【R18版】貞操逆転世界のメンズエステで働くことになった 作:カラスあげます
ほの暗い間接照明のやわらかな光が、施術ルームの壁に淡い陰影を投げかけていた。
室内に漂うのは、リラックス効果を高めるために焚かれたラベンダーとベルガモットの混ざり合うアロマオイルの甘い香り。清潔なタオルをベッドの脇へ幾重にも積み上げていくコウの手つきは、表面上はいつも通りの洗練されたセラピストのそれであった。
しかし、その指先が触れる布地の冷たさを通して、彼の脳裏に渦巻いていたのは、およそ健全とは言い難い浅ましい欲望と、ここ数週間で劇的に変化してしまった自身の生活に対する歪んだ全能感であった。
あれから数週間――。
あの日の施術ルームで、あのお嬢様・コトネから受け取った「六万円」という多額の臨時収入。新札特有のパリッとした感触と、手の中にズシリと残った紙幣の重みは、コウの倫理観をあっけなく打ち砕いてしまった。
それまでの自分は、店舗のモラルを守り、規約の範囲内で真面目に客をもてなす、どこにでもいる健全なセラピストだったはずだ。しかし、一度裏オプションという「甘い毒」の味を占めてしまってからは、仕事に対する姿勢が良くも悪くも決定的に歪んでしまったことを、コウ自身も痛いほど自覚していた。
(……まあ、客が求めていて、お互いに得をするなら別にいいよな……)
心の中でそう自分に言い訳をしながら、オイルボトルをオイルウォーマーへとセットする。
日々の施術において、コウの手つきには意図的な“熱”と“焦らし”が混ざるようになっていた。ほの暗い密室、濃厚なアロマの香り、そして絶妙な力加減で皮膚の表面を撫で上げるフェザータッチ。そうしてじっくりと時間をかけて客を攻め立てていると、最初はマッサージ目的で来店していたはずの女性客たちも、次第に理性のタガが外れ、抑えが利かなくなってくるのだ。
甘い喘ぎ声を漏らし、ベッドのシーツを固く握りしめ、股間をくねらせながら性的な欲求を直接ぶつけてくる女性客たち。
以前のコウであれば、そこまでの状態に陥った客に対しては、あくまでサービスの一環、あるいはその場の空気を収めるための「お助け」として、手を使って無料でいかせてあげる程度にとどめていた。それだけでも客は大満足し、指名率は跳ね上がっていたからだ。
しかし、最近では話が変わってきた。
「お願い……お金なら払うから、もっと……っ」
「ねえ、お店には内緒で、私をもっと気持ちよくして……!」
そうやって、手による愛撫以上の過激な要求を、大金を払ってでもしてほしいと懇願してくる客が現れるようになったのだ。
本番行為まで踏み込むことに対しては、店長に見つかった際のリスクや、店舗のモラル的な一線を越えてしまう恐怖がまだ心のどこかに残っていたため、コウも踏みとどまっていた。しかし、それ以外の裏オプションの要求には、提示される金額と自らの欲望に流されるまま、次々と応じてしまっていたのだった。
ディープキスをしながらの手マン――+2,000円。
湿った唇と舌を絡ませ合い、相手の吐息をダイレクトに感じながら、指先でデリケートなスポットを深く抉るように掻き回す。それだけで客は白目を剥きそうになりながら首に抱きついてくる。
お互い全裸での添い寝――+5,000円。
オイルでヌルヌルと滑る互いの素肌を隙間なく密着させ、耳元で熱い吐息を吹きかけながら抱き合う。肌と肌が擦れ合う生々しい音と体温の共有は、客の理性を完全に溶かしてしまう。
さらにエスカレートした過激な要求になると、金額も跳ね上がった。
お尻を叩きながらの手マン&言葉責め――+10,000円。
「男性にお尻を叩かれて気持ちよくなるなんて、本当に恥ずかしい人ですね。」と低く囁きながら、パシン、、パシン、、と音を立てて柔らかな肉を叩き、指を激しく出し入れする。叩かれた痛みに歓喜の悲鳴を上げ、潮を吹き散らかす。
俺の乳首を舐めさせながらの逆(?)赤ちゃんプレイ――+2,0000円。
自分の胸の突起を赤ちゃんのようにチュウチュウと吸わせながら、手元では彼女たちの下半身をじっくりといじくり回す。母性と加虐心が入り混じった狂気的な表情でコウの乳首を貪る姿は、背徳感そのものだった。
(正直、俺自身も少し楽しみながらやってる部分は否定できないけど……でも、ここって表向きは健全なメンズエステ店なんだよな。みんな一体何を求めに来てんだよ……)
客たちの異常な執着と欲望の深さに、時折理解に苦しむような呆れや困惑を覚えることもあった。しかし、客から差し出される札束の厚みを見れば、そんな疑問はどうでもよくなった。
日々の稼ぎは、以前とは比べものにならないほど跳ね上がっていた。
以前は一日2万〜3万円程度だった日給が、裏オプションによる臨時収入を合わせることで、調子が良い日には一日で5万〜6万円、時にはそれ以上を稼げるようになっていたのだ。
夜、誰もいない自室で財布から万札を取り出し、指先でその厚みを確かめるたび、胸の奥にはむくむくと万能感が膨れ上がっていた。
しかし、そうして金銭的なゆとりと精神的な余裕が生まれるにつれ、コウ自身の抑え込んでいた性欲もまた、制御不能なほどに肥大化していった。
連日のように目の前で服を脱ぎ捨て、淫らな痴態を晒し、自分の手によって絶頂へと追い込まれていく女性たち。その甘い匂いや肌の感触、絶頂の瞬間に締め付けられる指先の感覚を浴び続け、股間は常に熱く脈打っていた。
最近では、施術が終わった後に猛烈なムラムラが押し寄せて抑えきれなくなり、次の客が来るまでのわずかな合間に自分自身でオナニーをして欲望を鎮める日が増えてきていた。
施術の中で、互いの顔の上に跨がる69の体勢を取り、相手に自分の肉棒を口で責めさせながら、自分も手で相手をいじり回すような機会もあった。だが、そうした場合、相手の女性は既に敏感な状態に出来上がっているため、自身が射精に至るより前に潮を吹いて絶頂し、力尽きてしまうのだ。
結果として、コウは常に生殺しの状態に置かれる。
自分の手によって股を大きく広げさせられ、顔を真っ赤にしてガクガクと身体を痙攣させながらイキ散らかしている女性客の姿を見下ろすたび、コウの頭の中には暗い衝動が渦巻いた。
(このまま、硬くなった俺のチンポをあいつらの濡れ果てた穴にブチ込んで、めちゃくちゃにしてしまいたい……)
その破壊的で歪んだ性衝動は、日を追うごとに強く、濃く、コウの理性を蝕んでいっていた。
(……でも待てよ。考えてみたら、俺、もう店長とも白石さんとも本番行為しちゃったんだよな……。だったら、常連のお客さんとこっそり本番しちゃっても、うまくやれば問題はないんじゃないか……?)
一度決壊しかけた倫理観は、留まることを知らなかった。常連客との本番行為という一線を越えるシミュレーションが、脳内で現実味を帯びて膨らんでいく。
そんな悶々とした淫らな妄想に耽っていた、まさにその時であった。
ピンポーン――。
静かな施術ルームに、玄関のチャイムが無機質な音を立てて響き渡った。
(あ、時間通りに来てくれたかな)
コウははっと我に返ると、額に浮き出た微かな汗を拭い、表情を営業用の爽やかなスマイルへと切り替えた。
ドアスコープを覗き込むと、そこには見覚えのある美しい女性の姿があった。
コトネさんだ。
そう、今日は先月、コウの手によって散々痴態を晒され、何度も絶頂させられた挙句、六万円という大金を残して去っていったあのお嬢様・コトネが、再び予約を入れてくれた日だったのだ。
あの日の施術は、コウにとっても強烈な体験だったため、記憶に鮮明に残っていた。コウの手にかかり、清楚な見た目をかなぐり捨ててベッドの上でよがり狂っていたコトネの姿は、あまりにも可憐で、そして男としての征服欲を激しく満たしてくれるものだった。
(コトネさん、2回目の来店か……。もし今日もあんな感じで甘えられたり、過激なことを求められたりしたら……いっそのこと、今日本番までやっちゃおうかな……)
そんな能天気で調子の良い妄想を抱きながら、コウはカチリと鍵を外し、ドアをゆっくりと押し開けた。
「いらっしゃいませ――」
出迎えの言葉を口にしながら視線を上げたコウは、息を呑んだ。
肩にかかるセミロングの艶やかな黒髪は、廊下の照明を受けてしっとりとした光沢を放っている。上品な淡いブルーのワンピースに、白の薄手カーディガンを羽織ったその姿は、相変わらず育ちの良さと洗練された品格を漂わせていた。すっと通った高い鼻筋、透き通るような白い肌、引き締まった細い首筋。
だが、何かが決定的に違っていた。
以前の施術で見せていたような、あのオドオドとして自信なげで、どこか怯えるような弱々しい雰囲気は、彼女の全身から綺麗さっぱりと消え去っていたのだ。
「こんばんは♪」
コトネは、余裕に満ちた華やかな微笑みをその美しい唇に浮かべ、鈴を転がすような透明感のある声で挨拶をした。
コウが呆然として返答を躊躇している隙に、彼女は俺の返答を待つまでもなく、洗練されたスムーズな足取りで滑り込むように室内へと入ってくる。高級な香水の甘く気品ある香りが、一瞬で玄関の空気を塗り替えた。
(……な、なんだ……? なんだこの雰囲気は……!?)
以前とのあまりのテンションの違いと、全身から醸し出される目に見えない圧倒的なオーラに面食らいながらも、コウは慌てて彼女を奥のカウンセリング席へと案内した。
「あ、どうぞ……こちらへお掛けください」
「ふふ、ありがとうございます♪」
コトネはスカートの裾を軽やかに整えると、ソファへ深々と腰掛け、足を美しく組み替えた。その一挙一動に隙がなく、まるで高級ホテルのスイートルームにでもいるかのような寛ぎぶりだった。
「あれから一週間ぶりですね♪ お元気でしたか、コウさん?」
コトネは小首を傾げ、澄んだ瞳でまっすぐにコウを見つめてきた。
「え、ええ、もちろんですよ! またこうしてご予約してくださり、本当にありがとうございます」
コウは必死に動揺を隠し、いつもの営業スマイルを作って答えた。しかし、彼女の視線に見つめられているだけで、なぜか背中に微かな汗が滲むのを感じていた。
「はい♪ 私は今日という日が本当に楽しみで……ずっとワクワクして過ごしていたんですよ。今日は、とっても楽しい日になりそうですよね♪」
コトネは両手を胸の前で軽く合わせ、ずっとにこにことした無邪気な笑みを浮かべている。だが、その完璧すぎる笑顔の奥には、どこか底知れない「何か」が潜んでいるような不気味さがあった。
コウは胸騒ぎを覚えつつも、なんとか気を取り直して本題に入ろうと会話を進めた。
「それで、本日のコースはいかがいたしましょうか? おすすめとしては、以前受けていただいた100分オプション付きのコース……2万5千円となりますが……」
「ああ、そうそう」
コトネは思い出したように小さく手を打つと、膝の上に置いていた高級ブランドのハンドバッグから、滑らかな革の長財布を取り出した。
彼女は探す素振りすら見せず、そこから厚みのある札束――一万円札の帯付きの束をサラッと抜き出すと、ガラスのテーブルの上に静かに置いたのだ。
パサッ、と軽い音が静かな室内に響いた。
「……とりあえず、これをどうぞ♪」
差し出されたのは、帯で束ねられた真っ新な新札の塊。ざっと見ても十万円はくだらないであろう圧倒的な金額だった。
「っ……!? こ、こんなお金がかかるコースなんて、うちの店にはありませんよ!?」
コウは思わずソファーから立ち上がりかけ、目を丸くしてテーブルの札束と彼女の顔を交互に見つめた。
「ええ、はい。存じ上げております」
コトネは全く動じた風もなく、にっこりと微笑んだまま平然と言い放った。
「以前にもお話ししましたよね? 今日は私がコウさんを施術してみたいんです。だから、これはそのための『特別オプション』という形でお支払いする対価です♪」
「―――っ!?」
その言葉を聞いた瞬間、コウの頭の中でカチリと音がした。
(なるほど……そういうことか……!)
コウは瞬時に事態を察した。つまり、これは彼女自身がコウに対して裏オプションを行使するための、破格の提示額ということだ。
最近、客からの裏オプション要求に慣れきっていたコウだったが、さすがにこれほど高額な提示は初めてだった。10数万円という大金をポンと出されて施術されるとなると、一体何をされるのか皆目見当もつかない。
(いくらなんでも高額すぎるだろ。まさか、SMみたいな痛いこととか、怪我するようなことされるんじゃ……?)
急激な不安が襲いかかり、コウは引きつった笑みを浮かべながら慎重に口を開いた。
「す、すみません……血が出るとか、あんまりハードなものとかは、ちょっと厳しいのですが……」
すると、コトネはきょとんと目を丸くし、それから可憐にクスリと笑った。
「いえいえ! そんな痛いことや危険なことは一切しないとお約束します! あくまでコウさんに気持ちよくなってもらいたいだけですので♪ ご安心くださいね」
「あ、そうなんですか……?」
彼女の澄んだ瞳と真に迫った言葉に、コウの緊張が少しだけほぐれた。
コトネの醸し出す底知れない雰囲気にそこはかとない違和感を感じつつも、目の前に出された10数万円の紙幣のズシリとした存在感はあまりにも魅力的だった。
それに、前回の施術からまだ一週間ほどしか経っていない。前回のうぶで可憐だった彼女の姿を思い返せば、いくら雰囲気が変わったとはいえ、いきなり凶暴化して拷問のようなハードなことをしてくるとは思えなかった。
(まあ……いくらテンションが変わってても、根はあの上品なお嬢様だしな。ちょっとSMっぽいごっこ遊びとか、俺を舐めたり手マンさせろって程度だろう。こんなにもらえるなら、めちゃくちゃ美味しい話じゃないか……!)
欲と楽観的な観測が、コウの危機感を打ち消した。
「わ、わかりました……お受けします。勤務時間的に、お時間は100分でもよろしければ……」
「はい♪ ありがとうございます。成立ですね」
コトネは満足そうに微笑み、手をパンと小さく叩いた。
「それではまず……」
彼女はソファーの背もたれにゆったりと身体を預け、脚を組み替えながら、冷徹なまでの美しさを湛えた瞳でコウを見つめた。
「ここで服を全部脱いでください」
「――っ」
うっ、と息が詰まった。
(まあ……全裸オプションもついてるって思えば、当然の流れか……)
破格の金額を提示されているのだ。服を脱ぐことくらいで躊躇していては話にならないと、コウは自分を納得させた。
コウは着ていた店のTシャツの裾を掴み、頭から脱ぎ捨てた。続いてズボンのベルトを外し、スラックスと下着のパンツを一緒に膝まで滑り込ませて、完全に脱ぎ捨てる。
照明の光の下に、コウの全裸が晒された。
コトネはソファーに腰掛けたまま、無言でじっとりとその光景を眺めていた。彼女の視線はまるで、極上の肉の品定めでもするかのように、コウの首筋から胸元、腹筋、そして股間へとゆっくりと這っていった。
その濃密すぎる視線に耐えかね、コウは思わず両手で自分の股間を固く覆い隠した。
「ぬ、脱ぎました……」
すると、コトネはクスリと可笑しそうに笑い、首を傾げた。
「なんで抑えているんですかー? 両手を頭の後ろに回してください」
彼女の声はどこまでも軽やかで余裕に満ちており、断ることを許さない絶対的な命令の響きを含んでいた。
(な、なんだこの人……。この前は経験が無くてうぶな感じだったのに、全然雰囲気が違うぞ……)
そのあまりのギャップに冷や汗をかきながらも、コウは指示に従うしかなかった。股間を隠していた手をゆっくりと離し、両手を頭の後ろで組む。
隠すもののなくなったコウの股間では、全裸を見られている羞恥と、コトネの圧倒的な存在感に対する興奮によって、肉棒がすでにうっすらと熱を帯び始めていた。
「ふふ……これがコウさんのおちんちんですか……。何だか可愛いですね♪」
コトネはソファーから立ち上がると、しなやかな足取りで近づき、コウの目の前でしゃがみ込んだ。至近距離から、コウの股間を食い入るように見つめてくる。
「うう……っ」
コウは思わず体を縮こまらせた。
仕事柄、自分の裸を見られることや、女性客と全裸で触れ合うことには慣れているはずだった。しかし、先日までは自分が余裕たっぷりに攻め立て、よがらせていたはずの立場が、今や完全に逆転してしまっている。その屈辱的とも言える状況が、コウの羞恥心と性的な興奮を猛烈に煽り立てていた。
「れろ……」
「うっ……!?」
突然、温かく湿った感触が金玉の裏側に走り、コウは跳ね上がるように腰を浮かせた。
コトネが突如として顔を寄せ、コウの袋をダイレクトに舌でひとなめしてきたのだ。
「ふふ……舐めちゃいました♪ 結構敏感なんですね」
コトネは上目遣いにコウを見上げ、満足そうに口唇を舐めた。そして、膝の上に置いていたハンドバッグへ再び手を伸ばすと、その中から一つのアイテムを取り出した。
「それでは、これを付けてください♪」
コトネが差し出してきたものをよく見ると、それは目元を完全に覆うタイプの、厚手の黒いアイマスクだった。
「アイマスク……? なぜ、こんなものを……?」
首をかしげるコウに、コトネはまるで新しいおもちゃを手に入れた子供のように、嬉しそうに解説を始めた。
「私、いろいろと勉強したんですよ♪ アイマスクをしたままスキンシップをすると、視覚が遮断されて、他の感覚がすごく敏感になって盛り上がるらしいんです」
(何をされるかわからない得体の知れない恐怖があるな……)
一瞬、背筋に冷たいものが走った。目隠しをされた状態で全裸で放置されるというのは、男としてあまりにも無防備であり、主導権を完全に握られることを意味していた。
しかし、すでに金銭を受け取り、服も脱いでしまっている以上、ここで後戻りはできない。それに、「視覚を遮断して感覚を敏感にする」という理屈には、セラピストとしても妙な納得感があった。
(まあ……変な真似はしないって約束してくれたしな……)
コウは意を決して腹を括り、渡されたアイマスクを受け取ると、頭から被って目元を完全に覆った。
視界が、瞬時に漆黒の闇へと染まる。
光が完全に遮断されたことで、周囲の音や空気の微細な動きが、一気に鮮明になって脳へと直接伝わってくるようになった。アロマの甘い香りがより強く感じられ、自分の激しい心臓の鼓動が耳の奥でドクドクと響く。
「つけたら、また頭に手を回してくださいね……。そうそう、とってもかわいいですよ♪」
耳元でコトネの声が聞こえ、コウは言われた通りに両手を頭の後ろで組み直した。
静寂が訪れた。
暗闇の中で、コトネが今どこにいて、何をしているのかが全く見当がつかない。カサリと衣類が擦れる音や、彼女の軽い足音が部屋のどこかで聞こえるだけだ。視界を奪われた全裸の状態で立たされているという事実は、時間が経つにつれて徐々にコウの心に不安を植え付けていった。
(何をしてるんだ……? 早く次の指示をしてくれ……)
じわじわと緊張が高まり、身体が強張りはじめたそのタイミングだった。
――カリッ。
「あうっ……!?」
突如として、右の乳首に鋭い刺激が走り、コウは情けない声を上げて身をよじらせた。
コトネの指先が、ノーマークだったコウの乳首を爪でカリッと弾き、ねじるように摘んだのだ。暗闇の中で突然襲ってきた刺激に、コウの身体は過剰なほど敏感に反応してしまった。
「ふふふ……効果は抜群のようですね♪」
頭上から、コトネの満足気な笑い声が降ってくる。
「それでは、私はシャワーを浴びてきますので、コウさんはベッドでうつ伏せに寝ておいてください」
「……わかりました」
コウは声を引きつらせながら返事をした。
足の裏の感触と記憶を頼りに手探りで歩を進め、施術用ベッドの位置を確認する。そして指示されるがまま、柔らかいマットレスの上へとうつ伏せに倒れ込んだ。
顔をベッドのクッションに埋め、暗闇の中で息を潜める。
パタン、と浴室のドアが閉まる音が遠くで聞こえ、続いてシャワーの爽快な水音が静かな部屋に響き始めた。
これから、シャワーを浴び終えたあの清楚で恐ろしいお嬢様によって、一体何が行われるのだろうか。
逃げ場のない不安と恐怖、そして、視覚を奪われた全裸の状態で触れられるという抗いがたい性的な期待と興奮――。
二つの相反する感情に全身を激しく苛まれながら、コウはベッドの上で固く目を閉じ、股間の熱い疼きを感じつつ、コトネが戻ってくるその瞬間をじっと待っていたのだった。
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「また読みたい」と思っていただけましたらお気に入りを、
面白かったと思っていただけましたら、下部より評価していただけると嬉しいです。
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