※この作品はR-18です。

イサミクエスト マックシム   作:勇者パンスト

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最終章


研究所へ①

 

 

 

 

あの日、コパンドンCITYの街角で刺客の強襲を受けてから、ちょうど一週間が経過していた。

 

 

 

 

秋の冷たい風が街を吹き抜ける中、クランホームでは、不眠不休とも言える壮絶な準備が進められていた。

 

 

 

 

相手は、かつてない異常なまでの戦闘能力と未知の集束斬撃を放つ「重鎧の剣士」。

 

 

そして、その背後に蠢く組織。

 

 

 

 

一筋縄ではいかない敵に対し、イサミは持ち前の意地悪でスマートな発想を全開にし、幾重もの対重鎧用ガジェットや特殊煙幕、錬金触媒を完成させていた。

 

 

 

 

 

「はーい、皆さん! 装備の点検、全員完了ですねぇ?」

 

 

 

 

洞窟の露天口を目前にした小高い丘の上で、イサミは腰の多機能ベルトや背の大型コンテナの金具を確かめながら、集まった仲間たちを見回した。

 

 

 

 

今回の決戦に臨むのは、総勢七名。

 

 

 

 

先陣を切るイサミの隣には、前衛と後衛を支える仲間たちが並んでいる。

 

 

 

頼れるCランク剣士・クロエ。

 

天真爛漫な天才魔法使い少女・ココ。

 

薬師の少女・ムラサキ。

 

 

 

さらに、今回は心強い「助っ人」であり、イサミと浅からぬ絆を結んだカラー族の三人が加わっていた。

 

 

 

美しい細剣を構えるプリモ・カラー。

 

豪快な笑顔で大弓を携え、前線で猛威を振るうミラの従妹・ミラ・カラー。

 

 

そして、前髪の隙間からイサミへ愛おしげな視線を送り、自らの意思でイサミの盾となることを誓った、深い蒼の衣装を纏うパントン・カラー。

 

 

 

「ふふ、バッチリよ、イサミ。細剣の手入れも完璧だわ」

 

 

 

 

プリモが紫水晶のような瞳を細め、可憐で大人びた微笑を浮かべた。

 

 

 

 

「正面は任せなさい! イサミは後ろからしっかりアイテムでサポートしなさいよね!」

 

 

 

クロエが剣をぐっと握り直し、気合い十分に言い放った。

 

 

 

「ココも頑張る! イサミくんの立てた作戦通りに、魔法でドカーンってバッチリサポートするね!」

 

 

 

ココが元気に両手を突き上げ、天真爛漫な笑顔を弾けさせる。

 

 

 

「あ、あの……っ! 私のお手製のお団子薬も、全員分ポーチに入れておきました……っ! 傷を受けたら、口にポンって含んでくださいね……っ!」

 

 

 

ムラサキがもじもじと指をすり合わせながら、一生懸命に声を張った。

 

 

 

 

「みんな、気合入ってるね〜! パントンも、イサミの足引っ張らないように頑張ろうな!」

 

「はい……っ! イサミ様のお命は、このパントンが……命に代えてもお護りいたします……っ!」

 

 

 

 

パントンが額の青色クリスタルを愛おしげに輝かせ、両手で長弓を強く抱きしめた。

 

 

 

 

「あはは……パントンさん、命に代えちゃダメですよ。全員生きて帰るのが、今回の作戦の絶対条件なんですからね〜」

 

 

 

 

イサミは軽快な口調で返しながらも、腰元に下げられた『短剣』の感触を確かめた。

 

 

 

 

あの日、刺客の女が狙ってきたこの短剣。

 

すべての答えは、この先に広がる暗く不気味な隠し研究所に眠っているはずだった。

 

 

 

 

「――よし! それじゃあ皆さん、特別捜索隊、出発です!」

 

 

 

 

イサミの合図とともに、七人は静かに洞窟の闇へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

♢

 

 

 

 

 

 

洞窟の内部は湿り気と冷気が肌を刺す空間だった。

 

 

慎重に歩を進め、地下深くへと続く階段を下りきったイサミたちは、研究所の重厚な金属扉の前にたどり着いた。

 

 

 

「……気をつけてください。扉を開けた瞬間、前回のあの重鎧が待ち構えている可能性があります」

 

 

 

イサミが低い声で警戒を促し、探知を滑り込ませた。

 

 

 

 

だが――。

 

 

 

 

 

「……あれ? 反応が……ありませんね?」

 

「反応がない……? どういうこと、イサミ?」

 

 

 

クロエが眉をひそめ、剣の柄を握る手に力を込めた。

 

 

 

 

「文字通りの意味ですよ。入口付近には動く反応がありません。あのバカでかい重鎧の気配すら見当たりませんねぇ」

 

「ええっ!? 嘘でしょ!? あいつ、ここで留守番してたんじゃないの!?」

 

 

ミラが不満そうに声を張り上げた。

 

 

 

「……静かに、ミラ。油断を誘う罠かもしれないわ」

 

 

 

プリモが制し、扉の周囲を観察する。

 

 

 

「あ、あの……! 扉の周りから漂う魔力の匂いが……すごく薄くなっています……! 結界が止まってる……のかもです……っ」

 

 

 

ムラサキがおどおどしながらも、薬師としての鋭い感覚で指摘した。

 

 

 

「どのみち、入るしかないですねぇ。クロエさん、扉をお願いできますか?」

 

「任せときなさい!」

 

 

 

クロエが重厚な金属扉を力任せに押し開いた。

 

ギギギ……と不快な音を立てて開き出された内部には、無機質で重苦しい空間が広がっていた。

 

 

 

 

「……本当に、誰もいませんね」

 

 

 

 

イサミは足元に落ちていた金属片を軽く突きながら、慎重にホールの中央へと進み出た。

 

 

 

 

「前回、僕たちが逃げ出したことで拠点を放棄した……いや、それにしては貴重な機材がそのまま残されていますね。持ち去られたのは、極一部の資料と……あの重鎧そのものだけのようです」

 

「逃げた、というよりは『次の段階』へ移動した……という雰囲気ね」

 

 

 

 

プリモが美しい指先で壁の魔力ラインをなぞりながら、冷静に指摘した。

 

 

 

 

「うだうだ考えてても始まらないわよ、イサミ! 奥を捜索して、奴らが何企んでたのか暴いてやりましょう!」

 

 

 

 

クロエが先陣を切って歩き出した。

 

 

 

 

 

 

♢

 

 

 

 

 

 

通路を進むにつれ、壁面に刻まれた惨劇の痕跡が目立つようになってきた。

 

 

やがて、七人は「第三研究区画」の重厚な自動扉の前に到着した。

 

イサミがバイパスツールで扉を解除し、中へと足を踏み入れる。

 

 

 

そこに広がっていたのは、巨大な円形の実験場だった。

 

 

 

 

部屋の中央には、内側から砕け散った巨大な透明カプセルが幾つも並んでいる。

 

 

 

 

「な、なんだよこれ……。人間が何十人も入れそうな容器じゃない……」

 

 

 

クロエが息をのんだ。

 

 

 

 

「わあ……なんか、不気味な液体の匂いがプンプンするよ……! ドカーンって爆破されたのかな?」

 

 

 

 

ココが鼻を軽くつまみながら、興味津々に砕けたカプセルを覗き込む。

 

 

 

イサミは無言のまま、部屋の壁際に散乱する紙媒体の資料群へと近づいた。

 

 

 

 

「ココさん、ムラサキさん、手分けして資料を回収しましょう。何が書いてあるか読み解きますよ」

 

「うん! ココ、紙の山からすごそうなの探す!」

 

「は、はいっ……! 私も探してみます……っ!」

 

 

 

 

拾い集めた資料群――そこに記されていたのは、狂気の研究記録だった。

 

 

 

 

『概念存在「〇〇」における適合失敗体の再利用、ならびにその残滓からの【意思】抽出・固定化に関する考察』

 

「……〇〇……?」

 

 

 

 

ムラサキが眉をひそめた。

 

 

 

 

 

「固有名詞の部分が削り取られていますね。……内容を読み解きますよ。

 

『…………年にわたり生み出された数多の「失敗作」。これらは肉体的な崩壊を辿り無に帰したが、その魂の欠片――【意思】は蓄積され続けている。装飾剣「コア」は、これら失敗作の意思を抽出し、収束・固定化するための触媒である……』」

 

 

 

「……失敗作の……意思の残滓……!?」

 

 

 

 

 

クロエが目を剥いた。

 

 

 

 

「正気じゃないわ! あの『ぶっ壊れ剣』って、過去に生み出されたバケモノたちの失敗作の『ナニカ』を集めて動かすための装置だったってこと!?」

 

 

 

「ええ……そういうことになりますかねぇ……」

 

 

 

 

イサミは冷え切った汗を額に浮かべながら、手元の資料をさらにめくった。

 

 

 

 

「……重鎧の剣士の正体もここに書いてあります。『失敗作たちの残滓から抽出された【意思】を定着させるための肉体容器(ホムンクルス)。自我を剥奪された【肉の鞘】』……」

 

「ひえぇ……っ! じ、自分という心がないなんて……そんなの悲しすぎます……っ!」

 

 

 

 

ムラサキが悲鳴のような声を上げた。

 

 

 

 

「……許せません……っ。人の心まで踏みにじるなんて……っ!」

 

 

 

 

パントンも怒りに体を震わせる。

 

 

 

 

「……ねえ、イサミ」

 

 

 

 

プリモが静かにイサミの隣に立ち、イサミの腰元にある『短剣』へと視線を向けた。

 

 

 

 

「なぜあの刺客があなたの短剣を狙ってきたのか……これで繋がったわね」

 

「……ええ。僕の母さんが持っていたこの短剣。これも、奴らが『装飾剣』を完全化させるために探していた【同質】の存在だったんですよ」

 

 

 

でも。とイサミは続ける。

 

 

「でも、どんな理由があろうと、これは僕が母さんから受け継いだ短剣です! あんな血生臭い怨念の兵器のパーツになんて、絶対にさせません!」

 

 

 

 

イサミの力強い言葉に、周囲の仲間たちが深く頷いた。

 

 

 

 

 

「当たり前じゃない、イサミ! あんたの大事なお守りを奪わせるわけないでしょ!」

 

 

 

 

クロエが頼もしく胸を張った。

 

 

 

 

「……ふふ、約束よ、イサミ。奴らの思い通りにはさせないわ」

 

 

 

 

プリモが可憐に微笑む。

 

 

 

 

「先に進みましょう、皆さん!!」

 

 

 

 

イサミの叫びに、七人の覚意が力強く響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

円形実験場を後にしたイサミたち七人は、さらに奥の中央分析室へと足を踏み入れていた。

 

 

そこには無数の書架と精密魔導具、そして厳重に保管された資料が並んでいた。

 

 

 

 

「わーい、ここにも本がいっぱい! ココ、すごいの見つけるね!」

 

 

 

 

ココが素早く机の上に広げられていた手記を手にとった。

 

 

 

 

「……イサミくん! これ、武器に対する『エンチャント』の研究論文だよ!」

 

「エンチャント……?」

 

 

 

 

クロエが腕を組み、不審そうに首をひねった。

 

 

 

 

「普通の付与技術なら、あたしたちだって知ってるわよ。武器に属性を込めたりするヤツでしょ?」

 

「ですが……この資料に書かれているのは『付与上限』の限界に関する検証記録です!」

 

 

 

 

 

ココは真剣な表情でページをめくる。

 

 

 

 

「一般的に、武具へ永続的に付与できる概念は『1つ』か『2つ』が限界のはずです。でも……この研究は、その限界を超えて『7つの実験』と『数千の付与』を強引に詰め込もうとしています!」

 

「な、7つ!? 数千!?」

 

 

 

 

クロエが絶句した。

 

 

 

 

「バカ言わないでよ! そんなの、一気に武具に込めたらドカーンって爆発しちゃうじゃない!」

 

「そうなんです、クロエさん。……ここは『武具に対する付与の限界』を研究する施設…………なんですかね」

 

 

 

 

イサミは壁際に散乱する無数の失敗作を見つめた。

 

 

 

 

 

「付与の限界を超えて暴走した装飾剣……。そして、それを制御するために生の人間や幾田の武器を『拡張用の触媒』として使い潰していた……」

 

「……つくづく胸が不快感で満たされる場所ね」

 

 

 

 

 

プリモが冷徹な瞳で周囲を見回した。

 

 

 

 

「……あ、あの……っ! 私……こんな恐ろしい実験の跡を見るだけで……吐き気がしてきます……っ」

 

 

 

 

ムラサキが青ざめた顔で自分の腕を抱きしめた。

 

その時、イサミの目が分析台の上の一枚のスケッチ画に留まった。

 

 

 

 

「……ん……? これは……!?」

 

 

 

 

そこに描かれていたのは、初期試作型として破棄された武具のリスト。

 

その最下段に描かれていたのは――。

 

 

 

 

「……僕の……短剣……!?」

 

 

 

 

イサミは腰元から仕込み短剣を引き抜き、スケッチと見比べた。

 

寸法も文様も完璧に一致している。

 

 

 

 

 

「……間違いないわね、イサミ」

 

 

 

 

 

プリモが静かに告げた。

 

 

 

 

「この短剣もまた……あの装飾剣の付与容量を調べるために作られた【初期失敗作】だったのよ」

 

「……失敗作……僕の短剣が……?」

 

 

 

 

イサミは呆然とした。

 

 

 

 

「資料によるとですが。……けど、触媒としての性能は残っているため、あの装飾剣の暴走を抑える『安全弁』として必要なのなも……しれませんね……」

 

 

 

ムラサキの解説に、イサミは自嘲気味に笑った。

 

 

 

 

「ハハ……僕がずっと肌身離さず持っていたお守りが、奴らにとって……」

 

 

 

 

だが、イサミの胸には最大の疑問が浮かんでいた。

 

 

 

 

「……でも、おかしいですよ。この短剣は、僕が旅立つ時に母さんが『お守り』として渡してくれたものなんです。母さんは……なぜこんな恐ろしい失敗作を持っていたのでしょうか……?」

 

 

「……おふくろさん、ただ者じゃなかったとか……!?」

 

 

 

 

ミラの問いかけに、イサミは首を振った。

 

 

 

 

「わかりません……。母さんは優しくて、厳しくて。……だけど、なぜ僕にこれを……?」

 

 

 

 

深く沈み込みそうになるイサミの肩を、プリモがそっと撫でた。

 

 

 

 

「考え込んでも、今は答えは出ないわ、イサミ。お母様があなたにこの短剣を渡した時に込めた『無事に旅立ってほしい』という情愛……それだけは偽りではないはずよ。違うかしら?」

 

 

「……プリモさん……」

 

 

「ふふ、だからこそ、今は前だけを見なさい」

 

 

「そうよ、イサミ!」

 

 

 

 

クロエがイサミの背中を豪快に叩いた。

 

 

 

 

「あんたのお母さんが何者 だろうと、今はこの短剣があんたの大切なお守りだってことに変わりないわ! 奴らに奪わせなきゃいいだけの話よ!」

 

 

「……あ、あのっ! 私も……イサミさんのお守りを絶対に守りますから……っ!」

 

 

 

 

ムラサキも気弱ながらに必死の表情で頷いた。

 

 

 

 

「……ハァ。全く、皆さんには敵いませんねぇ」

 

 

 

 

イサミはいつものちゃっかりした笑みを復活させた。

 

 

 

「すみません、落ち込んじゃいました! 母さんの真意も短剣の謎も、全部あのバケモノどもをブチ飛ばしてから考えましょう!」

 

 

「よしっ! そうこなくっちゃね!」

 

 

 

 

クロエが満足そうに剣を担ぎ直した。

 

 

 

七人は覚意を新たに、さらなる深奥――大図書館へと足を進めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

♢

 

 

 

 

 

 

 

探索を続けるイサミたちがたどり着いたのは、巨石を打ち抜いて造られた巨大な「大図書館」であった。

 

数千冊に及ぶ古書が並ぶ中、中央の机に置かれた資料をココが素早く読み解いていく。

 

 

 

 

「……イサミくん! ここにあるのは、組織が収集した『魔人』や『悪魔』に関する極秘記録だよ!」

 

「魔人……?悪魔……!?」

 

 

 

 

イサミが息をのむと、プリモが古書を覗き込んだ。

 

 

 

 

「……研究していた不穏なキーワードが幾つも書かれているわね」

 

「うん! ココ、読みあげるね! 一つ目は……【無敵結界】!」

 

「む、無敵結界……!?」

 

 

 

 

イサミは思わず苦笑した。

 

 

 

 

「え……えぇ……。ネーミングがストレートすぎやしませんかね? 道具屋の子供でももっとマシな名前を付けますよ……」

 

「でも、本気みたいだよ!」

 

 

 

 

ココが真剣な顔で説明する。

 

 

 

 

「この【無敵結界】では、あらゆる物理攻撃も魔法も無効化されちゃうんだって! ドカーンって攻撃しても全部効かないの!」

 

「攻撃が効かない……!? ちょっと、それ本気で言ってるの!?」

 

 

 

クロエが頭を抱えた。

 

 

 

 

「そんなのズルじゃない! どうやって戦えって言うのよ!」

 

「……不快ね」

 

 

 

 

プリモが不快そうに眉をひそめた。

 

 

 

 

「……ココさん、二つ目は?」

 

「二つ目は……【才能上限】!」

 

 

 

 

ココが不気味なスケッチを示した。

 

 

 

 

 

「すべての生き物には、生まれ持った『魂の器の限界(才能上限)』があって、どれだけ努力してもそれを超えられないんだって。でも……魔人はその上限が果てしなくて……」

 

「……努力しても届かない限界……か」

 

 

 

 

クロエが悔しそうに拳を握りしめた。

 

 

 

 

 

「そして三つ目は……【階級】??」

 

 

 

 

ココが最後の巻物を開いた。

 

 

 

 

「悪魔たちの間には絶対的な階級があって、下の階級の人は、上の階級の人に命令されたら逆らえない仕組みになってるんだって!」

 

「はあぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

クロエが本格的に怒鳴り散らした。

 

 

 

 

 

「なんだそりゃ!! 強い奴には逆立ちしても勝てないようになってるってこと!? ふざけんじゃないわよ! 泥臭く工夫して格上の首を獲るのが、あたしたちの戦い方でしょうが!!」

 

「……まったく、恐ろしい理屈ね」

 

 

 

 

プリモも冷ややかに吐き捨てた。

 

 

 

 

【無敵結界】、【才能上限】、【階級】。

 

 

 

 

理不尽すぎる言葉の数々に、場に重苦しい沈黙が流れる。

 

 

 

 

「……ハァ」

 

 

 

 

イサミは深く溜息をつき、ポンと自分の両頬を叩いた。

 

 

 

 

 

「……よし! やめやめ! こんな難しい文献をここでじっくり読み込んで頭を悩ませてたって、一銭の得にもなりません!」

 

「えっ……? イサミ、読まなくていいの……?」

 

 

 

 

ミラが目を丸くする。

 

 

 

 

「ええ、読まなくていいです!」

 

 

 

 

イサミはキッパリと言い放った。

 

 

 

 

「奴らがどれほど凄い結界を持っていようが、才能上限を破ろうが、階級で威張っていようが……僕たちのやるべきことは最初から一つも変わっていません!」

 

 

 

 

イサミは腰の短剣の柄に手を置き、不敵に微笑んだ。

 

 

「目の前にある障害を取り除き、僕たちの平穏な日常を脅かす組織をブチ壊す。それだけです! 道具屋の知恵とカラクリ、そして皆さんの最高の力があれば、どんな理不尽だってどさくさに紛れて突破してみせますよ!」

 

 

 

 

イサミの頼もしい言葉に、場の空気が一気に晴れ渡った。

 

 

 

 

「……ふふ、やっぱりイサミは良い顔をするわね」

 

 

 

 

プリモが大人びた微笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「っ!最初からそのつもりよ! 無敵だろうが階級だろうが、あたしの剣で戦ってみなきゃわからないわ!」

 

 

 

クロエが豪快に笑い、剣を担ぎ直した。

 

 

 

 

「うん! イサミくんの言う通り! 難解なのはココがメモしておいて、後でドカーンってやっつける方法を考える!」

 

 

 

 

ココも元気に大賛成する。

 

 

 

 

「あ、あのっ……私も……イサミさんのために精一杯頑張ります……っ!」

 

 

 

 

ムラサキも決意を込めて頷いた。

 

 

 

 

「さあ、進みましょう、皆さん! 」

 

 

 

 

 

七人の決死隊は難解な理不尽を蹴り飛ばし、さらなる地下深奥へと迷いなき一歩を踏み出すのだった。

 

 

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