そのあとは、結局それ以上行為という行為はせずに終わった。
ちふゆにも聞いてみたが、どうやらいろいろと危ない日らしく、行為をみてしたくはなったが、我慢しているらしい。そう言った事情もあるので、三人で話し合い、その日はそれ以上何もなく終わった。
大学に置いてあるベンチに座り、空を見上げながら一人考える。
……はたからみたらいびつな関係だけど今はなんとかなっている。ただ、この関係もずっとは続かないとわかってはいる。わかってはいるんだが、どうしたらいいのかわからない自分もいる。
構内にいても、三人でいることはそんなにない。ただ、加藤と一緒に過ごしていると時たま話しかけられる確率が前よりすこしだけ増えた気がする。
それも、どうやら野次馬のようなものらしく、二人の関係を怪しんで藪をつついているといったほうが正しいんだろう。
……なので、最近はあまりサークルの方にも顔を出せていなかった。
「先輩」
「んっ……加藤か」
「その、先輩。なんか難しそうな顔をしてましたが、なにかありました?」
「あー、まぁいろいろとな」
「……それ、私と先輩の二人のことで合ってます?」
「間違ってはないな」
「そうですか……」
そう言った加藤は何か考え事をするかのように目を伏せた。人のうわさも七十五日と言うし、一人だった放っておいてもいいが今回は加藤も巻き込んでいる。なので、早急な解決が望ましかった。
「そういえば先輩。ちふゆさんとの交際をしているってどれくらいの人に知られてるんですか?」
「どうだろうなぁ。構内で二人でいることは少なかったし、それに誰かに大っぴらに宣言したりとかもしてなかったからな」
中学高校の時に誰かと交際関係になったらそれこそ一瞬で広まったものだが、大学という環境はある意味特殊で今までのそれとは大違いだ。それこそ、科目も自分で選ばないといけない。
あとはちふゆのほうが俺より年上だという事実もあるのかもしれない。
それが影響してるのかはわからないが、今のところ構内にいてそういった話題になったことはいままでなかった。それこそ、加藤と二人いるときのほうが、噂はあるくらいだ。
そんなことを考えていると、無性にくしゃみが出た。身体も一瞬震わせる。
「先輩、風邪ですか?」
「かもなぁ。さすがに最近は朝晩はだいぶ冷えてるしな」
「ですね。そういえば先輩。月末はハロウィンですけど小さなパーティーみたいなのしません?」
「パーティー?」
「はい。パーティーと言っても数人でやるやつです」
「数人か……いちおうサークルのやつに声かけておくか」
「その、ですね。ちふゆさんにも伝えてるんですが個人の家でやるんだったらホテルの一室を借りてそこでやるのはどうかと言われたんです。どうでしょう」
「あー、うん。いいとおもう。ただ、そうなると……だな」
「はい、そうなるとサークルのメンバーというより三人で、ってことになりますね」
「わかった。予定は空けておく。ちふゆにも伝えておく」
「わかりました。その、先輩」
「なんだ?」
「当日なんですがコスプレって興味あります?」
「興味がないと言えば噓にはなる」
「そうですか!それだったらみんなでコスプレしません?」
「み、みんなで?」
「はい、みんなで」
そう言った加藤の目は、何か考えている時の目だった。……コスプレか。したことはないんだよなぁ……と考えながら、授業のため二人は別れた。
◇◇◇
翌日、思い切り風邪を引いた。
おもな症状はのどの痛みとくしゃみ。かかりつけの病院に行って検査等して診断してもらったが、インフルエンザ等ではなくただの風邪だった。最近、くしゃみや寒気とうもしていたし、こうなってしまったのは仕方ないと言えばそうだが、風邪の症状は地味につらかった。
いちおう、ちふゆと加藤に風邪を引いたという事を連絡し、ベッドに横になる。頭痛はそんなにしないが、用心するに越したことはないだろうとおもい、温かくして眠る。
しばらく眠ったとおもい、目を覚ます。台所周辺が人の気配がある。……まさか泥棒か?でも、学生の家に忍び込んで盗みに入ってもそんなに実りがあるとは思えないが……
忍び足で、台所に行く。そこには、エプロンをつけた加藤とちふゆがいた。加藤のエプロン姿は前見たが、ちふゆのエプロン姿は初めてだった。
「ゴホッゴホッ……二人ともどうしたんだ?」
「あ、先輩。起こしちゃいましたか?」
「起こしたのならごめんなさい。今二人でおかゆ作ってたのよ」
「ちふゆさん、すごいですよ……おかゆ作ってるのに卵を炒め始めましたから」
「卵?炒める?なんでだ?」
「いちおう、隣で止めはしたんですけど作りたいのはおかゆなので炒めた卵は横の皿に置いてます」
ちらりと台所を見ると、言っていた通り、かるく焦げた卵が皿の上に載っていた。……おかゆだよな?チャーハンとかではなく?
「その、おかゆを作ろうとしたのよ」
「でも卵は炒めなくてもいいのではないのか」
「その、ごめんなさい。作り方をあまり知らなくて」
「そっか……じゃあ、二人で作ればいいんじゃないかゴホッ」
「先輩、とりあえず寝てください。いちおう、そこにスポドリとかゼリーとか買ってありますから」
「あ、あぁ。ありがとう」
「とりあえず二人でなんとか作りますんで先輩はすこしでも寝ててください!」
そう言われ、台所から追い出された。中身が入ったビニール袋を手に取り、寝室に戻る。中を覗いてみると、言っていた通りゼリー飲料やスポーツドリンクが入っていた。その一つを手に取り、キャップを開け、飲み込む。
ゼリー飲料は、喉通しがよく、炎症を起こしているであろう喉にも抵抗なく入っていった。
それを飲み終えると、ベッドに横になった。軽く頭痛がするが、また横になっていよう。そんなことを考えてる途中で、身体が疲れているのだろう意図せず瞼が落ちた。
しばらくすると、加藤がベッドの横に座っていた。風邪うつるぞと言おうとしたが、その前に加藤は手で静止した。
「先輩、さきほどおかゆ出来ましたよ」
「……大丈夫だったか?」
「なんとか。それよりも、立って歩けます?」
「まぁ、なんとか……大丈夫だ」
台所へ行くと、ちふゆが今エプロンを脱いでいた。どうやら、大きな失敗等はなかったらしい。
器に盛られたおかゆは卵がゆだった。そうか、これがしたかったんだな。れんげを手に取り、掬うように口に入れる。
卵がゆは、荒熱はとれているようで、口に入れても火傷等はしなさそうだった。
「その、味。どうかしら?」
ちふゆがそう聞いてきたので素直に答えた。味は大丈夫だ、今の喉の状態でも食べれる。そう、感想を言おうとしたが目線が合い、意味は伝わったらしい。
「そう、よかったわ」
……口に出さずとも意見が通るのは風邪でしんどい時にはありがたいと知った。その後、しばらく二人は滞在したが、風邪をうつしてはダメだろうと思い、伝えたところ、すぐに帰路に着いた。
一人しかいなくなった部屋で、ふと思う。
体調が悪いときに、だれかが看病してくれるというありがたさ。しかも二人も。
それを体験して、離したくないなという欲が湧いている自分がいた。
ちふゆと加藤、どっちが好みだい?
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ちふゆ
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加藤