※この作品はR-18です。

SN2凌辱編   作:セトス

7 / 8
【注意書き】
・この話の中に行為シーンはありません。
・新たな仲間との出会いはあります。
・マグナ達の冒険活劇の文量が(また)思った以上に伸びてしまったため、物語を知りたい方、もしくはガチホモ要素を楽しんで読んでいる方は閲覧してみてもよいかもしれません。
・最後の方にユエルはちょろっと出てきます。



第7話:ミニス&ユエルその1

 

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―禁忌の森で大した収穫もなかった(マグナ以外は)マグナ達一行は、フォルテの提案でトライドラ方面へ足を進めていた。スルゼン砦の惨状を見た以上は流石に様子を見ないと彼も気が済まないらしい。

その道のりの途中、彼らは驚くべき人物と遭遇することとなる…

 

「ふぃー、そろそろ森の出口か。流石に疲れたな、ネス。」

 

「はぁ…森から戻るかも分からない君を心配していた僕たちの方が心身共に疲弊していると思わないのか?」

 

「う…確かにそれはそうだな。悪い。」

 

「見て!街道が見えたわ!あそこが出口よ!」

ミニスが指さした先には確かに昨日通った街道があった。

木々のの生い茂る森とは違う輝かしい晴天が彼らの帰りを祝福している。

 

「…少し待たれよ。あそこにいる三人組は…?」

カザミネの見た方向には確かに見慣れない三人組が立っていた。赤色のボディが特徴的な機械兵士、その傍らに立つメカニックのような格好をした少年、そして和服を着た黒髪の女性がそこにはいた。

 

「ム…誰ダ………?」

マグナ達の気配にいち早く気が付いた機械兵士は警戒して彼らを遠くから観察している。

 

「なんだあいつは…?俺様達とやり合うつもりだって言うのか…?」

 

敵意を感じ取ったレナードが銃口を機械兵士に向けようとしたとき、大きな声が彼らとの間に響き渡った。

 

「わあぁ!エスガルドってばいきなりそんな目で旅人を見ちゃダメだよ!そっちのおじさんもそんな物騒な物しまって落ち着いて…ね?」

三人組の中の少年が咄嗟に機械兵士とレナードとの間に割って入る。

 

「ダガえるじんヨ…禁忌ノ森カラ旅人ガ出テクルコトナドアルダロウカ………」

 

「君の頭は固すぎるんだエスガルド。まずは話し合いからしてやむを得ないときしか武力は使わないって教えなかっけ?」

 

「…スマナイ。」

 

"エルジン"と呼ばれた少年により強制的に場が取り仕切られ、マグナ達は彼らと話をすることとなってしまうのであった。

 

 

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「へぇ…そういう理由で禁忌の森に…それはご苦労様だったね。」

 

ネスティが事の経緯を説明し、エルジンは納得した様子で頷いた。

 

「…君たちが律儀に説明してくれたんだし、僕たちの活動についての説明もしなくちゃね…」

「…と、まずは自己紹介からだね。僕はエルジン。機属性の召喚術が得意だよ。」

 

「我ハえすがるど。ろれるらるノ機械兵士ダ。」

 

「私はカイナと申します。"鬼道の巫女"と呼ばれています。」

 

三人はそれぞれ簡単に自己紹介をした。その後にエルジンが話し始める。

「僕たちはとある事件の調査のために禁忌の森を調べてるんだ。」

 

「とある事件?」

フォルテが首を傾げる。

 

「そのうちギブソンさんがあなた達に教えることでしょう。今私達の口から説明しておくのはやめておきます…」

 

「ちぇっ、ケチだなぁ…」

 

カイナの言葉にマグナが不満を挙げる。

 

「おい、マグナ。失礼だぞ。」

ネスティがすかさず注意する。

 

「ちっ…」

 

「…しかしその話しぶりから考えるに、君達はギブソン先輩と知り合いなのか?」

 

カイナが自身の先輩の事を口にしたことから、ネスティの頭の中に疑問が浮かんだ。

 

「知リ合イト言ワレレバ、ソウナルナ…」

 

「僕たちは少し前にギブソンやミモザと同じ旗の下で戦ったんだ。」

 

「少し前と言うと…サイジェントの方で無色の派閥に関連する事件があったな。」

ネスティが彼らから与えられた情報を元に素早く事情を理解する。

 

「そうそう!ちなみにね…ギブソン達以外にも一緒に戦った仲間がいるんだ…」

「そうだろ?カザミネ。」

 

「…!!」

 

カザミネは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしエルジンから目を逸らす。マグナやエルジン達三人組は皆カザミネの方を見ている。

 

「それって本当なの?カザミネさん?」

ミニスがニヤニヤしながら彼に聞く。

 

「う、うむ…まことでござるよ…」

 

カザミネは言い逃れできないことを悟り、大人しく事実を認めることにした。

「確かに、拙者もエルジン殿やカイナ殿と共に同じ旗の下で戦ったでござる。」

 

「このような注目は浴びたくなかったが…久しいでござるな。」

 

カザミネは三人組に快い笑みを送る。マグナはそれを見て俺も欲しいぜ…と少し妬みの入った目を向けている。

 

 

「それじゃあ、僕たちは調査のまだ続きだし、そろそろ行こうかな!」

 

「オ前達モ気ヲ付ケルノダゾ…」

 

「………」

 

エルジン達と別れ、マグナ達はトライドラへ再び向かわんと街道を歩き始めようと向きを変える。

 

―その時であった。

 

「そんなはずは………いえ、間違いない……」

「待ってください!そこの和服の方……!!」

 

カイナが突然マグナ達一行を引き止める。

 

「和服の方…?ケイナ、お前のことじゃねぇのか?」

 

「あたし…?一体何の用かしら…?」

 

フォルテに言われケイナがカイナの方を向いたとき、彼女はケイナに向かって足早に駆け寄ってくる。

 

「あなた、ケイナねえさまなんでしょう!私です!妹のカイナです!忘れてしまわれたのですか……!?」

 

「は………?」

 

カイナの口から放たれた言葉に場の空気が凍り付く。誰もが今の状況を理解できていないようだった。

 

 

「あー…何だか面倒なことになったなぁ…」

すぐにフォルテは渋い顔をしながらも、カイナにケイナの記憶についてのことを説明しだしたのであった………

 

 

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「そんな…ねえさまは記憶を無くされているだなんて…」

フォルテの説明を聞いてカイナは暗い顔をするが彼の話に概ね納得してくれたようだった。

 

「ごめんなさいね、カイナちゃん…」

 

「そんな…ねえさまが謝ることなんてないんです…!」

 

 

「まさかカイナが彼女の妹だとは……言われてみれば二人とも和服を着ていて黒髪、よく似ているな…」

 

「でもさぁ…カザミネはカイナと一緒にいたことがあるのに気付かなかったの?」

 

「拙者もまさかお二人が姉妹だとは……す、すまぬ…」

 

仲間たちは思いがけない姉妹の再会に各々好き勝手に談笑している。

 

「うーん………」

そんな中エルジンは頭を抱え何かを考える。

「…そうだね!そうしよう!」

 

…やがて頭に電球が浮かんだかのように勢いの良い返事をする。

 

「カイナ、君はお姉さんと一緒にいなよ。僕とエスガルドで調査の方は進めておくから。」

 

「かいな殿ガ側ニ居タホウガキットけいな殿ノ為ニナルダロウ…

 

「お二人とも…」

カイナは仲間二人の優しさに思わず涙ぐむ。

「…ありがとう。」

 

「ネスティ殿、私もあなた達に同行させていただいてよろしいでしょうか?」

 

「ああ…勿論だ。僕としても君はケイナの側にいた方が良い刺激になると思っていたからね。」

 

こうしてカイナが一行の仲間に加わった。

 

「それじゃあ、僕とエスガルドは引き続きここで調査をするよ!」

 

「かいな殿ノコト。ヨロシク頼厶ゾ…」

 

残りの二人とは森の入口で別れ、彼らは予定通りトライドラ方面へと街道を歩くのであった………

 

 

 

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「フォルテ、君が前に言っていたローウェン砦の守備隊長とはどのような関係なんだ?」

街道を歩きながらネスティがフォルテに聞く。

 

「ああ…シャムロックっていう騎士でな。まあ所謂同門の剣を習った仲だな。」

「かなりの堅物だが、信頼できるってことは俺が保証するぜ。」

 

フォルテによるとローウェン砦の守備隊長、シャムロックは彼より2つ歳下の真面目な騎士らしい。彼が聖王都付近に来ていたのもシャムロックから聖女の噂を聞いたからなのだとか………

 

「ふーん、そいつは一体俺にどんな味を教えてくれるのかなぁ…」マグナはまだ見ぬ漢との出会いに夢と股間を膨らませ、軽快な足取りで街道を歩いている。

 

しかし、彼は後ろを振り返りため息をつく。

彼の後ろには先ほど新たに仲間になったカイナとカザミネが歩いていた。

 

「あれほど男を近付けなかったねえさまがフォルテさんと一緒に歩いて、時々鋭いツッコミを入れている…なんだか私の知ってるねえさまじゃなくなったみたいです…」

 

「そ、そうなのでござるか…?ケイナ殿は記憶喪失ですしまあ多少は仕方がないと思うのでござるが…」

 

「そうですよね…今も新しい環境に置かれて何だか落ち着きませんもの…」

「でも、カザミネさんだけはあの時と比べてあまりお変わりないですよね。」

 

「そ、そうでござるか…!?」

「拙者は剣の修行に日々励んでいるだけでござるからなぁ…ははは…」

 

「うふふ…何だか落ち着きます。」

 

カイナに話しかけられ頬を赤らめ、慣れないながらも嬉しそうに喋るカザミネ。マグナの心はその光景を見て紫色の炎をメラメラと燃やしていた………

 

 

 

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「見えたぞ!あれがローウェン砦………!?」

 

 

「砦がデグレア兵に取り囲まれているぞ!」

 

彼らの視界に入ったローウェン砦は、聖王国の盾というにはとても心許ない有様であった。崩れ落ちた外壁に周りに倒れたトライドラの兵士達。ローウェン砦の陥落はもはや時間の問題であると誰もが悟った。

 

「くそ…!シャムロックは無事なのか…!」

 

「ちょっとフォルテ…!一人で飛び出たら危険よ!」

 

友を思うフォルテは考えるよりも先に足が動いていた。

ケイナの制止の言葉を聞きもせず一人戦火の中に飛び込んでいく。

 

「私たちも彼に続きましょう!」

 

「そうだな!俺様達も急ぐぞ…!」

 

他の仲間達も一歩遅れてフォルテに続く。

 

(シャムロック…面拝ませるまでくたばるなよ…)

マグナも漢との遭遇を頭に浮かべ、剣を握り戦火の中にあるローウェン砦に突入していった………

 

 

 

―ローウェン砦の頂上付近、シャムロックはそこで一人の召喚師と戦っていた。

 

「シャムロック…!」

 

「フォルテ…様…?どうしてここに…?」

「お逃げ下さい!ローウェン砦はもう保ちません!」

 

「お前が生きてるってのに立ち去れるわけねぇだろ…!」

 

遅れて他の仲間たちもシャムロックの下に到着する。突然増えた騎士の仲間を見て、召喚師が笑いながら呟いた。

 

「キャハハハハハ!さっきまでけじめの為に一騎打ちを望んでいたのに…おっかしいなぁ〜?」

 

「こいつぁ………!」

レナードが召喚師の姿を見て驚きの声を上げる。

その召喚師の肌の色は、スルゼン砦で倒したガレアノと同じ青紫色だったからである。

ガレアノと違うところといえば、その召喚師はまだあどけない少女の姿をしているということだろう。

 

「キャハハ!アタシはビーニャ。この砦の人たちはぜーんぶあたしの可愛いペット達が食べちゃった。」

 

「後はそこの守備隊長さんだけなんだけど…中々死んでくれないのよね〜。」

 

ビーニャは笑みを浮かべながら彼らに言う。その様子を見てただ者ではないことを誰もが察する。

 

「まあ残りが増えると、アタシが殺せる数も増えるからいっかぁ!」

 

(ギュワワワン!!)

 

眩い光と共にビーニャの周りに召喚獣が現れる。

 

「ギャオオオオォォォ!!!」

 

「キャハハハ!やっちゃえ〜〜!!」

 

突如目の前に現れた巨大な牙を持つ召喚獣と召喚師ビーニャ、目の前に立ちはだかる強大な敵を前にシャムロックは足がすくんでしまう。

 

「く…もはやここまでか…いっそ一思いに…」

 

「お前は死なせねぇよ!シャムロック!」

シャムロックを狙う牙をフォルテが大剣で弾く。

 

「お前の部下はもういないのかもしれない。だからって隊長のお前が生きることを放棄していいのか!?そんなんで死んだ部下達に顔向けできるのか…!?」

 

「フォルテ様………」

フォルテの言葉を受け、シャムロックの武器を握る手に力が入る。

 

「そうですね…皆さん!召喚獣は私とフォルテ様で足止めします!そのうちにあの召喚師を倒してください!!」

 

シャムロックは大声を上げその場にいる味方達に命令をする。

その言葉に応えるようにマグナ達はビーニャに刃を向け

突撃していった………

 

 

 

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「…!!んもぅ…痛いんだけどぉ!」

「…まあ目的は果たせたしいっか!撤退するわよ!」

マグナ達の決死の攻撃によって深手を負ったビーニャは部下を扇動し撤退していった。

 

「はぁはぁ…」

 

「くそ…なんなんだあいつは…」

 

嵐が過ぎ去った後、マグナ達は息を上げてぐったりしていた。

 

「シャムロック…よく生き残ってくれた。」

 

「フォルテ様…」

「しかし、私の部下達は皆……」

シャムロックは己の隊長としての不甲斐なさ、そして生き残ってしまったことによる自責の念。様々なものが彼を追い詰めていた。

 

「く…うぅ…私は…何も守れなかった…」

涙を流すシャムロックにフォルテは優しく駆け寄る。

 

「いや、お前はよくやったさ…」

 

(フォルテ…)

ケイナはフォルテの新しい一面を見たようで、目の前の光景から目を離すことができない。

 

(うぅ…漢同士の熱い友情…たまらねぇ…)

マグナは身を寄せ合う二人の漢達の姿に感動し、涙を流していた…

 

 

「この有様ではローウェン砦は陥落したと言っても差し支えないだろう。」

 

「砦の周りにいたデグレア兵から考えるにあの召喚師はデグレアの者ですよね…」

 

「"デグレアが戦争を仕掛けた。"今まで噂でしかなかったものが事実だったと確信できたな…」

 

 

ネスティとカイナは情報を整理し、デグレアとトライドラを覆う暗雲に葛藤していた………

 

 

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―後日、マグナ達はシャムロックと共に砦から離れ、再びファナン付近の街道を歩いていた。

 

「シャムロックさん、本当に行くつもりなんですか?」

ネスティが真面目な口調で彼に聞く。

 

「ええ…"ローウェン砦が落ちた…"とすぐに伝えられるのは生き残った私のみ。トライドラの領主、リゴール様にすぐにでも伝えに行く必要があるのです。」

 

「だからって、そんな傷で無茶よ!」

ミニスが心配する通り、シャムロックの身体は傷だらけだった。立っているのも不思議なくらいの怪我だ。

 

「しかし、これが今生きている私にできる最善の行動。これ以上デグレアに好き勝手にさせないための手段だと思うのです…」

 

シャムロックの意思は硬い。これはいくら止めても無駄だとフォルテは何となく勘付く。

 

「だったら、俺達もシャムロックさんと一緒に領主様の元に行くよ。」

マグナの口から意外な言葉が発せられる。

 

「しかし…マグナ殿、あなた達まで巻き込むわけには…」

 

「いいっていいって。俺達今ちょうど目的失ってたところだしさ。手伝うぜ。」

直近でアグラバインのタンクトップを入手しており機嫌が良く、尚且つ漢からの頼み事。マグナは快く手伝いをすることを決めたのであった。

 

「…申し訳ありません。それではリゴール様の所までは案内しますので、私についてきてください…」

 

シャムロックの案内で彼らはトライドラの街にいる領主の元へ向かう。しかし、彼らの頭の上には依然として暗雲が立ち込めていたのである………

 

 

 

------------

 

 

 

「クククク…馬鹿な男だ。全く。」

―領主の姿を見たマグナ達は驚愕した。

彼は人間とは似ても似つかない恐ろしい鬼の形相に変貌していたのである。

そして、彼の傍らには青紫色の肌をした不気味な召喚師が佇んでいた。

 

「ワタクシの名はキュラー。貴方達のことは同輩から聞いていますよ。」

「どうやらゆく先々で私達の邪魔をしてくれたようですからね…」

 

「そんなことはどうでもいいのだ…貴様!リゴール様に何をした!」

 

「ククク…少しこの男の持っていた黒い衝動を目覚めさせてあげただけですよ…」

 

「ウ、グ、グガァァァ……」

領主、リゴールの肌は浅黒く変貌し、額には角が生えている。

カイナはこの様子を見て何かを察したようだった。

 

「貴方、この方に鬼神を憑依させたのですね…!」

 

「ククク…まさかそこまで分かるものがいるとは…」

「如何にも。ワタクシは鬼神憑依の使い手です。」

 

鬼神憑依、心の隙を見抜き召喚獣を憑依させ、己の衝動のままに暴れる化け物を誕生させる恐ろしい召喚術だ。

 

 

「許せねぇ………」

 

 

「ん…?なんですか貴様は…?」

 

「この野郎!!俺のイケオジを返せよー!!!」

マグナは剣を構え、話をするキュラーに突進した。

シャムロックから予め貫禄のある漢であると話に聞いていた領主リゴールの御尊顔を見れなかった怒りは相当なものらしい。

 

「ククク…貴方の心の隙が見えますね…」

「さあ、鬼神よ!彼に取り憑きなさい…!」

 

 

「不味いわ…!マグナまで化け物になっちゃう…!」

 

「バカ者!退くんだ………!!!」

 

マグナにキュラーの鬼神が取り憑く。

「グ、グウォォォォォ!!!」

 

マグナが正気を失い咆哮を上げたとき、誰もが彼の変貌を悟ったが………

 

(ザクッ……)

 

(ボタボタ……)

 

「は………?」

 

マグナは人の姿のままであった。彼の腕はキュラーの腹に向かって伸び、しっかりと剣を突き刺している。

 

「グウォォォ!!」

(ザンッ…!!ズプ……)

 

「くっ……」

 

「グギャァァ!!」

(グシャ……ゴスッ……) 

 

「がっぐわぁ!!」

 

マグナは本能のままに剣で何度もキュラーに攻撃する。彼の身体は刃で斬り裂かれ、突き刺されボロボロになっていった。

 

「はぁはぁ…このままじゃ、ワタクシの命が…」

「傷も深い…ここらが引きどきですな…」

 

キュラーは己の命の危険を感じ取り、憑依を解除し撤退した。

 

「………」

 

マグナは逃げるキュラーを追うことはせず、ただその場に白目を剥いて倒れてしまった………

 

「マグナ……!!」

 

ネスティが急いで駆け寄る。

 

「意識がない…急いで彼を完全な場所に運ぶんだ…!」

 

切羽詰まったネスティの表情に釣られ、その場にいた全員がマグナの元に集う。

トライドラはやがて人の気配一つもない沈黙に包まれたのであった………

 

 

 

------------

 

 

 

―港町ファナン。意識のないマグナは仲間たちに運ばれ、モーリンの道場にて看病を受けている。しかし彼の意識はまだ目覚めることはない。

 

 

「それで…なぜマグナは鬼神に憑依されたのにも関わらず化け物に変化しなかったんだろうな?」

 

「でも彼の言動や仕草はリゴール様と同じように見えたわよ!」

 

道場のとある一室でレナードとミニスが疑問を浮かべている。

 

「そうですね…恐らく彼はキュラーによって内なる衝動、つまり"キュラーを殺したい"という衝動に駆られあのような行動を取ったのでしょう。」

「そして、命の危険を感じたキュラーは憑依の力を弱め、やがて完全に鬼神を取り除いた…このような感じなのでしょうか?」

鬼神憑依に比較的詳しいカイナが自分なりの考察を彼らに述べる。

 

「しかし完全に変化させちまえばマグナの小僧はもう死ぬまであのままだったってのに…なんでわざわざ憑依を解いたのかね?」

レナードから新たな質問が飛んでくる。

 

「ええと…人は化け物、鬼になれば力は人間であったときよりもより強大になります。そのまま彼が鬼になっていたとしたら、キュラーも同時にその力に葬られ死に絶えていたのかもしれませんね…」

 

「なるほどな…あの野郎は自身の命を優先した…ってことか。」

レナードは大方説明に納得し、煙草に口をつける。

 

「でもでも…」

ミニスから新たな質問が飛び出す…

 

―質問が飛び交う部屋の他にもう一部屋、二人の話し声がする部屋があった…

 

「フォルテ様…私はまた、一人生き残ってしまいました…」

 

「トライドラの街にいた奴らは既にキュラーに始末されていたな…」

 

「私は…領主様も民も護れず…!何のために生き恥を晒しているのか…!!くそぉ!!」

 

「………」

 

三砦都市トライドラではほとんどの民があの召喚師達の手によって命を奪われていた。シャムロックはその事実に逃れようの無い憤りを強く感じている。

 

「フォルテ様…いっその事私をその剣で…」

 

(パシッ…!)

その言葉を吐いた瞬間、彼の頬に刺激が走る。

(なっ………)

 

「馬鹿野郎!まだお前は自分はなんだ生き恥がなんだとか抜かしてるのか…!」

「そんな事をして何になる…!」

 

「フォルテ様………」

 

「お前は生きるんだ。トライドラから生き残った騎士として民や兵士達のために最後まで戦い続けるんだ。」

 

「………はい。」

 

シャムロックは彼の言葉を噛み締め、息を呑む。

 

「リゴール様、聞こえていますか?」

「無惨に散った兵達や守れなかった民達、その想いをこの剣に懸けて私は誓います…」

 

「私、シャムロックはトライドラ最後の騎士として最期までデグレアと戦い続けます!!」

 

彼の誓いの言葉がファナンの海の彼方へと響く。剣を振るう意味を見つけたシャムロックの瞳は真っ直ぐと輝いていた。

 

 

 

------------

 

 

 

―次の日、ネスティはマグナの枕元で自身がいつの間に眠っていたことに気が付く。ふと視線を彼の方に向けるが、彼の目は固く閉ざされたままだ。

 

「マグナ…」

 

ネスティは酷く悲しい顔を向け、彼の額にそっと手を置いた…

 

 

―一方、ミニスは久しぶりのファナンに心躍らせながらスキップで街を歩いていた。彼女が上機嫌なのには理由があった。お母様からお小遣いを貰っていたからだ。

 

「ふんふん…♪久しぶりに沢山食べ歩きしちゃった…」

ミニスはファナンの屋台でたくさん買い食いをし、大満足だ。今も彼女の手には港で取れたばかりの焼き魚がある。

 

裏路地の近くを通ったときだった。彼女に向かって何者かが勢い良く走ってくる。

 

「どいてどいて〜!ユエルがはねちゃうぞ〜!」

 

「…!?…きゃあっ!」

 

(ごつん…!)

ミニスはユエルと名乗る女の子にぶつかられ、手に持っていた焼き魚を落としてしまう。彼女が立ち上がろうとしているとき、ユエルは自身の目の前に落ちているごちそうを見逃さなかった。

 

「あ!美味しそうな魚!」

(パシッ…!)

 

ユエルは焼き魚を咥え、裏路地の奥へと走り去って行く。

 

「こ、こら〜っ!待ちなさい!!」

ミニスも立ち上がるなりすぐに彼女を追いかけ裏路地の中へと入っていくのであった………

 

 

 

「さて、追い詰めたわよ。」

ミニスはユエルを袋小路に追い詰め、ドヤ顔で言う。

 

「ふぇぇ……ユエル、何か悪いことした…?」

ユエルは自身の行いが悪事であることを理解していない様子だった。

 

「あなた、あたしの落とした食べ物を取ったでしょ…」

 

「でも、落ちてる食べ物は自由に拾って食べていいって…」

 

「最初から落ちてたわけじゃないでしょ…!」

ミニスはぷんぷんに怒ってユエルにきつく当たる。

それほどまでに彼女は今回のファナンでの食べ歩きを楽しみにしていたのだろう。

 

「うう…ごめんなさい…」

ユエルも彼女の気迫に押されたのか、素直に謝る。

 

「謝ってくれればいいのよ……って…ん…?」

 

ミニスはふとユエルの肩掛けカバンから飛び出たペンダントに目を惹かれる。

 

「あれって…」

ペンダントトップには緑色に輝く美しい石が添えられている。その中に彼女は銀の竜の翼を垣間見たような気がした。

 

「それ…私のペンダント…!!」

彼女の考えていたことがそのまま口に出る。

「あなた、どこで拾ったのそれ…!?」

 

「え…?聖王都で拾ったんだよ…これは特にユエルのお気に入りなんだから!」

 

「それは元々私のだから!返してよ…!」

 

「や〜だよっ!!」

ユエルは隙を見て袋小路から逃走した。

 

「待ちなさい〜!!」

ミニスも慌ててユエルの後を追いかける…

 

 

 

「はぁはぁ、あの子、足速すぎ…」

ミニスは息が上がり、酸欠でフラフラだった。

たまらず膝を付き、呼吸を整える。

 

―その時だった。

「んんん〜っ!」

後ろから何か大きなものに口を覆われる。

 

(く、苦しい…呼吸が…)

 

抵抗しようとするが、相手の方が遥かに力が強く抗うことができない。ミニスはやがて眠るように力が抜け、意識を失うのであった………

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