暴食のインキュバス 作:コンバット越前
「まぁ……アレだ、吸魔には栄養補給の為の手段として他者を誘惑する魅了の魔術を発動する事がある。君の場合はその効果がかなり強く効くらしい。強い飢餓状態、つまりは空腹でなければ出てくる事はないだろう。なので……私がシていたのはだな、毒を抜く作業の様なモノだったわけだ」
などとマーリンはそれっぽく弁明はしてみるものの、結果から見れば少年が水浴びしている横で一人自慰行為に耽り、潮を吹きながら悶えていた事実をなかった事になど出来ないのである。
泉で起きてしまった事態は『後で説明する』と言い切る事でなんとか収め、小屋まで戻ってこられた。しかし気まずい空気をなんとかするべく、言い訳じみた話をした次第だ。
テーブルを挟んで向かい側にいるアルトの表情は優れない。困惑、動揺、と言ったところだろう。まず目の前で女性の自慰を目撃した驚き、次にそこから矢継ぎ早に聞かされた、吸魔としての体質がもたらす弊害。幼い少年が聞かされるにはショックが大きい。
「……じゃあ、僕のせいでマーリンさんは辛かったんですね?」
「いや、それは、それはだな?」
辛かったかどうかで言えばそうでもない、と答えかけてマーリンは口をつぐむ。
随分と長い間、性的な快感を得る機会などなかった。まったくその気にならないせいで、更に言えば……何十年か昔に『離別』があったからで、その内枯れてしまったと思い込んでいたのだ。
なのでアルトにかけられた魅了のおかげで久しぶりの絶頂を迎えた事は少し、いやかなり気持ちが良いものだった。
だが、そんな事を口が裂けても彼に言えるものではない。自分の状況を受け入れきれない今のアルトに不用意な言葉をかけるべきではない事くらい、すぐに理解できた。
「ふむ、もし申し訳ないと思う様だったら自分の意思で力を制御できる様にするべきだ。人を傷つけた、迷惑をかけたという自覚があるのなら根本から直さなければ」
「は、はい……そうしますっ」
少しでも前向きな考えを持つ事でアルトも思考を切り替えていける。もしもここで彼の体質を肯定してしまえば魔の道に足を踏み入れかねない。
彼は人だ。わけもわからず力に振り回されているだけで人の心を持っている。であれば、その純粋さを守りたい気持ちがマーリンに芽生え始めていた。
だが同時に不本意ではあるが確かめなければならない事が一つ残っている。後は何処で切り出すか、である。
「そこで、だ。吸魔としての力を御する為にも君の体を調べさせて欲しい。教会に連れて行く前に少しでも知りたいんだ」
「わかりましたっ! それで誰かを傷つけずに済むなら何でもします!」
アルトは身を乗り出し、文字通り前のめりで言い切った。彼自身がどんな方法でも成長したいという強い意欲を持っているのが感じられ、あどけなさに溢れる笑みがそこにあった。
何でもする。
その言葉を聞いたマーリンの脳裏には、アルトの細い体と、逞しい男根がよぎった。
「……うむ、気持ちは十分の様だな。だが私も色々準備したい。明日から始めるとしようか」
薄汚い欲望をすぐに振り切る。一瞬でも湧き出した邪念を胸の内にしまい込み、マーリンは冷静であろうと意識しながら頷き返しつつ、アルトの同意を確認したところで話を本題に切り出す事にした。
「そういえばなんだがアルト。泉で君の腹の辺りに何か、模様の様なモノが見えた気がした。アレはなんだ?」
「僕にもわからないんです。服を脱いだらあって……アザか何かかと思ったらそうでもなくて。もう一度見せます」
「えっ、いやしかし」
「マーリンさんならわかるかもしれないですし!」
アルトは不安げな顔で椅子から立ち上がるとマーリンの下へと駆け寄ってくる。ショッキングな光景を目の当たりにしたのだから少し怖がりそうなものだが、相当信頼を置いてくれている様だ。
そうしてマーリンの前にやってきたアルトは顔を赤くしながら履いているズボンを少しだけ下ろし、下腹部を見せてくる。
確かにそこにはアザらしき何かが刻まれている。家紋の様にも見える鋭い形をしていた。
「……触っても良いか?」
「どうぞ!」
「う、うむ」
恐る恐るアザに指先で触れる。皮膚に変化を与えている様には見えないが……しかし間近で見る事によって少しずつマーリンはその正体を理解しつつあった。
「これは一種の魔術的痕跡……誰かが君に何らかの魔術を仕込んだらしい。痛みはないか?」
「痛くはないですけど、誰かって、誰なんですか?」
「私にもわからん。どういう魔術かさえも見ただけ、触っただけではどうにも……大体は起動と同時に変化するものなんだが」
指先で突く、両手でアザが刻まれた皮膚を伸ばしてみる。外部からの刺激による起動はなし、となると恐らく一定の条件を満たした場合に反応がするのだろう。
つい興味深々にアザを眺め続けていたマーリンだが、気のせいか何か硬いモノが顎の辺りに何度か当たっているのを感じた。
「ん? 今のは?」
「あ、あのマーリンさん。もう……そろそろ」
その瞬間である。アザが突然、血に染まったかの様に深紅に光り始めた。何かをきっかけにアルトの体に施されていた魔術が起動してしまったのである。
一体そこに秘められていたのはどんな魔術か、マーリンが身構えようにも間に合わない。アザが強い光をカッと放つが、しかし予想されていた攻撃魔術の類は襲い掛かってこない。
ただ代わりにアルトが慌てふためき、声を裏返らせていた。
「マ、マーリンさんっ、あの、これ、どうなってるんですか?」
「……冗談だろう?」
アルトの男根が勃起していた。泉で見た時よりもずっと大きく、太く。それが魔術の起動によって引き起こされたものであるくらいはすぐに理解できていた。問題は『何故こんなモノが仕込まれていたのか』にある。
「ぼ、僕こんな、こんなの知らないです。マーリンさんにお腹の辺り触られて、息がかかって……それでドキドキしちゃいましたけどっ」
自分の意思と反して起きてしまった生理現象にアルトは顔を真っ赤に染め、羞恥から顔を手で隠す。一番隠すべき部分はビクビクと震え、そそり立っている。
「―――なる、ほど。性的興奮が発動条件か」
性的興奮、厳密に言えば勃起。そこに合わせて魔術は自動で起動する様に作られたらしい。まさか内容は『更に勃起する』だけではあるまい。恐らく、マーリンの想像している通りの用途ならば、もっとひどい可能性がある。
同時に顎の辺りに感じていた何かの存在が勃起しつつあったアルトの男根だと気付き、マーリンの心臓はバクバクと早鐘を打つかの様に激しく乱れた。
体が反応したと言えばそれまでだが、少年の性欲が自分に向けられた事実にエルフは僅かな昂りを覚えていた。
(まさか、まだ魅了の魔術が効いているわけではないだろうな? いやあり得る。男性の象徴なんだ。この器官からも何か……いや、だがそれでは私の考える魅了発生と辻褄が合わな―――)
じゅん。
股座が湿った。
思わず背筋が粟立ち、マーリンは自分の予測が外れていた事に戦慄した。
男根を目の当たりにし、再び魅了魔術がかかっているのである。
「んっ……♡」
思わず唇の端から声が漏れていた。あの時、泉のそばで感じたものと同じ興奮が湧き上がってくるのだ。
「マーリンさん? だ、大丈夫ですか?」
「それは、こちらのセリフだ。辛くないのか?」
「え、えっと、凄く苦しい、です」
「苦しい? 何処だ、言ってみろ」
「……っ、ここ、です」
泣きそうな顔でアルトはパンパンに膨らんでいる自分の男根を指差す。渦巻く性欲に押し流されまいとしながらマーリンがゆっくりと指先で触れてみると、燃える炎の様に熱い。亀頭の辺りを撫でる様に触れてみると、アルトのか細い悲鳴が上がった。
「ひゃあっ♡」
「へ、変な声を出すな。どうにかしてやるから」
「ごめんなさぃっ」
勃起を条件に発動する何かしらの肉体強化、それが魔術の内容だとする。だが極端な強化はいずれ肉体に大きなダメージを与えかねないはずだ。もしもこの状態が続けばアルトの男根は充血のあまり破裂しかねない。
一体この魔術を施した者は何を求めていたというのか。それを確かめる為にも、マーリンはアルトを助けなければならない。
そうして指で亀頭を撫でてやると、アルトは楽器の様に声を漏らす。
股の間から愛液が伝っていくのを感じた。マーリンは息を飲み、無意識に掌全体で男根を包み込んでやる。
硬い。剣の柄を思わせる。間近でこんなモノに触れるのは久しぶりだったおかげで興味を惹かれるままに彼女は男根を弄り始めた。
(子供だとこんなにも元気なのか? いや、吸魔だからか。皮膚に直接触れてしまっているが大丈夫……の様だな)
ちらりと見上げるとアルトは唇をギュッと噛み締めながら鼻息を荒くしながら快感に耐えている。その様は幼い少年が掌の上にある優越感を沸き立たせるには十分すぎた。誘われている、襲ってしまおうか……そんな暗い衝動が少しずつ湧き上がってしまう程に。
「あ、あのっ、もうこのくらいで」
「ダメだ。恐らく一度射精すれば大人しくなるだろうから、じっとしていろ」
「でもぉっ……」
最初はたどたどしく、力加減もわからないままだったマーリンはアルトが堪えようと必死になる様を眺めながら、男根を愛でる様に触れる。優しく、けれど少しずつ早く肉棒をしごいていく。
そうして男根は次第にビクビクと堪える様に震え始め、
「ううっ……マーリン、さんっ!」
咄嗟にマーリンが両手の掌を受け皿の様にして準備した直後、精液が鈴口から勢いよく吐き出される。びゅるびゅると治まる様子もなく、掌からも溢れそうな量がたっぷりと放出されていた。
「あっ、はあっ♡ はあっ……♡」
「凄い量だ。こんなに出るとは思わなかったが、若さか? 魔術の影響か?」
沸騰しそうな熱さの精液をマーリンはじっと見つめ、ごくりと唾を飲んでいた。
体がどういうわけか、手の中にある白濁色の液体を求め始めている。不純物を多く含み、到底流し込めるとは思えないモノを、だ。
「ごめん、なさい。手を汚してしまって」
「いや、良い。一旦捨ててくる。座っているんだ」
冷静であろうと努めてマーリンは落ち着いた声色でアルトに命じ、自分は小屋の外まで足を運ぶ。その足取りがプルプルと震えている事を彼に気付かれない様にするのは辛いものだった。
少し離れた森にまで辿り着き、再び溜まりに溜まった精液を見下ろす。
気のせいか、白濁色の液体からは果実の様な甘い匂いが漂っている。あり得ない話であると、吸魔の力が働いているせいで意識がぼやけているとわかっていながらも、『味わいたい』という欲求が襲い掛かってきていた。
(―――もしも吸魔の力が分泌物にまで作用するのだとしたら、これを取り込んだ瞬間に私はおかしくなるかもしれんな)
そこまで冷静に考えながらマーリンはゆっくりと精液を、口に運ぼうとしていた。
ほんの少しだけ、一滴だけ、そんなつもりで僅かな量が桃色の唇を通じて口中へと流れ込んでいく。
瞬間、エルフの小柄な体はビクンっと一際強く震え、精液は地面へと零れ落ちた。
「これは……まずい♡」
この結果になる事は理解していた。まさか吸魔の精液が何の害を持っていないはずはないと。
その上で雌として魅了にハマり込んでしまっていたマーリンが本能的な欲求を跳ねのけられるはずもなく、彼女は精液を嚥下した。
下腹部の熱が、秘部の昂りが、更に増していく。
吸魔の精液はたとえ混血種であろうとも、媚薬の効果を持っている事がハッキリした。
おぼつかない足取りでアルトの下へ戻ったマーリンは既に魔術師としての冷静な思考を失っていた。
「どうだ、調子は」
「あ、あの……まだ戻らないんです」
言われた通りに椅子に座っているアルトの股の間では、あれだけの射精をしたにも関わらずまだ男根が屹立している。その猛々しく、そして雄々しいカタチにマーリンの秘部は愛液を迸らせてしまう。
「……アルト、私の部屋に来い。治してやる」
「ど、どうやって治すんですか?」
「多分、やる事をやれば治る。さぁ来るんだ」
困惑するアルトの手を引き、マーリンは自室へと連れて行く。勃起してしまった事が理由だとすれば萎縮させるまで、そしてその方法を彼女は理解しながらも決して口にしようとはしなかった。
自室には収集した魔導書や骨とう品が収められた棚、学習机、そして簡素なベッドが一つ。
「そこに寝るんだ。そして……良いか、今から私が見せるモノは君を治す為に見せるんだ。わかったか?」
「ええ、と」
「わかったか!」
「わかりました!」
「なら、良し……!」
言われた通りにアルトはベッドに寝転がり、恥ずかし気に視線を泳がせる。
マーリンは何度も何度も『これは仕方のない事』と口中で呟きながら、彼の目の前で服に手をかけていた。自分が純粋な性欲のままに動いてしまっている事を否定しようという気持ちは少しずつ薄れつつある。
衣擦れと共にまず、履いていたスカートが床に落ちる。次に羽織っていたブラウスのボタンを一つずつ外していく。色気のない服装だ。自分はこれまでこんな服を着る事に何の抵抗も感じていなかったらしい。
「ま、マーリン、さん?」
「心配するな。今、治してやるから……」
そうしてマーリンは一糸まとわぬ姿になっていた。控えめな乳房、小ぶりな尻、文字通りすべてを少年の前に晒したのだ。
アルトはベッドに寝転がったまま言葉を失っていた。何が起きるのか想像もつかない、そんな様子だった。
ゆっくりとベッドに腰かけ、そのまま少年に覆い被さる。肌から伝わる体温は彼女を昂らせ、獣の様な衝動を湧き上がらせる。
何か言われる前にマーリンの唇はアルトの唇を塞いでいた。
本番は、待ってほしい