その後、それ以上は何もなく先に風呂から上がり、身体を拭いて髪を乾かした。
……予備の着替えをいちおう持ってきておいてよかった。じゃなかったら汗をかいた服をもう一度着るかすっ裸で過ごすしかなくなってたかもしれない。
加藤が着替えを洗濯しているのだろう脱衣所の横にある洗濯機はゴウンゴウンと音を立てながら稼働していた。あとで俺も洗濯させてもらおう。
広間にあったソファーでだらりとしようと脱衣所を出ようとすると背中越しに浴室の扉がガラリと開く音がした。……振り返ってはだめだ。
「どうしたんですかーせんぱい」
「とりあえず何かで隠せ、せめて」
「ええー?もう裸なんて見たでしょー?」
「見たかもしれないけど記憶から抹消してるから今はない」
これ以上同じ空間にいたらまたやらかす!そう考えそそくさと脱衣所から退散し、広間のソファーでだらりとなった。……正直、あれ以上一緒にいたらあの時と同じ状況になる。というかもうなっている。いやなっていた。
しばらくぼうっと考えていると、足音がこちらに近づくのがわかった。考えるな。平常心でいろ。そう心の中で念仏のように唱えていないとおかしくなりそうだった。
「せんぱーい、一緒にお酒のみませんかー」
「酒って……お前さっきも飲んでただろ」
「お風呂入ったから抜けましたよー。さぁさぁ、飲みましょ飲みましょ」
……こいつ、抜けてるといったがぜったいにまだ酔っぱらってやがる。しかたない、一杯だけ付き合ってすぐに寝ることにしよう。
「……わかった。一杯だけな」
「はーい」
そう言うと加藤は棚の奥からなにやら高そうな瓶を持ってきた。それは大学生風情がその場の空気で飲むような酒ではないのは一目でわかった。
「おい、加藤。これ……」
「これですかー?おじさんのお酒ですよー。別荘借りるときにこれ持ってけって渡されました」
「いや、これ絶対高い酒だぞ」
「……飲みたくないですか?」
そう言われたら正直困る。飲みたくないという感情は、口から出ても心から思ってはいない言葉になってしまうだろう。
加藤は持ってきていた2つのグラスにとくとくと注ぎ入れた。かすかに色づくその酒はかすかながら甘い果物のような香りがした。さすがに注いでもらったものをそのままにするのもどうかと思い、グラスを持った。
「じゃあ先輩。かんぱい」
「……かんぱい」
口に含むと今まで飲んできたどの酒よりもおいしく感じた。甘すぎず、かといって尖ってもいない。ものすごく飲みやすく、すいすいといけるとはこういうことを言うのかとおもうような酒だった。
一杯飲み終え、立ち上がろうとすると加藤がスウェットパンツを握った。どうやらまだ付き合えと言っているようだ。これ以上飲むとさすがにやばそうだと思った。
「待て待て、ちょっと水を取りに行くだけだ」
「むー……だったら冷蔵庫の中に冷えてるんでそれ持ってきたらいいと思います」
「わかった」
隣接する台所にある冷蔵庫を開けると、500ミリペットボトルに入った水が数本あった。まぁ、さすがに足りるだろう。それを一本拝借し、加藤のもとに戻る。
加藤の隣、一人分くらいのスペースを開けて座る。ペットボトルの封を開け、一口流し込んだ。水は冷蔵庫でだいぶ冷やされていて頭がすっきりとするほどだった。
「せーんぱい」
気づいたら人ひとり分の距離が目と鼻の先まで縮んでいた。こいつの距離感どうなってるんだと頭の中で小さな俺が会議を行うほどだった。
加藤はスウェットの上から太ももに手を載せてきた。手のひらが触れている部分からは加藤の体温がいやでも伝播し、心臓がすこしづつ高鳴ってくる。
「せーんぱい」
「……なんだ?」
「お昼の続き、したくありません?」
そう言われ、頭を横に思いきり振った。加藤は、その反応をみても表情を変えず、ただ少しづつ太ももに置いていた手を上へ上へと這わせていった。
「そうだ先輩、ゲームをしませんか?」
「……ゲーム?」
「そう、ちょっとしたゲームです」
「……ゲームの内容次第だ」
「それは内緒です。やるかやらないか。どっちですか?」
そう言った加藤の目は、こちらを見据えているようで選択の余地はなさそうだった。
どっちにしろゲームだったらすぐに終わるだろう。
「わかった。やるよ」
「言いましたね?キャンセルはなしですよ」
「で、なにをやるんだ?」
「乳首あてゲームです!」
……は?こいつは何を言っているんだ。頭でもぶつけたのか?
「断る」
「キャンセルはなしって約束したじゃないですか!」
「クーリングオフくらいは聞くだろ」
「今回は対象外です」
そんな阿漕な……
「ぐすっぐすっ……先輩は私と乳首あてゲームしたくないんだ……かなしいな……」
加藤が急にめそめそと泣き出した。……正直こういう場合どういう対処をとればいいのかわからない。彼女はいるが人前で泣くタイプじゃなかったし、正直どうすればいいのか……
「……わかった。一回だけだぞ」
「……ほんとですか?」
「あぁ、本当だ」
「じゃあしましょう」
そう言うと加藤は太ももにやっていた手を離した。……よかった。これ以上近づいてきたらどうなっていたかわかったもんじゃない。
◇◇◇
「……で、これがどうやってゲームがすすむんだ?」
加藤は俺の膝の上に乗り、対面で向き合うようにして座った。いわゆる性行為の体位における対面の状態だ。
「えーっとですね、まず先にどちらから始めるか決めます。そして守り側、つまり当てられる側は相手の首に手をまわして固定するんです。そしたら攻撃側が当てにいく。こんな感じです」
「それ、すぐに勝負つかないか?」
「やってみないとわからないですよ」
「……で、どうやって攻守をきめるんだ?」
正直さっさと終わらせて床に就きたいと思っていた。正直6分立ちの状態はあまりにも生殺しに近い。
「うーん、やっぱり公正を期すためにじゃんけんですかね」
「……加藤、先にやっていいぞ」
「えっ、わかりました」
そう言うと加藤は、両手の人差し指を立て、じわじわと近づけていった。ここだと思ったのか人差し指のひらをとんと身体に這わせた。
「……どうですか?」
「残念、はずれだ」
「えぇーうそー……じゃあ、次攻守交替ですね」
加藤の首に手をまわしていたのを解し、さきほど加藤がやっていたように人差し指をたてる。加藤も、こちらの首に腕をまわす。先ほどと距離は変わらずだが、気づいてしまった。加藤はキャラクターの書かれたTシャツを着ていたが、ふたつの頂点がふくらんでいることを。
「……じゃあ、いくぞ」
「はい」
人差し指を近づけ、ふたつの頂点に軽く触れた。すると加藤は「んっ」と小さい声をあげる。……さすがにこれで勝負はついただろう。
「ほら、あたってるだろ?」
「わ、わかりませんよ」
「そうか、じゃあもっと攻めるか」
「え?」
加藤が呆けた声を出すと、人差し指のひらでやっていたのをつま先に変えた。服の上から刺激するように、かるく、あくまでもかるく。その刺激からか加藤の口から甘い声が漏れ始める。
「あっ、やっ、せんぱぃ、そこ……はっ」
「あたってるだろ」
「わ、わかりませんっ、よっ、んっ❤」
……妙に強情だな。だとするとあれをやるしかあるまい。つま先で遊んでいたそれを親指と人差し指同時に、かつ両方の突起をつまんだ。
「ひゃああああああああ❤」
同時につまむと、加藤はびくりと一度大きく痙攣をした。どうやら正解だったようだ。息を荒げる加藤の目は、先ほどと違ってかすかに涙目になっていた。
「……俺の勝ちでいいか?」
「……はい❤」
「じゃあ、俺は寝るとする」
「……え?」
「勝負は終わったんだからいいだろ」
「そのー、先輩。さっきから当たってるんですが」
「前も言ったが生理現象だ」
「ほんとうですかー?」
加藤は、スウェットパンツの上から自分の局部に当てるように腰を前後に揺らした。その刺激は、さきほどまでのゲームで我慢していた欲の扉を開けるには十分の威力だった。
「せーんぱい❤」
「……なんだ?」
「えっち、しましょ?」
かなり距離が近いのもあるし我慢の限界点も超えそうだったが寸でのところで理性のブレーキが音を鳴らす。
「だいじょうぶですよ、するかもとおもってゴムはもってきてます❤あとはそれを着けて❤すきなだけ❤パコパコするだけです❤」
「いや、その」
「したくないんですか?」
理性のブレーキが壊れる音が頭の中に響く。がりがりと意識がそちら側に持っていかれる。
「わたしはー……」
「せんぱいとえっち、したいです」
扉は壊れ、獣が暴れだす。それをコントロールすることはどうやっても無理だった。
ちふゆと加藤、どっちが好みだい?
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ちふゆ
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加藤