス 作:コンバット越前
まずは体を清める必要がある。アルトの身なりは随分と薄汚れており、浮浪者の様だった。折角端正な顔をしているというのにある種の辱めであるかと錯覚する程である。
いくら何でもそんな状態で教会の人間に突き出せばあらぬ誤解を受ける。マーリンはなまじ長く生きているが故にそうした世間体というものを少々気にするタイプなのだ。
「ここを少し進んだ先に泉がある。体を洗って新しい服に着替えろ、古いものだが許せ」
先頭を歩くマーリンの少し離れて後ろからアルトは新しい服を手に抱えながら追いかける。体格としては彼の方が少し大きいのだが、恐る恐ると言った様子で歩く姿はまるで子犬だ。
「マーリンさんは女の人なのに、どうして替えの服を持っているんですか?」
「私はこう見えて長生きをしていたのでな。誰かと共に暮らした事がある。その時の忘れ物だ」
「へ~……」
つい口が滑り話さなくても良い事を話したと気付いたマーリンは口をつぐみ、ちらりとアルトの様子を覗く。あまり今の会話で気になる事はなかったらしく興味津々な様子で見つめ返していた。
この少年が吸魔の血が入っているとは思い難い。無害で、弱々しい少年である。
(……いかんな、そんな主観を持つ必要はないのに)
長年独りで生きてきたせいだろう。つい自分一人で考えてしまう癖がつき始めている。マーリンは意識をなんとか現実に引き戻し、歩を進めた。
しばらくして泉に辿り着く。マーリンも頻繁にここで水浴びを行っている行きつけの場所だ。
「ここだ。ひとまず体を洗い流せ。良いな? 私はすぐ近くにいる。何かあったら呼べ」
「は、はい」
いくら子供と言えどもその裸体を拝む趣味はない。マーリンは足早に泉から離れる様に歩き出し、背後では衣擦れの音が聞こえた。
少し離れた木のそばに体を預け、ぼうっと空を見上げる。夜が明けて今は陽光が差し込み、森の声も穏やかなだ。だがこの声が聞こえない場所も生まれてしまっている。
アルトにはまだ伝えていないが、彼の力で生命を吸い尽くされた地域は恐らくしばらく再生する事はない。それだけの力を彼は持ってしまっている。
「……あんな子供がどうしてそんな目に遭うのだろうな」
心からの同情の言葉を呟く。そんな風にモノを言える立場か、という自嘲の笑みも漏れる。
ぎゅっと拳を握り、唇を噛みながらマーリンは息を吐く。
「っ、それにしても、応えるな。あの匂い」
情けない事にマーリンの体は未だにアルトから受けた魅了にいよいよ昂りを抑えられない状態にあった。感覚を鈍らせていた分、そのぶり返しと言わんばかりに泉に連れてくるまでの間にも下腹部に熱が灯り、頭の中にはモヤがかかっている様に感じられてしまった程だ。
確かに匂いそのものは薄れたはずなのだ。だがどうもこの魅了は何か条件を満たさなければ消えない、ある種の呪いらしい。
もちろんこんな話をアルトにはしていない。ただでさえ混乱しているというのに、お前に誘惑されているなど口が裂けても言えない。
(わかっているさ、解消する条件が何かくらい……)
吸魔が他者を誘惑する理由は効率よく相手の生命を吸い取る為。であれば恐らく性的興奮が一定以上まで到達しない限り、継続して付きまとってくるに違いない。
あんな年端もいかない少年に昂りを覚える罪悪感、そして背徳感。マーリンは冷静な判断をしようにも性欲を発散させる絶好の機会を逃す選択ができなかった。
衣服の下に手を伸ばす。下着に触れると、既に布地越しに愛液が漏れ出始めていた。このままでは足を伝いこぼれ始めてしまう。
「ふうっ……♡ んっ……♡」
下着の上から指先で秘部をなぞる程度でも湧き上がるに快感が襲い掛かってくる。今までにない新鮮な感覚にマーリンは視界が明滅した。
こんな風に己を慰める事など滅多になかった。そうする意欲がしばらく湧かず、とうに性欲など枯れてしまったのだと思い込んでさえいた。だが今はどうだろうか、唇から漏れ出そうになる嬌声を堪えるので精いっぱいだ。
(これ、は、まずいぞ)
果たして吸魔の魅了は失ったはずの欲求さえ作り出すのか、それとも……単にそう思い込んでいただけでマーリンの肉体は色に飢えていたというのか。
であれば尚の事、少年に対して欲情している事実に魔術師は恥を覚え、しかし指を止める事ができなかった。
下着に指をかけ、ゆっくりと下ろす。愛液が糸を引いている。こんな状態で直接触れてしまえばどうなるのか、わかっていても最早自省する力は残っていない。
恐る恐る指先が秘部に触れ、くちゅ、と水音が聞こえた。
「~~~っ……♡♡」
その瞬間に全身を駆け巡る電撃の様な快感にマーリンは耐えきれず、びくんっと体を震わせる。簡単に体は絶頂を迎えてしまっていた。
「ふーっ♡ ふっー♡ ふっー♡」
膝が震えて仕方がない。マーリン自身が動揺のあまり言葉が出ない、波の様に押し寄せてきた快楽はそれだけのものだったのだ。
絶頂した事で魅了が溶けていく感覚をハッキリと彼女は感じていた。熱が引いていく様に頭にかかっていたモヤが晴れていき、次第次第に冷静な意識が戻ってきているのだ。
それならもう用は済んだ。あくまでも意識を明瞭にする為にやむを得ず行った事、下着を履き直すわけにもいかないので一度脱いでしまおうか、などと考えながら……マーリンは無意識に自慰を続けようとしている自分に気付いていた。
(嘘だ、私は何をして―――)
最早一度思い出してしまった感覚を理性で制御できるはずもなく、既にマーリンは自分自身の快楽を求める心に囚われてしまっていた。
今度はぐちゅり、と水音が聞こえた。彼女自身の指が肉壺の中に何の抵抗もなく入り込んでいき、膣の奥がビリビリと震える。
「んうぉっっ♡ んぐぎぃっ♡」
信じられない程に醜い声をあげマーリンはのけ反った。先程よりも強く激しい快感である。
大きな声が出てしまった。もしもアルトに聞かれていたら、今の痴態を見られてしまえばその時どうなるのか想像もしたくない。
とにかく声を抑えようと空いている手の指を口にねじ込む。声を出してしまうくらいならいっそ自分の指に舌を絡め、少しでも早く落ち着かねばならない。
「ちゅる、じゅるっぷっ、んっちゅっっ♡」
(頼む。早くっ、早くしろっ……!)
そうして何度も何度も自分の指で膣をかき回し、敏感なところを自ら責め立て続け、ようやくその瞬間は訪れた。
股から脊椎を昇る様に絶頂がマーリンを突き上げる。ぴんっ、と体が張りつめ、溢れんばかりの快楽に股から音を立てて潮が噴き出した。
「んああぁぁぁ……っっ♡」
我慢をしようにも足に力が入らない。なんとか木に背中を預け、荒々しく息をしながらなんとか体勢を整える。
何十年かぶりの自慰はおよそこれまで得た事のない感覚と、妙な達成感の様なものを与えていた。少年に欲情したという経緯から目を背ければ、である。
何はともあれ体の異常は解決した。ぐちゃぐちゃになっている下着を一度脱ぎ、衣服を整えた上でマーリンは素知らぬ顔でアルトの様子を見に行こうと歩き出し、
「―――あ、あの、声が聞こえたから、どうしたのかと思って。そしたらなんていうか、あのごめんなさい」
恐らく、一部始終を目の当たりにしていたであろうアルトと出くわした。顔を真っ赤にし、目を泳がせる少年を前にしてマーリンは頭が真っ白になり、ただただ絶句してしまう。
見られていた? 何処から何処まで? そもそも喘ぎ声を聞かれていた? そんな大きな声だったのか?
どっと湧き上がる羞恥心に口をモゴモゴと動かし弁明しようとしたマーリンは、アルトが一糸まとわぬ裸体である事に遅く気付く。
細い体だ、少女と見紛う程に。
視線を落とすと下腹部の辺りに何か刺青の様なものが刻まれている。よく見ようと目を凝らしたところで……華奢な体に見合わない、大木の様な男根が目に入ってしまった。
太く、硬く、何より大きく屹立したソレから、マーリンは目を離す事が出来なかった。
次回は逆レ○プです