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キャラクター紹介
阿久野 快人(あくの・かいと)
27歳。どこにでもいる平凡なサラリーマンだったが、難病を抱える妹・聖の治療費を稼ぐため、高収入の転職先を探す。そこで採用されたのが、悪の秘密結社JAPASH。戦闘経験はないものの、真面目さと会社員として培った責任感で戦闘員として奮闘する。
阿久野 聖(あくの・ひじり)
17歳。快人の妹で高校二年生。幼い頃から難病を抱えているが、明るく優しい性格で、兄の快人を心から慕っている。「お兄ちゃん大好き」が口癖。自分の治療費のために兄が危険な仕事をしているとは知らず、毎日帰宅する快人を笑顔で迎えている。
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蜂野 すずめ(はちの・すずめ)
32歳。JAPASH人事・戦闘員管理部主任で、快人の直属の上司。グラマラスな美人で、穏やかで面倒見のいい姉御肌。その正体はJAPASHによって肉体を改造された改造人間。高い戦闘能力を持つ一方、部下の労務管理には非常に厳しい。
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悪の秘密結社に転職しました。
阿久野快人、二十七歳。
どこにでもいる、ごく普通のサラリーマンだった。
朝六時半に起きる。
眠気の残る目でスマートフォンを確認し、朝食は食パン一枚とインスタントコーヒー。
七時二十分の電車に乗り、満員の車内で他人の肩と肩に挟まれながら、今日も会社へ向かう。勤務先は都内の中堅物流会社。
営業事務。年収三百八十万円。残業代は出る。有給休暇も取れる。
福利厚生も、一応ある。
ブラック企業というほどではない。
ただし――妹の治療費を払うには、あまりにも普通すぎる給料だった。
「……今月も、か」
仕事帰り。快人は駅前のATMの前で、スマートフォンに表示された銀行口座の残高を見つめていた。
給与振込。家賃。水道光熱費。食費。通信費。妹の通院費。薬代。
そして、来月予定されている治療費。
数字を一つずつ確認していく。
引き算をする。残る。ほんの少しだけ。
だが、その「ほんの少し」は、妹が一度入院すれば簡単に消える。
「……足りない」
呟いた声は、夜の駅前に吸い込まれていった。
快人には妹がいる。阿久野聖、十七歳。高校二年生。
病弱で、幼い頃から難病を抱えている。
それでも学校には通っている。友達もいる。勉強も頑張っている。
笑うと、とても普通の女子高校生に見える。だからこそ、快人は時々怖くなる。
妹が普通に笑っているほど、その裏側にある病気の重さを忘れてしまいそうになるからだ。
スマートフォンが震えた。
『お兄ちゃん、今日早く帰ってくる?』聖からのメッセージだった。
快人は少しだけ笑った。
『帰るよ。何かある?』
すぐに返信が来た。
『今日のお夕飯はお兄ちゃんの大好きなオムライス!』
『了解』
『駅前でプリン買ってきて、二つ❤️』
『聖は欲張りだな』
『お兄ちゃん大好きだから許して』
「……ずるいなあ」快人は小さく笑った。
そして、スマートフォンをポケットにしまう。
笑顔は消えた。転職しよう。そう思った。
もっと給料の高い仕事に。妹を安心して治療させてやれる仕事に。
それだけだった。
まさか、その転職先が――悪の秘密結社だとは。
「阿久野快人さんですね?」
「はい」
「本日は面接にお越しいただき、ありがとうございます」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
快人は深々と頭を下げた。
目の前にいるのは、その会社の上司 彼よりも少し年上だろう
黒いスーツ。整った顔立ち。肩まで伸びた髪。
そして、妙に存在感のある身体つき。
胸元の社員証には、こう書かれていた。
――蜂野すずめ。戦闘員管理部主任。
「では、いくつか質問させていただきます」
「はい」
「前職では物流会社にお勤めだったとのことですが」
「はい。営業事務を六年間」
「武道経験は?」
「ありません」
「軍事経験は?」
「ありません」
「殺人経験は?」
「……ありません」
「なるほど」
すずめは淡々と履歴書に何かを書き込んだ。
快人は少し困惑した。
普通の会社の面接なら、最後の質問は絶対に出ない。
「体力には自信がありますか?」
「学生時代は運動部でした。今は……普通です」
「残業は可能ですか?」
「必要なら」
「休日出勤は?」
「事前に相談いただければ」
「転勤は?」
「妹のことがありますので、できれば東京近郊で」
「なるほど」
また、すずめが頷いた。
そして。
「最後に一つ」
「はい」
「世界征服に興味はありますか?」
「……」
快人は沈黙した。
面接室の壁を見る。
机を見る。
すずめを見る。
もう一度、机を見る。
「……冗談、ですよね?」
「いいえ」
「……」
「当社は悪の秘密結社JAPASHです」
快人は椅子から転げ落ちそうになった。
JAPASH。正式名称。
Japanese Association for the Pursuit of Absolute Super-Humanity。
日本における超人化の確立と、それによる世界秩序の再構築を目的とする秘密結社。
――というのが、表向きの理念だった。
もちろん、実際にはもっと俗っぽい。
世界征服。超兵器開発。怪人製造。政府機関への工作。ライバル組織との抗争。
そして、定期的に発生するヒーローとの戦闘。
ニュースでは、
『謎の武装集団による都市インフラへの襲撃』
『怪人とみられる生物が繁華街に出現』などと報道されている。
つまり。
正真正銘の悪の秘密結社だった。
それでも快人は、入社した。
理由は単純だった。
「月給、五十二万円……」採用通知を見ながら、快人は呟いた。
基本給五十二万円。危険手当十二万円。怪人戦闘手当。
深夜勤務手当。特殊区域勤務手当。社会保険完備。厚生年金。
退職金制度あり。有給休暇二十日。社員食堂完備。住宅補助あり。
そして――
『家族の医療費について、会社規定により一定額を補助』
この一文を見た瞬間。快人は決めた。ここで働こう。
「……すみません」
「はい?」
「難病の妹の治療費について、補助制度が本当にあるんでしょうか」
すずめは少しだけ表情を柔らかくした。
「ありますよ」
「……そうですか」
「うち、悪の秘密結社ですけど、社員を使い捨てるほどブラックじゃありませんから」
「悪の秘密結社として、それはどうなんでしょう」
「むしろ最近はコンプライアンスが厳しくて」
「悪の秘密結社のコンプライアンス……」
「はい 戦闘員の死亡時には遺族への補償もあります」
「妙に現実的ですね」
「人が辞めると採用と教育にお金がかかりますから」
「……経営ですね」
「経営です」
すずめは真顔だった。
◆
快人の初出勤日。
「おはようございます!」
「おはよう、阿久野くん」
「今日から配属される戦闘員だって?」
「よろしくお願いします」
「よろしく。俺、第二戦闘班の田中」
「田中さん、よろしくお願いします」
「まあ座れよ。更衣室はあっち」
「はい」
「ロッカーは個人支給。制服は三着。破損したら申請」
「はい」
「装備は絶対に自費で買うなよ。警察に足がつくし会社支給だから」
「……はい」
「あと昼飯」
「はい」
「社員食堂、一食三百八十円」
「安いですね」
「結構うまいぞ」
「へえ」
快人は思った。
普通の会社だ。
少なくとも、会話だけ聞けば。
しかし。
廊下の向こうから、
「総員退避ーッ! 怪人ガルガンダが暴走したぞ!」
という怒鳴り声が響いた。
直後。
壁の向こうで爆発音がした。
ドォンッ!
天井から埃が落ちてくる。
埃が収まるより早く、それは来た。
巨大な影。いや、怪物だった。
歪に隆起した筋肉の塊。血のような深紅の皮膚。頭部からはねじれた二本の角が生え、その奥にある瞳は獣のそれを通り越して、狂気そのものだった。
怪人ガルガンダ。
開発部門で制御に失敗した生体兵器が、今や理性の檠を解かれてそこに立っている。
「なんだあれ……制御装置はどうなって……」
田中が呟いたのが最後だった。
ガルガンダの太い腕が鞭のようにしなった。
風圧。
そして、湿った音。
「田中さんっ!?」
快人の目の前で、田中の上半身が消し飛んだ。
文字通り消し飛んだ。
鋭利な爪が肉を裂き、骨を砕き、内臓を壁に叩きつける。
一瞬前まで「社員食堂はうまい」と笑っていた男が、ただの肉塊へと変わる。
鮮血が快人の顔に飛び散った。
「ぎゃあああああああっ!」
廊下に悲鳴が響く。
だが、その悲鳴は田中のものではなかった。
快人の斜め後ろ。
同期の香月渚が腰を抜かせていた。
彼女もまた配属されたばかりの戦闘員だ。黒いボディスーツに包んでいるはずだった。
ガルガンダの視線が渚に向けられた。
嗅ぐような仕草。そして、喉の奥で粘ついた音を鳴らす。
獲物を見定めた捕食者の目だった。
「ひっ……来ないで……!」
渚が後ずさる。だが逃げる間もなく。
ガルガンダの腕が伸び、彼女の細い足首を掴み上げた。
「いやああっ! 放して! 放してくださいっ!」
渚は逆さまに吊り上げられた。
必死に身をよじり、拳でガルガンダの腕を叩くが、それは蚊に刺されたほどのダメージにもならない。
ガルガンダは喉を鳴らすと、空いた片手で渚の戦闘服を掴んだ。
ビリッ。
乾いた音が廊下に響く。
強化繊維で作られたはずの戦闘服が、まるで紙のように引き裂かれた。
白い肌が露わになる。
豊かな胸が弾け出し、下半身を覆っていた布切れも無残に剥ぎ取られた。
「ああっ……! 見ないで……やめて……!」
渚は両手で必死に身を隠そうとするが、逆さまに吊り上げられた体勢では隠しようもない。
ガルガンダの指が彼女の太ももを弄ぶ。
その爪先から、どろりとした粘液が分泌されていた。
怪人の体液だ。
そしてそれは――強力な催淫物質でもあった。
「っくううう……変な……熱い……」
渚の顔が歪む。
拒絶の声とは裏腹に、彼女の肌に朱色が走る。
爪が触れた場所から熱が広がり、神経を焼き尽くしていく。
太ももの付け根が痙攣し、無意識に腰が揺れた。
「いや……こんなの……おかしいわ……」
涙目で首を振る渚。
だがガルガンダは容赦なく、その粘液に塗れた指を彼女の秘所へと突き入れた。
「あひっ!?」
甲高い悲鳴。
ビクンッと渚の背中が反り返る。
粘液が粘膜を侵食していく。
理性を溶かし、雌の本能を強制的に引きずり出す毒。
「やめて……お願い……やめ……ああっ! あっ! あっ!」
言葉が悲鳴から喘ぎへと変わっていく。
渚の瞳から抵抗の色が消え失せ、代わりに濁った欲情が滲み出す。
口元からだらしなく涎が垂れ落ちた。
彼女自身の意思とは無関係に、秘所からは愛液が溢れ出し、ガルガンダの指を卑猥な音で濡らしていく。
「いや……私は……こんな……ああっ❤ 気持ちいぃ……❤」
首を激しく振りながらも、腰は自ら動いて指を求めていた。
人としての尊厳が、怪人の毒液によって粉々に砕かれていく光景。
快人は見ていられなかった。
「やめろおおおおっ!」
恐怖などなかった。
あるのはただ、理不尽な怒りだけだった。
足元に転がっていた田中の遺体から落ちた警棒を拾い上げると、快人は叫びながらガルガンダへと突進した。
「香月さんを放せっ!」
渾身の力で警棒を振り下ろす。
目標はガルガンダの膝関節。
だが。
ガルガンダは快人など見てもいなかった。
ただ尻尾を振り払っただけ。
それだけで鈍い音がして、快人の体は吹き飛んだ。
「ぐはっ……」
壁に叩きつけられる。
肋骨が軋む音。
肺の空気が全て押し出される。
視界が明滅する。
床に崩れ落ちる快人。
意識が遠のきかける中。
快人の耳に届いたのは、かつて同期と呼んだ女の声だった。
「ああっ❤ もっと❤ おくまで❤ ぶち込んでぇ❤」
快人は血の混じった唾を吐き出し、暗転する視界の中でその言葉を聞いた。
「っひぐ……やめ……て……息が……できない……」
渚の両足が宙を蹴った。
ガルガンダの太い腕が彼女の細い首を締め上げている。
戦闘服は既に見る影もなく裂かれ白い肌は蹂躙されて赤紫に鬱血していた。
涙と涎と鼻水が入り交じり顔はぐしゃぐしゃ。
しかしその割れ目からは止め処なく愛液が漏れ出ていた。
矛盾する絶望と快楽。
快人は肋の痛みを堪えながら這いずるようにして壁に寄りかかった。
彼女を助けたいのに手も足も動かない。
ガルガンダの股間から聳え立つ異形の陰茎が脈打つ。
禍々しい瘤が幾つも連なり先端からは粘度の高い液体が滴っていた。
それがゆっくりと渚の子宮口を探るように蠢き――
ズブッ!
肉が裂ける音とともに限界を超えて飲み込まれた。
「いぎゃああぁっ!?」
首を絞められているため叫びは潰れてひきつった呻きとなる。
それでも胎内を抉る衝撃は尋常ではなく彼女の視界がパチパチと火花を散らせた。
ドクン! ドクン!
鼓動のような射精。
濃縮された獣の精が子宮を灼く。
渚の体がビクンビクンと大きく跳ねた。
苦悶の表情。
同時に瞳孔が拡がり焦点を失う。
泡を噴く唇の端から甘い嗚咽が漏れた。
「イッ…………ちゃう…………ぅ…………ぅああぁぁぁ……………❤❤❤」
絶頂。 そしてついに気を失った。
全身が痙攣しながら硬直し数秒後――ふっと弛緩した。
糸の切れた操り人形のように。
首を絞める腕から滑り落ち床に叩きつけられる。
それでも彼女の顔は恍惚の名残をわずかに湛えたままだった。
静寂。
壁と天井には赤黒い染みが点々と散っていた。
快人の眼前に転がるのは田中の肉塊。
隣には性器から精液と血を垂れ流しながら目を開けたまま死んでいる渚。
ガルガンダは低く唸りながら次の獲物を探すように周囲を見渡す。
その視線が壁際の快人に止まり――
「そこまでよ」
凛とした声。
煙る血臭を切り裂いて蜂野すずめが姿を現した。
冷静沈着な佇まい。
しかし目に宿るのは炎のような怒り。
「魔神変(マシンヘン)!」
鋭く唱えられた詠唱。
白衣の裾が翻る。
内部から迸る黄金の輝き。
鋼鉄さえ貫くであろう棘状の突起が衣服を破り捨て彼女の輪郭を再形成していく。
黄色と黒の縞模様を帯びた外殻。
人型でありながら胸部は明らかに肥大化し蠱惑的な曲線を描いている。
六枚の薄羽が背中に展開し微かに発光しているかのようだった。
セクシーな蜂怪人――蜂姫(ハニーメーカー)・すずめ。
「ガルガンダ……いいえ“神田”くん。超人コアに呑まれてしまったのね……可哀想に……」
怪人の姿で紡がれる台詞は慈愛すら感じる優しさに満ちている。
だが次の刹那彼女の右腕から極彩色の毒針が閃いた。
シュバッ!
音速の穿槍。
ガルガンダの脇腹を掠めて壁を穿つ。
続けざまに左掌から繰り出される毒霧が巨体を包み込む。
呼吸器系を麻痺させ動きを奪う致死性の煙。
「苦しまないでいかせてあげるわ」
声なき咆哮を上げてガルガンダが突進。
だがそれは囮の動きでしかないことをすずめは承知していた。
空中を舞うようなステップで回避すると彼女は敵の懐へ滑り込んだ。
ガルガンダの巨体を抱擁するかのように豊かな胸部を押し付ける。
密着。
鼓動を感じる距離。 一本の巨大針が垂直に天を衝くように屹立していた。
「さよなら……神田くん」
囁きとともに針が心臓を正確無比に貫く。
バキンと陶器が砕けるような音。超人コアの崩壊音。
ガルガンダの目から光が失われ痙攣しながら倒れ伏す。
地響きとともに死骸となった獣の体温が急速に低下していく。
すずめはゆっくりと針を引き抜いた。
その眼差しには涙があった。
一粒だけ零れ落ち地面に小さな染みを作る。
変身解除。
黄金の光が霧散し元の人間態に戻るすずめ。
血をハンカチで拭いつつ倒れている快人に歩み寄る。
「……生きていますか?阿久野さん」
差し伸べられた手。快人はようやく息を吐いた。
彼女こそが希望なのか絶望なのかまだ判断がつかない。
だが確かだったことはひとつ。
悪の秘密結社というのは本当に「悪」であること。
そしてここでの仕事は想像以上に過酷だということだった。
白い天井が見えた。
いや、白い何かが視界を覆っていた。
温かくて柔らかい感触が頬全体を包み込んでいる。
呼吸のたびに甘い香りが肺へと流れ込む。
(ああ……俺は……)
快人は目を開けた。
ぼやける視界の先で蜂野すずめが自分を見下ろしていた。
彼女の胸部――白衣の下から覗く豊満な乳房の谷間に、快人の顔が埋まっている。
「落ち着きましたか?」
穏やかな声が降ってくる。
そうだ。あの惨状の後快人は現場で嘔吐し、取り乱しまるで子供のように泣き叫んだ。
田中が死んだ。変わり果てた姿になった。
なのに自分だけが生きている。
助けようとしたが一撃で敵わなかった。
無力感と恐怖と後悔が襲い呼吸が荒くなり、過呼吸を起こして倒れたのだ。
そうして運び込まれた結社内の医務室。
手当を受けた後も震えが止まらない快人に、すずめは何も言わず抱き寄せた。
母性的な慈悲に満ちた眼差しで。
「怖かったわね。でも、もう安全よ」
頭を優しく撫でられる。
その手つきに、また涙が溢れてくる。
快人は彼女の豊かな胸にしがみついた。
すずめは拒まない。
抱き返して背中をとんとんと叩く。
「よく頑張ったわ。良かった生きていてくれて」
父にも母にもそうされた記憶はない。
妹が小さかった頃そうしてやったことはある。
でも、される側に回るのは何年ぶりだろう。
感情が排水溝から流れるように溢れて、枯れるまで泣いた。
――どれくらいそうしていたか。
「すずめさん……すみません、服……よだれで……」
「気にしないで。誰にでもあることよ」
「恥ずかしい……」
快人はすずめの胸元を見た。
白衣がわずかに湿っている。
自分の涙と唾液だ。
彼女のパール色のブラウスが透けて、その下の淡いブラジャーの輪郭が浮き上がっている。
柔らかい。
さっきまで自分が埋もれていた場所だ。
安らぎを求めて抱きついたのに。
泣いて、吐き出して、少し落ち着いて。
(……女だ)
(上司だ)
(……でも、すごく美人で綺麗な身体をしてる)
心臓の音が聞こえてくる。
自分を抱きしめる温かい肉体。
鼓動のリズムが伝染する。
華奢な肩とは違う、大人の女性の厚み。
快人は無意識にすずめの腰に回した腕に力を込めていた。
そして、気づく。
股間が硬くなっている。
(最悪だ)
この期に及んで、何を考えているんだ自分は。
田中さんは死んで。香月さんは犯されて
自分は助けられなくて。
今こうして慰められているのに――。
下半身が誤作動を起こしたかのごとく暴発寸前だ。
スラックスの中で痛いほど硬く反り返っている。
快人は慌てて腰を離そうとした。
が、すずめも気づいていた。
視線がゆっくりと下りる。
快人のスラックスの中心を。
「……」
さっきまであんなにヒステリーを起こしていた青年が、今では別の衝動で震えている。
その瞳が情けなく揺れ、顔は熟れた柿のように赤い。
すずめは怒らなかった。
睨むこともしなかった。
ただ静かに微笑んだ。
優しい、しかしどこか妖艶な笑みだった。
「仕方のないことよね」
そっと快人の身体を押し退けると、彼女は真っ直ぐにその中心を見つめた。
「ね、阿久野さん」
「は、はい……」
「どんな形でも、発散しないと精神が持たないの。人間というのはそういう生きものよ」
「いや……でも……」
「今はただ、感じていいのよ。ここは秘密の医務室。誰も来ないわ」
彼女の手が快人のベルトに伸びる。
巧みな指先がバックルを外し、ジッパーを下ろした。
「すずめさ……っ」
「私、こう見えて面倒見がいいの」
下着の上から布越しに形状を確かめる。
快人の腰が浮いた。
敏感になっているそこは触れられただけで軽い痙攣を起こす。
「若いわね。硬くて熱い」
すずめは下着をずらし、屹立した陰茎を露わにした。
先端からはすでに透明な汁が滲んでいる。
裏筋を指の腹でなぞる。
「ひぅ……」
快人が甘い声を漏らした。
「慰めてあげる。だから、遠慮しないで」
そう言うと、すずめは両手を自らの胸元に添えた。
白衣を脱ぎブラウスの前ボタンを外す。
白玉のような肌が露出し、溢れんばかりの乳房がその質量を見せつける。
大きな胸は形が整っていて、乳首を縁取る乳輪まで吸い込まれそうなほど綺麗だ。
「胸で挟んであげるわ。動かないでね」
ふわりと甘い香りが近づく。
真正面から覆い被さるような体勢で、すずめの豊満な胸の膨らみが快人の陰茎を両側から包み込んだ。
柔らかな弾力。
温かい谷間に埋もれて、快人の亀頭が白い胸の間から顔を覗かせる。
布団の中に沈み込むようだった。
「うっ……」
「痛くない?」
「きもち……いい……です……」
「正直でよろしい」
すずめは乳房で挟んだまま、ゆっくりと上下に動かした。
肉の重みがこねるように陰茎を圧迫する。
ぬかるんだ谷間が卑猥な水音を立てた。
そのまま顔を下ろし、先端へと唇を近づける。
ちゅ……
亀頭への接吻。
鳥が啄むような可憐な音とは裏腹に、口蓋の奥まで含んで吸い上げる。
「ぅわ……!?」
快人の視界が白く染まった。
胸の谷間圧迫とフェラチオの二重責め。
それも極上の美女から。
すずめの舌が先端の窪みを割り、苦汁の味を確かめる。
尿道に溜まった蜜を根元から搾り取るように吸引され、快人の腰がガクガクと揺れた。
もう限界だった。
さっきまでの絶望が、恐怖が、罪悪感が。
全部がすべて快楽に変換されて脳髄を焼く。
「すずめ、さん……! 出ます……!」
「ん……いいわ……」
とろけるような半眼で見上げられ、快人は射精した。
ドクンッ!!
勢いよく吐き出された白濁がすずめの唇を汚し、白い胸の上へと飛び散る。
すずめは残精を舌で絡め取ると、ごくりと飲み込み。
「これで少しは楽になったかしら」
微笑んだ。
唇の端に白濁を残したまま浮かべたその微笑みが、快人の理性のブレーキを完全に破壊した。
「……っ!」
言葉にならなかった。
思考よりも先に体が動いた。
快人はすずめの肩を力任せに押し倒した。
医務室の簡易ベッドが軋む音。
驚く彼女の目を真っ直ぐに見つめ返す余裕などない。
ただひたすらに、目の前の肉の暖もりに飢えていた。
白衣は床に落ちている。
ブラウスのボタンも外されたまま。
快人は震える手で彼女のタイトスカートのファスナーを引き下ろし一気に引き剥いだ。
ストッキングと下着ごと剥ぎ取る。
露わになった秘所。
ほんのりと湿り気を帯びた秘唇がそこにあった。
「阿久野さん……」
名前を呼ぶすずめの声は責める響きではなかった。
むしろ待ち構えていたかのような甘い響き。
快人は彼女の脚の間に割り込むと獣が水を舐めるように顔を埋めた。
「んっ……!」
すずめが短く息を飲む。
快人の舌が粗野に秘裂を割り開き敏感な花芽を擦り上げる。
吸って舐める。
夢中で愛液を啜った。
さっきまでの恐怖も罪悪感も何もかも忘れてただこの甘い匂いに没頭する。
まるで乾いた砂が水を吸うように。
快人の舌は休むことなく蠢き彼女の膣内を探った。
「ふぅ……いいわ……そんなに急がなくても……」
すずめの手が快人の頭に添えられる。
優しく髪を梳き頬を撫でる手つき。
それは快人を落ち着かせるのではなくさらに煽り立てた。
母親のような慈愛と女人のような色気が混在する眼差し。
その優しさが今の快人にはどうしようもなく愛おしかった。
「はぁ……阿久野さん……来てもいいのよ」
許しが出た。
快人は顔を上げた。
口元は彼女の蜜で濡れ光っている。
呼吸は荒く瞳は情欲で潤んでいた。
快人は腰を進めた。
硬く猛った陰茎を彼女の秘唇に押し当てる。
すずめは脚を大きく開き彼を受け入れる体勢を作った。
「いきます……!」
腰を一気に沈める。
ヌルリと肉壁が割れ入り込んでいく感覚。
先ほどの口とは全く違う圧倒的な締め付け。
熱く濡れた膣壁が快人の陰茎を根本まで飲み込んでいく。
「ああっ……! すずめさん……!」
「んくっ……大きい……」
快人は抽送を開始した。
若さ任せの激しい腰の動き。
ガツガツと子宮口を目指して突き上げる。
肉と肉がぶつかる卑猥な音が静かな医務室に響き渡る。
「はぁっ! あぁっ! いいわ……もっと……!」
すずめもまた快人の背に腕を回し脚を腰に絡めた。
快人の荒々しい動き一つ一つに合わせて豊かな胸を揺らす。
彼女は快人を包み込むように受け止める。
痛みも罪悪感もすべて溶かして受け止める母なる器。
「すずめさん……すずめさん……!」
名前を呼ぶことしかできない快人。
彼は必死に腰を振った。
この温もりの中だけが自分の居場所だと信じるように。
「いい子……もっと感じて……私の中で全部出して……」
すずめの膣壁が意識を持ったかのように収縮し快人を締め上げる。
子宮口が亀頭を吸い込むような強烈な吸引感。
背筋を駆け上がる快感に快人の腰が跳ねた。
「くっ……出る……! 出ますっ!」
「いいわよ……私の中に……たくさん……」
すずめの腕が快人の背中を強く抱きしめた。
深い結合。
最奥で亀頭が子宮口を打つ。
ドクンッ! ドクンッ!
快人は咆哮と共に大量の精液を注ぎ込んだ。
何度も何度も脈打ちながら彼女の胎内に自分のすべてを吐き出していく。
頭が真っ白になるほどの絶頂。
びくんびくんと陰茎が痙攣するたびにすずめの身体も小さく震えた。
彼女もまた共に果てたのかもしれない。
やがて快人の腰から力が抜け彼はすずめの豊かな胸の上に崩れ落ちた。
耳に届くのはふたりの荒い息遣いと早鐘のような心臓の音だけ。
快人は目を閉じた。
一瞬だけすべてを忘れて安らぎの中へ沈んでいった。