※この作品はR-18です。

因習ハンターのアルガくんは嫁探しばかりに精を出している。   作:山雅将暉

1 / 3
プロローグ 〜国家レベル×ノ×武力〜

 

 ザリッ、ザリッ・・・・・・。

 

 寒い。氷点下48℃の平均気温を誇るオチマ連邦の最北西端。生まれてこの方集落から出たことはないが、世界の広さは地図で知っている。集落の預言者とただ一度外界から訪れた超人(プロハンター)の存在によって、否が応でも狭い世界に俺たちが閉じ込められていることを実感した。

 

 ザリッ、ザリッ・・・・・・。

 

 そうして世界の広さを刷り込まれ、外界への憧れという感情を植え付けておきながら集落は、海の先へ行くことは決して許さなかった。いや、俺たち自身も許さなかった。狭い領海でチマチマ魚やカニを取るとバカみてえに集落に戻ってくる。

 

 ザリッ、ザリッ・・・・・・。

 

 集落の人間が外界へ至るためにはルガヴォ山脈を越えた戦士でなければ許されない。標高9142m。年に一度起こされる集落のしきたり。五人の戦士・・・・・・変化系の念能力者が青い杖のみを持って山脈を越えてはじめて真の戦士が誕生する。しかし、集落がその存在を知ることはない。戦士の絶大な力のためにそういう制約を組んでいる。

 

 ザリッ、ザリッ・・・・・・ザクッ。

 

 一律に整っていた足音に一つの不協和音。誰かの足がふらついたな。・・・・・・あぁ、ダメだ。考えるな。無心で足を動かせ。

 

 ザクッ、ザリッ、ザリ———ザクッ。

 

 いや、考えろ。考えて気を紛らわせろ。あの超人(プロハンター)の名前はなんだったか?

 

『アルガ・・・・・・この集落、つまんなくねえか?』

 

 そうだ。俺はアイツのせいで贅沢の使い道を間違えた。山脈を登る戦士にのみ許された最期の贅沢。鹿の肉もマグロもタラバガニも腹が破裂するほどに食べれるうえに、好きな女を抱ける最期のひととき。

 

『世界は広えぞ! 俺もまだまだ知らねえことだらけだ』

 

 なんで俺は昨日、いつも飲めるスープだけを嗜むように飲んだ? なんで俺は巨乳のスヒリヤではなく、貧乳のトマを抱いた? 俺の趣味じゃねえだろ。

 

「バカ言え。山を越えた戦士を見た者は居ないんだぞ」憧れを覆い隠すように放った一言。それをソイツは笑い飛ばすように言った。

 

『そうか? 俺は登れたぞ。案外簡単だったぜ。おまえあれ登れなきゃ俺以下な』

 

 ザリ———ザクッ、ザリッ!

 

 そうだ。ぶん殴ってやるジン=フリークス! テメェのせいで俺は享受するはずだった全てを捨て、満ち足りることなく外界への憧れを燃やし続けた。

 

「ア・・・・・・ルガ」

 

 それとおまえは言ったな。集落のしきたりを因習だと! 俺たちが代々受け継いできたしきたりをテメェは因習と定義しやがった! 許さねえ。たとえはじめての外界の友人だとしてもテメェのあの一言だけは許さねえ! 俺の期待以上に広い世界を教えてくれたことには感謝している。だが、あの瞬間・・・・・・テメェは俺たちの心を裏切った!

 

「し・・・とう・・・を」

 

「っ!!」

 

 その一言によって俺は現実に引き戻された。共に歩いていたセミュが死闘を口にしたからだ。

 

「いいんだな?」

 

 振り返ってわかった。コイツはもう限界だ。ギザったらしい金髪が見る影もなく白んでいるのもそうだが、覚束ない足を咎めるように叩いている。どうにか体勢を真っ直ぐに整えたセミュは杖を両手に掴んで正眼に構えた。

 

「あぁ・・・最期に・・・・・・君に黒星をつけたい」

 

 俺はベルトループに引っ掛けた三本の杖を地面に刺して、右手に持っていた自前の杖に『周』を施した。構えはなく、杖の先を下に向けて余計な力を抜いていく。

 

「我が名・・・は、セミュ=フロスト・・・・・・ディヤ集落・・・序列二位の戦士」

「我が名はアルガ=フロスト。ディヤ集落序列一位の戦士」

 

 不条理。いつもそう感じてしまう。碌に武芸を嗜んでいない俺に反して、コイツの構えはいつも綺麗だ。

 

 ダッ!

 

「がぁぁィィィ!!」

 

 だから読み易い。

 

 バキッと骨の砕ける音がした。セミュが正眼に構えて中段を横一文字に切り裂く前に、俺が振り上げた杖はセミュの両手をへし折り、綺麗すぎる軌道を描くはずだった斬撃は俺の頭上を通り過ぎるほどに乱れた。

 

 セミュの纏っていたオーラが右足に集中する。

 

「あ”あ”ッ!!」

 

 あまりにも速い中段蹴り。

 

 ドガッ!

 

 左脇腹を『凝』で保護しつつ受ける。そのあとは緩やかに『堅』へ移行し、左腕と左脇腹で絞めて掴んだ右足をまたへし折る。

 

「お”ぎッ!? う”るぁあ”あ”あ!!」

 

 指が変な方向に曲がったセミュの左拳が『硬』を纏って突き出されたその瞬間、勝負は決まった。

 

 ズスッ!

 

 少し仰け反った俺は杖を逆手に持ち替え、『周』を纏ったそれをセミュのオーラ一つない左腕に突き刺し、その勢いのまま右肩まで深く食い込むほどに貫いた。

 

「ぐぁぁああ!! 最期まで! 最ッ期まで! 君に! 勝てないのか!」

 

 杖を落とし、膝をついたセミュ。決闘ならばすでに勝敗は決する段階。しかし、これは死闘。生存者は一人の戦士しか許されない。これもまた“しきたり”。

 

 セミュの落とした杖を拾い、彼の頭部を狙って杖を振りかぶった。

 

「じゃあな・・・セミュ」

 

 激情に身を震わせていたセミュは俺を見上げると全てがどうでも良くなったかのような渇いた笑みを浮かべた。

 

「・・・・・・お先。さすがに疲れたよ」

 

 ドシュッ!

 

 抵抗は無かった。セミュは最期、完全『絶』状態で俺の杖を受けたのだ。最早戦士として奮い立つ意志も無かった。俺に好敵手はいないが、それに一番近かったセミュが死んでしまった。

 

 倒れた遺体は吹雪が弔ってくれる。彼の魂はヴァルハラに運ばれるだろう。そして俺は“しきたり”として、彼の杖を受け継ぐ。彼に刺さった自前の杖も、死闘直前に地面に刺した三本の杖も例外なく、俺が持っていく。

 

「俺が殺した戦士四名の価値は必ず証明する」

 

 そのために山脈を越えなければ。もう現実逃避はしない。俺の目を覚まさせてくれる誰かは・・・・・・たった今を持って全員死んだ。

 

「ジン・・・・・・確かに、これは因習かもしれんな」

 

————

 

 その大陸内でオチマ連邦に統合されていない国は現在二つ。一つは南方ゴモルン共和国。もう一つはヤヒス帝国、軍事関係に厚いオチマが煙たがらずを得ないほどの侵略国家だ。

 

————

 

「いや”ぁアアア!!」

 

 外界に出てアルガがはじめて見たのは因習だった。犯される女、5mあまりの巨大な機械に踏みつけにされる男、泣いている赤子も、老婆も、例外なく気分で殺される現実。

 

「男は殺せェ! 女は犯せェ!」

 

 絵に描いたような侵略者。少し違うのはソイツらは圧倒的な武力を操っていた。巨大な機械に乗り、空を駆け、あまりにも巨大な弾丸を放ち、やることは物語に出てくる盗賊と何一つ変わらない陳腐で、愚鈍な人類。最強の兵器を纏った機体は人の醜悪な意志を完遂せんと空を駆る。

 

「ひゃあはははッ!! 死ね! オチマの犬ど———ごぺっ!?」

 

(ダメだ。もしコイツらが集落を襲えば、『発』を持つことを許されない集落の戦士たちはおそらく負けるだろう)

 

 しかし、ここに例外がいた。鉄の何倍も誇る兵器に『周』を纏った杖の投擲で機体とその搭乗者を瞬く間にぶっ殺した。そして、周囲の蹂躙と陵辱に励んでいる兵士たちの態度がアルガの認識を決定付けた。

 

(コイツらにはなんの信念も美学もない。ただ侵略を好む猿だ)

 

「な、なんだテメェ!? ぶっ殺すぞ!!」

 

 蹂躙以外あり得ない兵力が一機とはいえ、容易に破壊された。その事実に周囲の機体から降りて陵辱に勤しんでいた兵士たちが慌てて機体に乗り込んだ。

 

(ちょうどいい。オーラを変化させるコツはすでに掴んだ。なによりルガヴォ山脈を越えてからオーラの絶対量も遥かに増えている。全開とは言えなくとも、今の俺の『円』は半径35mを満遍なく覆える)

 

 

 最期の言葉はそれでいいんだな?

 

 

「ひっ! う、撃て。撃てェェェェ!!」

 

 振り絞った声も、大気を引き裂く弾丸も、全ては水分とともに停止する。機体が宿した熱も瞬く間に極低温へと至る。

 

 永世氷塊(ニヴルヘイム)

 

 超低温は静止の世界。アルガを中心とした半径35mの侵略者は、触れた『円』のオーラが極低温の氷に変化し、それに覆われて静止する。

 

 グラァと軽い目眩が訪れた。

 

「!」

 

(さすがに『円』と『発』の併用はオーラの消費量が尋常じゃないな。今のコンディションじゃ、あと2回が限界。これからこのクソ野郎共全員を相手にできる程度にオーラを節約するには・・・・・・奴等の腰に取り付けられたあの兵器が必要だ)

 

 アルガには知る由もないが、それは銃と呼ばれるもの。変化系のアルガにとってオーラを飛ばす放出系との相性は決して良いとは言えない。だからその構造だけを真似る。

 

 パキパキ!

 

 あまりにも繊細な氷結によって、氷が拳銃の形を為した。弾丸もまた氷、弾丸を撃ち出す推進力は火力の代わりにオーラを・・・・・・と考えて。

 

(燃費が悪い)

 

 パリンッ。

 

 それをやめた。

 

「よくも同士をォッ!」

 

 機体が長大な剣を振りかぶってアルガに迫る。振り下ろされるそれに対して、アルガは青い杖を軌道上に割り込ませた。

 

(それ)は俺に合わねえな」

 

 バカめと機体に籠る凡夫はしたり顔で吠えた。

 

 ガキン!

 

「へ?」

 

 虚飾に塗れた自信が打ち砕かれる。鉄をバターのように切り裂ける剣はたかが杖の一つに受け止められた。

 

 パキパキ!

 

 それはオーラによって生成されたものではあるがオーラはない。セミュの杖に覆われた氷には一切のオーラが宿されておらず、すなわち純粋な氷の硬度とアルガの膂力によって・・・・・・。

 

「オワァッ!?」

 

 ・・・・・・剣は押し返された。

 

「こっちの方がしっくりくる」

 

 パキピキパキン!

 

 杖への氷結が進行していき、形はアルガの望むままの武器に整えられていく。掴んでいる杖は十字型の柄となり、一方の先は鋭利に研ぎ澄まされ、剣となる。

 

 ヒュン。

 

 同時にベルトループに引っ掛けていた三本の杖がアルガのオーラに包まれると、姿を消した。

 

「“戦士魂杖(エインヘリヤル)”」

 

 具現化系の『発』。宿す効果はオーラの貯蓄とモース硬度10の数倍の硬度を誇る氷を武器の形に生成する能力。アルガの『周』を纏わせた“戦士魂杖”の硬度はさらに跳ね上がる。

 

「は・・・ぁ・・・・・・」

 

 しかし、剣が発するオーラを感じ取れずとも、戦場で殺気を嫌というほど向けられていた兵士はその圧迫感から湧いてしまった臆病な心を示すように機体が一歩、二歩と後退をはじめた。

 

「く、来るなァ!! 我を殺せば我が国が誇る撃墜王ガッ———!?」

 

 恐怖に塗り替えられた安っぽい復讐心が彼の命運を絶った。

 

 ズシュァァァッ!!

 

「・・・・・・これから潰す集落の名前、聞いとくんだった」

 

 無造作に伸びた白髪の隙間から淀んだ碧眼が覗いていた。

 

———

 

 ヤヒス帝国が瞬く間に伸ばした勢力図の裏には、7年前に発掘された古代兵器の存在があった。5mあまりの機体は乗組員に操作系の『発』を強制的に覚醒させる。

 

 “機動戦士(ガンダム)

 

 逆に『発』を身につけることができず、強制的に覚醒された自らのオーラに呑まれ、死亡した搭乗者も数多くいた。そのため、数の有利を捨てざるを得なかったヤヒス帝国はオチマ連邦の軍事的圧力にいつも悩まされていた。そうしてヤヒス帝国はとうとう、磐石な戦力とオチマへの対抗を両立するために人間の繁殖力と兵器の性能を活かした大胆な侵略作戦に踏み切った。

 

 その第五陣目が2日前壊滅した。チャーべ司令長官はこの一件を危惧した。元より周辺区域の早期壊滅と略奪が作戦の根幹にある以上、撃退される時点で論外。

 

「ナムロ=サルムナ」

「はっ!」

 

 ゆえに、現時点で出せる最高戦力を侵略に起用することを決めた。

 

 “機動戦士”とともに具現化系の発も高いレベルで修めているヤヒス帝国最優の撃墜王。二年前古代兵器が見つかって以来、オチマ連邦の侵略を幾度もなく防いできた兵士である。

 

「知っての通り、クーベラル州に向かわせたシラベスの実行部隊が壊滅した。原因はたった一人の念能力者であることは映像で確認できている」

「では敵の弱点も?」

 

 ナムロと呼ばれた好青年の問いにチューベは頷く。

 

「対象は白髪碧眼の青年。鹿の皮を使った民族衣装を身に纏っているが、共通点がありすぎたことが災いし、却ってどこの民族かは判別がつかない。おそらくゴモルン共和国の北方民族だと推測できるが、確証は得られない」

「故郷を潰すのは無理・・・・・・ですか」

 

 現在の侵略作戦は名目上、例年通り行われたオチマ連邦からの侵攻を反撃しているという体の過剰防衛だ。

 

「だが敵の能力はわかった。一つは半径約30mの『円』に侵入した者を即座に冷却させる能力。もう一つは青い杖を武器状に氷結させる能力。どちらも氷雪系の能力者だ」

 

 氷雪。と呟いてナムロは考える。

 

「オーラを冷気に変化する変化系か、冷気そのものを操る操作系。『円』を展開して能力を発動させている以上、おそらく前者。ならば十中八九オチマの念能力者でしょう」

「・・・・・・根拠を聞いてもいいかね?」

 

 若き撃墜王に生まれた所感。それがゆっくりと口にされる。

 

「オチマは年中寒冷に見舞われる国です。そしてオーラを変化させるには、変化させる物質に慣れ親しんでいなければなりません」

「ふむ、冷気に慣れ親しんだオチマだからこそ生まれた念能力者というわけか」

 

 話が早いと微笑んだナムロはストレスのない会話に満足しながら得意げに頷いた。

 

「そのとお———

 

 ビィーッ! ビィーッ! ビィーッ!

 

 しかし、ナムロの同意が終わる前に最高司令室に緊急事態警報が鳴り響いた。チューベはすぐさま電話を繋ぎ、管制塔から情報を得る。

 

「なにがあった!?」

「チューベ司令長官! アイツだ! アイツが来た! シラベス隊を殺った白い悪魔が———ァッ!?」

 

 プーッ、プーッ。

 

 連絡が途絶えた。

 

「バカな・・・まだ2日しか経ってねえだろ!?」

 

 引き出しから取り出した地図を机に広げ、クーベラル州からここまでの距離をすぐさま算出。・・・・・・131km。

 

「車もまともに扱えない豪雪地帯を“機動戦士”無しで・・・・・・」

「常軌を逸した身体能力も備わっているということでしょう」

 

 頬に冷や汗を浮かべたチューベ司令長官はすぐさまナムロに任務を言い渡す。

 

「ナムロ=サルムナ。これより速やかに白い悪魔を撃退せよ」

「はっ!」

 

 動揺はない。ヤヒス帝国が誇る撃墜王としてナムロ=サルムナは直面した厄災さえも振り払う所存。

 

「なお、君が失敗したときは防衛作戦Cに移行する」

 

 そしてそれはチューベ司令長官もまた同じ覚悟。数分後、アルガは目の当たりにする。しきたりでも、因習でもない。国を背負った決意の重さを。

 

———

 

 機体の通信機に叫び声のような警告が為される。

 

「いいか! 30mだ! 奴の半径30m外から弾薬が空になるまで撃って撃って撃ちまくれェ!」

「「「はッ!!」」」

 

 鳴り響く轟音。各々が継続的に奏でる銃撃音は同様の全てが一体となって一つの音となっている。しかし、それらの爽快な音を奏でる弾丸と火薬は次の瞬間、キンッと耳障りな不協和音に変わり、未だアルガが展開する氷の盾を破れていないことを嫌でも実感させられた。

 

(妙だな。てっきり向こうの預言者に能力を悟られたのかと思ったが、俺の能力を知ってるにしては間合いの開け方がアバウトすぎる。半径35mの『円』が今出せる俺の最高出力。対して奴らはおそらく俺の“永世氷塊”を知っていながら、間合いを半径32・・・・・・いや30mに誤認している節がある)

 

 キンッ、キンッと銃弾を氷壁で弾いているうちにアルガはジン=フリークスから見せてもらった数多くの写真を思い出していた。

 

「なるほど、画像で知ったのか。どこから撮られたのかは知らんが、一瞬の景色しか見れていなかったんなら、このアバウトな対応にも納得がいく」

 

 正確には映像である。ヤヒスにも腕利きの念能力者は勿論いる。しかし、アルガの発した『円』の展開速度はあまりにも速く、情報部がその間合いを誤認するほどだった。しかもアルガの『円』は一度展開したあと“永世氷塊(ニヴルヘイム)”へオーラを変化させるたびに広さが狭まっていくため、結果的にヤヒスの情報部を欺くに至った。

 

「なら、その5m分の間合いは一番手強い奴に会うまでとっておく」

 

 “戦士魂杖(エインヘリヤル)”! 『周』!

 

 上空に投げ込まれた深い青の杖が貯蓄したオーラを糧にアルガの望むままの形に氷結。あっという間に巨大な槌に研磨され、機体に乗るヤヒス兵士の頭上を影が覆った。

 

「た、退避ィ! 退避———」

 

 バキッ、グシャッとその後に大きな衝撃波が周囲12mを吹き飛ばした。槌の表面は半径40mはあっただろう。鶴の陣形で囲んでいたヤヒス兵士の左翼はものの見事に壊滅。

 

「ひ、広がれ! 一箇所に固まるんじゃあな———!」

 

 ズバッ!

 

 そして撃ち漏らした機体はもう一つの“戦士魂杖(エインヘリヤル)”を剣の形に整え、孤立した機体からアルガ本人が切り裂いてゆく。

 

「耐えろ! 撃墜王が到着するまでたえ———!」

「無理だ! もう撤退し———!」

「お、お母ちゃあ”あ”———!」

 

 その全ての声は機体の外には届かない。古代兵器“機動戦士(ガンダム)”はその防音性もまた一流。外の者が声を聞く術は通信機以外に存在しない。

 

「あ、ぁ———」

 

 3分。ヤヒス帝国に不法入国を果たした厄災は、“機動戦士(ガンダム)”を操るヤヒス兵の一個師団を壊滅せしめた。

 

「オーラの節約にも大分慣れてきた。この集落もあと少しで潰せるな」

 

 そして、厄災の攻撃力はなお顕在。これを止められる存在は・・・・・・。

 

 

   「ナムロ! いっきまァァすッ!!」

 

 

 ・・・・・・ヤヒスの撃墜王ただ一人。

 

 “グレートバスター”!!

 

「っ!!」

 

 突如、アルガの上空を覆っていた雪雲が裂けた。裂いたのは光の弾丸。眩い輝きを放つそれを視認した瞬間、アルガはすぐさま全ての“戦士魂杖”(エインヘリヤル)を上へ投げたのち、盾の形に整えた。モース硬度10の数倍の硬度が光の弾丸を防ぐ。

 

 ジュゥゥゥッ!

 

「なッ!?」

 

 はずだった。それは光そのものだった。圧倒的熱量に重ねた盾がものの数秒で溶けてゆく。

 

 ダッ!

 

 アルガは戦闘開始から2日目にしてはじめて回避行動をとった。

 

 ジュゥゥゥッ!

 

 そしてそれは正しかった。氷盾を貫いてなおレーザーはあまりある熱量を有し、アルガが立っていた地面を溶かしてしまった。

 

「冗談だろ・・・・・・あの高度からこの火力」

 

 アルガはヤヒスの撃墜王を見上げる。その機体はこれまで相手にしていた量産品とまるで違っていた。これまで相手にしていたのが、現代人の限界とするならば、あれは人類の到達点。とても古代に生み出されたとは思えない圧倒的な性能。そして、ナムロ=サルムナは古代兵器のオリジナルを操ることが許された、ただ一人の兵士である。

 

「国賊よ、話をしよう」

「!」

 

 機体の拡声器によってアルガははじめて搭乗者の声を聞いた。

 

「話?」

「そうだ。我らヤヒス帝国は多大な損害を被った。量産型とはいえ“機動戦士(ガンダム)”の搭乗兵・・・・・・その一個師団が壊滅状態にある。この損失は10年も経たなければ賄えないだろう」

 

 アルガは聞きつつも、地面に“戦士魂杖(エインヘリヤル)”を突き刺した。そして勝つために計二つの制約を組んだ。

 

「名を言え。国賊」

「アルガ=フロスト」

「ふむ、聞き覚えのない姓だ」

 

 一つ、“戦士魂杖”の運用は武器の生成に限られる代わりにオーラの消費効率が抜群になる。二つ、“戦士魂杖”が武器の形を作れるのは一度の具現化につき一度までとする代わり、生成速度を極限まで高める。

 

「私の名はナムロ。アルガよ、我らヤヒスの軍門に下れ。今回の損失は貴様の軍事的奉仕によって賄える。無論、悪いようにはしない」

 

 ピクッ、と淀みない動きで準備をしていたアルガの動きが止まった。依然上空に浮かぶ機体を見上げてアルガは問う。

 

「へえ? じゃあ今やってる胸糞悪い侵略行為をやめさせてくれるのか?」

 

 ガチッと“機動戦士”の拳が力強く握られた。

 

「話がわかっていないようだな。貴様が今回起こした数多くの国家犯罪を軍事的奉仕によって免除してやるという取引だ」

「論外」

 

 アルガは鼻で笑った。

 

「お前らの侵略対象に俺の集落が含まれる可能性がある時点で、この取引は破綻してんだよ」

「そうか」

 

 ナムロもまた揺るぎないオーラを機体全体に覆い、レーザー砲を構えて戦闘の意志を露わにする。

 

「最後に聞く。貴様・・・・・・巨乳派か? それともひんにゅ———」

「———巨乳一択に決まってんだろ。頭沸いてんのか?」

 

 ナムロの中のなにかがキレた。

 

「物が多ければ食らいつく品性の欠片もない母性の犬の分際で吠えるな巨乳派め!」

「ならテメェは慎ましい夢を抱いて死んでいけ貧乳派ァ!」

 

———

 

 チャゥゥゥゥッ・・・・・・!

 

 “グレートバスター”!

 

 喧しいチャージの音が終わるとまたもや機体の左手からレーザー光線が放たれる。対してアルガは着弾地点を正確に見抜き、足元に突き刺した“戦士魂杖”から巨大な槌を生成し、地面から盛り上がるように浮き出た氷塊が、アルガをレーザーから逃しつつ、上空まで運んでゆく。

 

(85・・・・・・60・・・・・・45・・・・・・まだ遠い!)

 

 近づいてはいるがまだまだ距離がある。その現状を鑑みてアルガは“戦士魂杖”をさらに一本具現化し、未だ氷結を止めない槌へと突き刺した。

 

「逃がさん!」

 

 上空では機体の右手をアルガに向けて、掌の中心にある数々の筒が高速回転を開始していた。

 

「“グレートガトリング”!」

 

 放たれる弾丸の雨。それはたった今突き刺した“戦士魂杖”を巨大な盾の形にすることで全てを防ぎ切った。

 

「これでは火力不足か!」

 

 ナムロは搭乗室で戦慄していた。

 

 “機動戦士”は兵器と搭乗者の『相互協力(ジョイント)型』の念能力。“グレートガトリング”が生み出す火力は対戦車バズーカの絨毯爆撃と遜色ないものだ。これをたった一人の念能力で防げる人間が存在するとはナムロも予想していなかった。

 

「ククッ、撃墜王を舐めるなよ。やりようは幾らでもある」

 

 チュゥゥゥゥッ・・・・・・!

 

 また喧しいチャージ音がはじまった。しかし、機体のレーザー砲の向きがおかしい。明らかにアルガを狙っていない。その斜角はアルガより遥か下・・・・・・槌を生成した“戦士魂杖”に向けられていた。

 

「あいつッ!」

 

 アルガは駆け出した。三本目の“戦士魂杖”を氷盾に突き刺し、そこから伸びる剣が盾を貫き、ナムロへの道を作った。アルガはフラーの上を駆け、ナムロに接近してゆく。

 

(40、37、36)

 

 “グレートバスター”!

 

「チィッ!」

 

 レーザー光線が槌を生成する“戦士魂杖”を焼き尽くした。核を失った槌型の氷があっという間に崩れてゆく。これではナムロの機体は『円』の範囲に入らない。

 

 ヒュン!

 

 それを察したアルガが四本目の“戦士魂杖”を機体に投げた。

 

 カァンッ!

 

 そして、アルガの企みを看破したナムロは、機体の右腕に突き刺さる直前にオーラで防御力を上げて、“戦士魂杖”を弾いた。

 

(参ったな。このサイズの攻防力移動を難なくこなしてやがる。貧乳派なのは気に入らねえが、ナムロは半端ねえ)

 

 アルガの身体が落下をはじめた。

 

 『隠』

 

「ッ!?」

 

 同時に、ナムロの機体が完全に消えた。アルガの中にあった甘い想定は、あの機体は具現化したものではないということ。無意識のうちに操作系と断じてしまう凄みがあの機体にはあった。

 

 ナムロはその甘い想定で生まれた油断を容赦なく突いた。本物の“機動戦士”に搭乗し、3ヶ月の時間を掛けて、オリジナルと同等のパフォーマンスを誇る機体を具現化。つまり、あの機体は『隠』で姿を消せる。

 

 『円』!

 

 やむを得ずアルガは『円』を展開。35mの感知範囲を維持し、接近してこようものなら反撃できる体勢を整えた。

 

「“グレートガトリング”!」

 

 が、ナムロもまた戦闘巧者。『円』の範囲外から弾丸の雨を繰り出し、無防備に落下してゆくアルガを攻撃した。

 

「“永世氷塊(ニヴルヘイム)”」

 

 弾丸は止まった。超低温は静止の世界。ありとあらゆる火力はアルガ自身に炸裂する前に停止する。しかし、アルガの残存オーラではもう“永世氷塊”は使えない。

 

 チュゥゥゥゥッ!

 

 レーザー砲のチャージ音がアルガの鼓膜を叩いた。

 

「詰みだ」

 

 左手がアルガを翳す。発射まで2秒もない。そんななか、アルガもまたあるものへ右手を翳していた。“機動戦士”の頭上を素早く回転しながら舞う青い杖に。

 

「象れ。“戦士魂杖(エインヘリヤル)”!」

 

 回転する杖がコンマ1秒単位で巨大な戦斧を生成。

 

 ズバッ!!

 

「なん・・・だと!?」

 

 回転する推進力そのままに機体の左腕を切り裂いた。神の悪戯か、宙を舞った左手の先はナムロが乗る“機動戦士”を翳していた。

 

 

 “グレートバスター”!!

 

 

 圧倒的熱量が“機動戦士”とナムロを焼いた。

 

———

 

 ナムロ=サルムナの殉職。栄えある撃墜王の戦死を司令室に座して待っていたチューベ司令長官は悼んだ。

 

 ドガッ!

 

 追悼は3分間に及ばなかっただろう。蹴破られたドアが眼前に迫ったチューベ司令長官はそれを軽く仰け反るだけで躱した。

 

「邪魔するぞ」

「・・・・・・よく来たな。紅茶でも飲むかね?」

 

 執務机に座した司令長官。『円』無しで“永世氷塊”を広げれば今頃国全体を凍結させることだって可能だったアルガ。しかし、彼はこの侵略作戦に踏み切った人物にどうしても聞きたいことがあった。

 

 カチャ。

 

 “戦士魂杖”が象った剣がチューベ司令長官の首に触れる。

 

「聞きたいことは二つだけだ」

「そうか。なにを聞きたい?」

 

 彼の頬に冷や汗はもう流れていない。あるがままを受け入れる姿勢を見せている。

 

「なぜ侵略作戦を進めた?」

「オチマ連邦への対抗だよ。あの国は国土もさることながら、“貧者の薔薇”(ミニチュアローズ)という悪魔兵器の保有量と使用量が最も多い。国際条約は新規生産こそ禁止したが、すでに持っている薔薇についてはなにも触れなかった」

 

 チューベ司令長官は葉巻を取り出した。カチンと先を切り取り、火を点けるとそれを深く吸い込んで、煙を吐き出した。

 

 パキパキッ。

 

 漂う煙がアルガに到達しかけた瞬間、アルガはそれを凍結させ、一切近づかせなかった。

 

「聞きたいことが一つ増えた。その煙は?」

「毒さ。本来嗜好品として煙を嗜むための葉巻に強力な毒を塗った。毒は煙となってこの空間に浸透していく。さっさと帰った方が身のためだぞ?」

 

 ズバッ!

 

 建物が一太刀の元に切り裂かれた。壁の半ばから天井は宙を舞い、落下してくる建物にアルガがもう一太刀、縦に引き裂いて天まで大きく吹き抜ける独特な建築構造へと到達した。

 

「これで風通しが良くなった」

「いやはや、念能力者とはおそろしい」

 

 再び、氷剣がチューベ司令長官の首に添えられる。

 

「最後の質問だ。なぜ女を家畜同然に扱う。“あの胸糞悪い牧場”はなんだ?」

「人手を増やすための男尊女卑さ。“機動戦士”の搭乗には条件があってね、男しか乗れないんだ。仮に乗れたとしても念能力に適応できなければ死んでしまう。だから女性の立場を極限まで落とし、男を増やしやすくする因習が生まれたのさ」

 

 ピクッとアルガは眉を動かした。

 

「おまえはあれを因習と呼ぶのか? 実行している集落の人間のおまえが」

「見てわかっただろう。あれが因習以外のなんだと言うんだッ!!」

 

 葉巻を握り潰し、執務机を叩き立ち上がったチューベ司令長官は顔を真っ赤に激昂しながら叫ぶ。

 

「たとえ国の出身者だとしても、納得できる人としての扱いは最低限守るべきだった! オチマにいくらせっつかれようとも人口を蓄え続ければ我々の勝ちは揺るがぬはずだった! それがどうだ? 上の人間たちはオチマが新たな“機動戦士”を掘り出すかもしれんと恐れ、“機動戦士”部隊の運用が可能になったときを境に大胆な侵略作戦を極秘裏に何度も押し進めた!」

 

 ゲホッ、ゲホッと力強い咳が鳴り響き、喀血した血が執務机を汚す。

 

「ハァ、ハァッ・・・・・・ッ、虐げられる女性の中には私の妻だっていた!」

「妻?」

「私がただ一人愛すると誓った女性のことだ!! 彼女が・・・・・・彼女さえ納得してなければ、私は・・・・・・私はこの国と戦う覚悟だってあった!」

 

 さらに強い咳が執務机を汚す。

 

「だが彼女は、受け入れてしまったんだ。この因習を。だから私はせめて彼女が感じる無念の分だけオチマを蹂躙すると決めたのだ!!」

 

 足がふらつきながらも断固とした意志で語るチューベの言葉にアルガもまた共感を得ていた。

 

「・・・・・・おまえも因習に呑み込まれた人間か」

 

「そうだ、そうだな、呑み込まれたのだよ人の思想に。こんな国・・・・・・さっさと滅びるべきだっ・・・た!! だが俺も国に属する人間・・・・・・使命は果たす!」

 

 バタリ。カチッ!

 

 チューベ司令長官死去。

 

 チューベ司令長官が倒れた拍子にボタンが押し込まれた。約5トンを誇るC4の絨毯爆撃。その引き金だ。

 

 ドォォォォォン!!

 

———

 

 080-7962-31-512。

 

 アルガはチューベ司令長官を端に添えられたソファに寝かせて、すっかり冷え切ってしまった執務机の電話に番号を入力していく。

 

「よっ、元気かアルガ」

「なぜ俺だとわかる? ジン」

 

 外界の友が渡してくれた一度限りの連絡先。

 

「この番号はおまえ専用だからだ。っと、もう“ヤヒス地区”の制圧は済んだのか?」

「地区? コイツらは国と言っていたぞ」

「まだ地区だったぜ。オチマ連邦に属するヤヒスは武力行使を中心とした20年単位の独立運動の真っ最中だったってわけだ」

 

 わからん。とアルガは天を仰いだ。

 

「つまり、コイツらは本来オチマ連邦が手に入れるはずだった武力を独占したいがために独立運動をしていた?」

「いや、元々独立運動は継続的に行われていたぜ。ただ、7年前の“機動戦士”発掘を機にエスカレートしたのは事実だが、知る人ぞ知る集落の戦士が山脈を越えたことによって目論見が潰えたってわけだ。その地区の住人は運が悪かったとしか言いようがない」

 

 あっそう。なんだか皮肉を言われているような気分を味わっているアルガは意を決して口にした。

 

「なあジン」

「おう。どうした?」

 

 漠然と感じていたことが今言葉となる。

 

「人を殺すのっておもしろくねえな」

「だろうな」

 

 軽い同意が返ってきた。

 

「おまえはそういうヤツだよ。ディヤ集落に居たときから使命感だけで戦士やってんの丸分かりだったからな」

 

 言われて確かにと思う。

 

「だけど、今気づいて良かったと思っている」

「同感だ。アルガは無理と気づいたら長持ちしねえタイプだろ。変化系にはよくあるメンタリティだ」

 

 アルガは全部見抜かれてることを不気味に思わず、不思議と心地良い本音で語れていた。

 

「そうだな。俺はもうディヤを忘れる。どの道戻ることを禁じられている身だ。一緒に山を越えた戦士たちだけを覚えて生きていくよ」

「おっ、おまえ以外も越えられたのか!? 誰だ? セミュか? クティーラか?」

 

 予想できなかった事実を前に好奇心旺盛に聞いてくるジン。しかし、アルガの隣にはもう誰もいない。

 

「いや、生き残りは俺一人だ」

「・・・・・・そうか。ソイツらがおまえを支えてくれたんだな」

「キッショ。なんでわかるんだよ」

 

 そのことを知ってもジンの察しの良さは揺るがなかった。

 

「ジン、俺は因習ハンターになる。望まないしきたりに呑まれた人間だけを救って、しきたりを望む人間だけをそのままにする」

「随分とやりたいことが慈善事業に偏ったな。いいと思うぜ。楽しけりゃな。だが、本命がもう一つあるんだろ?」

 

 真実は一つだけではないことをこの男は誰よりも知っている。最早追求から逃れられないことを悟ったアルガは語る。

 

「妻が欲しい」

「は・・・ぁ?」

 

 これにはさすがのジンも呆気に取られた。

 

「一人の女性だけを愛する文化はうちの集落にはなかった。・・・・・・俺が唯一殺せなかった男が教えてくれたんだ」

 

 チューベ司令長官。愛によって地区に留まり、愛によって敵国を憎むしかなかった男をアルガは思い出す。

 

「巨乳か?」

「巨乳一択だ。そこは妥協しない」

 

 ブハッと電話越しにジンが吹き出した。

 

「やっぱオメエおもしれえわ!」

 

 一頻り笑うと「一つだけ忠告しておくぜ」と真剣な声で告げる。

 

「これからおまえは国際テロリストとして指名手配されるだろう」

「されるとどうなる?」

賞金首(ブラックリスト)ハンターどもに命を狙われる」

「忙しくなりそうだ」

 

 他人事のように呟いて、凍り尽くした街並みを一瞥した。氷によって極低温を維持される街の気温はアルガのような極寒地帯を難なく生き残れる者にしか生息を許されないほどに過酷なものだった。

 

「なかには今のおまえでもやり込めちまう凄腕の女もいる。気をつけて逃げろよ」

「巨乳か?」

「爆乳だ」

 

「名前は?」

「おまえなぁ、仮にも命狙われる相手を口説くのか?」

 

「強い女に会ったことがないんだ。少し見てみたいのもあるし、あわよくば決闘してみたい」

「殺し嫌なんじゃねえのかよ」

「闘いは好きだ」

 

「つくづくおまえは変化系だよ」

 

 そう言いながらもジンの声色はどこか楽しげだった。

 

「鹿取抜雲斎。賞金首ハンターなら知らねえヤツはいないと言われるほどの凄腕。そんで、人類最強の念能力者が率いた清凛隊に所属していた戦闘狂だ」

「わかった。覚えておく」

 

「それとこの番号は二度と使えねえ。また俺と話したかったら俺を見つけに来いよ」

「女の尻追いかけ飽きたらな」

「おまえそんなキャラだったかァ!?」

 

「いいだろ別に。あ、そういえばジン。俺おまえのせいでスヒリヤ抱き損ねたんだけど」

「知るかよ!! もう切るぞ!」

「ああ、ありがとな」

 

 ブツ。ツー、ツー。

 

「また話そうぜ」

 

 パキパキッ。

 

 ヤヒス地区完全凍結完了。ビルも兵器倉庫も、“牧場”も人も、例外なく全てアルガの生み出した氷によって固まった。しかし、これはまだ冷凍保存している段階。運のいい者によっては解凍後に息を吹き返すだろう。

 

「それを許すつもりはない。この因習は俺が滅ぼす」

 

 アルガのオーラが唸る。制約の調整は終わった。自身が生み出した氷にのみ干渉するという単純明快にして応用力のない制約。能力もまた破壊に特化したものになった。

 

 左の掌を空に向けて、アルガはそこに自身の右拳を落とす。

 

「“終末氷解(ラグナロク)”」

 

 その力は氷に閉じ込められた全てを対象に耐久性を脆弱な氷同然に変化させ、氷塊内部の圧力を強化して氷ごと対象を粉砕する。

 

 バキンッ!!

 

 これにてオチマ連邦ヤヒス地区・・・・・・壊滅。

 

 





 みなさん最後のあからさまな鹿取抜雲斎(かとりばつうんさい)にお気づきかもしれませんが、この小説は彼女をヒロインにするためにあると言っても過言ではありません。まあ、それはそれとしておもしろおかしくストーリーを組む手筈になっていますので頑張ります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。