夜の街に、爆発音が響いた。
ビルの谷間を赤い炎が照らし、砕けたアスファルトが宙を舞う。逃げ遅れた人々はすでに避難を終えている。残されたのは、JAPASHの戦闘員と怪人たち、そして彼らを追撃してきた獣神戦隊ファイブビーストだけだった。
その戦場の片隅で、猫井小百合は身を縮めていた。
黒と白の毛皮に覆われた細身の身体。頭には猫の耳を思わせる装甲があり、腰から伸びた尻尾が落ち着かなげに揺れている。両手には鋭い爪を備えているものの、その本人はというと、戦闘員の陰からこっそりと戦場を覗いていた。
JAPASHの怪人、キャット・リリー。
怪人としての能力は決して低くない。暗闇を見通す眼、常人離れした跳躍力、壁面を自在に駆け上がる運動能力。けれど、小百合自身は昔から争いごとが苦手だった。
「……怖いなぁ」
小さく呟いて、耳を伏せる。
そもそも、小百合がJAPASHに入った理由だって、世界征服に憧れていたからではない。怪人になれば給料がいい。福利厚生も意外としっかりしている。そんな、あまりにも現実的な理由だった。
だから今日も、できることなら敵とは戦いたくない。
そう思っていた。
そのときだった。
夜空を五色の光が切り裂いた。
爆炎の向こうから、五人の戦士が現れる。
赤い獅子。青い狼。黄色い虎。黒い熊。そして――白い狼。
獣神戦隊ファイブビースト。
その白い戦士が一歩前へ出た。
月明かりを反射する白銀の装甲。肩から流れるように伸びた意匠。凛とした立ち姿。
小百合は、何気なくその姿を見た。
そして。
「……え?」
胸の奥が、突然、大きく跳ねた。
声が聞こえた。
戦闘員たちに指示を出している、白い戦士の声。
「みんな、右から回り込んで! 敵の増援が来る前に終わらせよう!」
その声を聞いた瞬間、小百合の身体から力が抜けた。
聞き間違えるはずがない。
十年近く経っていたとしても、忘れられるはずがなかった。
「……明日香?」
呟いた名前は、爆発音にかき消されそうなほど小さかった。
それでも、白い戦士は振り返った。
互いの視線が重なる。
白いヘルメットの奥から覗く瞳が大きく見開かれた。
「……小百合?」
その一言で、世界から音が消えたような気がした。
猫井小百合。
犬塚明日香。
二人は高校時代、同じ教室で過ごした。
友達だった。
親友と言ってもよかった。
けれど小百合にとって、それだけではなかった。
放課後の教室で二人きりになった時間。文化祭の準備で遅くまで残った夜。雨の日、一本の傘に二人で入った帰り道。
明日香が笑うたび、小百合の胸は苦しくなった。
手が触れただけで顔が熱くなった。
名前を呼ばれるだけで嬉しかった。
けれど、小百合は何も言えなかった。
自分が女の子を好きだということを、誰かに知られるのが怖かった。
明日香に嫌われることが、何より怖かった。
だから卒業の日にも、結局「またね」としか言えなかった。
その明日香が。
今、自分の目の前にいる。
しかも。
「……怪人?」
明日香の声が震えた。
小百合は答えられなかった。
自分の姿を見れば、説明するまでもない。
「JAPASHの……怪人なの?」
ようやく、小百合は小さく頷いた。
「……うん」
明日香は言葉を失った。
その手に握られている武器が、かすかに震えている。
「私は……」
明日香は苦しそうに息を吸った。
「私は、ファイブビーストの一員なの」
「……うん」
「JAPASHと戦うために、ここにいるの」
「……うん」
小百合は俯いた。
分かっている。
明日香は悪くない。
自分だって、JAPASHで仕事をしている。
組織から給料をもらい、仲間たちと一緒に任務へ出ている以上、怪人として責任を果たさなければならない。
明日香だって同じだ。
仲間と市民を守るために、戦隊の一員としてここにいる。
だから二人は、本来なら戦わなければならない。
「……じゃあ」
明日香が武器を構えた。
小百合も反射的に爪を構える。
距離は十メートルほど。
互いに一歩踏み出せば、攻撃が届く。
風が吹いた。
ビルの隙間を抜けた冷たい夜風が、小百合の毛皮を揺らす。
「……小百合」
「……なに?」
「戦わなきゃ、いけないよね」
「……うん」
「私、ファイブビーストだから」
「私も、JAPASHの怪人だから」
そう言ったものの。
二人とも動かなかった。
小百合は爪を握りしめた。
明日香も武器を握ったまま、動かない。
十年ぶりに会った。
それなのに、最初に交わす言葉が「殺し合おう」になるなんて。
あまりにも悲しかった。
「……明日香」
「うん」
「私ね……」
小百合は唇を震わせた。
「ずっと、明日香のこと忘れられなかった」
明日香の瞳が揺れる。
「……私も」
「ほんと?」
「うん」
明日香は困ったように笑った。
「卒業してから、何度も思い出したよ。小百合、今どうしてるかなって」
「……私も」
「彼氏とか、できた?」
「……できてない」
「そっか」
「明日香は?」
「……できてない」
二人の間に、ほんの少しだけ昔の空気が戻った。
高校の教室で話していた頃と同じだった。
そして二人とも、同時に気づく。
「……今も?」
明日香が小さく尋ねた。
「え?」
「今も、私のこと……好き?」
小百合の顔が一気に赤くなった。
「……」
答えられない。
恥ずかしい。
でも、もう嘘をつく理由もなかった。
「……好き」
小百合は俯いたまま答えた。
「今でも……好き」
明日香の顔も真っ赤になった。
「……私も」
「……え?」
「私も、小百合が好き」
二人の間に、奇妙な沈黙が流れた。
戦場の真ん中だというのに。
爆発音も、仲間たちの叫び声も、まるで遠い世界の出来事のようだった。
「……どうしよう」
小百合が呟いた。
「私たち、敵なのに」
「うん……」
「私、明日香を傷つけたくない」
「私も小百合を傷つけたくない」
「でも……」
小百合はJAPASHの仲間たちを振り返った。
少し離れたところでは、他の怪人たちが戦っている。
自分だけ逃げるわけにはいかない。
明日香も同じだった。
ファイブビーストの仲間たちがいる。
自分だけ戦いを放棄することなんてできない。
「……困ったね」
明日香が苦笑した。
「うん……」
小百合も困ったように笑った。
「じゃあ……今日は引き分けにしない?」
「いいの?」
「よくないと思う」
「だよね」
「でも、十年ぶりに会った初恋の相手と、いきなり戦うなんて無理だよ」
「……私も無理」
小百合は恐る恐る爪を下ろした。
明日香も武器を下げる。
その瞬間、ファイブビーストの仲間から声が飛んできた。
「明日香! 何をしている!」
「敵はそこだぞ!」
「分かってる!」
明日香が振り返って叫ぶ。
「どうやらビーストスーツが故障したようだ。ここは一次撤退する!」
明日香が通信機からそう伝える。
「本当か?!」「そんなバカな!」とファイブビーストのメンバーが驚愕の声を上げる。
「とにかく後は任せた!」明日香がそう叫んでから、「行こう、小百合!」と小百合に手を差し出す。
「う、うん…」と小百合もJAPASHの仲間から、「おい、何をしている?!早くそいつらを倒せ!猫井!お前、減給だぞ!」と命令されるが、それらを全て無視して走り出す。
ふたりはお互いの手を取り、その場を駆け出した。
ふたりが走っていく先は、まるで運命のように同じ方向だった。
大好きな人と敵として出会ってしまった。
それがどんなに残酷なことなのか、改めて思い知った。
そして、これから起こるであろう困難も。
それでも今は。
手の中にある温もりだけを信じて。
小百合は明日香と共に、夜の街を駆けていった。
ラブホテル「ムーンライト」の自動ドアが音もなく閉まった。
壁一面の鏡と、圆形のベッド。ポップなピンク色の照明が部屋を照らし出している。爆音と瓦礫の雨から一転して、あまりにも甘くて浅はかな空間に、二人は息を呑んだ。
「……変なところ、来ちゃったね」
ベッドの端に腰を下ろしながら、明日香が力なく笑った。白銀のビーストスーツはそのままに、ただヘルメットだけを脇に置いている。汗で額に張り付いた髪をかき上げると、十年前と変わらない、少しだけ困ったような表情が覗いた。
「うん……でも、他に行けるところもなかったし」
小百合もまた、キャット・リリーの装甲を解いていた。黒と白の毛皮が煙のように霧散し、あの頃のままの細身のシルエットが現れる。ただ、首元にはJAPASHの戦闘服のインナーが残り、腰にはふさりとした尻尾だけがそのまま残っていた。
沈黙が落ちる。
戦場から逃げ出した緊張感と、十年ぶりの再会という非現実的な状況が、部屋の空気を重くしていた。
「……ねえ、小百合」
「なに?」
「どうして、JAPASHに入ったの? 怪人になるなんて、危険すぎるよ」
明日香の声は、かつてクラスメイトを気遣っていた時と同じ優しさを持っていた。小百合は膝を抱え、少し俯く。
「……お金のため、かな。JAPASHは給料がいいし、福利厚生もしっかりしてるから」
「え? お金?」
「うん。私ね……好きな人が一緒になるにはお金が必要だって思ったの」
小百合は独り言のように続けた。
「私ずっと明日香のことが好きだった。でも女の子同士で一緒にいるって決めたって、普通の仕事じゃカバーできないリスクがあるじゃない。病気になった時とか、老後とか……誰かに頼らずに、もう一人を養っていけるだけの力と安定が欲しかったの」
その言葉を聞いた瞬間、明日香の目が大きく見開かれた。そして、クスリと小さく笑った。
「……なんで笑うの?」
「だって、私も同じだったから」
「え?」
「私がファイブビーストになったのも、同じ理由なの」
明日香はベッドに深く体を預け、天井を見上げた。
「普通の会社員になっても、小百合をきっと守りきれない。だからね、誰よりも強くなりたかったの。物理的にも経済的にも、好きな人を絶対に守り抜ける力が欲しかった」
彼女は首だけを動かして小百合を見つめた。
「リスクの高い仕事だからこそ、手に入れられる安定があるって思ったの。……馬鹿みたいだよね」
「……ううん」
小百合の胸の奥で、何かが弾けた。
自分だけが抱えていた不安も、決意も。そしてその先にいた相手も。
全てが一つに繋がった気がした。
「私たち……同じこと考えてたんだね」
「そうだね。お互い、相手を養うつもりで強くなろうとしてたなんて」
「あはは……なんか、滑稽」
「ふふ……本当に」
二人は顔を見合わせ、声を上げて笑った。
戦場で出会い、敵同士になり、それでも心の奥底で繋がっていた糸が今、強く引き合った。
笑いが収まると、静寂が戻る。
けれど、それは先ほどまでの気まずい沈黙ではなかった。互いの吐息だけが聞こえるような、熱を帯びた静けさだった。
「……明日香」
「うん」
小百合は恐る恐る手を伸ばした。明日香の頬に触れる。
冷たい空気に晒されていたはずなのに、その肌は火がついたように熱かった。
「私……明日香に触りたかった。ずっと」
「私も」
明日香は小百合の手のひらに自分の手を重ね、そっと目を閉じた。
そして、どちらからともなく顔を近づけた。
唇が触れる。
十年分の想いを確かめるような、羽毛のように軽くて、でも決して離れたくないキス。
「ん……」
一度触れただけで、理性が溶けていくようだった。
明日香は小百合の腰に手を回し、強く引き寄せた。びくりと小百合の体が跳ねるが、逃げることはしなかった。むしろ、その温もりに縋り付くように腕を明日香の首に絡める。
「んっ……あすか……」
深くなる口づけ。舌が触れ合い、互いの口腔を味わう。
荒い息遣いが部屋に響き始める。
明日香は小百合の体を優しくベッドに押し倒した。
ピンクのシーツの上に散る黒髪。潤んだ瞳で見上げる小百合の姿は、怪人だった時の姿とはかけ離れ、ただ愛おしい一人の女性そのものだった。
「小百合……好き。ずっと、好きだった」
耳元で囁かれる低い声に、小百合の背筋がゾクゾクと震えた。
腰に残った尻尾が、嬉しさと恥ずかしさでぶるぶると揺れる。
「私も……明日香が好きっ」
明日香は小百合のインナーに手をかけ、ゆっくりと脱がせていく。
露わになる白い肌。首筋に唇を寄せると、小百合は甘い声を漏らした。
「あっ……んんっ……」
優しく丁寧に触れられるたびに、十年間の空白が埋められていく気がした。
明日香の指先が鎖骨をなぞり、胸の頂へと触れる。びくりと小百合の体が反応し、シーツを握りしめた。
「大丈夫……? 痛くない?」
「大丈夫……もっと、触って。明日香の体温を感じていたいの」
その言葉に応えるように、明日香は愛おしむように小百合の体を抱きしめ、胸の膨らみを掌で包み込んだ。優しく揉みしだきながら、反対側の頂を口に含む。
「ひゃっ……ああっ!」
小百合の甘い喘ぎ声が部屋を満たす。
ビーストスーツの硬い装甲と、小百合の柔らかな肌が擦れ合う背徳的な感触が、さらに二人を煽り立てた。
明日香の手が下腹部へと滑り降りる。
すでに潤いでとろとろになった秘所に指が触れると、小百合は恥ずかしそうに腿を閉じようとしたが、明日香はそれを優しく割り開いた。
「見て……こんなに濡れてる。可愛い……」
「やだ……言わないで……っあ!」
指を一本、ゆっくりと沈めると、小百合は切ない声を上げて背を反らせた。
十年間知らなかった快感。そして、ずっと求めていた人に満たされる歓喜。
内壁がきゅうきゅうと明日香の指を締め付ける。
「小百合……すごく熱い」
「明日香……明日香っ……!」
明日香は優しくキスを繰り返しながら、指を動かし続ける。
かつて戦うために鍛え上げた指先は、今はただ愛しい人を快楽の頂へと導くためだけに使われていた。
「んっ、あっ、あそこ……いいっ……!」
小百合の尻尾がびくびくと跳ね、シーツの上を滑る。
明日香はもう片方の手で小百合の手を握りしめ、深く見つめながら最も敏感な場所を愛撫した。
「一緒にいこう……小百合」
「うんっ……! いっしょに……っあああっ!!」
二人の指が強く絡み合った瞬間、小百合は大きく体を震わせて絶頂を迎えた。
長い長い昇天の余韻の中で、小百合の瞳から涙がこぼれ落ちる。
明日香はそんな小百合を力強く、それでいてまるで壊れ物を扱うかのように優しく抱きしめた。
「……もう離さないからね」
「うん……離さないで」
爆発音の聞こえない部屋で、二人は互いの温もりだけを確かめ合いながら、深く唇を重ね合わせた。
敵同士という残酷な運命も、今夜だけはこの甘い闇の中に溶けて消えていくようだった。
ラブホテル「ムーンライト」の甘く浅はかな空間は、唐突に壊された。
小百合が震える指でスマートフォンを操作したからだ。表示された名前は『蜂野すずめ』。ジャパシュ関東支部長にして、小百合の直属の上司。悪の女幹部と呼ばれる彼女は、組織内でも冷徹で恐れられている存在だった。
「もしもし…蜂野様ですか…」
『おや、猫井さん。どうしたの? 任務は失敗?』
電話の向こうから聞こえてきたのは、予想に反して穏やかな声だった。小百合は唇を噛み締め、溢れ出す感情を抑えようとしたが、涙声になってしまった。
「あの…私…もう…できません…」
『…何が起きたの? ゆっくり話して』
「私…昔の好きな人に会ったんです…ファイブビーストの白い狼…明日香なんです…。彼女と戦いたくない…もうジャパシュにいられません…」
小百合は嗚咽を漏らした。敵前逃亡など本来なら即座に処罰されるべき重罪だ。しかし蜂野すずめは一瞬の沈黙の後、静かに言った。
『…そう。辛かったわね』
「え…?」
『あなたの気持ちは分かるわ。好きな人と戦うなんて、どんな罰よりも重いもの。退職の手続きをしてあげる。退職金も通常通り出すわ。これからは自分のために生きて』
「蜂野様…ありがとうございます…!」
悪の秘密結社の幹部とは思えない慈悲深い対応に、小百合は驚きと感謝で言葉を失った。明日香も横で聞いており、目を丸くしている。
「ジャパシュって…意外とホワイトなんだね…」
「うん…蜂野様は優しい方だったんだ…」
希望が見えた瞬間だった。次は明日香の番だ。彼女もまた覚悟を決めて本部に連絡を入れた。
「こちら犬塚明日香。緊急事態です」
『明日香! 無事だったか!』
電話に出たのはリーダーの獅子井剛だった。しかしその声には安堵よりも鋭い響きがあった。
『お前の居場所は分かっている。ビーストメカで向かった』
「え…?」
『裏切り者め!』
電話が切れた瞬間、部屋の窓が爆音と共に粉砕された。
「来た!」明日香が叫び小百合を背に庇う。
突入してきたのは4体の巨大なメカだった。ビーストメカ・ベアー、タイガー、エレファント、ボアー。その胸のハッチが開き4人の戦士が飛び出してくる。
熊田剛(ブラックベア)、虎井猛(イエロータイガー)、象山力(グリーンエレファント)、猪塚豪(ピンクボアー)。
「明日香! 貴様なぜ敵を逃がした!」
熊田が怒鳴り声を上げた。
「彼女は…小百合は私の大切な人なの! 彼女とは戦えない!」
「言い訳になるか! ファイブビーストの使命はジャパシュの殲滅! 命令違反は死をもって贖え!」
4人は変身を解かないまま明日香に襲いかかった。明日香もビーストチェンジで応戦するが1対4では分が悪い。彼女は小百合だけは守ろうと必死だったが象山の強烈なタックルを受けて壁に叩きつけられた。
「ぐっ…!」
「無様だな白狼」
4人の男たちが明日香を取り囲む。その目には怒りと別の欲望が混じっていた。
「この裏切りのレズ女め!」
猪塚が明日香のスーツの首元を掴み引き裂いた。強化繊維で出来たビーストスーツだが4人の怪力の前では無力だった。バリバリという音と共に白銀の装甲が剥がされ明日香の白い肌が露わになる。
「やめて! 彼女に触らないで!」
部屋の隅で小百合が叫ぶが4人は聞く耳を持たない。
「女同士で愛し合うだと? 笑わせるな! お前はただのメスだ! 男の強さを知らねぇからそんなふざけたことを抜かすんだ!」
虎井が嘲笑いながら明日香の胸を鷲掴みにした。
「あっ…!」
明日香が屈辱に顔を歪める。しかしその身体は触れられた部分から痺れるような感覚が走った。正義のヒーローが持つ強い催淫効果だ。
「ほら見ろ! 体は正直だ! メスの身体に戻りたがってるぞ!」
象山が太い指で明日香の秘部を強引に割り開いた。すでに小百合との行為で潤っていたそこは拒絶する間もなく指を受け入れてしまった。
「いやっ…そんな…!」
「感じてるじゃねぇか! レズのくせに男の指でイキそうか?」
4人の手が容赦なく明日香の身体を這い回る。胸を揉みしだかれ乳首を摘まれ秘部を蹂躙される。それは戦いではなく一方的な性的な支配だった。
「どうだ! 男の凄さが分かったか!」
「お前は俺たちの所有物だ! メスとして扱ってやる!」
彼らは「わからせる」ことに執着していた。明日香の意思もプライドもへし折りただの「メス」として屈服させるために。彼らの荒々しい愛撫は小百合との甘い触れ合いとは対極にあった。痛みと屈辱そして抗えない快感が明日香の中で混ざり合う。
「くっ…ああっ…!」
明日香は必ず小百合の方を見ていた。助けられない無力な自分が惨めでたまらなかった。しかし彼女の身体は4人の男たちの責めに耐えきれず快楽の波に飲み込まれていく。
「あっあっあっ…!」
「白狼もただの淫乱メスだったな!」
小百合は壁の隅で震えていた。目の前で愛する人が同僚たちに嬲られている。助けたいのに何もできない。自分がジャパシュを辞めたからこんなことになったのかという自責の念が押し寄せる。
「明日香…!」
小百合の目から涙が溢れる。明日香の苦痛に満ちた喘ぎ声が胸を引き裂く。彼女の瞳は小百合を捉えていた。「ごめんね」と訴えているようだった。
「観念しろ! お前は俺たちのメスだ!」
熊田が明日香の耳元で囁いた。明日香の抵抗が弱まっていく。それは心が折れたからなのかそれとも身体が快楽に負けたからなのか。小百合には分からなかった。ただ一つ言えるのはこの世界が二人にとってあまりにも残酷だということだった。
「見せてやるよ。本当の快楽をな」
熊田が明日香の両腿を強引に開いた。ビーストスーツの残骸が床に散乱し、白い太ももが露わになる。明日香は抵抗しようとしたが、虎井と象山に両腕を押さえつけられ、猪塚に両足を固定されていた。
「やめ…!」
熊田の舌が明日香の秘裂に触れた瞬間、明日香の背が弓なりに反った。
「ひっ…!?」
小百合との行為で敏感になりきっていたそこに、荒々しく熱い舌が押し込まれる。熊田は容赦なく舌を動かした。秘奥の襞を一本一本舐め上げ、最も敏感な小さな粒を見つけ出すと執拗に吸い上げた。
「あっ…いやっ…! そこ…!」
「感じてるじゃねぇか。レズごっこじゃ味わえなかった快楽だろ」
熊田が鼻で笑いながら、さらに深く舌を差し込む。濡れた音が部屋に響き渡る。明日香の腰が意思に反して浮き上がり、熊田の顔に押し付けられた。
「ほら、自分から腰を振ってやがる」
「ちが…! ちがう…!」
明日香は首を激しく振って否定するが、身体は正直に反応していた。熊田の舌は巧みだった。長年の戦闘経験で培った筋肉の制御力が、こんな場所で発揮されている。舌先で小さな粒を転がしながら、時折濡れた秘口に舌を挿し込んで内壁を舐め回す。
「あっあっあっ…! んっ…!」
明日香の声が次第に甘く、高いものに変わっていく。抵抗していた腕から力が抜け、代わりにシーツを握りしめる指が白くなった。
「どうだ? 男の舌の味は」
「…っ…!」
「もうイキそうだろ。素直になれよ」
熊田が一層激しく吸い上げた。明日香の太ももががくがくと震え、腰が跳ね上がる。
「いや…! いきたくない…! こんなの…!」
「体は正直だな」
熊田が最後の一撃を放った。舌先で敏感な粒を強く吸い上げながら、同時に指を奥まで挿し込んだ。
「ああああっ…!!」
明日香の身体が大きく跳ねた。背中を反らせ、足の指を丸め、切ない声を張り上げながら絶頂に達した。内部から大量の愛液が溢れ出し、熊田の顔を濡らした。
「はい、イッた」
熊田が顔を上げ、唇を舐めながら笑った。
「レズのくせに男の舌でイッちまったぜ」
「これが本当のオーガズムだ。女同士の貧相な愛撈じゃ味わえない快感だろ」
虎井が明日香の顔を覗き込み、嘲るように笑った。明日香は絶頂の余韻で震えながら、屈辱に涙を流していた。
「…っ…」
「見ろよ、あの顔。完全にメスの顔だ」
「裏切り者のレズ女も結局はただのメスってことだ」
「小百合ちゃんによーく見せてやれ。これが本当の男の逞しさだ」
4人の男たちが一斉に動いた。
熊田が再び明日香の両腿を開き、すでに潤いきった秘部に自身をあてがった。虎井は明日香の胸を鷲掴みにし、乳首を口に含む。象山は明日香の顔を向けさせ、自身を前に突き出した。猪塚は後ろに回り、臀部に舌を這わせた。
「一気にいくぞ」
熊田が一気に腰を押し込んだ。
「あぐっ…!」
明日香の声が悲鳴に変わった。小百合の細い指とは違う、熱く硬いものが秘奥をこじ開け、奥まで突き進んでくる。内壁が悲鳴を上げ、限界まで広げられた。
「きついな。レズはやっぱりきついな」
熊田が腰を動かし始めた。ドスドスという音が響く。明日香の身体が前後に揺され、そのたびに胸を揉みしだく虎井の手が乳首を弾いた。
「あっ…ああっ…! んんっ…!」
「どうだ? これが本当の男の感触だろ」
「んっ…!」
象山が明日香の口に自身を押し込んだ。明日香は拒絶しようとしたが、猪塚が後ろから耳を舐めながら耳元で囁いた。
「噛んだら、あの猫女も同じ目に遭わせるぞ」
その言葉に明日香は凍りついた。小百合を巻き込まないため、明日香は唇を開いた。象山の太いものが口中を満たし、喉の奥まで届く。
「んぐっ…!」
「いい口だ。レズのくせに男を咥えるのが上手いな」
4人の男が同時に明日香を犯した。下から熊田が秘奥を突き上げ、横から虎井が胸を愛撫し、前から象山が口を犯し、後ろから猪塚が臀部を蹂躙した。
「あっ! あっ! あっ! んんーっ!」
明日香の声は象山に塞がれた口から漏れ、くぐもった喘ぎ声になる。4つの快楽が同時に押し寄せ、明日香の理性を削り取っていく。
「見ろ! もう抵抗してねぇぞ!」
「メスはメスだ。結局、男に抱かれて喜んでる」
「小百合ちゃん、よく見ておけよ。これがお前の恋人の本当の姿だ」
小百合は部屋の隅で震えていた。膝を抱え、目を伏せようとした。しかし、耳を塞いでも明日香の喘ぎ声は聞こえてくる。
「明日香…」
小百合の目から涙が止まらなかった。
助けられない。自分が弱いせいだ。明日香は自分を守ろうとして、こんな目に遭っている。小百合の尻尾が哀しさで丸まり、身体は小さく縮こまった。
「…ごめんね…明日香…」
小百合の小さな呟きは、明日香の喘ぎ声にかき消された。「見せてやるよ。本当の快楽をな」
熊田が明日香の両腿を強引に割り開いた。ビーストスーツの残骸が床に散乱し、白い太ももが露わになる。虎井と象山に両腕を押さえつけられ、猪塚に両足を固定された明日香は、身動きが取れなかった。
「やめ…!」
熊田の舌が明日香の秘裂に触れた瞬間、明日香の背が弓なりに反った。
「ひっ…!?」
小百合との行為で敏感になりきっていたそこに、荒々しく熱い舌が押し込まれる。熊田は容赦なく舌を動かした。秘奥の襞を一本一本舐め上げ、最も敏感な小さな粒を見つけ出すと執拗に吸い上げた。
「あっ…いやっ…! そこ…!」
「感じてるじゃねぇか。レズごっこじゃ味わえなかった快楽だろ」
熊田が鼻で笑いながら、さらに深く舌を差し込む。濡れた水音が部屋に響き渡る。明日香の腰が意思に反して浮き上がり、熊田の顔に押し付けられた。
「ほら、自分から腰を振ってやがる」
「ちが…! ちがう…!」
明日香は首を激しく振って否定するが、身体は正直に反応していた。長年の戦闘経験で培った筋肉の制御力が、こんな場所で発揮されている。舌先で小さな粒を転がしながら、時折濡れた秘口に舌を挿し込んで内壁を舐め回す。
「あっあっあっ…! んっ…!」
「どうだ? 男の舌の味は」
「…っ…!」
「もうイキそうだろ。素直になれよ」
熊田が一層激しく吸い上げた。明日香の太ももががくがくと震え、腰が跳ね上がる。
「いや…! いきたくない…! こんなの…!」
「体は正直だな」
熊田が最後の一撃を放った。舌先で敏感な粒を強く吸い上げながら、同時に太い指を奥まで挿し込んだ。
「ああああっ…!!」
明日香の身体が大きく跳ねた。背中を反らせ、足の指を丸め、切ない声を張り上げながら絶頂に達した。内部から大量の愛液が溢れ出し、熊田の顔を濡らした。
「はい、イッた」
熊田が顔を上げ、唇を舐めながら笑った。
「レズのくせに男の舌でイッちまったぜ」
「これが本当のオーガズムだ。女同士の貧相な愛撫じゃ味わえない快感だろ」
虎井が明日香の顔を覗き込み、嘲るように笑った。明日香は絶頂の余韻で震えながら、屈辱に涙を流していた。
「…っ…」
「見ろよ、あの顔。完全にメスの顔だ」
「裏切り者のレズ女も結局はただのメスってことだ」
「小百合ちゃんによーく見せてやれよ。これがお前の恋人の本当の姿だ」
4人の男たちが一斉に動いた。
熊田が再び明日香の両腿を開き、すでに潤いきった秘部に自身をあてがった。虎井は明日香の胸を鷲掴みにし、乳首を口に含む。象山は明日香の顔を向けさせ、自身の猛ったものを前に突き出した。猪塚は後ろに回り、臀部に舌を這わせた。
「一気にいくぞ」
熊田が一気に腰を押し込んだ。
「あぐっ…!」
明日香の声が悲鳴に変わった。小百合の細い指とは違う、熱く硬いものが秘奥をこじ開け、奥まで突き進んでくる。内壁が悲鳴を上げ、限界まで広げられた。
「きついな。レズはやっぱりきついな」
熊田が腰を動かし始めた。ドスドスという肉のぶつかる音が響く。明日香の身体が前後に揺され、そのたびに胸を揉みしだく虎井の手が乳首を弾いた。
「あっ…ああっ…! んんっ…!」
「どうだ? これが本当の男の感触だろ」
「んっ…!」
象山が明日香の口に自身を押し込んだ。明日香は拒絶しようとしたが、猪塚が後ろから耳を舐めながら耳元で囁いた。
「噛んだら、あの猫女も同じ目に遭わせるぞ」
その言葉に明日香は凍りついた。小百合を巻き込まないため、明日香は唇を開いた。象山の太いものが口中を満たし、喉の奥まで届く。
「んぐっ…!」
「いい口だ。レズのくせに男を咥えるのが上手いな」
4人の男が同時に明日香を犯した。下から熊田が秘奥を突き上げ、横から虎井が胸を愛撫し、前から象山が口を犯し、後ろから猪塚が臀部を蹂躙した。
「あっ! あっ! あっ! んんーっ!」
明日香の声は象山に塞がれた口から漏れ、くぐもった喘ぎ声になる。四方向からの快楽が同時に押し寄せ、明日香の理性を削り取っていく。
「見ろ! もう抵抗してねぇぞ!」
「メスはメスだ。結局、男に抱かれて喜んでる」
「小百合ちゃん、よく見ておけよ。これがお前の恋人の本当の姿だ」
部屋の隅で小百合は震えていた。膝を抱え、目を伏せようとした。しかし耳を塞いでも明日香の喘ぎ声は聞こえてくる。
「明日香…」
小百合の目から涙が止まらなかった。
助けられない。自分が弱いせいだ。明日香は自分を守ろうとして、こんな目に遭っている。
「…お願い。もうやめて、明日香は悪くないの。私が悪いの、私が彼女を誘惑したの…」小百合の声が響いた。
「ダメよ小百合、こいつらは!
小百合の瞳は、涙で濡れたまま、ずっと明日香を見つめていた。
「私はジャパシュの怪人リリーキャット!私は殺していいから、明日香は許してあげて、怪人の首をとって帰ればそれで済むんでしょう!」
「ひひひ、いい心がけだ。明日香の前で弄んでから殺してやるよ!」猪塚が小百合に迫った。小百合の尻尾が恐怖で膨張し毛が逆立った。
「ダメ、小百合にだけは!小百合には手を出さないで!お願いですお願いします!」
明日香は絶叫した。しかし彼女の声は4人の男たちの笑い声にかき消された。
「ひひ、いい心がけだ。明日香の前で弄んでから殺してやるよ!」
猪塚が下卑た笑い声を上げながら小百合に迫った。小百合は本能的な恐怖で尻尾の毛が逆立ち、身体が硬直した。怪人としての力はあるはずなのに、圧倒的な暴力の気配に足がすくむ。
「いやっ…! 来ないで…!」
「お前が身代わりになるって言ったんだろ? なら大人しくしろよ」
猪塚が小百合の手首を掴み上げると、象山が後ろから回り込み彼女のインナーを力任せに引き裂いた。薄い布地が悲鳴を上げて千切れ飛び、小百合の華奢な身体が露わになる。
「ああっ…!」
「けっこういい体してんな。猫のくせに」
虎井が小百合の尻尾を掴み、無理やり引いた。
「ひゃっ…!」
小百合がバランスを崩して床に倒れ込む。その隙を逃さず熊田が覆いかぶさった。
「やめろ! 小百合に触るな!」
明日香が叫びながら飛びかかった。しかし彼女の身体はすでに4人の陵辱で限界に近く、動きが鈍い。象山の腕が明日香の首を捕らえ、容赦なく床に叩きつけた。
「ぐっ…!」
「お前はそこで見てろ! 裏切り者が割を食うのは当たり前だろ!」
象山の鉄拳が明日香の腹にめり込んだ。
「かはっ…!」
明日香の口から苦悶の声と共に胃液が漏れる。それでも彼女は立ち上がろうとしたが、虎井の蹴りが脇腹を襲い、猪塚の膝が背中に突き刺さった。
「がっ…あっ…!」
ボコボコという鈍い音が響く度に明日香の身体が跳ね上がり、床を転がる。口から血が流れ、白銀の装甲はさらにひび割れ汚れていく。
「明日香っ! やめて! お願いやめて! 私がっ…私がなんでもするから!」
小百合が絶叫した。しかし男たちは聞く耳を持たない。
「見ろよ! これがお前の選んだ運命だ!」
熊田が小百合の両脚を強引に開かせた。抵抗する力すら残っていない小百合の秘部に熊田自身が押し込まれる。
「あぐっ…! いっ…たい…!」
小百合の細い身体には熊田の太さはあまりにも過酷だった。内壁が無理やり押し広げられ悲鳴を上げる。小百合と明日香の繋がりを断ち切るような暴力的な侵入。
「きついぜ。まるで処女みてぇだ」
熊田が腰を振る。ピストン運動の度に小百合の身体が揺さぶられ、乾いた喘ぎ声が漏れる。
「次は俺だ」
虎井が割り込み熊田と交代する。太さも角度も違う異物に小百合は翻弄された。
「あっ…ああっ…! んっ…!」
「ほらほら! 男の味を覚えろよ!」
象山と猪塚も容赦なく小百合を犯した。口には無理やり象山自身をねじ込まれ喉の奥まで突かれる。
「んぐっ…! んんーっ!」
後ろからは猪塚が臀部を蹂躙し白濁を注ぎ込む。
4人の男たちが交代で小百合を貪り尽くした。彼女の細い身体は男たちの精液でドロドロに汚されていく。白い肌に粘りつく白濁液。秘部から溢れ出しシーツに染みを作る精液。髪にも顔にも大量に注ぎかけられ小百合はまさに精液まみれだった。
「あはは! いい表情だぜ!」
「レズ女も男の精で孕ませてもらって嬉しいか?」
小百合の瞳から光が消えていく。ただ男たちの動きに合わせて揺さぶられるだけの人形になっていた。
「やめろ…やめてくれ…」
明日香はボロボロになった身体を引きずりながら手を伸ばした。しかし象山に踏みつけられ動けない。
「無理だね。たっぷり犯したらあとはサンドバッグにして殴り殺してやる。悪党の末路だ、お前なんかにはもう渡さねぇよ」
「うあああああっ!!」
明日香の慟哭が響き渡る。目の前で愛する人が穢されていく。自分が守れなかった。自分が弱かったから。その無力感と絶望が明日香の心を粉々に砕いていった。
小百合は虚ろな目で明日香を見ていた。その唇は震えていたが声にはならなかった。ただ頬を伝う涙だけが彼女の心を映していた。
「見たか? これが現実だ」
熊田が小百合の髪を掴み顔を上げさせた。精液にまみれた顔が明日香の視界に入る。
「お前みたいな弱い女じゃ誰も守れねぇんだよ」
男たちの嘲笑が部屋に充満した。希望などどこにもない。ただ残酷な勝利者の笑い声だけが響いていた。
「もう終わりだ。悪党は死んで地獄に落ちろ」
熊田の手が小百合の細い首に巻きついた。指が徐々に締まっていく。小百合の喉から「ぐっ…」という苦しい音が漏れる。白い肌が赤みを帯び、猫耳の装甲が悲鳴のように震えた。
「小百合っ!!」
明日香が叫ぶが、象山に踏みつけられ動けない。彼女の視界で小百合の顔が苦痛に歪んでいく。このままでは本当に殺される。
「苦しいか? 悪の怪人が殺されるんだ。いい気味だろ」
熊田が力を込める。小百合の手足が痙攣し、尻尾が力なく床を叩いた。視界が霞んでいく。もう、明日香の顔も見えない。ああせめて最後にもう一度、あの笑顔を。
ふいに天井を突き破って何かが落ちてきた。
黒い甲虫の装甲。胸に鈍く光る円形のコア。一本のツノが夜の闇を裂く。アーク・カイバー。
続いて白い翼を広げたスノウ・ホワイトが舞い降り、通天閣が派手な音を立てて着地しそして最後に蜂野すずめが優雅に床に降り立った。その後ろからシーク・ケバブが金属バットを肩に担いで現れる。
「小百合さん、大丈夫ですか」
カイバーが小百合の身体を抱き起こした。彼女の首にはくっきりと指の跡が残っている。荒い呼吸の中、小百合は涙で濡れた目を開けた。
「あ…あくの…さん…?」
「遅くなってすみません。蜂野さんが『猫井さんが危ない』って言うんで急いで来ました」
「猫井さん、よく頑張ったわね」
蜂野すずめが小百合の頭を優しく撫でた。その手は温かく、まるで母親のようだった。
「すずめ…様…」
「もう大丈夫。ブラックなヒーロー事務所がやりそうなことよ。あなたの上司は私よ。部下を守るのも仕事だから」
蜂野が顔を上げた。その瞳に宿るのは、先ほどまでの穏やかさとは対極の冷たい殺気だった。
「さて、獣神戦隊ファイブビーストの諸君」
蜂野の声が部屋に響く。静かだが、氷のように冷たい。
「私の可愛い部下に何をしてくれたのかしら?」
「ジャパシュの幹部が直々に来るとはな。上出来だ」
熊田がニヤリと笑った。しかしその笑みはすぐに消える。
蜂野の姿が消えた。
「なっ…」
気づいた時には熊田の身体は壁に叩きつけられていた。蜂野の蹴りが胴を捉え、その勢いでコンクリートの壁がひび割れる。
「ぐあっ…!」
「熊田っ!」
虎井が飛びかかるが、カイバーのツノがその脇腹を捉える。
「どけ」
カイバーの拳が虎井の顔面にめり込んだ。甲虫の装甲に包まれた拳は鉄の塊のような重さで虎井を吹き飛ばす。
「てめぇ…!」
象山が襲いかかるが、スノウ・ホワイトの白い翼がその視界を遮った。
「あなたたち、最低です」
翼から放たれる冷気が象山の動きを鈍らせる。その隙にカイバーの膝が象山の腹に突き刺さった。
「がっ…!」
「象山さん!」
猪塚が援護しようとするが、通天閣が前に立ちはだかった。
「なめんなよ、ヒーローさん。ウチの仲間に手ぇ出したらどないなるか、教えたるわ」
通天閣の拳が猪塚の頬を打つ。コテコテの関西弁とは裏腹に、その拳は容赦がなかった。
シーク・ケバブは無言で金属バットを振り回した。正確に急所を狙うその一撃は、元テロリストの戦闘経験が生きていた。
「お前たち、すずめさんを怒らせたナ。バカだネ」
4人の男たちはみるみるうちに追い詰められていく。先ほどまでの威勢はどこへやら、彼らは次第に後退り始めた。
「おのれ…!」
熊田が立ち上がろうとするが、蜂野の踵がその背中を踏みつけた。
「動かないで。今、あなたたちがしたことの報いをくれてやるわ」
蜂野の声は静かだった。しかしその瞳の奥には、部下を傷つけられた怒りが燃えていた。
「私の可愛い部下に、よくもまあ…」
蜂野の指が熊田の首に触れる。先ほど小百合がされたのと同じ場所。
「や…やめろ…」
「あら、今更怖いの? さっきまであんなに威張ってたのに」
蜂野の指がゆっくりと締まっていく。熊田の顔が赤くなり、必死にもがく。
「涙を流して震えてるのね。弱いものを一方的に殺そうとしたあなたが笑わせてくれるわ」蜂野は熊田の首をへし折った。
象山はアークカイバーのグラビティキャノンで消滅。
虎井はスノーホワイトのソニックブレードで両断!猪塚はシークケバブが業火で焼き尽くした。
蜂野は振り返り、小百合と明日香を見た。二人は互いに寄り添い、震えながらも相手を支え合っていた。
「猫井さん」
「は…はい」
「あなたはもうJAPASHの怪人じゃない。退職届は受理したわ」
蜂野が微笑んだ。その笑顔は先ほどの殺気が嘘のように優しかった。
「でも、困った時はいつでも連絡して。あなたは私の大切な部下だったんだから」
「蜂野様…」
小百合の目から涙が溢れた。恐怖と安堵と感謝が入り混じった涙。
「それから、そちらの白い狼さん」
蜂野が明日香を見た。明日香はビクッと身体を強張らせた。
「あなたは猫井を幸せにしてくれるのよね❤️」
「…はい、命に変えても守ります。」
明日香は小さく頷いた。
「行きましょう、みんな」
蜂野の言葉にJAPASHの面々が頷く。彼らは夜の街へと消えていった。
後に残されたのは無残に崩れたラブホテルの部屋と抱き合う小百合と明日香だった。
⭐️エピローグ
あれから一年。
街外れの女子高の校門前にひっそりと小さな喫茶店がオープンした。看板には手書きの文字で『Moonlight』と書かれている。かつてのラブホテルの名前を、二人はあえて店名に選んだ。あの夜から始まった自分たちの物語を忘れないために。
「おはよう、明日香」
「おはよう、小百合」
朝の七時。二人は店の扉を開ける。小百合の退職金を頭金にして借りた小さな店舗。カウンター席が五つ、テーブルが三つ。決して広くはないけれど二人にとっては十分すぎるほどだった。
明日香は黒いエプロンに白シャツというシンプルなスタイル。肩までの髪を後ろで一つに結び、その凛々しい姿は女子高生たちの目を引いた。元ビースト戦士の鍛え上げられた身体はエプロン越しにもわかるほど逞しい。
「マスター、今日もかっこいい!」
「コーヒーください、マスター」
開店と同時に女子高生たちが押し寄せる。明日香は少し照れくさそうにしながらも、手際よくコーヒーを淹れていく。元戦士の集中力はコーヒーの抽出にも活かされていた。
「はい、お待たせ。今日は少し深煎りにしてみたよ」
「わー、いい香り!」
一方の小百合はウェイトレスの制服に身を包み、黒と白のエプロンドレスがよく似合っていた。かつての猫耳の名残か、髪の毛をツインテールに結んだその姿は女子高生たちの間で「小百合さん可愛い」と密かな人気を集めていた。
「ねえねえ、小百合さん。明日香さんって彼氏いるの?」
「えっ…えっと…」
小百合は困ったように笑いながらちらりと明日香を見る。明日香はコーヒーカップを拭きながら、耳を少し赤らめていた。
「秘密、かな」
「えー、教えてよー!」
「あはは…」
女子高生たちは口々に「マスターかっこいい」「小百合さん優しい」と騒いでいる。この店は、いつの間にか彼女たちの憩いの場になっていた。
放課後の時間帯になると、店はさらに賑わう。制服姿の少女たちが次々と訪れ、それぞれの悩みを小百合に打ち明けていく。
「小百合さん、私、好きな人ができたの。でもその人女の子なんだ…」
ある日、一人の女子高生がぽつりと呟いた。小百合はその言葉にそっと微笑み、彼女の手を握った。
「大丈夫。好きになるって、それだけで素敵なことだよ」
「でも…変かな?」
「変じゃないよ。ただ、少し難しい道かもしれない。でも自分に正直でいることが一番大切だと思う」
小百合の言葉はかつての自分自身に語りかけるようだった。あの頃の自分に伝えたかった言葉。十年間、言えなかった想いを抱え続けた日々。それでも最後には、好きな人と手を取り合って生きている。その経験が、今の小百合の言葉には宿っていた。
「ありがとう、小百合さん」
女子高生は少しだけ笑顔になって、店を後にした。
「小百合は、いつもそうやってみんなを励ますんだね」
カウンターの向こうから明日香が言った。小百合はエプロンを整えながら、少し照れくさそうに笑う。
「だって、私も誰かに背中を押してもらったから。明日香がいてくれたから、今があるんだよ」
「小百合…」
明日香がカウンター越しに手を伸ばす。小百合もその手に自分の手を重ねた。
「私もだよ。小百合がいてくれたから、私は戦う意味を間違えずに済んだ」
二人の間に、温かい沈黙が流れる。店の窓から差し込む夕日が、二人の姿を優しく照らしていた。
「ねえ、明日香」
「なに?」
「この店、ずっと続けようね」
「うん。ずっと」
女子高生たちの笑い声が響く中、二人は静かに微笑み合った。
夜になると、店は少し落ち着く。最後の客が帰った後二人はカウンターの前に並んで座る。明日香が淹れたコーヒーを、小百合が一口飲む。
「明日香のコーヒー、やっぱりおいしい」
「小百合のために淹れてるからね」
「ふふ、嬉しい」
窓の外では、街灯がぽつぽつと灯り始めている。あの夜の爆発も、戦場の恐怖ももう遠い記憶になりつつあった。それでも、二人が手を繋いでいることの意味はあの日から何一つ変わっていない。
「明日香」
「うん?」
「幸せだね」
小百合が小さく呟くと明日香は優しく微笑んで、その手を強く握った。
「うん。幸せだね」
校門前の小さな喫茶店。そこには、かつて怪人だった少女とかつて戦士だった少女がいた。彼女たちはもう戦わない。ただ静かに、互いの温もりを確かめ合いながら日常を紡いでいく。
恋多き女子高生たちが今日も集まるその店は、愛を諦めなかった二人の小さな楽園だった。
店のドアに掛けられた小さな看板には、こう書かれている。
『あなたの恋を応援します。たとえどんな恋でも、大切なのは、あなたがあなたらしくいること』
それは、二人が十年かけて辿り着いた答えだった。