血と泥に塗れた最前線は、いまや熱狂的な「収穫の宴」と化していた。
死線の恐怖を乗り越え、自らの手で勝利を掴み取った中小クランの男たちと非戦闘員たちは、イサミの手から分捕った解体ナイフを手に、泥の中に転がる膨大な魔物の屍骸へ貪りついている。
「おい、こっちのオークから取れた素材、特大サイズだぞ!」
「ウルフの角も傷一つねぇ! これ、ギルドに持ち込めば全部で金貨二枚はいくだろ!」
「道具屋! この袋、もう一杯になったぞ! 次の袋をくれ!」
あちこちで歓声が上がり、ずっしりと重みを増した麻袋が幾重にも積み上げられていく。
イサミの言った通りだった。
自分たちが流した血と汗の対価は、泥の中に確かに転がっていたのだ。
破産寸前だった弱小クランの面々の顔には、生き残った安堵と、想像以上の臨時収入に対する希望の笑みが浮かんでいた。
しかし――。
戦場を照らし始めていた一筋の陽光が、ふっと薄い雲に遮られた。
急激に温度を下げる湿った風。
その微細な空気の変化を、後方で警戒に当たっていたメルティとココが見逃さなかった。
「……ココさん。聞こえますか?」
メルティが素早く手帳を閉じ、護身用の細剣の柄にそっと手を掛けた。その端正な顔立ちが、一瞬で冷徹な警戒の色に染まる。
「うん……地鳴りじゃない。もっと低い、お腹の底にズシンと来る振動……」
ココが自身の身の丈ほどもある魔法杖を固く握りしめ、先端の赤魔石にじっと視線を落とした。
魔石の表面が、未知の魔力の干渉を受けて細かく不気味に震えている。
「イサミ! メルティ! ココ!」
最前線でオークの肉を切り分けていたクロエが、弾かれたように顔を上げた。
彼女の野性的な直感が、森の奥深くから漂ってくる異様な「死気」を捉えていた。
「来るわ……第2波の残党なんかじゃない。――『第3波』よ!!」
その声は、歓喜に沸いていた最前線全体を一瞬で凍りつかせた。
バサバサバサッ! と、樹海の深部から無数の黒鳥が一斉に飛び立つ。
次の瞬間、第一波、第二波の比ではないほど重く、巨大な地鳴りが地表を揺らした。
地響きとともに、遠くの木々がまるでマッチ箱のようにへし折られ、なぎ倒されていく音。
「な……なんだって……!?」
「第3波……!? 嘘だろ、まだ来るのかよ!?」
「あれだけの数を倒したんだぞ!? なんで……なんでまだ湧いてくるんだ!!」
手にしていた解体ナイフや麻袋をボトボトと落とし、冒険者たちが一瞬にして絶望の淵へと突き落とされた。
いくら『世色癌』で傷を癒やし、一度は士気を取り戻したとはいえ、彼らの肉体と精神の疲労は限界に近い。
何より「勝った」と思った直後に叩きつけられた不都合な現実は、男たちの折れかけた心を容赦なく打ち砕いた。
「もうダメだ……おしまいだ……!」
「逃げろ! 荷物を捨てて逃げろ!!」
再びパニックが広がろうとした、その時だった。
「――みなさ〜ん、落ち着いてくださ〜い。大丈夫ですよ〜」
静かだが、驚くほど透き通った声が戦場に響いた。
声の主は、積み上がった素材袋の脇にゆったりと腰掛けていた歩く道具屋、イサミだった。
イサミはゆっくりと立ち上がると、拍子抜けするほど朗らかな笑みを浮かべて見せた。
「え……? だ、大丈夫って……道具屋!お前正気か!? 次のが来てるんだぞ!?」
「そうです! 僕たちの計算通り、そして『彼ら』の計算通りに、ね」
イサミが視線を向けたのは、森の奥――ではなく、自分たちが守り抜いた防衛線の「後方」、王都へと続く整備された街道の方角だった。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ。
重厚で、完全に揃った靴音が響き渡る。
泥にまみれた中小クランの不揃いな足音とは根本的に異なる、鍛え上げられた鉄の軍靴の音。
街道の先から姿を現したのは、眩いばかりの銀色の全身鎧に身を包んだ、数百人規模の重装騎士団と、豪華な装飾が施された杖を携えた法力師たちの集団だった。
彼らの胸元や掲げられた旗には、王都でも有数の大手クランの紋章が誇らしげに刻まれている。
疲弊しきった最前線の冒険者たちが、息をのんでその集団を見つめた。
騎士団の先頭に立つ、金髪を華やかに揺らした男――副クラン長である男性が、優雅に馬を進め、泥まみれの戦場を見下ろした。
「中小クランの諸君。よくぞここまで持ちこたえてくれた」
男は気品に満ちた、しかしどこか見下すような通る声で宣言した。
「第一波、第二波の露払い、苦労だったな。……だが、安心するといい! ここからは我ら本隊が引き受ける! 命拾いしたことを感謝し、負傷者は速やかに後方へ下がれ!」
「本隊が来てくれたのか!?」
「助かった……! 俺たち、助かったんだ!!」
事情を知らない冒険者たちは、まるで救世主でも現れたかのように歓声を上げ、安堵の涙を流した。
だが、クロエは苦々しい顔で剣の柄を握り直し、メルティは冷ややかな眼差しで手帳を固く握りしめた。
彼らが何のために「今」現れたのか、その真意をイサミ達が見抜けないはずがなかった。
重装騎士団は、イサミたちが命がけで築いた防衛陣地を易々と押し退け、最前線の最もおいしいポジションへと陣取った。
直後、森の奥から姿を現したのは、第3波の先頭――これまでのオークやゴブリンとは一線を画す、巨大な体躯を誇る、魔導ギガントオークや、希少な素材の宝庫であるワイバーン種といった、高ランク・高単価の大型魔物たちだった。
「総員、構え! これより討伐を開始する!」
副クラン長の気取り切った号令とともに、完璧な物資と万全の体力を備えた大手クランの騎士たちが、一斉に襲いかかる。
ズドォン! ガァン!
洗練された魔法陣から放たれる最高級の攻撃魔法と、一点の曇りもない特注の魔導兵器。
第1波、第2波で疲弊し、勢いの収まりつつあった魔物の群れ、そしてその最奥から這い出てきた「最も高く売れる強力な単体個体」だけを、彼らは美味しいところだけを掻き集めるようにして、効率よく討伐し始めていった。
「……ハッ、笑わせるわね」
クロエが血のついた髪をかき上げながら、鼻で笑った。
「あたしたちが泥にまみれて数を減らし、敵の勢いを完全に削ぎ落としたところで、満を持して登場ってわけ? おいしいボス首と高価値素材だけをかっさらっていくなんて、相変わらず大手のやることは優雅で嫌味だわ」
「本当ですわ」
メルティも冷酷な笑みを浮かべ、手帳にさらさらとペンを滑らせる。
「第1波、第2波の雑魚の相手はコストパフォーマンスが悪すぎますもの。群れの勢いが収まりつつある終盤、そろそろ強力で単価の高い敵が出てくるこの絶妙なタイミング……来るならここしかありませんものね」
周囲の中小クランの者たちは、「大手クランが助けに来てくれた」と無邪気に感謝している。
だが、現実には、最も危険で金にならない「消耗戦」をすべて中小クランに押し付け、高値素材だけを合法的に横どりする、大手と軍の出来レースだったのだ。
普通なら、プライドを傷つけられ、利益を横どりされて憤慨する場面。
しかし――。
道具屋イサミは、その光景を後方から眺めながら、心の中でくつくつと凶悪に笑っていた。
(……ふふっ、ククク……ッ! ええ、ええ! 来るなら絶対このタイミングですよねぇ!)
イサミの瞳には、怒りなど微塵もなかった。
あるのは、計算通りの展開に対する狂おしいほどの歓喜と、商人としての邪悪な達成感だった。
(僕たちが欲しいのは、安全に回収できる大量の『通常素材』と、この場にいる大量の冒険者たちから得られる『莫大な治療費・物資代の債権』! 大型個体の討伐なんて、リスクが高すぎてウチみたいな小規模クランが手を出したら大赤字だ!)
イサミは、胸ポケットに入った大量の『後払い契約書』の束をそっと撫でた。
(面倒で危険なデカブツの相手は、全部大手に押し付ければいい。彼らが派手に暴れて第3波を全滅させてくれれば、僕たちの『完全勝利』が確定する! おまけに、大手が手を出さない足元の膨大なオークやゴブリンの素材は、全部僕たちの総取りだ……!)
イサミは優雅に肩をすくめ、仲間たちに向かって満面の笑みを向けた。
「さあ、みなさん! 横どりの大名行列を指をくわえて見ている暇はありませんよ! 大手のお偉いさん方が派手に派手な大物を倒してくれている間に、僕たちは足元のお宝を残らず回収して、さっさと撤収の準備を始めましょう!」
「ふふ、相変わらず悪どい考えですこと、イサミ様」
「了解だよイサミくん! ココ、袋いっぱい集めちゃうんだから!」
豪華な魔法と剣戟が飛び交う前線を背に、イサミ達と中小クランの面々は、泥の中から確実な利益を拾い集めていくのだった。
♢
天を覆っていた不吉な黒雲がすっかりと吹き飛び、茜色に染まる夕暮れの光が王都へと続く街道を暖かく照らしていた。
最前線で繰り広げられた死闘は、大手クランによる派手な第3波の掃討戦をもって幕を閉じた。
大型の魔導ギガントオークやワイバーン種の首を打ち落とし、手柄と高価値素材を独占した大手クランの騎士たちは、誇らしげに旗を翻して王都へと一足先に凱旋していった。
そして――彼らの華やかな隊列から大きく遅れて王都の東門へ辿り着いたのは、全身泥と返り血にまみれた中小クランの大部隊だった。
だが、その表情は「敗残兵」のそれとは程遠かった。
全員の背中や手には、ずっしりと重量感を増した麻袋が幾重にも抱えられている。
一人も欠けることなく、全員が生きて王都の地を踏んだのだ。
門を警備していた兵士たちが、無傷で帰還した中小冒険者たちの異様な大群を目にして呆然と立ち尽くす。
「ふぅ……! いやぁ、やっぱり平和な空気は最高ですねぇ!」
最前線から王都へ帰還し、クロエ達のホームへと戻ってきたイサミは、背中の巨大な出張道具袋をドサリと床に降ろすと、心底嬉しそうに両腕を伸ばした。
その顔は、文字通り「ホクホク」であった。
イサミの瞳は、まるで金貨の輝きがそのまま宿ったかのように爛々と輝いており、口元はだらしなく緩みっぱなしだった。
「お疲れ様、イサミ。……ほんと、帰ってきた途端に分かりやすい顔になりすぎよ」
ソファにどさりと身体を預けたのはクロエだった。
愛剣をテーブルの上に置き、疲れた様子で息を吐く。
しかしその表情には、大事な仲間全員を一人も失わずに連れ戻せたことに対する、深い満足感が滲み出ていた。
「当然ですとも、クロエさん! 今回の出張販売、大・勝・利です!!」
イサミはカウンターの奥から愛用の算盤と特大の台帳を引っ張り出し、パチ、パチ、パチと軽快な音を店内に響かせ始めた。
「イサミくん?そんなに儲かったの……?」
ココが自身の魔法杖を壁に立て掛け、目を丸くしてイサミの手元を覗き込む。
「ええ、ココさん! 単に儲かったどころの話ではありませんよ!……メルティさん、集計結果の発表をお願いします!」
「お任せくださいませ」
事務服の泥を綺麗に払ったメルティが、洗練された動作で手帳を開き、奥の瞳をキラリと光らせた。
「まず、今回の防衛戦で我クランが回収・確保した通常素材の売却益。そして――現地で各中小クランへ貸与した『世色癌』『爆発瓶』『予備武具』『砥石』『応急手当資材』等の代金回収分ですわ」
メルティは羽ペンで手帳をツンツンと叩きながら、朗らかな声で数値を読み上げた。
「結果として……仕入れ値および各種経費、ムラサキちゃんの秘薬調合ボーナス、皆様への危険手当を差し引いても――我がクランの純利益は、平常時の『半年分』に相当する額を叩き出しました!」
「はんとしぶん……っ!?」
薬師のムラサキが目を丸くし、抱えていたリュックサックを落としかけた。
「ふふっ、すごいです〜! これで今夜は豪華なお食事に行けますね〜!」
エリスが手をポンと叩き、聖母のような笑みを浮かべる。
「ええ! ムラサキちゃんへの使用料もしっかり支払いますからね! いやぁ、やっぱり『死線での出張販売』ほど実りのあるビジネスはありませんねぇ!」
イサミは算盤を素早く弾き直しながら、悪代官も真っ青な邪悪で幸せそうな笑みを浮かべた。
――だが、その頃。
王都の冒険者ギルド大広間では、全く異なる「微妙な空気」が流れていた。
ギルドの換金カウンター前には、最前線から生還した中小クランの冒険者たちがズラリと列をなしていた。
解体し、持ち帰ったオークやゴブリン、ウルフの魔石や素材が次々と金貨に換えられていく。
本来であれば、捨て駒として死ぬはずだった現場から大量の素材を持ち帰り、一攫千金を果たしたのだから、大宴会が始まってもおかしくない状況だった。
しかし――冒険者たちの表情は、実に「複雑」だった。
「はい、次! 『鉄の拳』クランね。素材の買取総額は……金貨20枚! 大手柄じゃないか!」
ギルドの受付嬢が、感心したように査定票を差し出す。
『鉄の拳』のリーダーである大柄な男の顔が一瞬、パッと輝いた。
「金貨20枚……! すげぇ! 俺たちみたいな弱小が、一度の防衛戦でこんな額を手にできるなんて――」
「あ、ちょっと待ってくださいね」
受付嬢の脇から、すっと一枚の「極めて精巧に作成された請求書(副本)」が差し出された。イサミの指示によって、メルティがギルド事務局へ事前に提出しておいた合法的な『債権引き落とし書類』である。
「道具屋様からの物資・治療費の代金引き落としが入っています。『特製秘薬・世色癌』五箱、『粘着麻痺煙幕弾』十個、『緊急研磨サービス』……差し引きして、お支払い額は――金貨10枚になります!」
「半分持っていかれたぁぁぁぁぁっ!?」
男の絶叫が、ギルド大広間に虚しく響き渡った。
そう。イサミの言った通りなのだ。
最前線でイサミが叫んだ「素材は回収したクランの物だ!」という言葉に偽りはなかった。彼らが命がけで剥ぎ取った素材の所有権は、すべて各クランに還元された。
……だが!
イサミは同時に、それぞれのクランに「しっかり、かっちり、1硬貨の狂いもなく」治療費とアイテム代を請求したのである!
「おいおいおい! 道具屋の野郎、本当にキッチリ半分持っていきやがったぞ!」
「うちもだ! 金貨30枚の稼ぎだったのに、薬代とアイテム代で13枚引かれた!」
「なんだあの計算の正確さは!? 悪魔かあいつは!」
あちこちで悲鳴と溜息が漏れ出す。
だが、誰もイサミに対して本気で怒りや恨みをぶつけることはできなかった。
なぜなら――。
「……でもよ。冷静に考えてみろよ」
隣のクランのリーダーが、手元に残った金貨の袋をぽんと叩きながら、苦笑いを浮かべた。
「俺たち……誰も死んでねぇんだぞ? 腕を一本持ってカラスのエサになるはずだった奴が、いま五体満足で酒飲んでるんだ」
「しかも……赤字になったクランは一つもない。薬代と物資代を引かれたって、手元には例の『捨て駒任務』の基本報酬よりはるかに多い金が残ってる……」
「そうなんだよなぁ……クロエさんやあの道具屋がいなきゃ、俺たち全員、あの泥の中で腐ってたはずなんだよ……」
冒険者たちは顔を見合わせ、深く、深~く溜息をついた。
命を救われた。
武器も研いでもらった。
死者ゼロで、大怪我人もゼロ。
おまけに、しっかり利益まで出させてもらっている。
間違いなく「感謝」すべき相手であり、命の恩人なのだ。
……なのだが、ああの商人(イサミ)の「へらへらした笑顔」と「寸分の狂いもない正確すぎる請求書」を思い出すと、どうしても素直に感謝しきれない、なんとも言えない「悔しさ」と「複雑さ」が胸を満たすのだった。
「……くそっ! なんだかうまく丸め込まれた気がするが、事実として生きて帰って来られたんだ!」
「おうよ! 悔しいが手元に金はある! 今夜は飲むぞ!!」
「道具屋の野郎の商売上手さに乾杯だ、ちくしょう!!」
ギルド大広間は、怒りと感謝と苦笑いが混ざり合った、実に妙な、しかし温かな熱気に包まれていった。
♢
――そして。
王都の街並みに星が輝き始める頃。
クロエ達のクランの奥にあるリビングでは、小さく、しかしとびきり温かな「身内の祝杯」が挙げられていた。
「それじゃあみんな! 今回の過酷な出張販売の無事完了と、クランと僕の歩く道具屋の大儲けを祝して――乾杯!!」
「「「乾杯――っ!!」」」
イサミの音頭で、ジョッキとグラスが重なり合い、心地よい音を立てた。
テーブルの上には、イサミが溜め込んだ利益から奮発して買い込んできた、高級料亭の特大ステーキやフレッシュな果実酒、新鮮な野菜のサラダが溢れんばかりに並べられている。
「う〜んっ! やっぱり戦いの後のステーキは最高だねっ!」
ココが口一杯に肉をほおばり、幸せそうに頬を緩める。
「ふふ、ココさん、口の周りにソースがついていますよ〜」
エリスが優しく拭いてやり、ムラサキも嬉しそうに自家製のジュースをコップに注いでいた。
「ねえ、イサミ」
大きな肉を豪快に噛みちぎったクロエが、ジョッキを置きながらイサミをチラリと見た。
「ギルドの方で、周りの冒険者たちが『半分持っていかれた』って泣いてるんじゃないかしら?」
「ふふふ、クロエさん。言いがかりはいけませんねぇ」
イサミは果実酒を優雅に嗜みながら、ニヤリと不敵に笑った。
「彼らは命を得て、経験を得て、さらには美味しい臨時収入まで得たんです。僕が回収したのは、当然の対価と『適正な利益』に過ぎません。……誰も損をしていない、これぞ完璧な『三方良し』の商売ですよ!」
「相変わらず、屁理屈を言わせたら王国一ね」
クロエは呆れつつも、嬉しそうにクスッと笑った。
「でもまあ……あんたのその悪どい算盤のおかげで、あたしたちもこうやって美味い肉が食えてるわけだしね。感謝しておくわ」
「お褒めに預かり光栄です〜!」
二人はジョッキを再び軽く打ち鳴らし、ぐっと酒を煽った。
最前線の泥濘を生き抜き、絶望を金に変え、全員で掴み取ったささやかで最高の勝利。
ホームの夜は、仲間の温かな笑い声と、算盤の弾ける確かな幸福感とともに、ゆっくりと更けていくのだった。