※この作品はR-18です。

悪の秘密結社に転職しました。   作:みなぽん

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阿倍野遥香の過去とチャイナドラゴンとの抗争

阿倍野遥香の過去

 

大阪の西成区。

日本有数の貧困地区。

その一角にある古びた木造アパートの一室で阿倍野遥香は育った。

部屋は六畳一間。

四人の家族が暮らすにはあまりにも狭かった。

壁には染みが浮かび畳は擦り切れ湿った臭いが染みついていた。

冷蔵庫にはほとんど何も入っていない。

 

「遥香ねえちゃんお腹すいた……」

五歳の妹美咲が泣きそうな声で言った。

「ごめんなあ……今日は我慢してな……」

遥香は妹の頭を撫でながら謝った。

当時中学二年生。十四歳だった。

隣では三歳の弟翔太が寝ていた。

母は今日も帰ってこない。

もう三日も家を空けていた。

売春婦の母は男を作っては家を空け金を使い果たしては帰ってくる。

そんな生活だった。

「よし。ちょっと出かけてくるな。美咲は翔太と留守番しとってな」

遥香はボロボロのパーカーを羽織り外に出た。

 

行き先は近所の居酒屋だった。

店の裏口から中を覗くと厨房で働く店主の姿が見えた。

「おっちゃん!」

遥香が声をかけると店主は振り返った。

「おう遥香か。今日も手伝ってくれるんか?」

「うん! なんでもするから!」

遥香は満面の笑みで答えた。

店主は遥香の家庭事情を知っていた。

だからこそこうして裏で働かせてくれていたのだ。

「ほな皿洗い頼むわ。ついでにまかないも持って帰りや」

「ありがとうおっちゃん!」

遥香は嬉しそうにエプロンを付けた。

 

遥香は学校でも近所でも人気者だった。

貧しい生活を微塵も感じさせない明るさと優しさを持っていた。

誰かが困っていればすぐに助けに行く。

自分のことは後回しで他人のために動く。

そんな少女だった。

しかしその明るさの裏には深い闇があった。

家に帰れば母の暴力が待っていた。

 

「この役立たずが!」

母の平手が遥香の頬を打った。

「お前さえいなければ……!」

母は酒に酔い遥香に当たり散らす。

幼い弟と妹は部屋の隅で震えながらそれを見ているしかなかった。

遥香は決して泣かなかった。

弟と妹の前で弱みを見せるわけにはいかなかったからだ。

「ごめんなさいお母さん……」

遥香はひたすら謝り続けた。

母はそんな遥香を殴り蹴り罵倒した。

それは日常だった。

何年も続いた日常だった。

 

高校一年生の秋。

いつものように遥香は学校から帰宅した。

しかし家の中からは異様な空気が漂っていた。

「ただいま……」

扉を開けるとそこには見知らぬ男が座っていた。

五十代くらいの薄汚れた男。

母の新しい愛人だった。

「おう帰ったか。お前が遥香か?」

男は品定めするような目で遥香を見た。

「……どなたですか?」

「俺はな今日からお前の新しい父親や」

男はニヤリと笑った。

遥香は直感的に危険を感じた。

「美咲! 翔太!」

遥香は弟と妹を呼んだ。

二人は部屋の隅で怯えていた。

「お前らちょっとこっち来い」

男は翔太の腕を掴んだ。

「やめて! 離して!」

遥香は男に飛びかかった。

「邪魔すんな!」

男は遥香を突き飛ばした。

「お姉ちゃん!」

美咲が泣き叫ぶ。

「うるさい! お前らみたいなガキはなあ!」

男は翔太の頬を叩いた。

三歳の翔太が泣き出した。

「やめて! お願いやめて!」

遥香は男にしがみついた。

「しつけや! 父親のしつけや!」

男はさらに翔太に手を上げようとした。

「やめてください! 私がなんでもしますから!」

遥香は叫んだ。

「なんでも?」

男の目が怪しく光った。

「なんでもします! だから弟と妹には手を出さないで!」

「……ほぉ」

男は遥香の顔をじっくりと見つめた。

「お前意外とええ身体しとるやないか」

男は遥香の顎を掴み顔を近づけた。

酒と煙草の臭いがした。

「じゃあお前が俺の相手をせえ」

「な……何を……」

「とぼけんなや。お前の母ちゃんと同じことや」

 

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男は遥香の制服の襟元に手をかけた。

「やめて……!」

「うるさい!」

男は遥香の制服を引き裂いた。

ブラウスが破れ白いブラジャーが露わになる。

「姉ちゃん!」

美咲が泣き叫ぶ。

「美咲……翔太……こっち見たらあかん……!」

遥香は弟と妹を庇うように言った。

「ええからお前らはそこで見とけ」

男は残酷な笑みを浮かべた。

「お前らの姉ちゃんがどんなに淫乱か教えたるわ」

 

男は遥香を床に押し倒した。

スカートをまくり上げ下着を引き裂く。

「いや……やめて……」

遥香は必死に抵抗しようとしたが男の力には敵わなかった。

「暴れたら弟に何するかわからんで」

その言葉で遥香の抵抗が止まった。

「ええ子や」

男は遥香の乳房を揉みしだいた。

「あっ……!」

遥香の身体が震える。

「ほら乳首硬なってきたやないか」

男は遥香の乳首を指で弾いた。

「んっ……!」

遥香は唇を噛み締めた。

声を出してはいけない。

弟と妹の前でこれ以上惨めな姿を見せてはいけない。

「お前の母ちゃんよりええ身体しとるなあ」

男は遥香の秘所に指を挿入した。

「ああっ!」

耐え切れず声が漏れた。

「姉ちゃん……」

美咲が泣いている。

翔太は何が起きているのかわからずただ呆然としていた。

「見とけよ。これが大人の遊びや」

男はベルトを外しズボンを下ろした。

醜く肥大したペニスが露わになる。

「やめて……それだけは……」

「うるさい! 大人しくしとけ!」

男は遥香の秘所にペニスを当てがい一気に突き入れた。

「あああっ!」

遥香の悲鳴が部屋に響いた。

十四歳の身体に無理やり侵入する異物の感触。

「くっ……きついな……処女か……」

男は満足げに呟き腰を動かし始めた。

「あっ! ああっ! いや……やめて……!」

遥香は泣きながら懇願した。

「姉ちゃん! 姉ちゃん!」

美咲と翔太が泣き叫ぶ。

「うるさい! 静かにせえ!」

男は構わず腰を打ち付け続けた。

「ああっ! ああっ! 痛い……痛い……!」

身体が引き裂かれるような痛み。

だがそれよりも弟と妹の前で犯されているという屈辱が遥香の心をズタズタにした。

「ええぞ……ええぞ……」

男は獣のように荒い息を吐きながら腰の動きを速めた。

「出すぞ……中に出すぞ……」

「やめて……それだけは……」

「うるさい!」

男は遥香の最奥に精を迸らせた。

「ああっ……」

遥香は虚脱した。

身体中が痛む。

心は粉々に砕けていた。

男は満足そうに立ち上がりズボンを上げた。

「今日はこれくらいにしといたるわ」

そして男は部屋を出て行った。

 

遥香は床に転がったまま動けなかった。

涙が止まらなかった。

「姉ちゃん……姉ちゃん……」

美咲と翔太が駆け寄ってきた。

「大丈夫やで……姉ちゃんは大丈夫や……」

遥香は震える声で弟と妹を抱きしめた。

「怖かったやろ……ごめんなあ……」

彼女は自分よりも弟と妹を気遣った。

いつものように。

 

その後母は男を家に入れたことを後悔したが何も変わらなかった。

男は何度も家に来ては遥香を犯した。

母は見て見ぬふりをした。

むしろ遥香を差し出すことで自分の身を守ろうとした。

遥香はそれを受け入れた。

弟と妹を守るためなら自分が犠牲になってもいいと。

 

高校を卒業した遥香は弟と妹を連れて家を出た。

そして三人で暮らし始めた。

昼は工場で働き夜は居酒屋で働いた。

必死に働いて弟と妹を育てた。

そんな中彼女は知った。

この世界は金と力が全てだと。

優しさだけでは生きていけない。

弱い者は搾取され強い者が支配する。

そういう世界だと。

 

そんな時彼女はジャバッシュのスカウトを受けた。

「君の能力を活かせる場所がある」

そう言われて彼女は迷わず飛び込んだ。

改造人間になることを選んだ。

それは自分の弱さと決別するためだった。

もう二度と誰にも屈しないために。

誰にも奪われないために。

そして弟と妹に不自由させないために。

 

ジャバッシュでの彼女の評価は高かった。

持ち前の明るさと交渉力で次々と成果を上げていった。

そして彼女は気づいた。

男たちは結局みんな同じだと。

欲望に弱く単純で扱いやすい。

だから彼女は男たちを利用する。

金を巻き上げ欲望を満たさせそして捨てる。

それが彼女の復讐だった。

あの日受けた屈辱への復讐だった。

 

鏡を見つめる遥香の瞳に一瞬だけあの頃の少女が映った。

しかしすぐにそれは消えた。

「ふん……男はみんなバカや」

遥香は呟いた。

「だからこそ利用価値がある」

彼女は立ち上がり商売道具の入ったバッグを手に取った。

「さて今夜も一稼ぎしますか」

 

阿倍野遥香の戦いはこれからも続く。

弟と妹のため自分のために。

 

⭐️ジャパッシュの昼下がり

「快人っち! 元気かいな?」

 

ジャパッシュ本部の休憩室に響き渡るコテコテの関西弁。

阿倍野遥香が両手を広げて快人に近づいてきた。

通天閣の怪人は今日も元気だ。

黒髪のロングヘアを揺らし満面の笑みで快人の隣にドカッと座った。

 

「お、おう遥香さん。元気だよ」

快人が少したじろぎながら答える。

彼女の勢いにはいつも圧倒されてしまう。

 

「なんやのその返事は! 元気なら元気ってハッキリ言わなアカンやろ!」

遥香が快人の背中をバンと叩く。

「ぐっ……わりぃわりぃ。元気だよ遥香さん」

「そやろそやろ! 元気が一番やで!」

 

遥香は快人の方を向いてニカッと笑った。

その笑顔には底知れない明るさがある。

 

ジャパッシュという悪の組織にいながら彼女だけは別世界の人間のように輝いて見えた。

 

「そういえば快人っちも妹はんおるんやったね」

遥香がコーヒーを啜りながら言った。

「ああ。聖っていうんだけど……病気でさ」

快人の表情が少し曇る。

「知ってるで。難病やんな? その治療費のためにここで働いてるって聞いたわ」

 

遥香の目がスッと細められた。

先ほどまでのお祭り騒ぎのような雰囲気とは違う真剣な光が宿る。

 

「うん……。危ない仕事だってことは分かってるけど……あいつに笑っててほしいからさ」

快人がポツリと呟く。

「分かるわ。その気持ちよーく分かる」

遥香が深く頷いた。

 

「うちもな……妹と弟を守るためにここにおるんよ」

「えっ? 遥香さんも?」

快人が驚いた顔で遥香を見た。

「ああ。毒親やねん。あかん母ちゃんがおってな……しかもやばい愛人まで連れてきくさって。美咲も翔太も危ない目に追うてな、思い切って家を出たんや」

遥香は明るい口調のまま語ったがその瞳の奥には深い闇があった。

快人はハッとした。

彼女の明るさの裏にある痛みを初めて知った気がしたからだ。

 

「うちら似たもんやなあ快人っち」

遥香が快人の肩にポンと手を置いた。

「妹のためなら何でもできる。せやろ?」

「……ああ。そうだな」

快人が小さく笑った。

 

「妹はんのためなら命も張れる。それが兄貴の甲斐性や! なあ快人っち!」

「おう! そうだ!」

二人の目が合う。

クスッと笑い合った。

血の繋がりなどない。組織の同僚にすぎない。

しかし「妹のため」という強い絆が二人を急速に近づけた。

「あーあ。うちも妹はんに早う美味いもん食わせたろなあ」

遥香が大きく伸びをした。

「聖にも……いつか普通の生活をさせてやりたいよ」

快人が天井を見上げた。

 

「ほな今度うちのアパートに遊びにおいでや! 美咲も翔太も喜ぶで! うちらの手料理振る舞ったるさかい!」

「えっ? いいの? じゃあ聖も連れて行っていいかな?」

「もっちろん! 妹はん同士仲良うなれるかもしれんしな!」

 

遥香が快人の手を握ってブンブンと振った。

「ほな決まりや! 今度の日曜な!」

「おう! 楽しみにしてるよ!」

 

快人の顔がパッと明るくなった。

遥香の明るさは伝染する。

彼女と話しているとジャパッシュの薄暗い空気さえ忘れられそうだった。

 

その様子を休憩室の入り口から見ている少女がいた。

白鳥翼だ。

彼女の白い眉がピクリと動く。

 

(……何あれ。あんなに親しそうにして……)

翼の胸がチクリと痛む。

快人が他の女性と仲良く話しているのがどうしても許せなかった。

しかも相手はあの阿倍野遥香だ。

明るい関西弁のお姉さん。

翼とは正反対のタイプだ。

そして、彼の妹愛の深ささえも、彼女の心を傷つける

(聖ちゃん……)

翼は快人の妹を知っていた。

彼女のために快人が怪人になったことも。

だからこそ翼は聖に対しても並々ならぬ感情を抱いていた。

それは嫉妬だった。

彼女なら快人の全てを手に入れられるから。

自分には決して手が届かない場所に聖はいる。

 

(私だって……私だって快人くんのためなら何でもするのに……)

翼は唇を噛みしめた。

遥香のように明るく振る舞うことなんてできない。

聖のように愛される妹になることなんてできない。

そこにさらには遥香さんまで入ってくるなんて。

 

(快人くん……私のことなんてどうでもいいの……?)

翼は唇を噛み締めた。

自分でも子供っぽいと思える嫉妬心。

それでも止められない。

 

「あらあら。随分楽しそうじゃない?」

背後から静かな声が聞こえた。

翼が振り返ると蜂野すずめが立っていた。

長い黒髪とグラマラスな肢体。

常に冷静で余裕のある微笑みを浮かべている。

快人の直属の上司だ。

 

「蜂野主任……」

翼は少し緊張した。

彼女はいつも快人に優しい。

その視線の奥に何か熱いものが込められている気がするのは気のせいだろうか。

 

「快人くんもなかなかモテるのね」

すずめがクスクスと笑いながら言った。

「……そうですね」

翼は俯く。

「あなたも大変ねえ。ライバルが多くて」

 

すずめの言葉には皮肉が含まれていた。

少なくとも翼にはそう聞こえた。

(この人も……私を牽制してる……?)

翼はすずめを睨みつけた。

しかしその視線には勝てない威厳があった。

 

「まあ仕方ないわよね。快人くん可愛いもの」

すずめはこともなげに言った。

「可愛い……ですか?」

翼は眉をひそめる。

「ええ。すごくね」

すずめが妖艶に微笑んだ。

 

二人はそのまま休憩室の中を遠巻きに見ていた。

快人と遥香の笑い声が聞こえてくる。

和やかで暖かい空気。

翼の胸の痛みは増すばかりだった。

そして隣でそれを見ているすずめもまた何か複雑な表情をしていた。

 

(本当に可愛いのはあなたのほうよ……阿久野君……)

 

すずめは心の中で呟いた。

自分の感情に戸惑う。

上司として保護者として接してきたはずなのに……。

最近妙に彼が気になってしまう。

遥香と楽しそうに話す彼を見てなぜこんなにも落ち着かない気持ちになるのか。

分からない。分かりたくない。

 

「私も混ざっちゃおうかしら?」

突然すずめが言った。

「えっ?」

翼が驚いて見上げるとすずめは悪戯っぽくウィンクした。

「冗談よ」

そしてクスッと笑ってその場を去っていった。

 

残された翼は呆然と立ち尽くした。

(なんだか嵐みたい……)

遥香の明るさすずめのミステリアスさ。

そして快人への想い。

色んな感情が入り乱れる。

(とにかく快人くんを取り戻さなくちゃ……)

翼は拳を握り締めた。

そしてゆっくりと休憩室の中へ足を踏み入れようとした。

そのとき……

 

「翼ちゃん? 何しとんの? 一緒に話しよや!」

遥香の大きな声が響いた。

すでに翼がそこにいることに気づいていたらしい。

遥香が快人の手を引いてこちらに歩いてくる。

 

「えっ……私は……」

翼はどうしたらいいか分からなくなった。

逃げるべきか……それとも……?

快人と目が合う。

彼は少し驚いたような顔をして翼を見ていた。

 

「おう翼。久しぶりだな」

快人が明るく挨拶してくれた。

「……うん」

翼は小さく頷いた。

 

「ほらほら遠慮しないでこっちおいで! もっと話したいねん!」

遥香が翼の背中を押した。

強引だけど嫌ではない力加減だった。

翼は流れに逆らえずに二人の輪の中に入った。

 

こうして奇妙な三人の交流が始まった。

それぞれが快人への特別な感情を抱えながら。

表面上は和やかに見えても水面下では様々な思惑が蠢いている。

果たしてこの関係はどうなるのか。

彼らの運命の歯車は今日も音を立てて回り始めていた。

 

⭐️合同任務 ―― 禁断の潛入

 

 

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上海の夜景が窓ガラス越しに煌めいていた。

 

黄浦江沿いに建つ超高層ホテルの最上階。チャイナドラゴンが所有するプライベートフロアでは、毎月一度、特別な夜が開かれる。

 

表向きは富豪たちによる私的な社交パーティ。

しかし実態は違う。

 

「……で、どうやって入るわけ?」

 

快人がエレベーターホールの鏡に映る自分を見ながら言った。身に纏っているのはチャイナドラゴンから支給された黒のタキシード。サイズはぴったりだったが、どうにも落ち着かない。

 

「そりゃカップルやろ。腕組んで堂々と入るんやで」

 

遥香が快人の隣に立った。

 

彼女が身に纏っているのは、首元が深く開いた紺色のイブニングドレス。背中には大きく開いた背中見せ。白い肌が滑らかに覗いている。黒髪のロングは緩く巻き上げられ、耳元に小さな宝石のピアスが揺れていた。

 

いつものパーカーとスニーカーの阿倍野遥香とは別人だった。

 

「……似合うやないか快人っち」

 

遥香が鏡越しにニカッと笑った。

 

「そりゃどうも。遥香さんも……その、えらく堂に入った格好だな」

 

「あはは! 商売道具みたいなもんやからな。こういうのは慣れや慣れ」

 

遥香は快人の腕に自分の腕を絡めた。柔らかな感触と微かな香水の香りが快人の鼻腔を掠めた。

 

「……ごめんな。こんな任務につき合わせて」

 

快人が小さく呟いた。

 

「何謝ってんの。うちだって好きで参加するんやから。それに――」

 

遥香が快人の顔を覗き込んだ。化粧の施された瞳が真剣な光を帯びていた。

 

「チャイナドラゴンの奴らが何企んどるか。それを突き止めるんはうちら両方の組織のためや。しょーがないやろ」

 

「……ああ」

 

快人が頷いた。

 

ジャパッシュとチャイナドラゴン。表向きは協力関係にある大陸の悪の秘密結社だが、実際には競合関係にあった。チャイナドラゴンが日本にまで勢力を拡大しようとしているという情報を掴んだジャパッシュ上層部は、快人と遥香を潛入させた。

 

二人はチャイナドラゴンの幹部が招待するカップルとして、偽の身分でこのパーティーに参加する。

 

「ほな行こか。今日はうちが快人っちの彼女役や。しっかり頼むでえ、ダーリン♡」

 

遥香がふざけてウインクした。

 

「……ダ、ダーリンはやめろって……」

 

快人が赤面すると、遥香はケラケラと笑ってエレベーターのボタンを押した。

 

最上階への上昇。数字が変わるたびに快人の心拍数も上がった。

 

重厚なダブルオープンが静かに開かれた。

 

広大なフロアには数十組のカップルがいた。シャンデリアの光が大理石の床に反射し、生演奏のジャズが空間を満たしている。どこか甘い香りが漂っていた。

 

「……派手やなあ」

 

遥香が快人の腕を抱いたまま小声で言った。

 

「ああ。ただのパーティーじゃねえのは確かだ」

 

快人が周囲を観察した。招待客は男性が多かった。いずれも高級なスーツを纏い、連れている女性も美しく装っている。しかし何かがおかしい。

 

客たちの目が潤んでいた。

 

赤く、うっとりとした目。

 

「ねえ。何か……空気がおかしくない?」

 

快人が遥香に耳打ちした。

 

「分かる。あまい匂いやねん。空調に何か混入しとるんとちゃうか」

 

遥香が鼻に手を当てた。

 

そのとき、ボーイ姿の男がトレイを持って近づいてきた。トレイには金色の液体が注がれた小さなグラスが並んでいる。

 

「ようこそ。今宵の特別ドリンクでございます」

 

「……ありがとう」

 

遥香が自然な笑みでグラスを受け取った。快人も倣う。

 

二人は視線を交わした。飲むべきか。飲まざるを得ない。断れば怪しまれる。

 

「いっぺん口につけるだけにしとこ。飲み込まんように」

 

遥香が囁き、グラスを唇に当てた。快人も同様にした。

 

甘く、花のような味が唇に広がった。それだけで頭が少しふわっとした。

 

「……強烈やな」

 

遥香が眉をひそめた。

 

「とにかく情報を探す。上層部が言ってた資料室は奥にある。まずは場になじんでから動くぞ」

 

「了解や。……ほな、踊ろか?」

 

遥香が突然快人の腰に手を回した。

 

「えっ?」

 

「カップルやろ。踊らんと目立つで」

 

遥香の目が笑っていたが、その奥には緊張があった。快人は小さく息を吐き、遥香の腰に手を添えた。

 

バンドがテンポの遅いナンバーを奏で始めた。

 

二人は踊り始めた。

 

遥香は驚くほど自然に快人に寄り添った。身長差を考えれば、彼女の額が快人の顎のあたりに来る。ドレスの肩口から覗く白い鎖骨が目の前にあった。

 

「……上手いな。踊るの」

 

快人が照れ隠しに言った。

 

「まあね。色々と必要なスキルやから」

 

遥香がクスッと笑った。

 

その笑みが、さっきのドリンクのせいか、いつもより艶めいて見えた。

 

一曲踊り終えた頃には、会場の雰囲気が明らかに変わっていた。

 

ダンスフロアの片隅でカップルがキスをしている。最初は一組だけだった。それが二組、三組と増えていく。

 

「……何やこれ」

 

遥香が目を細めた。

 

あるカップルはダンスの途中で唇を重ね、あるカップルは壁際で密着し、あるカップルはすでに互いの衣服に手を伸ばし始めていた。

 

空気中の甘い香りが濃くなっていた。

 

「媚薬……か」

 

快人が低い声で言った。

 

「空調とドリンクの両方から。相当強いやつやな。うちの身体が……少し変や」

 

遥香が自分の肩を抱いた。白い肌がほんのりと紅潮している。

 

「俺もだ。……腹のあたりが熱くなってきた」

 

快人が眉をひそめた。

 

と、奥から司会のような男が現れた。白いマスクを付けた、細身の男だ。

 

「ご招待の皆様。今宵は特別な夜。心と体を解き放ち、自由に楽しみください。パートナーとの親睦を深める場として、この空間をお使いください」

 

男の声が滑らかに響いた。

 

「……なるほど。これがチャイナドラゴンの『秘密パーティー』の正体か」

 

快人が呟いた。

 

「参加者同士のセックスを通じて、精神的な結びつきを作る。そこから情報を引き出し、関係を構築する。スパイ組織の常套手段やな」

 

遥香が冷静に分析した。しかし声が少し潤んでいた。

 

「ほな……問題はこれからや」

 

遥香が周囲を見渡した。すでに多くのカップルが情事に及び始めていた。ソファで、壁際で、床の上で。

 

布が擦れる音。荒い息遣い。甘い声。

 

会場全体が淫らな空気に包まれ始めていた。

 

そして二人の周りにも、他のカップルの視線が集まっていた。

 

「おい、あそこの二人。まだ始めてないぞ」

 

「新入りか? 参加しないのか?」

 

「恥ずかしがってるのかな?」

 

ひそひそとした声が聞こえた。

 

「……やばいな。参加せんと目立つ」

 

遥香が快人の胸に額を押し当てた。演技ではなく、本気で動揺しているのが分かった。

 

「快人っち……どうする?」

 

快人の心臓が早鐘を打った。

 

参加しなければ正体が露見する。逃げれば追手がかかる。戦えば任務が失敗する。

 

そして何より、身体が熱かった。あのドリンクと空気のせいで、理性が少しずつ溶け始めていた。

 

「……するしかないか」

 

快人が乾いた唇を舐めた。

 

「……せやな」

 

遥香が顔を上げた。紅潮した顔。潤んだ瞳。しかしその奥には変わらない強い光があった。

 

 

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「ええか快人っち。これは任務や。割り切ろうや。それに……」

 

遥香が小さく笑った。

 

「うちのことは気にせんでええ。男と女の体育や思って楽しんだらええ」

 

「……体育って」

 

快人が呆れた。

 

「あはは。冗談や冗談。……でもほんまはな」

 

遥香が快人の耳元に唇を寄せた。熱い息が耳をくすぐった。

 

「快人っちのこと、嫌いやないで。信頼してるから。こういう相手なら……悪くない思うて」

 

快人の背筋に電流が走った。

 

 

二人は会場の隅にある個室のソファに移動した。

 

半開きの仕切り。完全に密室ではない。他のカップルからは見える位置。

 

 

それがかえって緊張感を高めた。

 

ソファに並んで座ると、遥香が快人の顔を見た。

 

「ほな……始めよか」

 

遥香が快人のネクタイに手をかけ、ゆっくりと緩めた。

 

「……ああ」

 

快人が遥香の手を止めた。

 

「待って。俺からでいいか」

 

快人が遥香の頬に手を添えた。滑らかな肌の感触。微かに震えている。

 

「……ええよ」

 

遥香が目を閉じた。

 

快人は一瞬躊躇した。遥香の顔に重ねて、別の顔が浮かんだ。

 

白鳥翼の顔。

妹の聖の顔。

緑山翠の顔

蜂野すずめの顔。

 

4人の顔が脳裏をよぎり、胸が痛んだ。

 

(翼ちゃん……聖…翠、すずめさん……ごめん)

 

しかし目の前にいるのは遥香だった。紅潮した顔。信頼を込めた瞳。そして微かに震える唇。

 

(これは任務だ。割り切るんだ)

 

快人は遥香の唇に自分の唇を重ねた。

 

柔らかかった。

 

遠慮がちな、触れるだけのキス。しかしそれだけで、遥香の身体がビクリと反応した。

 

「……んっ」

 

遥香が小さく声を漏らした。

 

唇を離すと、遥香が快人を見た。目が潤んでいた。

 

「……優しいな快人っちは」

 

「……初めてやからな。こういうの」

 

「うちもやで」

 

二人が顔を見合わせ、少しだけ笑った。

 

「ほな……続きいこか」

 

遥香が快人の首に腕を回し、自分から唇を寄せた。

 

二度目のキス。今度は深かった。

 

遥香の舌が快人の唇をなぞり、ゆっくりと中に入ってくる。快人も応えた。互いの舌が触れ合い、絡み合い、甘い液が混ざり合った。

 

「んっ……んんっ……」

 

遥香が鼻から息を漏らしながら快人の髪に指を差し入れた。

 

快人の手が自然と遥香の腰に回り、引き寄せた。遥香の柔らかな身体が快人の胸に密着する。

 

唇を離すと、銀色の糸が引いた。

 

「はぁ……」

 

遥香が息を整えた。頬が薔薇色に染まっている。

 

「……快人っち。結構キス上手いやないか」

 

「……勘弁してくれ」

 

「あはは。でもほんまはこういうの久しぶりやから……ちょっと緊張してんねん」

 

遥香が快人の胸に顔を埋めた。耳が赤くなっている。

 

快人はその姿を見て、胸の奥が疼いた。

 

(こいつ……強がってるけど、緊張してるんだ)

 

(俺と同じだ)

 

快人は遥香の顎を持ち上げ、もう一度キスをした。

 

今度はもっと深く。もっと丁寧に。遥香の唇を愛おしむように。

 

「んっ……あっ……」

 

遥香が快人の胸を押す手に力が入らなくなり、逆にシャツを握りしめた。

 

快人の手が遥香の背中の開いた部分に触れた。滑らかな肌。背骨のラインが指の腹で分かった。

 

「あっ……」

 

遥香の背中が反った。

 

「ごめん。痛かったか?」

 

「いや……痛ない。……気持ちええんよ」

 

遥香が快人の手を取り、自分の背中に導いた。

 

「もっと触ってええよ」

 

快人の手が遥香の背中をゆっくりと撫でた。遥香が小さく震えるたび、快人の心臓が跳ねた。

 

キスを繰り返すうちに、二人の身体に火が広がっていった。

 

媚薬のせいだけではない。互いの体温、互いの息遣い、互いの鼓動。それらが共鳴し合い、理性の堤防を少しずつ削り始めた。

 

遥香が快人のタキシードのジャケットを脱がせた。続いてシャツのボタンを一つずつ外していく。

 

「……筋肉ついとるやないか。毎日 鍛えとるん?」

 

遥香が快人の胸板に手を平を当てた。

 

「いや……改造手術の副作用だろ」

 

「ふうん。副作用やないやろ。元からや」

 

遥香が快人の胸に唇を寄せた。鎖骨にキスを落とす。

 

「あっ……」

 

快人が息を飲んだ。

 

「ここ敏感なん?」

 

遥香が悪戯っぽく笑って、もう一度同じ場所にキスをした。

 

「……待てよ遥香さん」

 

快人が遥香の肩を押した。

 

「ん? どないしたん?」

 

「次は俺が」

 

快人が遥香をソファに押し倒した。遥香が驚いたような顔をして、そして笑った。

 

「おっと。意外と積極的やな快人っち」

 

快人は遥香のドレスの肩紐に手をかけた。指先が微かに震えていた。

 

「……外していいか」

 

「ええよ。全部」

 

遥香が快人の手を取り、肩紲を滑らせた。ドレスがするりと落ち、遥香の上半身が露わになった。

 

白いブラジャー。シンプルだが上品なレースの縁取り。豊かな胸が布地に収まりきらず、柔らかな膨らみがはみ出している。

 

快人は息を飲んだ。

 

(きれいだ)

 

そう思った瞬間、翼の顔が浮かんだ。

 

(翼ちゃん……ごめん)

 

罪悪感が胸を締めた。しかし目の前の遥香の肌は白く、滑らかで、熱を帯びていた。

 

「……何ぼーっとしてんの。触ってええよ」

 

遥香が快人の手を取り、自分の胸に導いた。

 

ブラジャーの上からでも、胸の柔らかさと熱が伝わってきた。

 

「……あっ」

 

快人の手が遥香の胸を包み込んだとき、遥香が小さく声を漏らした。

 

「んっ……そんな優しくせんでも……もっと触って」

 

快人はブラジャーのホックを外した。手が震えたが、なんとか外れた。

 

ブラジャーが滑り落ち、遥香の胸が完全に露わになった。

 

形の良い乳房。先端は淡いピンク色に染まり、少し硬くなっていた。

 

「……きれいだ」

 

快人が素直に言った。

 

「……ありがとう」

 

遥香が少し照れたように笑った。その笑顔が、いつもの明るい笑顔と重なった。

 

快人は遥香の乳房に手を添え、ゆっくりと揉み込んだ。

 

「あっ……んっ……」

 

遥香が目を閉じ、快人の手の動きに合わせて身体をくねらせた。

 

柔らかい。指が沈み込むほど柔らかい。しかし先端は硬く、指で弾くと遥香の身体がビクリと反応した。

 

「あっ! そこ……あかん……」

 

遥香が快人の手を掴んだ。

 

「あかんて何が」

 

「……気持ちええから。声出そうになる」

 

「出してよ、ここはそういう場所だろ」

 

快人が遥香の乳首を指で挟み、軽く捻った。

 

「あっ! ああっ!」

 

遥香が背を反らせた。胸が揺れる。

 

快人はもう片方の乳房に顔を寄せ、先端を舌で転がした。

 

「あっ……あっ……快人っち……」

 

遥香の指が快人の髪に食い込んだ。快人の舌が乳首を転がすたび、遥香の声が高くなった。

 

「んっ……あっ……そこんとこ……強くしたらあかん……」

 

「ここか?」

 

快人が舌先で乳首を弾いた。

 

「あっ! ああっ! やっ……」

 

遥香の身体が波打った。快人の頭を抱きしめ、胸に押し付ける。

 

「快人っち……快人っち……」

 

遥香が快人の名を繰り返した。その声は甘く、掠れていた。

 

快人は遥香の反応を見ながら、胸への愛撫を続けた。舌で舐め、吸い、歯で軽く噛む。そのたびに遥香が違う声を出す。

 

(俺は……何をしているんだ)

 

快人の頭の片隅で理性が囁いた。

 

(翼ちゃんが……翠が聖が……すずめさんが……)

 

しかし遥香の肌の熱さ、声の甘さ、身体の柔らかさが、その囁きを塗り潰していく。

 

快人の手が遥香のドレスの裾から滑り込み、太ももの内側に触れた。

 

「あっ……」

 

遥香が太ももを閉じた。

 

「……いやか?」

 

「いや……あかんのとちゃう。恥ずかしいだけや」

 

遥香が少しだけ太ももを開いた。快人の手がさらに奥に進む。

 

下着に触れた。そこはすでに濡れていた。

 

「……濡れてる」

 

「……そらそうやろ。こうされて気持ちよかったら濡れるわ」

 

遥香が快人の耳を引っ張った。

 

「遠慮せんでええって。触って」

 

快人は下着を横にずらし、遥香の秘所に指を這わせた。

 

「あっ!」

 

遥香が仰け反った。濡れた粘膜が快人の指に絡みついた。

 

「んっ……あっ……そこ……」

 

快人の指が遥香の秘裂を上下になぞった。濡れた音が小さく響く。遥香の腰が快人の指を追って動いた。

 

「あっ……あっ……快人っち……指入れて……」

 

快人は人差し指をゆっくりと挿入した。熱く、狭く、柔らかい肉壁が指を締め付けた。

 

「ああっ!」

 

遥香が快人の指を咥え込むように力を入れた。

 

「……きついな」

 

「……久しぶりやから……」

 

遥香が快人の首に腕を回した。目が潤んでいた。

 

「……ごめんな。こんなことさせて」

 

「謝るな。俺も望んでる」

 

快人が遥香の額にキスを落とした。

 

「……正直に言うとな」

 

遥香が快人の耳元で囁いた。

 

「快人っちのこと……前からちょっと気になってたんよ」

 

快人の心臓が跳ねた。

 

「……気になってたって」

 

「うん。妹のためなら命も張れる。って言ったとき。うちと同じ目をしてたから。……こういう人やったらええなって」

 

遥香が照れたように笑った。

 

「今更やけど。こういう形で伝えることになるとは思わんかったけどな」

 

快人は何も言えなかった。

 

ただ遥香の唇に、もう一度キスをした。

 

 

衣服が脱がれていった。

 

快人のシャツが床に落ち、遥香のドレスがクシャクシャになって隅に置かれ、最後には二人とも何も纏わぬ姿になった。

 

白い肌と、日に焼けた肌が重なり合う。

 

「……快人っち。全部脱いだら恥ずかしいな」

 

遥香が自分の身体を隠そうとした。快人がその手を止めた。

 

「隠すな。きれいだから」

 

「……きれいって。うちの身体?」

 

「ああ」

 

快人が遥香の身体をまっすぐに見た。傷跡があった。脇腹に、背中に。過去の傷跡。

 

「……これ」

 

「ああ。昔の傷や。母ちゃんにつけられた跡とか……あの男につけられた跡とか」

 

遥香が目を伏せた。

 

快人は傷跡に一つずつキスを落とした。

 

「……快人っち」

 

「過去の傷も全部含めてお前だ。きれいだ」

 

遥香の目から涙がこぼれた。

 

「……ありがとう」

 

快人は遥香の涙を唇で拭った。

 

そして二人の唇が重なった。今度のキスは、今までで一番深かった。

 

遥香の舌が快人の口腔を探り、快人の舌がそれに応える。互いの唾液が混ざり合い、飲み下される。

 

「んっ……んんっ……あっ……」

 

遥香が快人の背中に爪を立てた。快人の背中に赤い筋が走る。

 

快人の手が遥香の全身を這い回った。胸、腰、尻、太もも。触れるたびに遥香が声を漏らし、身体を震わせる。

 

「あっ……快人っち……もう……我慢できん……」

 

遥香が快人の股間に手を伸ばした。硬く勃起したペニスが手の中に収まった。

 

「……大きいな」

 

遥香が快人の耳元で囁いた。

 

「うっ……」

 

快人が息を飲む。遥香の手がゆっくりと動いた。

 

「あかん……力入れすぎや。もっと緩く……」

 

遥香が快人のペニスを優しく握り直し、手のひらで包み込むようにして動かした。

 

「あっ……遥香さん……」

 

快人が遥香の肩に顔を埋めた。遠香の手の温かさと動きに、腰が疼いた。

 

「気持ちええ?」

 

「……ああ」

 

「ほなもっと気持ちよくしたる」

 

遥香が快人の耳元でそう囁くと、身体を滑らせて下に降り、快人のペニスに顔を寄せた。

 

「ちょ……遥香さん?」

 

「ええやん。口でしてあげる」

 

遥香が快人のペニスを両手で支え、舌先で先端を舐めた。

 

「あっ!」

 

快人の腰が跳ねた。

 

「敏感やなあ。……ほなもっと」

 

遥香が舌で先端をくるくると円を描くように舐め、亀頭の裏側の敏感な部分を重点的に攻めた。

 

「あっ……ああっ……」

 

快人がソファの背もたれを握りしめた。

 

「んっ……ちゅっ……」

 

遥香が口の中にペニスを含んだ。温かく湿った粘膜がペニスを包み込み、舌が器用に動いた。

 

「遥香さん……そんな……上手すぎるだろ……」

 

「んっ……ふふ……喜んでもらえたら嬉しいわ。……」

 

遥香が口を離してそう言い、ニカッと笑った。口元が濡れていた。

 

「…本当にすごいぞ」

 

「あはは。まあ男の扱いには慣れとるからな。商売で」

 

遥香が再びペニスを含み、今度は深く喉の奥まで咥え込んだ。

 

「うっ……ああっ……」

 

快人の限界が近づいていた。

 

「待って……遥香さん……出そうだから……」

 

遥香が口を離した。唇が銀色の糸を引いた。

 

「出すんやったら中がええやろ?」

 

遥香が快人の顔を見てそう言った。

 

「……ああ」

 

快人が頷いた。

 

遥香が快人の上に跨った。胸が揺れる。先端が赤く熟れた乳首が快人の目の前にあった。

 

「ほな……入れるで」

 

遥香が快人のペニスを手で支え、自分の秘所に当てがった。

 

「んっ……」

 

遥香がゆっくりと腰を下ろした。ペニスが濡れた粘膜を押し広げながら侵入していく。

 

「あっ……ああっ! 大きい……!」

 

遥香が眉をひそめ、快人の肩に手を置いた。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫……ちょっときついけど……」

 

遥香が息を整えながらさらに腰を下ろした。最奥まで咥え込んだとき、二人の声が重なった。

 

「あっ……!」

 

「くっ……!」

 

熱く狭い肉壁が快人のペニスを締め付ける。

 

遥香が動き始めた。ゆっくりと腰を上下させ、快人のペニスを出し入れする。

 

「あっ……あっ……快人っち……動いてる内に気持ちよなってきた……」

 

遥香が腰をくねらせた。快人のペニスが遥香の最奥を擦る。

 

「あっ……ああっ! そこ……そこええ……!」

 

「こっちも気持ちいい。きついけど……あったかい」

 

快人が遥香の腰に手を添え、動きを助けた。

 

「あっ……あっ……ああっ!」

 

遥香の声が次第に高くなっていった。

 

快人のスイッチが入った。

 

快人は遠香の腰を強く掴み下から激しく突き上げた。

 

「あっ!? ああっ! なっ……急に……激しく……!」

 

遥香が驚いたような声を上げた。しかしすぐにその声は甘い喘ぎに変わった。

 

「あっ! あっ! ああっ! 快人っち! 快人っち!」

 

遥香が快人の名を呼びながら腰を振った。胸が大きく揺れる。

 

快人は起き上がり遥香の胸に顔を埋めた。乳首を口に含み舌で転がしながら腰を激しく打ち付ける。

 

「あっ! あっ! ああっ! だめ……そこ……乳首と……下…同時に……あかん……!」

 

遥香が快人の頭を抱きしめた。快人の動きが速くなる。

 

肉と肉がぶつかる音。濡れた粘膜が擦れる音。荒い息遣い。甘い声。それらが混ざり合い小さな個室を満たした。

 

「遥香さん……俺…もう……」

 

「んっ……あっ……うちも……もう……」

 

快人が遠香の腰を強く掴み最後のスパートに入った。

 

「あっ! あっ! ああっ! 快人っち! うち……いく……いく……!」

 

「俺もだ……!」

 

二人の声が重なった。

 

「あああっ!」

 

遠香の身体が大きく反り、快人のペニスを強く締め付けた。快人はその締め付けに耐えきれず、遥香の最奥に精を迸らせた。

 

「くっ……ああっ!」

 

熱い液体が遠香の奥に注ぎ込まれた。

 

「あっ……ああっ……」

 

遠香が快人の胸に倒れ込んだ。互いの心臓の音が重なり合う。

 

「はぁ……はぁ……」

 

二人の荒い息遣いだけが響いていた。

 

 

一度目の絶頂を迎えた後も二人の身体は冷めなかった。媚薬の効果と残った興奮が理性を削り続けていた。

 

「……まだ熱いうち……」

 

遠香が快人の胸に指を這わせた。

 

「んっ……」

 

快人が小さく呻いた。

 

「快人っち……もう一回……ええ?」

 

遥香が快人の目を見つめた。その目は完全に快人を求めていた。

 

「……ああ」

 

快人が頷いた。

 

二度目のキスは一度目よりも激しかった。

 

遠香が快人の唇に噛み付き、舌を絡め、唾液を飲み干す。

 

「んっ! んんっ! あっ……」

 

遥香が快人の首に腕を回し、身体を密着させた。胸と胸が押し付けられ、快人のペニスが遠香の腹に当たる。

 

「硬なっとるやないか」

 

「……ああ」

 

「ほな……今度はうちが気持ちよくしたる」

 

遥香が四つん這いになり尻を快人に向けた。

 

「……後ろから」

 

「うん。一番深く入るやろ」

 

遥香が腰を高く上げた。快人が遠香の秘所にペニスを当てがい一気に突き入れた。

 

「ああっ!」

 

背を反らせた。

 

「あっ! あっ! 深い……! 奥まで……届いとる……!」

 

快人が遥香の腰を掴み激しく前後させた。

 

「あっ! あっ! ああっ! 快人っち! すごい……! 頭真っ白になる……!」

 

遥香の声が悲鳴に近かった。しかしそれは苦痛ではなく快楽の叫びだった。

 

「遠香さん……きつい……でも気持ちいい……」

 

快人が腰の動きを速めた。肉と肉がぶつかる音が激しくなった。

 

「あっ! あっ! ああっ! そこ! そこええ! もっと! もっと奥!」

 

遥香が快人の動きに合わせて腰を振った。二つの身体が激しくぶつかり合う。

 

快人が遥香の背中に手を這わせた。汗ばんだ肌が滑る。快人は遠香の耳元に唇を寄せた。

 

「遠香さん……好きだ」

 

その言葉は理性から出たものか快楽から出たものか分からなかった。しかし遠香はそれを聞いて身体を震わせた。

 

「あっ……快人っち……うちも……好きやで……」

 

二人の唇が重なった。角度が変わってペニスが遠香の別の場所を擦った。

 

「あっ! そこ! あかん! いく! いく!」

 

「俺もだ……!」

 

二度目の絶頂が二人を襲った。

 

「ああっ!」

 

熱い液体が再び遠香の奥に注ぎ込まれた。

 

二度の絶頂を迎えた後も二人は離れなかった。ソファに横たわり互いの体温を感じていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

遥香が快人の胸に頭を乗せた。汗ばんだ肌が密着している。

 

「……気持ちよかった?」

 

遥香が小さな声で聞いた。

 

「……ああ」

 

快人が遥香の髪を撫でた。

 

「そっか。よかった」

 

遥香が少し笑った。

 

「……ごめんな」

 

快人が言った。

 

「なんで謝るの?」

 

「俺……お前のこと……抱きたかった。任務だけじゃなくて」

 

「……うん」

 

遥香が快人の胸に顔を埋めた。

 

「うちもや。快人っちのこと……前から気になってた。こういう形やったけど……嬉しかった」

 

二人の間に沈黙が流れた。

 

快人の頭の中にまた翼の顔が浮かんだ。

 

(翼ちゃん……)

 

罪悪感が胸を締めた。

 

(俺は何をしているんだ)

 

遥香が快人の胸に指で円を描いた。

 

「ねえ快人っち」

 

「ん?」

 

「この任務が終わったら……またこういうことする?」

 

快人は答えなかった。

 

遥香が顔を上げた。目が潤んでいた。

 

「冗談やで。忘れて」

 

遥香のが笑った。しかしその笑顔はいつもより少し寂しげだった。

 

快人は遠香の頬に手を添えた。

 

「……ありがとう」

 

「何が?」

 

「俺のこと……信頼してくれて」

 

遥香が目を細めた。

 

「当たり前やろ。うちは味方やで」

 

そう言って遥香がニカッと笑った。いつもの明るい笑顔だった。

 

快人も少し笑った。

 

そのとき個室の外から足音が聞こえた。

 

「そろそろ動くか」

 

快人が立ち上がり服を着始めた。

 

「そうやね。資料室まだ行ってないし」

 

遥香も服を着た。ドレスのシワを直し髪を整える。

 

二人は互いの姿を見て少し笑った。

 

「何してんの」

 

「お互い様やろ」

 

二人は個室を出た。会場はまだ淫らな空気に包まれていた。他のカップルはまだ情事に耽っている。

 

二人は誰にも気づかれず会場の奥へと向かった。

 

資料室のドアの前に立った。

 

「鍵かかってる」

 

「任せて」

 

遥香がポケットからピックツールを取り出し鍵穴に差し込んだ。数秒でカチリと音がした。

 

「開いたで」

 

「さすがだな」

 

「商売道具やからな」

 

二人は資料室に入った。書類の山。パソコン。データ保管庫。

 

「手分けして探そう」

 

快人が書類の山に手を伸ばした。

 

その背中を遠香が見つめた。

 

(快人っち……)

 

胸の奥が疼いた。

 

(これは任務や。割り切るんやった)

 

そう自分に言い聞かせた。

 

しかし身体に残る快人の感触は簡単には消えそうになかった。

 

(あかんあかん。

考えてもうたらあかん)

 

遥香は頭を振って書類に向き直った。

 

快人も同じだった。

 

書類を探しながら頭の中で翼の顔が浮かんで消えた。

 

(翼ちゃん……翠、聖…すずめさん……)

 

(ごめん)

 

(でも……俺は)

 

快人の手が止まった。

 

一枚の書類が目に入った。

 

「……これは」

 

快人の顔色が変わった。

 

「どうしたん?」

 

遥香が覗き込んだ。

 

「チャイナドラゴンの次期展開計画。日本支部の設立計画だ」

 

「日本支部?」

 

「場所は大阪。西成区だ」

 

遠香の顔色が変わった。

 

「西成……うちの故郷やんけ」

 

二人の目が合った。

 

「これを持って帰るぞ」

 

「もちろんや」

 

快人は書類を懐に入れた。

 

二人は資料室を出て会場を抜け出した。

 

夜の上海の風が熱った身体を冷ました。

 

「無事終わったな」

 

快人が空を見上げた。

 

「そうやね」

 

遠香が隣に並んだ。

 

「お疲れ様やったで快人っち」

 

「ああ。お互いな」

 

二人は並んで歩いた。

 

言葉は少なかった。しかしその沈黙は不思議と心地よかった。

 

ホテルの角で二人は別れた。

 

「じゃあな遠香さん」

 

「うん。またな快人っち」

 

遠香が手を振って去っていった。

 

快人はその背中を見送った。

 

(俺は……何をしているんだ)

 

罪悪感と後悔と、そして消えない余韻が胸の中で渦を巻いていた。

 

遥香も同じだった。

 

ホテルの部屋に戻りシャワーを浴びながら遠香は泣いた。

 

快人の感触がまだ身体に残っていた。

 

(あかん。こんなこと思たらあかん)

 

(これは任務や。割り切るんや)

 

そう自分に言い聞かせても涙は止まらなかった。

 

(快人っち……好きやで)

 

その言葉は誰にも届かなかった。

 

 

翌朝。

 

ジャパッシュ本部に戻った二人は上層部に報告書を提出した。

 

「任務完了。資料は入手した」

 

快人が簡潔に報告した。

 

「ご苦労だった。チャイナドラゴンの日本支部設立計画か。重要な情報だ」

 

上層部の幹部が頷いた。

 

「場所は大阪西成区。民泊を隠れ蓑にしているのか。阿倍野君の故郷だな」

 

「はい。だからこそ私が動く意味があったと思います」

 

遥香が答えた。

 

「うむ。二人の働きに感謝する。休憩してくれ」

 

二人は上層部の部屋を出た。

 

廊下で二人は並んで歩いた。

 

「お疲れ様やったで快人っち」

 

遥香がニカッと笑った。いつもの明るい笑顔。

 

「ああ。お互いな」

 

快人も少し笑った。

 

そのとき廊下の向こうから少女が歩いてきた。

 

白鳥翼だ。

 

翼が快人と遠香を見た。

 

二人が並んで歩いている姿。

 

翼の胸がチクリと痛んだ。

 

「快人くん……」

 

翼が小さな声で呼んだ。

 

「あ、翼ちゃん」

 

快人が翼に気づいた。

 

「おかえりなさい。任務お疲れ様でした」

 

翼が少し俯いて言った。

 

「ただいま。ちょっと複雑な任務だったけど無事に終わったよ」

 

「複雑な任務?」

 

翼が顔を上げた。その目には不安の色があった。

 

「ああ。まあ……報告は上層部にしたから」

 

快人が目を逸らした。

 

遥香が二人の様子を見ていた。

 

(あの子が白鳥翼ちゃんか)

 

遥香は翼のことを知っていた。快人のことを想っている少女。

 

(快人っちのこと……好きなんやね)

 

遥香は翼の目を見て分かった。

 

(あかん。これ以上快人っちに関わったらあかん)

 

遥香は心の中で自分に言い聞かせた。

 

「快人っち。ほなうち先に戻るわ」

 

遥香が明るく言った。

 

「ああ。ありがとう遥香さん」

 

「何言ってんの。礼には及ばんで」

 

遥香が翼に軽く会釈して去っていった。

 

翼は背中をじっと見ていた。

 

 

⭐️毒親の刃 ―― チャイナドラゴン日本進出

大阪・西成区。

 

夜の天王寺動物園の敷地裏。廃業したまま解体されずに放置されたビルの地下で、何かが動き出していた。

 

コンクリートの壁に 工事 の音が響く。重機が搬入され、配線が張り巡らされ、地下三階までの空間が改造されていく。

 

チャイナドラゴン日本支部。

 

それがこの場所の新しい名前になった。

 

「順調やなあ」

 

地下の司令室で、男がモニターを眺めていた。

 

男の名は陳 子龍 赤龍。中国人と日本人のハーフ 大阪で差別の中で育った男だ。

 

チャイナドラゴンが誇る改造人間の一人であり、日本進出の総指揮を担う男だ。

 

身長一九〇センチ。筋肉の一枚一枚が鎧のように盛り上がった体躯。頭髪はなく、代わりに頭皮に埋め込まれた赤い龍の刺青が首筋から顔の半分まで這い上がっている。改造手術によって皮膚は鋼鉄より硬く、常人のパンチでは傷一つつかない。

 

目が赤い。

 

文字通り赤い。虹彩が改造によって赤く染められ、暗闇で微かに発光する。

 

「日本支部の設置は六割完了。あと二週間で稼働可能や」

 

赤龍が報告書をめくった。

 

「問題はジャパッシュや。あいつらが黥って見てるわけやない」

 

そのとき背後から気配がした。

 

「あらあら。随分と立派なお部屋じゃないの」

 

女の声だった。

 

軽薄で、ふやけた、それでいてどこか神経を逆撫でする声。

 

赤龍が振り返ると、女が立っていた。

 

四十代半ば。かつてはそれなりの容貌だったのだろう。だが 頬はこけ、肌は荒れ、目の下に濃い隈が刻まれている。

 

しかし身体は改造されていた。

 

腕が不自然に太い。首筋に金属の埋め込みが覗く。目が empty だった。魂が抜けたような空虚な目。

 

阿倍野篤子。

 

遥香の母親だ。

 

「篤子か。お前の案内役としての仕事は順調か」

 

赤龍が冷淡に言った。

 

「順調順調! 西成の地理はうちは肌で覚えとるからな。どこに逃げ道があってどこに警察がおるか。全部知っとるで」

 

篤子がふらつく足取りで近づいてきた。

手にはウィスキーのボトル。

 

「それにしても……元気にしてるかねえ。美咲も翔太も」

 

「お前がそれを気にするのか」

 

「気にする? はっ! 笑かさないでよ。あの役立たずの娘が勝手に逃げただけやんけ。うちの知ったことやない」

 

篤子がウィスキーを煽った。

 

「うちは借金返すためにここに来ただけや。その分は働かしてもらうわ」

 

篤子の身体はチャイナドラゴンによって改造されていた。

 

借金まみれだった篤子は、その身を売ってでも金を作ろうとした。そこにチャイナドラゴンが手を伸ばしたのだ。

 

「身体を提供すれば借金を肩代わりする」と。

 

篤子は迷わず承諾した。娘を売った女だ。自分の身体を売ることなど何でもなかった。

 

改造の内容は基本的な身体強化。戦闘力は高くないが、常人より頑丈で、常人より力が強い。雑用と案内役には十分だった。

 

「親父はんはどこおるん?」

 

篤子が奥の部屋を顎でしゃくった。

 

「金田なら訓練室や」

 

「あいつも相変わらずやなあ」

 

篤子がケラケラと笑った。

 

 

地下の訓緮室から打撃音が響いていた。

 

サンドバッグを殴る音。しかし尋常な音ではなかった。革が裂け、中身が飛び散るほどの衝撃。

 

男が立っていた。

 

五十代。薄汚れた作業着を着ているが、その下の身体は異様だった。

 

右腕が普通ではない。肘から先が金属化し、五本の指がそれぞれ鋭利な鉤爪に置き換わっている。左腕は筋肉が異常発達し、普通の成人男性の太腿ほどの太さがある。

 

顔の左半分が金属板で覆われている。改造手術の痕跡。左目は義眼で、赤い光が鈍く明滅していた。

 

金田辰雄。

 

遥香の義父。かつて遥香を犯した男。

 

チャイナドラゴンによって外道の改造人間・邪道として生まれ変わった男だ。

 

「へへへ……力が湧いてくるぜ」

 

金田が殴ったサンドバッグが粉砕された。鎖が切れ、中身が床に散乱する。

 

「この力があれば……あの娘にも再会できるかなあ」

 

金田の口元が歪んだ。下品な笑み。

 

「今度は逃がさねえよ。遥香ちゃん。今度はもっと楽しませてもらうぜ」

 

その目には歪んだ欲望が渦巻いていた。

 

赤龍が訓練室に入ってきた。

 

「金田。準備はできたか」

 

「おうよ。いつでもいける」

 

金田が鉤爪を振り回した。

 

「じゃあ始めるか。第一波を送る」

 

赤龍がモニターを操作した。地図が表示される。大阪市内のいくつかのポイントが赤く光った。

 

「ジャパッシュの大阪支部を叩く。三日後の夜」

 

赤龍の赤い目が暗闇で光った。

 

「チャイナドラゴンの日本上陸をあの偽善者どもに教えてやる」

 

三日後。夜。

 

大阪市内のジャパッシュ安全屋。表は中古家電の買取店。裏がジャパッシュの大阪支部だった。

 

「ふう……」

 

店内の奥で女性が書類を整理していた。

 

年齢は二十代前半。

 

 

短めの茶髪を無造作に切りそろえ、ジーンズにパーカーというラフな格好。しかしその身体はジャパッシュの改造人間だった。

 

串田福子。

 

ジャパッシュ関西支部のメンバーで、遥香の後輩にあたる女怪人クイダ・オーレ。

 

「遥香先輩……上海の任務お疲れ様でした。うちも頑張らなあかんのに……」

 

福子は独り言を言いながら書類を整えていた。

 

彼女は遥香に憧れていた。

 

同じ関西出身。同じように貧しい家庭で育った。遥香のように強くなりたい。そう思ってジャパッシュに入った。

 

「先輩みたいに、誰かを守れる強さがほしい」

 

それが福子の原動力だった。

 

しかし戦闘経験は浅い。身体能力の改造は受けているが、実戦経験が不足している。本部は福子を大阪支部の留守番として配置していた。

 

「まあ、うちはまだひよっこやからな。地道にやるしかないやん」

 

福子が苦笑した。

 

そのとき。

 

店の外で爆発音がした。

 

「なっ……!?」

 

福子が立ち上がった瞬間、店内の窓が砕け散った。ガラス片が飛び散る。

 

煙の中から人影が現れた。

 

二つ。

 

一つは巨大だった。一九〇センチを超える体躯。赤い目。頭の龍の刺青。

 

赤龍だ。

 

もう一つは異様だった。右腕が鉤爪。左半身が金属。義眼が赤く光る。

 

邪道。金田辰雄。

 

「よお。ここがジャパッシュの大阪支部か」

 

赤龍が店内を見渡した。

 

「……あんたたち!」

 

福子が構えた。身体を改造されているとはいえ、ジャパッシュのメンバーだ。ただではやられない。

 

「来いや! クイダ・オーレの名において、あんたたちを通さへん!」

 

福子が叫び、飛び出した。

 

速い。改造された脚力で一気に間合いを詰める。

 

右拳を赤龍の顔面に叩き込んだ。

 

「おおっ!」

 

渾身の一撃。

 

しかし赤龍は動かなかった。

 

「……それか?」

 

赤龍の顔が一ミリも動いていなかった。

 

「うそや……!」

 

福子の拳が赤龍の鋼鉄の皮膚に弾かれた。手首が痺れる。

 

「軽いな。もっと鍛えろ」

 

赤龍が福子の襟を掴み、軽く持ち上げた。

 

「ぐっ……!」

 

福子が空中に浮いた。足がバタバタと空を切る。

 

「離せ……!」

 

「おい金田。こいつ遊んでやれ」

 

赤龍が福子を放り投げた。福子の身体が床に弾み、壁まで滑っていく。

 

「へへへ……元気な娘だなあ」

 

金田がゆっくりと近づいてきた。鉤爪がカチャカチャと鳴る。

 

「や……やめろ……!」

 

福子が後退った。背中が壁に当たった。逃げ場がない。

 

「さっさと済ませるか」

 

赤龍が店内のモニターを操作した。ジャパッシュのデータを吸い上げ始める。

 

「お前は金田の相手をしとけ。手加減はするな。ただし殺すな。使い道がある」

 

「了解ボス」

 

金田が福子の腕を掴んだ。鉤爪が皮膚に食い込む。

 

「ああっ!」

 

福子が悲鳴を上げた。血が滲む。

 

「いい声だ。もっと聞かせろよ」

 

金田の目がぎらついていた。

 

 

金田は福子を壁に叩きつけた。

 

「ぐはっ……!」

 

福子の背中がコンクリートに打ち付けられた。肺の空気が一気に吐き出される。

 

「弱いなあ。ジャパッシュの改造人間ってのはこんなもんか?」

 

金田が福子の髪を掴み、無理やり立たせた。

 

「離せ……!」

 

福子が金田の腕を殴った。しかし金属化された左腕はビクともしない。

 

「へへへ。そんな小拳じゃ痒くもねえよ」

 

金田が福子の腹を殴った。左の正拳。

 

「がはっ……!」

 

福子の身体が折れ曲がった。胃液が口から溢れる。

 

「あかん……強すぎる……」

 

福子の膝が崩れた。金田がそれを許さず、胸を掴んで再度壁に押し付けた。

 

「お前、阿倍野遥香の後輩やろ?」

 

金田が福子の耳元で囁いた。

 

「……!」

 

福子の目が見開かれた。

 

「あの娘のことを知っとるんか。うちの義理の娘やねん。昔はよう可愛がってやったんやで」

 

金田の口元が歪んだ。その意味を福子は理解した。

 

「あんた……まさか……」

 

「ああ。あの娘の身体はよう知っとるで。泣きながらうちに抱かれとったわ。十四の頃にな」

 

福子の目が憎悪で燃えた。

 

「……殺してやる!」

 

福子が渾身の力で金田の顔を殴った。右ストレート。改造された拳が金田の金属面を打った。

 

カキンという金属音が響いた。

 

「へへへ。いい パンチや。でもな」

 

金田の鉤爪が福子のパーカーを裂いた。布が裂け、下のタンクトップが露わになる。

 

「力が足りんのや」

 

金田が福子の腹を膝で蹴り上げた。

 

「ぐはあっ!」

 

福子が崩れ落ちた。

 

「た、立ち上がれ……うちの……!」

 

福子が震える腕で床を押した。しかし膝が笑って立ち上がれない。

 

「ほな、もういっちょ」

 

金田が福子の胸を掴み、持ち上げた。鉤爪がタンクトップを裂き、ブラジャーが露わになる。

 

 

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「やめろ……! 触るな……!」

 

福子が金田の手を振りほどこうとした。しかし金田の怪力は圧倒的だった。

 

「いい身体してるやないか。遥香ちゃんに似てへんか?」

 

金田が福子のブラジャーを鉤爪で切り裂いた。白い胸が露わになる。

 

「やめてえええ!」

 

福子が叫んだ。

 

「うるさいなあ。ちゃんと楽しませてもらうわ」

 

金田が福子の胸を握り込んだ。鉤爪が皮膚に食い込み、血が滲む。

 

「ああっ! 痛い! 痛いっ!」

 

福子が涙を流した。

 

「ねえねえ、もっと泣きな。遥香ちゃんみたいに」

 

金田が福子の乳首を鉤爪で弾いた。

 

「あぐっ……!」

 

福子の身体が跳ねた。痛みと屈辱が同時に襲う。

 

「へへへ。いい反応や」

 

金田が福子のジーンズのボタンに手をかけた。

 

「やめて……お願いやから……」

 

福子の声が震えた。

 

そのとき、さらに別の足音が近づいてきた。

「やっとるな、楽しそうやないか?」

篤子が立ち上がり、ポケットからスマホを取り出した。

 

「金田。そいつをもうちょっと可愛がってやり」

 

「あ? どういうことや」

 

「撮影するんや。ジャパッシュに送るんやから」

 

篤子がスマホのカメラを起動した。

 

「なっ……何する気や……!」

 

福子が抵抗しようとしたが、金田に押さえ込まれていた。

 

「動くなよ」

 

金田が福子の両手首を片手で掴み、頭上に押し付けた。福子の上半身が完全に無防備になった。

 

「やめて……! 撮るな……!」

 

福子が必死に足をバタつかせた。

 

「あははは! 何やってんの! そんな格好で暴れてたら余計に恥ずかしいで」

 

篤子がスマホを向けた。福子の胸が露出し、泣き顔が画面に映る。

 

「やめてえええ!」

 

福子が顔を背けた。

 

「ほらほら、こっち向き。カメラ見てー」

 

篤子が福子の顎を強引にカメラに向けさせた。

 

「いい表情やん。泣き顔がええ感じや」

 

篤子が笑いながら動画を撮り始めた。

 

「ジャパッシュのみなさん。こんばんはあ。チャイナドラゴン大阪支部からプレゼントやで」

 

篤子がカメラに向かって喋り始めた。

 

「うちらの可愛い娘が、ジャパッシュで頑張ってるみたいやから、労ってあげたんや。ほら、ええ表情してるやろ?」

 

カメラが福子の泣き顔から露出した胸へ、そして金田に押さえ付けられた身体をパンした。

 

「やめて……お願いやから……これだけは……」

 

福子の目から涙が溢れた。

 

「あははは! かわいそうに。でもこれも勉強やで。弱かったらこうなる。うちらの娘もこうやって学んだんやから」

 

篤子が福子の頬をペチペチと叩いた。

 

「ほな金田。もっとええ感じにしてやり。映えんと面白ないやないか」

 

「へいへい」

 

金田が福子のジーンズと下着を引き下ろした。

 

「いやあああああ!」

 

福子の叫びが店内に響いた。

 

下半身が露わになる。金田の鉤爪が太ももに軽く触れ、赤い線を描く。

 

「へへへ。いい肌や。遥香ちゃんより白いかもな」

 

金田が福子の太ももを撫でた。鉤爪の冷たい感触に福子が震えた。

「チャイナドラゴンの特別な媚薬打ってやるぜ!ぶっとびな」彼らは媚薬を飲ませ、彼女の割れ目に指を入れた。赤龍も彼女の乳房をもてあそぶ。

金田も彼女の割れ目に指を入れ、最後の仕上げに媚薬を投入した。

 

「これで動画に載せるからな!」篤子も金田も赤龍も動画を撮っている

「はぁん!」

金田が福子の秘部に手を伸ばした。

 

「やめっ……触るな……!」

 

福子が身体をよじった。

 

「暴れたら傷つくで」

 

金田の鉤爪が福子の秘部をなぞった。皮膚が裂け、血が滲む。

 

「ああっ! 痛い!」

 

福子が仰け反った。金田の鉤爪がさらに奥へ侵入した。

 

「ひっ……ひっ……やめて……」

 

福子の声が掠れた。

 

「いい声や。もっと聞きたいなあ」

 

金田が鉤爪を動かし始めた。濡れていない秘部に異物が侵入する。

痛みだけが福子を襲う。

 

「いっ……痛い……痛いよ……」

 

福子の目から涙が止まらなかった。

 

「遥香ちゃんも最初はこうやって泣いてたわ。でも今ならもっと楽しめると思うけどな」

 

金田が福子の乳首を摘んだ。

 

「あうっ……」

 

福子の身体がビクリと反応した。媚薬のせいで痛みの中に奇妙な感覚が混じり始めていた。

 

「お、効いてきたか」

 

金田が福子の秘部を鉤爪で掻いた。今度は少しだけ、湿った音が混じった。

 

「んっ……」

 

福子が顔を赤らめた。

 

「へへ。やっぱり気持ちええんやないか」

 

金田が福子の耳元で囁いた。

 

「違う……気持ちよくなんか……ない……」

 

福子が否定しようとしたが、声が震えていた。

 

「嘘つくなよ。身体は正直やで」

 

金田が福子の秘部に鉤爪を二本入れた。中で広げるように動かす。

 

「ああっ! やめて……広げないで……」

 

福子が身体を弓なりに反らせた。痛みと快感が混ざり合い、混乱していた。

 

「いい反応や。もっといこか」

 

金田が鉤爪で福子の秘部を激しく掻き回した。

 

「あっ! ああっ! やめて……だめ……」

 

福子の声が高くなった。媚薬の効果で身体が勝手に反応してしまう。

 

「ほら、気持ちええやろ? 正直になれよ」

 

金田の手が激しく動いた。濡れた音が店内に響く。

 

「あっ! あっ! ああっ!」

 

福子の身体が痙攣し始めた。抗えない快感が全身を駆け巡る。

 

「もうダメや……お願い……やめて……」

 

福子が涙ながらに懇願した。

 

「ええやん。一回だけいっとこか。恥ずかしい姿、しっかり撮ってもらえ」

 

金田の指が奥を刺激した。

 

「あっ! ああっ! やっ……あっ……!」

 

福子の身体が大きく反り、硬直した。

 

「あっ……!」

 

福子の秘部がピクピクと震えた。金田の指を締め付けながら、快感の波に飲み込まれた。

 

「ああ……あっ…イグ…」

 

福子が崩れ落ちた。肩で息をしている。涙と涎で顔がぐちゃぐちゃだった。

 

「よう頑張ったな。まあ、こんなもんか」

 

金田が福子を放り投げた。福子が床に転がった。

 

「赤龍の旦那、まずは1発目、旦那の腰の昇竜でキメてくださいよ」抵抗する福子の腰を抑え金田が笑う

「よしぶち込んでやるぜ!」赤龍の勃起したものが、彼女の割れ目を貫いた。

 

彼女の顔が快感と苦痛でゆがむ。

「あ……ああん……!」

赤龍が立ち上がり、福子の腕を掴んで引き寄せた。

 

「次はお前だ。金田、お前は下がってろ」

 

「へいへい」

 

金田が後退した。

 

「なっ……まだ……?」

 

福子が怯えた目で赤龍を見た。

 

「お前の身体、もっと使えるか試してやる」

 

赤龍が福子の腰を掴み、自分の腰の高さに持ち上げた。怪人の巨体に見合わぬ異様な姿勢。

 

「やめて……もう……」

 

福子が抵抗しようとしたが、力が入らなかった。

 

「行くぜ」

 

赤龍が自分の勃起したものを福子の割れ目に押し当てた。その大きさと形状は普通の人間のものではなかった。鋼鉄のように硬く、先端が尖っていた。

 

「やめて……やめて……!」

 

福子の叫びは無視された。赤龍が腰を突き出した。

 

「ああっ! あああっ!」

 

福子の身体が跳ね上がった。異物が強引に侵入する。媚薬の効果で濡れていたとはいえ、その大きさと形状は肉体に負担を与えた。

 

「んっ……! ひっ……!」

 

福子の目が見開かれた。口が開いたまま呼吸ができていない。

 

「へへ。いい表情や。動画に最高やないか」

 

篤子が笑いながらカメラを向けた。福子の表情が完全に撮影されていた。

 

「あっ……! あっ……! いや……!」

 

福子が首を振った。

 

「まだまだやで」

 

赤龍が福子の腰を上下に動かし始めた。怪人の膂力で人間の身体が玩具のように扱われる。

 

「あっ! あっ! だめ……壊れる……!」

 

福子の声が悲鳴に変わった。

 

「壊れる? いいやん。壊して欲しいんやろ?」

 

篤子が嘲笑った。

 

赤龍の腰が激しく動き出した。福子の身体が上下に揺さぶられる。

 

「ああっ! あっ! あっ! あっ!」

 

福子の声が途切れ途切れになる。快感と苦痛が交互に襲ってくる。媚薬の効果で身体は反応してしまうが、痛みも確実に存在した。

 

「へへ。締まるな」

 

赤龍が福子の腰を強く掴み、さらに深く押し込んだ。

 

「ああっ! 奥まで……!」

 

福子が背中を反らせた。

 

「もっと感じろよ」

 

赤龍が福子の胸を掴み、揉みしだいた。手のひらで強く握り込む。

 

「あっ! 痛い……痛いっ……!」

 

福子が涙を流した。

 

「痛い? でも気持ちええやろ?」

 

金田が横から福子の耳元で囁いた。

 

「違う……気持ちよくなんか……ない……」

 

福子が否定したが、声が震えていた。

 

「嘘つけ。身体は正直やで」

 

金田が福子の乳首を摘んだ。

 

「あうっ……!」

 

福子の身体が反応した。

 

赤龍の動きがさらに激しくなった。肉と肉がぶつかる音。濡れた音。喘ぎ声。

 

「あっ! あっ! ああっ!」

 

福子の声が高くなる。

 

「そろそろ終わらせるか」

 

赤龍が福子の腰を固定し、一気に奥まで突き上げた。

 

「ああっ! ああっ! やめて……! 中は……!」

 

福子が叫んだ。赤龍の手が福子の首を掴んだ。

 

「うっ……!」

 

福子の呼吸が止まった。首を絞められながら激しく突き上げられる。

 

「あっ……! あっ……! やめ……!」

 

「出すぞ」

 

赤龍が最後の突き上げをした。

 

「ああっ!」

 

熱い液体が福子の体内に注ぎ込まれた。同時に首を絞める手にさらに力が入った。

 

「あ……がっ……」

 

福子の意識が遠のいた。

 

赤龍が福子を放り投げた。床に叩きつけられた福子は、痙攣しながら動かなくなった。

 

「おいおい、大丈夫か? 死んでねえよな?」

 

金田が福子を蹴った。

 

「う……」

 

福子がかすかに呻いた。

 

「よし、生きてるな、次は俺の番だ」金田がのしかかり卑しく腰を振る。

 

篤子は快感に身悶えする娘の痴態を嘲笑う。「いい締まりだぜ!気持ちがいいかよ」金田の腰の動きが徐々に早くなってくる、彼女の反応は敏感だ。そして彼女の反応は敏感だ。その反応にさらに金田の動きは加速する、「あっ!あんっ!ああっ!あっ!あっ!イグッあっ……!」

 

福子の身体が跳ねた。

 

「へへ。いい反応やないか」

 

金田が福子の腰を持ち上げ、激しく動かし始めた。

 

「あっ! あっ! だめ……!」

 

福子の声が高くなった。

 

金田が篤子の方を振り返った。篤子はスマホを構え、笑いながら撮影していた。

 

「ほんまにアホな娘や。こんな姿晒されて恥ずかしくないんか?」

 

篤子が嘲笑った。

 

「やめて……撮らないで……」

 

福子が顔を背けたが、篤子が強引にカメラの方を向かせた。

 

「恥ずかしい格好してる方が綺麗やで。もっとよく見せな」

 

篤子が福子の胸を掴んで揺さぶった。

 

「やめて……! 触らないで……!」

 

福子が抵抗しようとしたが、身体が思うように動かない。媚薬の効果と疲労で力が入らない。

 

「へへ。いい乳やないか。揉み心地ええわ」

 

篤子が福子の胸を強く握り込んだ。

 

「あうっ……!」

 

福子が仰け反った。

 

「いい声や。もっと聞かせろ」

 

金田が福子の腰を持ち、激しく打ちつけた。

 

「あっ! あっ! あっ!」

 

福子の身体が揺れる。篤子が笑いながらその姿を撮影していた。

 

「見てみい。お前の顔、最高やで。恥ずかしいやろ? でも気持ちええんやろ?」

 

篤子がカメラを福子の顔に近づけた。

 

「違う……気持ちよくなんか……ない……」

 

福子が否定したが、声が震えていた。

 

「嘘つくなよ。こんなによがっとるのに」

 

金田が福子の乳首を摘んだ。

 

「あうっ……!」

 

福子が反応した。

 

「ほら、身体は正直やで」

 

金田が福子の耳元で囁いた。

 

金田の腰がさらに激しく動き始めた。肉と肉がぶつかる音。濡れた音。喘ぎ声。

 

「あっ! あっ! ああっ!」

 

福子の声が高くなる。

 

「そろそろイキそうやないか? 認めろよ」

 

金田が福子の首筋に口をつけた。

 

「いや……違う……!」

 

福子が首を振った。

 

「強がるな。気持ちええやろ?」

 

金田が福子の乳首を強く摘んだ。

 

「ああっ!いぎたくないのに、、イッイッちゃうううう!!」

 

福子の身体が痙攣した。

 

「ああっ! やだ……! イグウウッ!」

 

福子の声が店内に響いた。

 

「いい顔や。もっと見せろ」

 

篤子が福子の表情をアップで撮影した。

 

「ほらほら、イッてるところ、ちゃんと撮られてんで。ジャパッシュの仲間に見られたら恥ずかしいなあ?」

 

篤子が嘲笑った。

 

「やめて……撮らないで……お願い……」

 

福子が涙を流した。

 

⭐️アジト襲撃

夜の闇が深まりゆく西成の街に異様な気配が漂っていた。

地下深く潜る悪意の巣窟から漏れ出す瘴気のように空気は重く冷たくそして何より怒りに満ちていた。

 

「福子……!」

 

阿倍野遥香は握りしめた拳が白くなるほどの力で自らの膝を叩いていた。

ジャパッシュ本部の通信室に届いた一本の映像。それが彼女の理性を完全に焼き尽くした。

 

画面の中で泣き叫ぶ後輩の姿。陵辱され嬲られ屈辱に塗れたその姿はかつての自分と重なって見えた。十四歳のあの日母に売られ義父に犯された記憶が蘇る。身体が震え怒りで視界が赤く染まる。

 

「許さへん……絶対に許さへん……!」

 

遥香は立ち上がった。もはや待てない。上層部の指示を待つ余裕などない。

彼女は装備を整え部屋を飛び出した。

 

「遥香さん!」

 

廊下で呼び止めたのは神代快人だった。彼もまた映像を見ていた。隣には白鳥翼と蜂野すずめの姿もある。

 

「どけ快人っち。あたし一人で行く」

 

遥香の目は燃えていた。しかし言葉は静かだった。静かすぎる怒り。それがかえって彼女の決意の深さを物語っていた。

 

「馬鹿言うな。一人で行ってどうなる」

 

「ええやろ! あたしがあいつらをブッ殺すんや! 福子はあたしの……あたしの大事な後輩や!」

 

遥香が叫んだ。感情が堰を切ったように溢れ出す。

 

「知ってるよ。だからこそ俺たちも行くんだ」

 

快人が言った。その目は真剣だった。

 

「俺も妹を守るためにここにいる。その気持ちはお前と同じだ」

 

遥香の胸が熱くなった。上海での夜。

彼が言ってくれた言葉が蘇る。「妹のためなら命も張れる。それが兄貴の甲斐性や!」

 

「私も行きます」

 

翼が一歩前に出た。普段の冷静さを保ちつつもその瞳には揺るぎない決意があった。

 

「あの映像……見過ごせない。それに遥香さんを一人にはさせない」

 

翼の言葉に遥香はハッとした。この少女もまた誰かを守るために戦っているのだ。

 

「私も同行しましょう」

 

すずめが妖艶に微笑んだ。

 

「チャイナドラゴンの動きも気になりますし。それに……」

 

すずめが快人の方をチラリと見た。

 

「可愛い部下たちを死地に送り出すわけにはいきませんからね」

 

四人の目が合った。言葉はいらない。ただ頷き合い夜の西成へと向かった。

 

 

廃業ビルの地下。コンクリートの壁に響く重機の音はすでに止んでいた。

代わりに響くのは荒い息遣いと金属音。そして女の嬌声。

 

「へへ。まだまだいけるやろ? さすがジャパッシュの怪人やなあ」

 

金田辰雄が倒れ込む串田福子を見下ろしていた。その右腕の鉤爪は血と体液で濡れている。

福子はもう抵抗する力さえ残っていなかった。ただ床に転がり震えることしかできない。

 

「ほらほらこっち向きな。もっとええ顔見せてや」

 

篤子がスマホを向け嘲笑う。その空虚な目には娘と同じ血が流れているなど思えないほどの冷酷さがあった。

 

「次はどないする? ボス」

 

金田が赤龍に尋ねた。赤龍は壁際で腕組みをしてその様子を冷ややかに見ていた。

 

「そろそろ限界やろ。ジャパッシュへのメッセージとしては十分や」

 

 

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赤龍が口を開いたとき。

ドォォォン!!

 

地上からの轟音が地下まで揺るがした。天井から塵が落ち照明が揺れる。

 

「なんや!?」

 

赤龍が顔を上げた瞬間更なる爆発と共に地下への入り口が吹き飛んだ。

煙と瓦礫の中から人影が現れた。

 

先頭に立つのは阿倍野遥香。

その背後には阿久野 快人 白鳥翼 蜂野すずめ。

四人の改造人間が怒りと決意を背に立っていた。

 

「遥香……先輩……」

 

福子がかすれた声で呼んだ。

 

「福子! 待っとれよ! 今助けるさかい!」

 

遥香が叫んだ。その声には力が満ちていた。

 

「チッ。追い付かれたか」

 

赤龍が舌打ちした。

 

「始末しろ」

 

「へいへい!」

 

金田が鉤爪を振り上げた。

 

「おうよ!」

 

篤子も改造された腕を構えた。

 

「俺が先頭を行く。遥香さんは福子を!」

 

快人が叫び前に出た。

 

「ああ! 快人っちはボスを頼むで! あのクソ親父はあたしがやる!」

 

遥香が駆け出した。目指すは金田と篤子。

 

「邪魔すんなよ!」

 

金田が鉤爪で切りかかった。遥香は身を翻しその一撃をかわす。

 

「あたしの前によく出てこれたな! クソ親父!」

 

遥香の拳が金田の顔面を捉えた。鋼鉄の皮膚にめり込むほどの衝撃。

金田が数歩後退った。

 

「へへ。強くなったなあ遥香ちゃん。前はもっと弱かったのに」

 

「黙れ! あたしの前でその名前を呼ぶな!」

 

遥香の連撃が始まった。速い重い正確無比な打撃。金田は防御に回るしかない。

 

一方快人は赤龍と対峙していた。

 

「お前がジャパッシュのエースか。名は?」

 

赤龍が問うた。

 

「阿久野 快人。アーク・カイバーだ」

 

快人が答えた。

 

「なるほど。腕っぷしはありそうやな」

 

赤龍が構えた。赤い目が暗闇で光る。

 

「来いや!」

 

赤龍が突進した。一九〇センチの巨体から繰り出される一撃は砲弾のようだった。

快人はそれを真正面から受け止めた。

 

「ぐっ……!」

 

腕が痺れる。しかし快人は踏ん張った。

 

「強いな……!」

 

「そらそうや。うちはチャイナドラゴンの誇る怪人やからな」

 

赤龍の連撃が始まった。重く速い打撃。快人は防戦一方になる。

 

「快人くん!」

 

翼が叫んだ。しかし快人は大丈夫だと合図した。

 

「俺一人でやる。翼ちゃんはすずめさんと他を頼む!」

 

翼は唇を噛み頷いた。そして篤子に向き直る。

 

「あなたが……遥香さんのお母さんなのね」

 

翼が言った。篤子はケラケラと笑った。

 

「母さんやて? はっ! 笑わせないでよ。あたしはただの案内役や。娘なんか知らんよ」

 

篤子の目は空虚だった。母性など欠片も残っていない。

 

「ひどい……」

 

翼が身構えた。

 

「そんな人間に遥香さんは……」

 

「うるさいねえ!」

 

篤子が襲いかかった。改造された腕は常人よりはるかに速い。

翼はスノウホワイトとしての能力を発動。白い霧を発生させ篤子の視界を遮った。

 

「なんやこれ! 見えへん!」

 

篤子が混乱した。

 

「今です! すずめさん!」

 

翼が叫ぶと同時にすずめが動いた。

 

「ええ気づきよ」

 

すずめが篤子の背後に回り込み手刀を叩き込んだ。

 

「ぐっ……!」

 

篤子が前のめりに倒れた。

 

「油断大敵よお母さん」

 

すずめが冷ややかに言った。

 

一方遥香と金田の戦いは激化していた。

 

「あの頃はもっと泣き虫やったやないか!」

 

金田が鉤爪を振り回す。その一撃一撃が遥香の頬や腕をかすり血が滲む。

 

「あたしはもうあの頃のあたしとちゃう!」

 

遥香が金田の腹に膝蹴りを入れた。

 

「ぐっ……!」

 

金田が折れ曲がる。しかしすぐに体勢を立て直し左腕で遥香を薙ぎ払った。

 

「調子に乗るなよ!」

 

遥香が壁に叩きつけられた。背中に激痛が走る。

 

「遥香ちゃん!」

 

福子が叫んだ。

 

「大丈夫や……これしき……」

 

遥香が立ち上がった。身体中が痛む。しかし心は折れていなかった。

 

(あたしはもう一人やない)

(快人っちも翼ちゃんもすずめさんもおる)

(福子もおる)

 

遥香の目に力が宿った。

 

「あたしは……守るんや! あたしの大事な人たちを!」

 

遥香が叫び突進した。金田の鉤爪を紙一重でかわし懐に飛び込む。

そして渾身の力で右拳を叩き込んだ。

目標は金田の顔の金属板。

拳が金属にめり込む音が響いた。

金田の顔が歪みそして金属板にヒビが入った。

 

「があっ……!?」

 

金田が膝をついた。初めて見る苦悶の表情。

 

「これでおしまいや!」

 

遥香の連撃が始まった。顔腹部頭部。容赦のない打撃の雨あられ。

金田はもはや防御することすらできなくなっていた。

 

「やめっ……やめろ……!」

 

金田が泣きそうな声を上げた。

 

「あたしにそう言ったことあったか? 十四歳の時に!」

 

遥香の最終拳が炸裂した。金属板が砕け金田の顔が歪んだ。

そして金田は地面に崩れ落ちた。

 

「はあ……はあ……」

 

遥香が肩で息をする。身体中ボロボロだった。

 

「遥香先輩!」

 

福子が駆け寄ろうとするが力尽きて倒れた。

 

「福子!」

 

遥香が慌てて駆け寄り抱き起こした。

 

「大丈夫か!? 医者に診せるからな!」

 

「遥香……先輩……ごめん……」

 

福子が震える声で言った。

 

「先輩に迷惑かけて……」

 

「何言うとんねん! 迷惑なわけあるか! お前はええ後輩や!」

 

遥香が強く言った。涙が溢れそうになるのを堪えた。

 

その傍らで快人は赤龍との戦いを続けていた。

 

「中々やるやないか坊主」

 

赤龍が称賛した。快人の打撃は的確だった。何度か赤龍の防御を突破しダメージを与えている。

 

「お前もな……!」

 

快人が答える。しかしやはり体格の差が大きい。体力が削られていくのを感じていた。

 

「そろそろ終わりにするか」

 

赤龍が構えを変えた。その姿勢からはこれまで以上の威圧感が漂う。

 

(まずい……来る……!)

 

快人が身構えた瞬間赤龍が消えた。

 

(速い!)

 

次の瞬間目の前に赤龍がいた。その右拳が迫る。

 

(避けられない……!)

 

快人が覚悟を決めた時。

赤龍の拳が止まった。いや止められた。

赤龍の背後から伸ばされた腕がその肩を掴んでいた。

 

「悪いけどここまでよ」

 

すずめだった。冷たい声。

しかしその腕力は凄まじく赤龍さえも動けなくなっていた。

 

「すずめさん!」

 

「私の可愛い部下に手は出させませんわ」

すずめの瞳は冷徹な光を放っていた。

 

「くっ……離せ……!」

 

赤龍がもがく。しかしすずめの腕は鉄の万力のように動かなかった。

 

「今です! 快人くん!」

 

すずめが叫んだ。快人は一瞬の躊躇もなく右拳を振り抜いた。

その拳は赤龍の腹に深々とめり込んだ。

 

「ぐはっ……!」

 

赤龍が苦悶の声を上げる。すずめが手を離すと同時に赤龍は床に崩れ落ちた。

 

「終わりだ」

 

快人が言った。赤龍は動かなくなった。

 

こうしてチャイナドラゴン大阪支部の戦闘力は壊滅した。

残るは一人。

阿倍野篤子。

 

篤子は恐怖で震えていた。目の前にはかつて虐待し売った娘が立っている。

娘の背後には倒された男たちと壊された基地。

自分の世界が崩壊していくのを感じていた。

 

「遥香……」

 

篤子が後退った。壁に背中が当たる。逃げ場はない。

 

「母さん……」

 

遥香が一歩ずつ近づいていく。その目には怒りも憎しみもなかった。

ただ深い深い悲しみがあった。

 

「あんたは……なぜ……」

 

遥香の声が震えていた。

 

「なぜあたしを売った? なぜ美咲や翔太を守らんかった? なぜ……あたしを……」

 

篤子の目が泳ぐ。

 

「そ……それは……金のためや……」

 

「金のため?」

 

遥香が笑った。しかしそれは自嘲だった。

 

「あたしも金のためなら何でもするとる。男を騙し金を巻き上げる。でもな……」

 

遥香が篤子の目を見据えた。

 

「あたしは妹と弟のためやった。あんたのためやない。自分のためやない」

 

篤子が口を開こうとしたが言葉が出ない。

 

「あんたは……自分のためやった。酒のため男のため自分の快楽のため。あたしや美咲や翔太はどうでもえかったんやろ?」

 

遥香の言葉が篤子の胸に突き刺さる。

 

「違う……! それは……!」

 

「言い訳はいらん。あたしは聞きたいんや。なぜあたしを産んだ? なぜあたしを殺さなかった?」

 

篤子の身体が震えた。逃げられない。娘の瞳に映る自分の姿は醜かった。

 

「……金が欲しかったからよ」

 

篤子が吐き捨てた。もう誤魔化す気も失せていた。

 

「父親から養育費をふんだくろうと思った。でもあの男は逃げた。あんたはただの不要な荷物やった」

 

「そうか……」

 

遥香が頷いた。涙は出なかった。もう泣くことはない。

 

「あんたに聞きたいことがある」

 

遥香が言った。

 

「あんたはあたしを愛したことあるか? 一度でもあたしを娘と思ったことあるか?」

 

篤子の目が泳いだ。

 

「……ない」

 

篤子が答えた。

 

「一度もない」

 

その言葉は遥香の心に突き刺さるはずだった。しかしそれは空虚に響いた。

まるで最初から分かっていたことのように。

 

「そっか。……そらそうやな」

 

遥香が小さく笑った。

 

「ほなあたしも言うとくわ」

 

遥香が篤子の目を真っ直ぐに見た。

 

「あたしもあんたを許さへん。一生許さへん」

 

篤子の顔が歪んだ。娘に見捨てられたという事実が心を貫いた。

 

「でもな」

 

遥香が続けた。

 

「あたしはあんたを殺さへん。」

 

篤子が驚いたような顔をした。

 

「ジャパッシュに突き出す。あんたがしてきたこと全部吐かせる。あんたが関わった全ての罪を、その上で、処分されるか一生強制労働か、シャバには戻れへんよ」

 

「遥香……!」

 

篤子が縋るような目を向けた。

 

「頼む……殺して……!」

 

篤子が懇願した。

 

 

「あんたが壊したものをどんなに苦しい思いして修復してきたか。ゆっくり考えな」

 

遥香は篤子に背を向けた。

 

「連行してくれ。すずめさん」

 

「分かりました」

 

すずめが頷き篤子に手錠をかけた。

 

「いやだ……! 遥香……!」

 

篤子が叫んだ。

しかし遥香は振り返らなかった。

 

「遥香……!」

 

篤子の声が遠ざかっていく。地下の空間に残されたのは瓦礫と静寂。

そしてボロボロの身体の遥香と福子。

 

「先輩……」

 

福子が涙を流した。

 

「ええ子や……もう泣かんといて」

 

遥香が福子の頭を撫でた。その手は震えていた。

 

「あたしは……あたしは……強なったんや……」

 

遥香が独り言のように呟いた。

 

「もう二度と……誰にも屈せへん……」

 

その声は力強かった。しかしどこか寂しげでもあった。

 

快人が近づいてきた。

 

「遥香さん」

 

遥香が顔を上げた。

 

「ありがとう。来てくれて」

 

「仲間だ。ろ」

 

快人が微笑んだ。遥香も微笑んだ。

 

「せやな。仲間や」

 

翼も近づいてきた。

 

「遥香さん……」

 

翼が何か言いかけて止めた。そしてただ遥香の手を握った。

遥香はその手を握り返した。

 

夜が明ける。

西成の街に朝の光が差し込む。

闇は晴れた。

しかし戦いは続く。

遥香の戦いはこれからも続く。

妹と弟のため。後輩のため。仲間のため。

そして自分のために。

 

遥香が空を見上げた。

大阪の空は今日も青かった。

 

「ほな行こか」

 

遥香が言った。

 

「ああ」

 

快人が頷いた。

 

四人と一人は朝日の中を歩き出した。

過去を背負いながらも前を向いて。

彼らの足取りは力強かった。

悲しみを乗り越えた者だけが持てる強さだった。

 

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