夏の隙間の雨はしばらく降り続いた。
雨の湿り気というのは存外に鬱陶しく、エアコンが壊れた我が家ではもはや外気と変わらないのではないかと思うほどに湿気ていた。
エアコンを操作してもうんともすんとも言わない。どうやら、本格的に壊れてしまったようだ。修理依頼をしてはいるが、どうやら再来月まで予約が埋まっているらしく、今年の夏は扇風機の風で過ごさなければならないらしい。
部屋を片付ける。あの日、加藤と関係を持ってしまった日から下へ下へと墜ちていってる気がする。それは他者から見てもそうだと思うし、自分で客観的に見ても変わらない。
そんなことを考えながら掃除機をかけていると、チャイムの鳴る音が響いた。玄関の扉を開けると、彼女―――ちふゆだった。
「こんにちわ」
「もう着いたのか」
「ええ、上げてくれると助かるわ」
塗れた傘を玄関先に置き、ヒールの高い靴を脱いで並べ、部屋に上げる。彼女の黒く長い髪は、うっすらとだが濡れていた。
「はい、タオル」
「あら、ありがとう」
ちふゆがかすかに濡れていた髪の毛をタオルで拭っている間、彼女が好きなコーヒーを準備する。いつのまにか、好みを知って部屋に常備するようになったそれは、少し甘い香りのするコーヒーだった。
ちふゆの好みは、すこしだけ砂糖を入れる飲み方。それも、いつのまにか理解して入れるようになった。
マグカップに注ぎ入れ、彼女に手渡す。
「ありがとう」
それだけだった。だが、それだけでよかった。加藤と過ごすときとはまた別の居心地の良さがあるというか空気が合うというのだろうか。
「そういや、今日来た理由は?いつもは何かしら事情がないと来ないからさ」
「あら、恋人と一緒に過ごしたいと思っただけよ。それじゃだめ?」
「そうか」
彼女は良くも悪くもまっすぐだ。芯が通っていると言えばいいのだろうか。そんなところに惹かれて、アプローチしたのを覚えている。
ちふゆの隣に座る。彼女とは、対面で座ることより隣同士で座ることが多々であると同時に、この距離間でも違和感がないと言えばいいのか。居心地がよかった。
「そういえばこないだ連絡したとき、妙な気がしたのだけど」
「こないだ?」
「そう」
ちふゆはこちらをじっと見つめてきた。その目はまっすぐこちらを見つめ、動揺したら詰められるのはたしかだった。しばらく、見つめあうとちふゆは口を開いた。
「こないだの泊りがけで海に行った時よ。忘れたの?」
正直一瞬だが、動揺した。心臓がキュッとなるかのように縮み、解けると心臓はすこしうるさく鐘を鳴らす。
「やましいことがないならいいのよ」
「……ない」
「そう、わかったわ」
「それだけ?」
「ええ、あなたを信じてるもの」
そう言うとちふゆは、ながす様に視線をもどしてコーヒーを口に含み、飲み込んだ。その仕草がとても綺麗でみとれていると、彼女はこぶし一つ分距離を縮めてきた。
距離が少しづつ、また少しづつ縮んでいき、鼻先が触れあうくらいに近づくと、どちらからかわからなかったが唇が重なった。
最初は軽く、徐々にステップを踏むように、絡み合い、溶けていった。お互いの舌を絡ませ、唾液を交換しあう。口内からあふれた唾液は、口の周りを湿らせる。
「んっ、今日はいつもより激しいのね」
「……いやだったか?」
「いいえ、求められるのは悪くないわ」
胸を服の上から揉むと、ちふゆの弱いところである乳首に触れた瞬間彼女がピクリと震えた。そこから軽く、軽く、刺激を繰り返していくと、ちふゆの息がだんだんと荒くなっていく。
上着の裾の部分から手を入れ、彼女のブラジャーのホックを外すと、ホールドから解放された胸がたゆんと揺れた。服を捲りあげ、露わにすると、すでにちふゆの乳首はその少しおおきな乳輪といっしょにふっくらと膨らんでいた。
指先で遊ぶように触れると、ちふゆの口からさらに嬌声が漏れる。それを聞きながら口に含むとさらに普段の凛々しさとは違う可愛らしい声が耳に入った。
「んっ、そこ」
「そこってどこ?」
「ひゃっ、言わせない、で、ちょうだいっ」
ちふゆの口から聞きたかったが言わないので、口にくわえ吸ったり舌先で中心部分を刺激し続けると、根負けしたのかちふゆは座っていたソファーに倒れこむように背中を預けた。
ちふゆは、すでに限界が近そうではあった。だが、その様子を見て妙にそそられたというべきだろうか嗜虐心がめらめらと燃え上がった。
彼女が履いていたデニムを脱がし、下着姿にさせる。いまさらながら気づいたが、彼女の下着は黒色の刺繍が凝ったデザインをしているものだった。
それを丁寧に下し、露わになったそこには整えられたうっすらとした茂みがあった。
拡げ、まじまじと観察すると、さすがに恥ずかしかったのかちふゆは顔を手で覆った。その様子を見ながら、陰核にそっと触れる。
「んっ❤」
やはりそこに刺激を与えるのは今の状況では正解だったようで、皮に包まれた芯のような部分を人差し指の腹でなするようにすると、うっすらとだが湿ってくるのが分かった。
「ひゃっ、そこはっ、やっ」
「いやじゃないでしょ?」
「そ、それは、そうだけども……ひゃんっ❤」
指先で遊んでいたそれに顔を近づけ、軽くキスをするといつも以上に可愛らしい嬌声が聞こえた。それを聞くと、舌先で芯の部分を飴玉を転がすかのように舐めると、大きくビクンと痙攣した。どうやらイったらしい。
息が荒いちふゆをよそに、彼女の膣口に舌先を挿入するし、刺激を与え続ける。それは、想定以上に刺激が強かったのか彼女の手が頭を押さえ、離すようにする。
だが、それにあらがうようにして、刺激を与え続ける。すると、根負けしたのかちふゆは、限界だったのか先ほどと続いて身体を震わせる。すると、膣内に挿入していた舌先をぎゅっと絞めつけるようにし、それが緩むと口を離した。
「はぁ……はぁ……」
「どうだった?」
「いつのまにそんなに上手になったのかしらね。はぁ……はぁ……、でも、こっちも正直限界なの。なにをどうしたいのかわかるわよね❤」
彼女の目は軽く濡れ、準備はできているようだった。財布からコンドームを一つ取り出し、装着する。
そして、彼女の膣口にゆっくりと挿入すると、いつもよりもさらに刺激が強かったのか、ちふゆの爪先が背中に食い込むのが痛いほどにわかった。
そこから腰を動かす。すると、ちふゆの口からはさきほどよりさらに甘い声が漏れ響く。
「んっ❤そこっ❤」
「もっとゆっくりにするか?」
「だい、じょうぶ❤もっと、はげしくっ、お゛っ」
激しくと言われ、腰を動かすとちふゆの口から聞いたことない濁った声が漏れた。だが、それを聞こえていたがあえて激しく、腰を動かす。ただ前後に動かすのではなく、腰に捻りを加えるようにして動かすと、背中に彼女の爪先の刺激がさらに強くなった。
「ん゛っ、くっ❤それ、やば、ぃ❤きもち、い❤」
そろそろお互いに限界そうだったのでラストスパートをかけると、ちふゆは足を絡め、羽交い絞めにするかのようにした。
それを感じながら、腰を動かし続けるとほぼ同時に達した。
「はぁ……はぁ……」
「やばい、さすがにちょっときつい」
「はぁ……はぁ……それは、お互い様じゃないかしら」
それはたしかにそうではある。
◇◇◇
その後、休憩をはさんで身体を重ねた。そのたびに使われたコンドームは、ゴミ箱にだらりと掛かっているだけの状態で、二人は何度も何度も求めあった。
「さ、さすがにもう無理」
「ええ、私もよ」
しばらく呆けていると、身体を預けていたちふゆが小さくなっていたペニスを口に含んだ。舌先の刺激は弱弱しかったが、今はその刺激が心地よかった。
「んっ、そういえば、さっき見つけたんだけど」
「なにを?」
「あなた、色付きのリップなんてしてたかしら」
「……え?」
「さっき飲み物を取りに行ったときに、台所に飲み終えた缶を置いてたでしょ。それの飲み口に色付きのリップがついてたの」
ちふゆは笑っていたが、目はこちらをじっと見つめていた。
「いったい、これはどういうことかしら?」
これが万事休すか、蛇ににらまれた蛙の気持ちが分かった気がした。
ちふゆと加藤、どっちが好みだい?
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ちふゆ
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加藤