※この作品はR-18です。

家畜姫と下僕   作:水瓜

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第四話 夢の花園

近頃、天井に設けられた換気口から吹く風が冷気を含み始めた。

暦では季節は晩秋、まだ雪が降るのには間がある筈だが、朝方などは暖炉に火を入れなければ肌寒く感じる。

 

私はちらちらと橙色の火が灯る魔石炉の前のソファで、姫様を太腿に乗せて耳をお掃除して差し上げていた。

姫様が愛用していた耳かきで、耳の奥の細かな埃のような汚れを出来る限り優しくとっていき、時折匙の部分で耳介を押して軽い刺激を咥えていく。

頻繁に掃除しているので汚れはほぼ無いが耳は身体の中でも敏感な部位なので、こうして優しく触れていけば非常に気持ちがいいのだ。

 

姫様がいつの間にか寝息を立てているのに気が付き、耳掃除を辞めて私も一緒に昼寝を取らせて頂く事にした。

太腿に姫様の重さを感じながら背もたれに身を預けて、うとうとと微睡む。 耳に入るのは、換気口から時折響く風の音と、姫様と自分の息遣いだけ。

地下室で暮らし始めてから既に四か月程経過したが、この場所には地上に居た頃の忙しない日常とは真逆の緩やかな時間が流れている。

 

暫くそのままで眠りと覚醒の境を行き来していたが、やがて姫様が身じろぎをしたのを感じて瞼を開いた。

 

「ん……」

「ふぁ……、お目覚めですか、姫様」

「ええ……」

 

姫様はそれだけ短く答えた後、暫くそのまま黙り込んでいたが、やがてぽつりと呟いた。

 

「夢を見ていたの……、現実みたいな夢」

「へえ、どんな夢でしたか?」

「どんな、と聞かれると困るわね。 白い小さな花が一面に咲いた野原に立っていて、遠くに一軒だけ赤い屋根の家が見えたわ。 夢の私には手足があって……、歩いたり座り込んだりしている内に目が覚めたの」

「それは……、良い夢ですね」

 

話を聞く分には良くある夢のような気がしたが、姫様の声は目覚めたのを惜しむようだった。

現実の世界では手足を失って自由に動けない生活を送っている姫様にとって、ただの野原であっても自由に動ける夢と言うのは、私には想像できない程に楽しかったのだろう。

 

夢の話はそこで終わり、私は昼食の準備の為に姫様を抱き上げて台所へと移った。 調理場の近くには三か月程前に置いた腰くらいの高さの木製の台があり、その上に敷かれた布の上に姫様を横たえてから料理に取り掛かる。

 

食材の仕込みをしつつ姫様と雑談を交わすのも大分慣れてきて、今では話をしながらでも勝手に手が動く。

自分では本のページを捲る事も出来ない姫様にとって一人で居る時間は只管に退屈なものであり、この地下室に入った当初こそ私が一人になる時間もあったものの、今では殆ど常に一緒に居るようになっていた。

 

話の内容も初めの内は昔の思い出話が多かったが、四六時中会話していれば流石に話題も尽きていく。

今では最近読んだ本についての感想や、地下での生活について話す事が殆どになっていた。 そして地下生活について語り合う上で欠かせないのが、毎日のように没頭している性行為に関する話題であり……。

 

「今日のデザートは葡萄か……、ねえ、またアレやってみる? 葡萄ジャム作り」

「ええ……、止めておきましょうよ。 奥に葡萄が入ったまま取れなくて大変だったではですか。 ティースプーンで取ろうとしても、姫様全然じっとしていて頂けませんでしたし」

「あれは貴方のスプーン捌きが下手で奥をガリガリ引っ掻くからでしょう? 私の子宮には毎日世話になってるんだし、もっと大事にしてよね」

 

このように膣内で葡萄を潰してジャムを作るという、地上に居た頃なら正気を疑うような行為についても平然と語れるようになっている。

勿論、私の方からそんな冒涜的な真似を望む筈は無く、これはあくまで姫様の発案だ。

二人で外部からの目が無い環境に置かれ、許された娯楽は、読書か食事か性行為のみ。 読書は長時間読むと疲れるし、食事も食べられる量に限度があるとなると、一番の娯楽である性行為を深化させていく方向に進むのは当然の流れではあるのだろう。

 

肉樹の作用なのか、それとも姫様に元々淫乱の気があったのか……、思えば地上に居た頃も毎日のように性奉仕を行っていたし後者の気がするが、姫様の性欲はかなり強い。

 

性行為の主導権を握るのは基本的に姫様であり、私は姫様の日に日に過激になる提案に戸惑いながらも付いていくのがやっとだった。

と言うのも、地下で性交を重ねる内に明らかになってきたのだが、姫様には倒錯的な性的嗜好があり、その要求は私にとって演技の範疇だとしても抵抗感が強い事がしばしばあるのだ。

 

特に印象に残った行為を幾つか上げると……、まずは姫様の身体を器として料理を盛り、それを私が食べるという遊びをした。

先程話題に上がった膣で葡萄ジャムを作ったのもその一環で、お腹の上には肉のパテ、胸には乳首を取り囲むようにクリームチーズを盛り、口の中には果実酒を含んでから筒状の植物の茎を咥えて頂いた。

 

それから鳩尾の辺りに乗せたパンのスライスに膣のジャムやパテ、クリームチーズを付けて食べるという趣向だったのだが……、個人的には再びやるのは気乗りがしない。

パテやクリームチーズは肌に触れた事で温められて味を損なっていたし、膣内で作ったジャムは多量の愛液が混じってパンに塗ると糸を引いた。 そして口の中の果実酒も唾液と入り混じった上に生暖かくて、好んで飲みたい味ではない。

 

別に姫様の愛液や唾液を飲むのが嫌と言う訳ではなく、寧ろ進んで飲ませて頂きたいくらいなのだが、それはあくまで性行為の最中での話。

相手をどれ程愛していても、食事中に性的な事に触れると食欲が失せるのだと、その時に初めて知った。

でも姫様には満足して頂けたようなので、もう一度したいと言われれば従うのだが。

 

後は少しの間だけ、主従を一時的に逆転させてみた時も正直に言って辛かった。

お互いに演技だと分かっていての遊びだし、行為中の言動を少し乱暴にするくらいなら私としても問題ないのだが、姫様が希望した行為の内容の過激さが度を越していたのだ。

事前に演劇の脚本のように私の発言や行動について指定されていたのだが、それについて少し思い出してみよう。

 

 

始まりは私が姫様が寝ている寝室に入る所からで、その時は姫様はまだ眠りについている……、ふりをしている。

私は寝ている姫様に近づいてから服の裾を捲り上げて陰部を露出させ、平手打ちで思い切り陰唇を叩くのだ。

 

「ふぎゃあっ!」と悲鳴を上げて目を覚ます姫様に、「家畜の分際で勝手に寝てるな」と私が冷たく言い捨てる。

――最初の姫様の案では今の台詞は、家畜の部分が『臭いマンコしか取り得の無い豚』となっていたのだが、あまりにも不敬過ぎて、流石にそれは勘弁してくださいと頼み込んで修正してもらった。

 

それから、まるで道具で自慰をするように姫様を乱暴に犯しつつ罵倒していく。

罵倒の内容も先程の台詞に負けず劣らず酷く、罪悪感が湧き出してしまうので、あまり思い出したくないが、侮辱されている時でも姫様は肌を艶めかしく汗で濡らしながら悶えておられた。

 

私が達した後は、私の汁と姫様の愛液で濡れた肉棒を舌で清めさせて、奉仕の褒美をやると伝えて、固めに煮た米を深皿に入れたものを、地面にうつ伏せに横たえられた姫様の眼前に持っていく。

そして私が立ったまま米入りの皿に小水を出し、黄色い粥のような見た目になったそれを姫様が食していくのだ。

 

「ふぐぉ……、じゅるっ、ご、ごしゅひんさまのおしっこ、美味しいれすぅ」

 

と苦しそうに呟きながらも、姫様は股座から新しい粘液を流しておられたが、私はそれどころではない。

 

私にも全く加虐癖が無い訳では無く、姫様に奉仕をして頂いたり、行為中に姫様が悶えている姿を見ると昂りもするが、流石にあの行為で興奮は出来ない。

粥を食べている最中、私の裁量で時折頭を踏みつけて良いと言われていたのだが、私は小水粥を啜る姫様の前でやっぱり無理にでも止めるべきか、お腹を壊したらどうしようと心配しながら、おろおろするばかりだった。

 

しかし時折ついていけない事はあるものの、姫様との行為は私にとっても楽しいし、単調な地下室での暮らしの中で一番の娯楽といっても過言ではない。

それに私は姫様の下僕であり、優先すべきは姫様の快楽。 怪我の危険がある行為については反対もするが、基本的には姫様の希望は全て叶えて差し上げたいと思っている。

 

……ただ個人的な望みを言わせて頂くなら、排泄物に関する行為はこれ以上過激にならないで欲しい。

姫様の出す物なら小水までなら余裕で飲めるのだが、流石に大便は――、食らえというなら命を懸けるが、間違いなく苦痛ではあると断言できる。

幸いにして、姫様は大便に対しては普通に忌避感を持っておられるようなので、心配し過ぎだとは思うのだが。

 

 

その日の夜は特に変わった行為をする訳でもなく、私の上に姫様が身体の向きを反対にしてうつ伏せで寝て、他愛もないお喋りをしながらお互いの性器を舌で愛撫しあって過ごした。

この体勢では相手の性器に奉仕しながら、自分の性器を奉仕しあう事で意識が分散してしまい、絶頂まで上り詰めるのは難しいのだが、主人と溶け合っているかのような一体感が感じられる。

 

眼前には姫様の充血した陰唇や、その間の内臓の色をした粘膜が一面に広がり、その内にそれがまるで自分の一部であるように思えてくる。

舌に絡む愛液の粘り、コリコリとした陰核、鼻の奥に届く熟した柑橘のような匂い……、それらが陰茎に伝わる舌の感触と溶け合い、自分が一体誰に奉仕しているのかも曖昧になってきた。

 

どれくらいそうしていたのだろう、気が付けば私は首と舌が疲れて動きを止めてしまい、陰茎の刺激も途絶えていた。

寝る前に身体を洗うべきだという理性が僅かに働くが、性欲の熱に浮かされた頭は気怠く、筋肉の疲れもあって睡眠への誘惑が理性を上回る。 恐らく姫様も同じだったのだろう、そのまま私は姫様を上に乗せて眠りの世界へと旅立っていった。

 

 

 

白い小さな花が一面に咲いた真昼の草原。 見渡す限り山の影すらなく、遠く離れた場所に赤い屋根の家が一軒だけ建っている。

香しい花の芳香が花をくすぐり、私は軽くくしゃみをした。

 

ここは、どこだろう。 暫くそんな事を考えていた私は、やがて自分が姫様と地下室に居た事を思い出す。 と言う事は、ここは夢なのだろうか。 そう言えば、姫様がこんな光景の夢を見たと話していたような……。

夢だというのに、やけに明晰な思考が働く事に違和感を覚えるが、ここが現実である筈は無い。

 

「ブルネット?」

 

後ろから耳に慣れ親しんだ姫様の声が聞こえ、私は反射的に振り向いた。

 

「ああ、ブルネットッ!」

 

そこには地上に居た頃のように手足の揃った姫様が立っていて、私の顔を見るやいなや走り寄り、私をその両腕で強く抱きしめて下さった。

 

 

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