嵐のような『コパンドンCITY大感謝祭』の熱狂からしばらく。
賑やかだった中央広場の撤収作業も落ち着き、コパンドンCITYにあるクランの拠点(ホーム)は、いつもの穏やかな日常を取り戻しつつあった。
一階のリビング兼カフェスペースでは、新しく加入した見習いのんが、エリスに優しく教わりながら健気に床を掃いている。
力仕事を担当するガッツとルーシーは、祭りで稼ぎ出した銀貨の山を前にメルティと何やら仕入れの相談に花を咲かせていた。
そんな賑やかな一階の喧噪を逃れ、拠点の二階奥深くに位置する一室――調合師ムラサキの個人部屋は、重厚な静寂に包まれていた。
部屋の中に漂うのは、乾燥させた薬草の独特な甘い香りと、各種の薬品、そしてかすかな革と金属の匂い。
壁際の棚には色とりどりの液体が入ったフラスコや試験管が整然と並び、中央の大きな作業机の上には、昨日大活躍(?)した『特注ガスマスク型お面』のパーツがバラバラに解体されて転がっていた。
「……ふふふ。やっぱり、昨日のお祭り用簡易モデルだと、耐久性と高濃度毒素に対するろ過限界に難がありますねぇ」
作業机の前に座り、羊皮紙に細いペンで図面を描き込んでいるのは、ゲスト道具屋のイサミであった。
いつものチャラついた笑みを浮かべつつも、その瞳には道具屋としてのプロフェッショナルな光が宿っている。
「昨日はお祭り用として安価な薄革とブリキで作りましたけど……もしこれを『対・高ランクモンスター』や『暗殺者の凶悪な致死毒煙』相手にガチで実戦投入するとなると、話が変わってきますよ」
「は、はい……っ! イサミさんのおっしゃる通りです……っ!」
イサミのすぐ隣で、小さな体を寄せ合わすようにして図面を覗き込んでいるのは、ボブ髪の少女――ムラサキであった。
普段はおどおどとして自分に自信のない気弱な薬師の彼女だが、昨日のガスマスクと調合の話になると一転して瞳を爛々と輝かせ、オタク特有の熱を帯びた早口になっていた。
「昨日のろ過材は、安価な魔導薬草と炭の簡易配合でしたから……高濃度の『毒』や『神経麻酔毒』に対しては、三分も持たずにろ過膜が溶解してしまうんです……! あ、すみません……私、また喋りすぎちゃいました……っ!?」
「いえいえ! 全然喋りすぎてないですよ! むしろ最高のアドバイスです! だからこそ、キャニスター(ろ過缶)の構造を二重化して、第一層で物理的なろ過、第二層でムラサキさん特製の『万能中和液』を循環させるシステムはどうですかね?」
「えっ……! 二重ろ過、ですか……!? すごいですイサミさん、素晴らしい発想です……っ! それでしたら、私の方で調合する『精霊石の粉末』を中和液に混ぜ込めば、毒を中和するだけじゃなくて、吸い込んだ酸素の質を高めて装着者の体力をじわじわ回復させることだってできちゃいます……っ!」
「おおっ! それはすごい! 毒ガス地獄の中で逆に体力が回復するガスマスクですか!? 相手からしたら悪夢以外の何物でもないですねぇ!」
二人は頭を突き合わせ、ガシャガシャとコンパスや定規を走らせながら、更なる研究と考察に没頭していた。
イサミの持つからくり技術と、ムラサキの持つ『天才的な調合』の知識。
この二人が合わさった時の相乗効果は凄まじい。
お互いが言葉を多く費やさずとも、思考の波長が完璧に噛み合っていく。
羊皮紙の上には、より洗練され、より凶悪で、そして美しい『実戦用フルフェイス防毒マスク』の精密な設計図が次々と描き上げられていった。
「――ふぅ。ひとまず、キャニスターの第二世代プロトタイプの設計はこんなところですかね」
イサミは大きく背伸びをし、手にしていたペンを作業机の上に置いた。
窓から差し込む陽光が斜めに傾き、部屋の中を温かな茜色に染め上げている。
気が付けば、昼過ぎから始まった考察作業は数時間にも及んでいた。
「ムラサキさん、お疲れ様でした。やっぱりムラサキさんと組み上げると、最高の道具が作れますよ」
「あ……ふふ、ありがとうございます……っ。私の方こそ、イサミさんと一緒に研究できて……すごく、楽しかったです……っ」
ムラサキは控えめに微笑むと、描かれた設計図を大切そうに小さな手で撫でた。
そして――。
ふと、二人の間の会話が途切れた。
*カタ……*と、風で窓枠が小さく鳴った音だけが響く。
熱心に行われていた調合の話が一段落した途端、室内を急激な『静寂』が満たしていった。
一階の賑やかな音も、分厚い扉と壁に遮られてほとんど届かない。
(……ん?)
イサミは、となりに座るムラサキの様子に微かな違和感を覚えた。
調合の話をしていた時の爆発的な熱量がスッと引き、いつもの「おどおどとした気弱なムラサキ」に戻った……はずだった。
だが、今の彼女の雰囲気は、どこかそれとも違っていた。
部屋の中の『空気の密度』が変わっていく。
乾燥薬草の甘い香りが、どこか甘やかで情熱的な熱を帯びて二人の肌を撫でる。
「……ムラサキさん?」
イサミが声をかけると、ムラサキはビクッと小さな肩を揺らし、ゆっくりと顔を上げた。
その頬は――普段の白い肌からは想像もつかないほど、熟したリンゴのように真っ赤に染まっていた。
紫色の瞳が、湿度を孕んで潤み、今にも消えてしまいそうなほど小さく震えながらイサミの瞳を見つめ返してくる。
「あ、あの……っ! イ、イサミさん……っ!」
「は、はい? どうしました?」
あまりの顔の赤さに、イサミは思わず背筋を正した。
ムラサキはギュッと自分のエプロンの裾を両手で握り締め、うつむき加減になりながらも、懸命に言葉を紡ぎ始めた。
「あ、あの……昨日のお祭りも……それから、いつも……私みたいな気味の悪いお団子しか作れない薬師を……たくさん褒めてくれて……一緒に道具を作ってくれて……本当に、ありがとうございます……っ」
「え……? ああ、いやいや! 気味悪くなんてないですよ! ムラサキさんの調合はいつも完璧ですし、お礼を言うのは僕の方ですよ」
「ううん……違うんです……っ!」
ムラサキは首をぶんぶんと横に振った。
そして、意を決したように顔を上げると、潤んだ紫色の瞳でまっすぐにイサミを見つめた。
「道具のことだけじゃないんです……っ! 私……イサミさんが……私のお団子を『すごい』って初めて言ってくれて……すごく、すごく嬉しかったんです……っ! 私、イサミさんのためならなんだって頑張りたいって思って……っ!」
「ムラサキさん……」
「私……おどおどしてて、うまいこと言えないですし……気持ち悪いって思われちゃうかもしれないですけど……っ!」
ムラサキの瞳から、ボロボロと大きな涙粒が溢れ落ちた。
それは不安と、恥ずかしさと、そして胸の奥底で膨らみ続けて破裂しそうになっていた純粋すぎる「好意」の現れだった。
普段は自分に自信がなくて、すぐに「すみません……っ」と謝ってしまう彼女が、今、人生で一番の勇気を振り絞って想いを伝えようとしている。
「私……イサミさんのことが……す、大好きなんです……っ! イサミさんの力になりたいんです……っ!」
ぽろぽろと涙を零しながら落とされた、真っ直ぐで純粋な告白。
部屋の時間が、完全に停止した。
茜色の光の中で、真っ赤な顔をしたムラサキが、小さな肩を激しく震わせながらイサミを見つめている。
「……っ」
イサミは思わず息を呑んだ。
いつものチャラついた減らず口も、商人としての巧みな弁舌も、このあまりにも尊い告白の前では何の意味もなさなかった。
そして、ムラサキは涙を拭うこともせず、ゆっくりと立ち上がると、おどおどとした手つきでイサミの手をそっと包み込んだ。
彼女の小さな手は驚くほど熱く火照っていて可哀想なほど震えていた。
イサミの大きな掌の中で、ムラサキの細い指が小刻みに痙攣しその熱さが彼の皮膚を通して心臓まで届いてくるようだった。
「ああの…っ、こ、あ、今なら……っ」
消え入りそうなけれどはっきりとした声。その声は微かに震えながらも、確かな意志を宿していた。
ムラサキの喉元が小さく上下し唾を飲み込む仕草さえも、イサミには愛おしくてたまらなかった。
「部屋には…誰も入ってきませんし…っ。エリスさんたちも夕飯まで…絶対に上がってきませんから…っ」
そう言いながらも、ムラサキは恥ずかしさで言葉を詰まらせ最後の方はほとんど囁くような声になっていた。
彼女の潤んだ紫色の瞳が、長い睫毛の間からイサミを見上げる。その瞳の中には期待と不安と、何よりも強い想いが渦巻いていてイサミの胸を締め付けた。
ムラサキは真っ赤な顔のままイサミの手を引いて部屋の奥にある小さなベッドへとゆっくり歩を進めた。
一歩一歩が、まるで何かの儀式のように慎重で神聖で。
彼女の白い足首がスカートの裾から覗くたびに、イサミの心臓は早鐘を打った。
すん、と香る、彼女特有の甘い薬草と乙女の匂い。
その芳香は普段から彼女の周りに漂っているものだったが、今はそれ以上に濃密でイサミの理性を溶かしていくようだった。
ラベンダーとカモミール、そして微かに混じる消毒用アルコールの清潔な香り。そのすべてが混ざり合ってムラサキという一人の女性を形作っている。
イサミの胸の奥でカチリと何かが外れる音がした。
それは長い間彼が必死に繋ぎ止めていた理性の鎖が、ついに千切れる音だったのかもしれない。
あるいは彼がずっと無意識に閉じ込めていた本当の想いが、解き放たれる音だったのか。
「…ムラサキさん」
イサミの声は、自分でも驚くほど低く深くなっていた。普段の軽薄な口調はどこかに消え去り、その響きには一人の男としての真摯な感情だけが込められていた。
彼の手が彼女の華奢な腰へと回される。
薄い布地越しでもわかる、ムラサキの体温と震え。腰のくびれに手を添えただけで彼女の全身がビクッと跳ねた。
チャラけた笑みはイサミの顔から完全に消え去り、そこにあったのは一人の男としての真摯で強い眼差しであった。
その瞳の奥には彼女を守りたいという強い意志と、そして抗いがたい欲望が同時に宿っていた。
「…後悔しませんか?」
その問いかけに、ムラサキは赤くなった顔を胸元に埋めるようにしながらもこっくりと力強く頷いた。
彼女の紫色の髪がサラサラと揺れ、その動きさえもイサミにはスローモーションのように感じられた。
「は、はい…っ! イサミさんと…なら…後悔なんて、絶対にしません…っ! 絶対に…です…っ!」
その言葉には彼女のすべての想いが込められていた。
イサミに出会ってからの日々、彼が見せてくれた優しさ時折見せる真剣な表情、そして何よりも彼の存在そのものがムラサキの心を溶かしていった。
初めて会った時から、どこか惹かれるものがあった。それが恋だと気づくのにそう時間はかからなかった。
ギシ…と静かな音を立てて、二人の体がベッドの上へと倒れ込む。
古びたベッドのスプリングが体重を受けて沈み込みその振動が二人の身体に伝わっていく。
柔らかなシーツの上に広がる、彼女の綺麗な紫色のボブヘア。窓から差し込む夕日がその髪を黄金色に縁取り、まるで後光が差しているかのようだった。
恥ずかしさに全身を真っ赤に染めながらも、ムラサキは逃げ出すことなくおどおどとした手つきでイサミのシャツの裾をぎゅっと掴んでいた。
彼女の指先は白くなるほど強く握りしめられていて、その必死さがイサミには痛いほど伝わってきた。
「あ、あの…イサミさん…。わ、私…初めてで…何もわかりませんから…優しく…してくださいね…っ? その…痛いのは…ちょっと怖いですけど…でも…イサミさんなら…」
その言葉の後半は恥ずかしさでほとんど聞こえないほど小さな声になっていた。
ムラサキは自分が何を言っているのかもよくわからなくなっていて、ただただ必死にイサミに縋っていた。
彼女の瞳にはうっすらと涙の膜が張っていてそれが夕日に照らされてキラキラと輝いていた。
「…はい。任せてください」
イサミはそう答えるとまずは優しく彼女の額に口づけた。
それから眉間、鼻の頭そして頬へと、まるで宝物に触れるかのような慎重さで唇を落としていく。
その一つ一つの口づけにムラサキは小さく息を呑み、そして次第にその身体から力が抜けていくのを感じていた。
「ん…っ」
そして、そっと重ね合わされる唇。
最初は触れるだけの羽根が触れ合うような静かな接吻だった。ムラサキの唇は驚くほど柔らかく、ほんのりと甘い味がした。
薬草を扱う彼女がいつも舐めている蜂蜜飴の味だろうか。その甘さがイサミの心をさらに蕩けさせていく。
だが、重なり合うたびに二人の体温は跳ね上がり、呼吸は深く熱く乱れていく。
二度目の口づけは少し深く、三度目はさらに深く。
角度を変えまるで互いの存在を確かめ合うかのように、何度も何度も唇を重ねた。
「んっ…ふぁ…っ」
ムラサキの口から漏れる吐息が、イサミの唇をくすぐる。
彼女はどうしていいかわからずただされるがままに唇を受け入れていたが、次第に自分からも恐る恐る応えるようになっていった。
彼女の小さな舌がおずおずとイサミの唇に触れ、それが合図となったかのようにイサミは彼女の口内へと舌を侵入させた。
「んんっ…! ふ…ぁ…っ」
突然の深い口づけにムラサキの身体がビクッと跳ねる。しかし彼女は拒むことなく、むしろ縋りつくようにイサミの首に腕を回した。
二人の舌が触れ合い絡み合い、唾液が混ざり合う。その水音が静かな部屋の中に淫靡に響きムラサキの羞恥心を煽る。
「は…ぁ…イサミ…さん…っ」
唇を離すと、銀色の糸が二人の間に架かりそれが夕日に照らされてキラリと光った。
ムラサキは恥ずかしさで目をぎゅっと瞑り、その糸が切れるまで動くことができなかった。
彼女の唇は唾液で濡れてテラテラと輝きそれが妙に艶めかしくて、イサミはもう一度その唇を奪いたくなる衝動に駆られた。
服が衣擦れの音を立てて一枚、また一枚とシーツの上に滑り落ちる。
イサミはまず自分のシャツのボタンを外した。彼の鍛え上げられた胸板が露わになると、ムラサキは息を呑んで目を逸らしたがその視線はすぐに戻ってきて、恐る恐るといった様子で彼の身体を見つめた。
「触ってみますか?」
イサミの優しい問いかけに、ムラサキは真っ赤になりながらもこっくりと頷いた。
彼女の細い指が、おそるおそるイサミの胸に触れる。引き締まった筋肉の感触に彼女の指先が微かに震えた。
「硬い…です…」
「鍛えてますからね」
「すごい…です…」
ムラサキの手がイサミの胸から肩、そして腕へと移動する。
その感触を確かめるようにゆっくりと、丁寧に。彼女の手のひらの熱さがイサミの皮膚を通して全身に広がっていく。
この小さな手が、普段は薬草を調合し患者の傷を手当てしているのだと思うと、イサミの胸は締め付けられるような愛おしさでいっぱいになった。
「今度は…ムラサキさんの番です」
イサミはそう言うと彼女の洋服のボタンに手をかけた。
ムラサキは緊張で身体を強張らせたが、逃げ出そうとはしなかった。むしろイサミの動きを助けるように、少しだけ身体を起こした。
「……大丈夫ですよ。ゆっくり、いきましょう」
「はい…っ」
小さなボタンが一つ、また一つと外されていく。白い布地の間からさらに白い彼女の素肌が覗き始める。
鎖骨のライン、胸元の膨らみそしてお腹の滑らかな曲線。イサミはそのすべてを目に焼き付けるように、ゆっくりと服を脱がせていった。
白くしなやかなムラサキの肢体が、茜色の夕光の中に露わになっていく。
彼女の肌は絹のように滑らかでまるで光を吸い込んでいるかのように白く輝いていた。
鎖骨のくぼみ、細いウエストそして慎ましやかながら形の良い乳房。
恥ずかしさに「ひぅ…っ」と身を縮こまらせながらも、彼女は自分のすべてをイサミへと委ねていた。
「綺麗ですよ…」
イサミの口から、心からの感嘆の言葉が漏れた。
それは単なるお世辞ではなく本当に心の底から湧き上がった言葉だった。
それはムラサキの外見だけの美しさではなく彼女の内面から滲み出る清らかさ、真摯さそして彼への信頼が、彼女の全身を美しく輝かせているように感じられたからだ。
「や…見ないで…ください…っ」
ムラサキは両腕で胸を隠し、恥ずかしさで今にも泣き出しそうな声で言った。
彼女の頬は熟れた林檎のように真っ赤に染まり耳の先まで朱に染まっていた。
胸元には、緊張でうっすらと汗が浮かびそれが夕日に照らされて宝石のように輝いていた。
「ダメです。ちゃんと見せてください」
イサミはそう言うと彼女の腕をそっと掴み、優しく身体の横に置かせた。
露わになった彼女の乳房は思ったよりも豊かで、白磁のような肌の上には淡い桜色の乳首がちょこんと乗っていた。
その可憐さにイサミの息が詰まる。
「あ…っ!」
ムラサキが抗議の声を上げる間もなくイサミはその片方に口づけた。
彼の唇が乳首に触れた瞬間、ムラサキの身体が弓なりに反り返る。
柔らかな感触とほんのりとした体温。そして微かに香る、彼女特有の甘い匂い。
「ひゃ…っ! そ、そこは…っ!」
「ここが、気持ちいいんですか?」
イサミは意地悪くそう囁きながら、舌先で乳首を転がした。
最初は優しくしかし次第に強く。彼の舌が乳首の周りを円を描くように這い回り、時折その先端をチロチロと舐め上げる。
「あ…ああ…っ! や…そんな…はしたない…です…っ」
ムラサキは羞恥に耐えながらも、その未知の快感に翻弄されていた。
自分の口から漏れる声がこれほどまでに甘ったるいものだとは知らなかった。
胸の先端から電流のような刺激が走り、それが全身に広がっていく。子宮の奥がきゅんと疼き太ももの内側がじんわりと熱くなっていくのを感じた。
「はしたなくなんてないですよ。とても素敵です」
イサミはそう言いながらもう片方の乳房にも同じように口づけ、舌を這わせた。
彼の手は彼女の腰からお腹そして太ももへと滑り降りていく。その手のひらの熱さに、ムラサキの肌が粟立つ。
「んん…っ! あ…イサミさんの手…熱い…です…っ」
「ムラサキさんの肌も、すごく熱いですよ」
イサミの指が、彼女の太ももの内側をゆっくりとなぞる。
その感触にムラサキは息を詰めて身体を硬くした。
しかし、イサミは焦らすように決定的な場所には触れず、ただただ周辺を撫で回すだけだった。
「や…っ、そこ…くすぐったい…です…っ」
「くすぐったいだけですか?」
「う…っ、それ以上は…恥ずかしい…です…っ」
ムラサキの声は涙混じりになっていた。しかし、それは嫌悪の涙ではなくあまりの羞恥と、そして自分でも制御できない身体の反応に対する困惑の涙だった。
彼女の秘所はもうすでにしっとりと濡れ始めていて、それが下着に染みを作っていることを彼女自身が一番よくわかっていた。
「恥ずかしくても、見せてください」
イサミは優しくしかし有無を言わさぬ口調でそう言うと、彼女の最後の一枚の下着に手をかけた。
白い純潔の布地はすでに彼女の愛液でうっすらと透けていて、その奥の茂みが透けて見えていた。
「いや…っ! 見ないで…っ!」
ムラサキは反射的に足を閉じようとしたが、イサミの優しい力に阻まれた。
イサミはゆっくりとまるで包みを開くかのように、その布地を彼女の足から引き抜いていく。
露わになっていく彼女の最も秘められた場所に彼は思わず息を呑んだ。
薄い紫色の茂みの奥に慎ましやかに閉じられた花弁。
それはほんのりと桃色に染まり、すでに蜜で濡れてテラテラと輝いていた。
その可憐さと淫靡さが同居した光景にイサミの理性はもう限界だった。
「ああ…っ! や…見ないで…お願い…っ」
ムラサキは両手で顔を覆い羞恥に耐えていた。
彼女の身体は小刻みに震え、その震えがベッドのスプリングに伝わってギシギシと音を立てる。
太ももを閉じようとしてもイサミの手がそれを優しく押し広げているため、それも叶わない。
「こんなに綺麗なのに、どうして隠すんですか」
イサミはそう囁くと、ついにその花弁に口づけた。彼の熱い舌が彼女の敏感な突起をそっと舐め上げる。
「ひゃあっ…!」
ムラサキの口から今まで聞いたこともないような高い声が上がった。
彼女の身体がビクンと大きく跳ね、シーツを握りしめる手に力が入る。その反応に気を良くしたイサミはさらに執拗に舌を動かした。
「あ…ああ…っ! だめ…そこ…だめ…っ! 変になっちゃう…っ!」
「変に、なってください」
イサミは彼女の突起を唇で挟み、ちゅうっと吸い上げた。
同時に彼の指が彼女の秘所の入り口をなぞる。その二重の刺激に、ムラサキの意識は白くかすんでいった。
「ひうっ…! あ…あ…イサミ…さん…っ!」
ムラサキの腰が、無意識のうちに浮き上がる。
彼女の蜜がとろりと溢れ出しイサミの指を濡らしていく。彼はその蜜を指に絡めながら、ゆっくりと彼女の中へと指を侵入させていった。
「痛くないですか?」
「は…はい…っ、大丈夫…です…けど…なんだか…変な感じ…です…っ」
異物感に、ムラサキの内壁がきゅうきゅうとイサミの指を締め付ける。
その締め付けの強さにイサミの下半身も痛いほどに反応していた。彼のズボンの前は、すでに限界まで張り詰めている。
「リラックスしてください。力を抜いて…」
「こ、こう…ですか…っ?」
ムラサキは必死に深呼吸をして、身体の力を抜こうと努めた。
しかし意識すればするほど力が入ってしまい、彼女の内壁はイサミの指をさらにきつく締め付けた。
その初々しい反応がイサミの欲望をさらに煽る。
「そうです…上手ですよ…」
イサミはそう褒めながらゆっくりと指を動かし始めた。
最初は一本だけ。
彼女の中の柔らかな襞を確かめるように、ゆっくりと優しく。
彼の指が抜き差しされるたびに、くちゅくちゅという水音が静かな部屋に響き渡る。
「あ…んっ…! ふ…ぁ…っ」
ムラサキの口から、甘い吐息が漏れ始める。痛みはもう感じていなかった。
むしろその異物が動くたびに、彼女の知らない快感の波が押し寄せてくる。
子宮の奥が疼きもっと何かが欲しいと訴えている。しかし、それが何なのか経験のない彼女にはわからなかった。
「気持ちいいですか?」
「わ…わかりません…っ! でも…変なの…お腹の奥が…熱くて…っ」
「ここが、気持ちいいんですね」
イサミは指を曲げ彼女の中のある一点を刺激した。その瞬間、ムラサキの身体が跳ね上がり彼女の口から悲鳴にも似た声が上がった。
「ひゃうっ…! そこ…! そこダメ…っ!」
「ダメじゃないでしょう? すごく気持ちよさそうですよ」
イサミはそこを重点的に攻めながらもう一本指を追加した。
二本の指がムラサキの中で動き、時折バラバラに時折一緒に、彼女の敏感な部分を刺激する。
その間も舌はムラサキの突起を舐め続けていた。
「あ…ああ…っ! も…だめ…! なんか…変なの…来ちゃう…っ!」
ムラサキの声が切羽詰まったものに変わる。
彼女の腰が勝手に動き始めイサミの指に自ら擦り寄っていく。その動きは完全に本能的なもので、ムラサキ自身も何が起こっているのか理解できていなかった。
「来ていいんですよ。力を抜いて…」
「で、でも…っ! あ…あ…イサミさん…イサミさん…っ!」
ムラサキは必死に彼の名前を呼びながら、初めての絶頂へと導かれていった。
彼女の身体が大きく弓なりに反り返り内壁がイサミの指を激しく締め付ける。
その瞬間、彼女の口からは言葉にならない叫びが上がった。
「ああああっ…!」
ビクビクと全身を痙攣させながら、ムラサキは人生で初めての絶頂を迎えた。
彼女の蜜がイサミの手を濡らしシーツに染みを作る。その量は思ったよりも多く、彼女自身も驚いているようだった。
荒い呼吸を繰り返しながら、ムラサキは放心したように天井を見つめていた。
彼女の瞳からは知らず知らずのうちに涙がこぼれ落ちていた。
それは痛みの涙ではなく、あまりの快感とそして自分の身体が自分のものでなくなってしまったような不思議な感覚に対する涙だった。
「……大丈夫ですか?」
イサミは優しく彼女の涙を拭いながら尋ねた。彼の声は驚くほど落ち着いていて、それがムラサキの心を少しだけ落ち着かせた。
「は、はい…っ。大丈夫…です…でも…すごかった…です…っ」
ムラサキは恥ずかしそうにしかし素直な感想を口にした。
彼女の頬はまだ真っ赤で、絶頂の余韻で身体が小刻みに震えていた。
イサミの指がまだ自分のなかに入っていることに気づき彼女はさらに恥ずかしくなった。
「では……そろそろ…いいですか?」
イサミはそう囁くとようやく自分のズボンに手をかけた。
ムラサキはコクリと頷くと、恐怖と期待の入り混じった眼差しでイサミの一挙手一投足を見守った。
イサミがズボンと下着を脱ぎ去るとイサミの昂ぶりが露わになる。それを見たムラサキは、思わず息を呑んで目を見開いた。
「え…そ…それが…入るんですか…?」
彼女の声は恐怖で震えていた。
イサミのものを初めて目の当たりにした彼女は、その大きさに圧倒されていた。
先ほどまで彼女の中に入っていた指の何倍もの太さと長さ。それが自分の体の中に入るという想像が彼女の恐怖心を煽った。
「大丈夫です。ゆっくりしますから」
「わかりました…イサミさんを…信じます…っ」
ムラサキは恐怖を押し殺し、精一杯の笑顔を見せた。その健気さがイサミの胸を熱くさせる。
彼は彼女の額に口づけを落とすと、ゆっくりと彼女の上に覆い被さった。
「力を抜いてくださいね。痛かったら、すぐに言ってください」
「はい…っ。でも…大丈夫です…イサミさんなら…きっと…」
ムラサキは彼の背中に腕を回し、ぎゅっとしがみついた。
ムラサキの心臓がバクバクと音を立てているのが密着した胸を通してイサミにも伝わってくる。
イサミは自分の昂ぶりを彼女の秘所の入り口にそっとあてがった。
熱く、硬く、そして脈打つそれを感じてムラサキは思わず息を詰めた。
彼女の蜜で濡れたそこは、彼の先端を難なく受け入れたがそれ以上は固く閉ざされていた。
「いきますよ」
「は…はい…っ! 来て…ください…っ!」
その言葉を合図にイサミはゆっくりと腰を進めた。彼の先端が彼女の狭い入り口をこじ開け、少しずつ中へと侵入していく。
「んん…っ!」
ムラサキは痛みに耐えるように、唇をぎゅっと噛みしめた。
異物が自分の中に入ってくる感覚は指の時とは比べ物にならないほど強烈だった。
引き裂かれるような痛みではないが、内側から圧迫されるような感覚にムラサキの身体は拒否反応を示した。
「痛いですか?」
「だ、大丈夫…です…まだ…大丈夫…っ」
ムラサキは強がったが彼女の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
イサミはそれを見て、一旦動きを止めムラサキが慣れるのを待った。
イサミ自身も、ムラサキの腟の狭さと締め付けに耐えるのに必死だった。このまま一気に突き進みたい衝動をイサミは理性で必死に押さえつけていた。
「少し、このままでいましょう」
「すみません…っ、私…上手くできなくて…っ」
「謝らないでください。ムラサキさん……」
イサミはそう言ってムラサキの髪を優しく撫でた。
その手つきは驚くほど優しくまるで壊れ物を扱うかのようだった。
しばらくすると、ムラサキの身体から少しずつ力が抜けていき内壁もわずかに緩んだ。
「もう…大丈夫…です…っ。続けて…ください…っ」
ムラサキは涙をためた瞳でしかし力強くイサミを見つめて言った。覚悟を決めたのだ。
イサミに自分のすべてを捧げると、そう決めたのだ。
「……わかりました」
イサミは再びゆっくりと腰を進め始めた。彼の昂ぶりが、少しずつ、少しずつムラサキの奥深くへと侵入していく。
その過程で、ある一点に達した時ムラサキの表情が強張った。
「あ…っ! なんか…っ、つっかえて…ます…っ」
「ここが…処女膜ですね」
イサミは自分の先端が薄い膜に阻まれているのを感じていた。
ここを破れば、ムラサキは本当の意味でイサミのものになる。しかし同時にムラサキに痛みを与えることにもなる。
「これを越えると…ちょっと痛いかもしれません。でも、一瞬ですから」
「わ、わかりました…っ。来て…ください…っ!」
ムラサキはイサミの背中に回した腕にぎゅっと力を込めた。ムラサキの爪がイサミの背中に食い込むが、その痛みはむしろ心地よかった。
イサミは意を決して、一気に腰を突き入れた。グチュッという生々しい音とともに昂ぶりがムラサキの処女膜を破り、一気に最奥まで到達する。
「ああああっ…!」
ムラサキの口から、痛みに耐えるような叫び声が上がった。
身体がビクンと大きく跳ね全身に力が入る。
その瞬間、二人の結合部から鮮やかな赤がシーツへと滲み出した。
破瓜の出血は思ったよりも多くすぐに白いシーツに赤い花が咲いたように広がっていった。
それは彼女の純潔の証であり、同時にムラサキが経験した痛みの証でもあった。
血は次第にシーツを伝って広がり小さな模様を作り出していた。
「痛い…っ! あ…痛い…です…っ!」
ムラサキの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
それは痛みの涙であり、同時に安堵の涙でもあった。ついに結ばれた。その事実が、痛みを超えてムラサキの心を満たしていった。
「すみません…もう動きませんから…少し、このままで…」
イサミはムラサキを気遣い、動きを完全に止めた。
イサミのものはムラサキの最も深い場所に収まったままその脈動だけが二人の間に伝わっている。
ムラサキの中は異物を排除しようと、ぎゅうぎゅうとイサミのものを締め付けその締め付けが逆にイサミを追い詰めていった。
「はぁ…はぁ…っ」
ムラサキは荒い呼吸を繰り返しながら必死に痛みに耐えていた。
額にはうっすらと汗が浮かび、その汗が夕日に照らされて輝いている。
ムラサキの膣内は破瓜の出血と愛液で満たされ、それがイサミのものを温かく包み込んでいた。
しばらくすると、ムラサキの呼吸が落ち着いてきた。
痛みも少しずつ和らいでいき代わりに彼の中に満たされているという充実感が、彼女の心を支配し始めた。
「イサミさん…」
「はい」
「私…イサミさんのこと…大好きです…」
ムラサキは涙で濡れた顔で、精一杯の笑顔を見せた。その笑顔はイサミの胸を深く打った。
「僕もです。ムラサキさんのこと、好きですよ」
今この瞬間この言葉以外に気持ちを表すものはなかった。
「あ…イサミさん…動いても…大丈夫です…っ。もう…痛くないです…から…っ」
ムラサキは恥ずかしそうにしかしはっきりとそう告げた。
彼女の内壁はまだ少し痛みを感じていたが、それ以上に彼ともっと深く繋がりたいという欲求が勝っていた。
「本当に大丈夫ですか?」
「はい…っ。イサミさんが…欲しいです…っ」
その言葉を聞いてイサミの中の理性の糸がプツンと切れた。
ゆっくりと腰を動かし始めた。
最初は本当にゆっくりと、彼女の様子を確かめながら。
抜き差しするたびにくちゅくちゅという水音が部屋に響き、その音には血が混じっているために通常よりも少し重たい音がした。
「ん…っ! あ…んっ…!」
ムラサキの口から甘い吐息が漏れ始める。痛みはもうほとんど感じていなかった。
むしろ、イサミの昂ものが自分の内側を擦るたびに先ほどとは違う種類の快感が湧き上がってくるのを感じていた。
それは内側から満たされるような、深い快感だった。
「い…っ! 気持ちいい…です…っ! イサミさんが…私のなかで…動いてる…っ」
ムラサキは羞恥に耐えながらも、素直な感想を口にした。
言葉は途切れ途切れで喘ぎ声と混ざり合って、妙に艶めかしい響きを持っていた。
イサミは次第に動きを速めていった。
腰の動きに合わせて、ベッドがギシギシと規則的なリズムを刻む。
そのリズムに合わせてムラサキの口からも「あんっ…あんっ…」という喘ぎ声が漏れ続けた。
「あ…ああ…っ! すごい…っ! なんか…さっきと違う…っ!」
ムラサキは自分の身体に起こっている変化に戸惑いながらもその快感に身を委ねていた。
先ほどイサミの指で達した絶頂とは、明らかに質が違う。
それはもっと深くもっと根源的な快感だった。
子宮の奥が疼き、イサミのものをさらに奥へと招き入れようとしているかのようだった。
「ここが気持ちいいんですか?」
イサミは角度を変え、彼女の中のある一点を集中的に刺激した。
それは先ほど指で見つけた彼女の最も敏感な部分だった。
「ひゃうっ…! そこ…っ! そこすごい…っ! あ…あ…イサミさん…イサミさん…っ!」
ムラサキはイサミの名前を連呼しながら快感に身を捩った。
腟内がきゅうきゅうとイサミのものを締め付け、その締め付けがさらなる快感をもたらした
結合部からは先ほど破瓜で流れた血と新たに溢れ出した愛液が混ざり合い、淡い桃色の泡となって二人の太ももを伝ってシーツに染み込んでいく。
その淫靡な水音が、静かな部屋の中に絶え間なく響き渡っていた。
「あ…ああ…っ! だめ…また…変なの…来ちゃう…っ!」
ムラサキの声が切羽詰まったものに変わる。
彼もはや自分の意志では制御できず、無意識のうちにイサミの動きに合わせて淫らかに揺れていた。
自らさらに奥へと招き入れようとするかのように腰をくねらせるその姿は、つい先ほどまで純潔だった乙女とは思えないほど官能的だった。
「イっていいんですよ。僕も…もう…っ」
イサミの声もまた、余裕を失っていた。
ムラサキのあまりにも狭く熱く、そして締め付ける膣内に、彼もまた限界が近づいていた。
額に汗が浮かびその汗がこめかみを伝って落ちる。
背中にはムラサキの爪が食い込み、その痛みさえも今は快感の一部となっていた。
「一緒に…っ! イサミさんと…一緒に…っ!」
ムラサキはイサミの背中に回した腕にさらにぎゅっと力を込めた。
両足は無意識のうちにイサミの腰に絡みつき、まるでイサミを離すまいとするかのように強く抱え込む。
「ムラサキさん…!」
イサミは彼女の名前を呼びながら最後の数回、特に深く特に強く腰を打ち付けた。
そのたびに、パンッパンッと良い音を立ててぶつかる。
その音と結合部からの水音と、ベッドのスプリングの軋む音が部屋の中で渾然一体となって官能的な交響曲を奏でていた。
「あ…ああっ…! イサミさん…イサミさん…あああっ…!」
ムラサキの身体が大きく弓なりに反り返った瞬間彼女は二度目の絶頂を迎えた。
膣内が激しく痙攣し、まるで搾り取るかのようにイサミのものを締め付ける。
その強烈な締め付けに耐えきれずイサミもまた彼女の最奥で精を放った。
「くっ…!」
イサミの口から堪えきれない呻き声が漏れる。
彼の熱い精が、ビュクビュクと脈打ちながら彼女の子宮口に直接叩きつけられていく。
その熱さを感じてムラサキの身体がさらに小さく痙攣した。
二人は同時に、互いの名前を呼びながら深い絶頂の淵へと一緒に沈んでいった。
「はぁ…はぁ…はぁ…っ」
荒い呼吸だけが部屋の中に満ちる。
二人の身体は汗でぐっしょりと濡れその汗が互いの肌を滑らかに這っていく。
イサミはまだ自分のものを彼女の中に収めたまま、その温もりと脈動を感じ続けていた。
ムラサキもまた彼が自分のなかにいるという充実感に、放心したようにぼんやりと天井を見つめていた。彼女の瞳からは静かに涙がこぼれ落ちていた。
「痛かったですか?」
イサミはそっと彼女の涙を指で拭いながら尋ねた。彼の指が彼女の柔らかな頬に触れると、ムラサキはその感触に小さく息を呑んだ。
「最初は…痛かったです…でも…今は…しあわせ…です…っ」
ムラサキは涙で濡れた顔で精一杯の笑顔を見せた。
ムラサキのの破瓜の血はまだ二人の結合部から滲み出し続けており、シーツの上には手のひら大の赤い染みがいくつも広がっていた。
その鮮やかな赤はムラサキの純潔の証であり、同時に二人が結ばれたことの紛れもない証拠でもあった。
「血が…たくさん出てますね。心配です」
「だ、大丈夫です…だと…思います」
ムラサキは恥ずかしそうにそう言った。
彼女は薬師として自分の身体のことはよくわかっていた。
人によって破瓜の出血量には個人差があり、自分はたまたま多い方であるだけだと冷静に分析できる部分もあったがそれでも好きな人の前でこんなに血を流してしまったことが純粋に恥ずかしかった。
「でも、やっぱり心配です。後でちゃんと手当てしましょう」
「はい…でも…その前に…もうちょっとだけ…このままで…いてください…っ」
ムラサキはそう言ってイサミの胸に顔を埋めた。彼の心臓の鼓動が、自分の心臓と重なり合って聞こえる。
その音を聞いていると言葉では表せないほどの安心感が包み込んだ。
イサミがまだ自分のなかにいる。そのことが、何よりも自身を安心させた。
「いつまででも、こうしていましょう」
イサミはそう囁くと、ムラサキの濡れた前髪をそっとかきあげその額に優しい口づけを落とした。
汗と涙と血と体液が混ざり合った部屋の中の匂いさえも、今は愛おしく感じられた。
窓の外の茜色が次第に群青色の夜へと溶け込み、王都の街に静かな星々が輝き始める頃。
部屋の中には満ち足りた静寂と熱を帯びた余韻だけが残されていた。
時折、二人のどちらかが身動ぎするたびにベッドがギシリと小さく鳴り、それが合図のようにまた互いの存在を確かめ合うように見つめ合った。
「イサミさん…」
「はい」
「私…イサミさんのこと…ずっと前から…好きでした。初めて会った時から…どこか気になってて…それが恋だって気づいたのは、最近ですけど…でも、きっとずっと好きだったんだと思います」
ムラサキは途切れ途切れにしかし一言一言を噛みしめるように想いを伝えた。ムラサキの声はまだ微かに震えていたが、その言葉には一片の嘘もなかった。
「僕もムラサキさんのこと、ずっと大切に思っていました。最初はただの友人としてだったけど、いつの間にかそれ以上の感情になっていました」
「本当ですか…?」
「本当です」
「嬉しい…です…っ」
ムラサキの目から再び涙が溢れ出た。
しかしそれは、痛みや羞恥の涙ではなく純粋な幸福の涙だった。
ムラサキはイサミの胸にさらにぎゅっと顔を押し付け、その温もりを全身で感じようとしていた。
「そろそろ…抜きますね。少し、沁みるかもしれません」
「は、はい…っ」
イサミはゆっくりと腰を引きムラサキの中から自分のものを抜き出した。
ずるり、という生々しい感触とともに萎え始めたものがムラサキの外へと出てくる。
その時、膣内からはどろりとした液体が溢れ出た。それは白濁とした精液と透明な愛液、そして鮮やかな赤い血が混ざり合ったものでその量は思ったよりも多く、すぐにシーツの上に新たな染みを作った。
「あ…っ」
ムラサキはその感覚に小さく声を上げた。自分の中からイサミのものが抜けていく喪失感とそして温かい液体が太ももを伝っていく感覚。
それが妙に恥ずかしくて、ぎゅっと目を瞑った。
「すごい量ですね…本当に大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です…っ。私、もともと血が多めに出る体質みたいで…。こういう時も…ちょっと…多いのかも……しれません……」
ムラサキは顔を真っ赤にして説明した。
自分自身こんなに出血するとは思っていなかったので、少し驚いてもいた。
しかし痛みはもうほとんどなくむしろ自分がイサミのものになったという実感が、出血の多さによってより強く感じられるようでそれはそれで不思議な満足感があった。
イサミ達は再びベッドへと優しく抱き合った。
窓から吹き込む夜風が部屋の中の籠った空気を少しずつ入れ替えていく。
それは、昼間の薬草の香りとはまた違う夜の花々の甘い香りを運んでいた。
「…あったかい」
ムラサキはシーツを胸元まで引き上げるとイサミの胸にぴったりと顔を寄せ、その鼓動を愛おしそうに聴いていた。
イサミの心臓はまだ少し早く脈打っていてその音が子守唄のように心地よかった。
ムラサキの頬にはまだ朱が残っているが、その表情には今まで見せたことのない心からの幸せそうな笑みが浮かんでいる。
「イサミさんの心臓の音…好きです」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「ずっと…聞いていたいです」
「いつでも聞かせてあげますよ」
部屋の中には、満ち足りた静寂と、熱を帯びた余韻だけが残されていた。
。
イサミは彼女の柔らかい紫色の髪をそっと撫でながら、天井を見上げた。
「……ムラサキさん」
「は、はい……っ?」
「さっきのガスマスクの設計図……もっと完璧なものに仕上げましょうね。僕たち二人で」
ムラサキはイサミの胸元に顔をうずめ、ふふっと恥ずかしそうに、けれど幸せっぱいの声で応えた。
「はいっ……! イサミさんと私なら……世界で一番の、最高の道具が作れます……っ!」
静かな夜の部屋で、二人は互いの体温を感じ合いながら、そっと再び唇を重ね合わせるのであった。