あの後、それ以上の行為はせずにふたりベッドに横になった。先ほどの行為をした状態のまま、二人生まれた時のままの状態で布団に包まった。
横になりながら加藤が言っていた言葉の意味を考えていた。
≪はい、私をきらいにならないでください≫
……その言葉の返事はとっさに返すことはできなかった。いったい何といえばよかったのか。
隣にいる加藤はすでに眠りについていた。さきほどまでのことすら露知らず、まるで何もなかったかのように眠っていた。
その顔を見て、すこしだけ安心し、眠りについた。
◇◇◇
朝、目覚めると横に加藤の姿はなかった。台所へ行くと、加藤が昨日の片づけをしていた。
「おはよう」
「あ、おはようございます」
「……その、きのうは本当にすまんかった」
「いえ、その……私もやぶさかではなかったといいますか。あの、先輩。謝らないでください。そのほうがお互いのためだと思いません?」
その言葉はどう捉えていいのかわからなかった。それは許しのようであって、許容ではない。それは加藤の行動に甘えることになるし、普通に人としてどうかと思う。
そんなことを考えていると、加藤が口を開いた。
「先輩」
「ん?」
「なにか難しそうな顔をしてますよ……大丈夫ですか?」
「いや、大丈夫だ」
「そうですか」
そんな会話をした後に、昨日スーパーで買っていた総菜パンを二人で分けて食べた。正直、あまり味はよくわからなかった。頭の片隅で、ずっと隣にいる加藤のことを考えていたのもあるだろう。
いくら考えても答えはでなかった。
その後、片づけをし、施錠をして別荘をあとにした。駅まで二人ならんで歩いていくと、海の向こうに大きな雲が一つ、もくもくと高なっていた。夏の青雲というのだろうか。盛夏とはこういうことを言うのだろう。路面の照り返しは、じりじりと熱く、海辺の潮風と合わさり、肌にまとわりつく。
駅でしばらく待っていると電車がやってきた。時間帯のせいかほかの乗客は少なかった。座席に座ると加藤は隣に座る。
「先輩」
「ん?」
「すごく、楽しかったです」
「そうか」
「はい」
その後、二時間ほど揺られていると昨日集合した最寄り駅に着いた。加藤を見てみるとすこし眠りについていたようで、肩を軽く揺らすとパッと目覚めた。
「……寝てました」
「もう着いたぞ」
二人並んで改札を出る。改札を過ぎると、いつもと馴染みのある風景がそこにあった。ふたり昨日と服装は変わっていなかったが、関係性はすこしだけ変わったのかもしれない。それがいい関係なのかは別問題として。
「それじゃな」
「はい、またです。先輩」
曖昧な関係。ただ、褒められるような関係ではない。
ポケットに入れていた端末が震えた。見てみると彼女―――小山ちふゆからだった。メッセージアプリの通知がひとつ。通知の内容はやっといろいろ落ち着いたから今度家に行くとのことらしい。そういえば最近、家を掃除してなかったなとおもい、帰路を急いだ。
ビルが並んでいる隙間の空を見ると、一雨降りそうだった。
ちふゆと加藤、どっちが好みだい?
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ちふゆ
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加藤