「……さて」
天嶺たちからは離れた場所にマットを敷いた澪は、改めて綾小路、軽井沢、堀北の三人を見やった。
「まあ最初に言っとくと、こうして距離を取って、マットを敷いてってな具合に準備しといてなんだけど、今日のところは必ずしもセックスまでやらなくてもいいわ」
その言葉に、三人は異なる表情を浮かべる。疑問、或いは拍子抜け。
「ぶっちゃけるとね、この施設の中には天嶺が結界を張ってるのよ。効果はちょっとした思考誘導。つっても微々たるもので、『ちょっと素直になりやすくなる』程度のものだけどね」
気楽そうに言った澪は、肩をすくめた。
「自分たちの行動を疑問に思わなかった? いくら何でも、『場に酔った』ってだけじゃ無理があるでしょ」
続けて言われ、綾小路たちは顔を見合わせる。
「そう言われると、心当たりがなくはないな。軽く流していたが、性衝動の暴走だけじゃあ説明がつかない。いくら何でも、出会って数日しか経っていない女子相手に、『セックスしよう』はないだろう……」
真っ先に同意を示したのは綾小路だった。顔に手を当て、ガックリと肩を落としている。
女子二人もまた、改めて自身の言動を思い出したのか、羞恥に顔を赤らめていた。
「なんでこんな結界を張ってるかって言うとね。性欲然りストレス然り、溜め込み過ぎるのはよくないからよ。そこに本人の自覚は関係ない。
綾小路なんて、その典型例でしょ。表情筋がまともに仕事をしていない。私らの年齢でそれは、そして本人がそれを苦とも思っていないのは、紛うことなく異常なのよ。……綾小路の場合は、まず間違いなく洗脳教育の結果でしょうし、極端な例だけどね。
だから、ごく限られた範囲、ごく限られた面子の間では、吐き出しやすい状況を作ってあるのよ。
軽井沢、イジメられていたという過去を打ち明けた時、心のどこかがスッとしなかった?」
綾小路の表情筋を例に出されると、誰も否定は出来なかった。
普通なら、そうなる前に本人がSOSを出して然るべきだし、たとえ本人が出せなくても周りが気付いて手を差し伸べるべきなのだ。
けれど、気付いて手を差し伸べるにも、気付けるだけの情報や合図がなければ不可能だ。
この結界は、その情報や合図を出しやすくするためのもの。その方法はどうあれ、必要性に関しては認めざるを得ないのが事実だった。少なくとも、全面的な否定はできない。
「……した」
ボソリと軽井沢は呟いた。
「言った通り、私は中学時代にイジメられたから。理由なんか分からない。私自身は、ただ普通に学生生活を送ってるだけだった。少なくとも、私はそのつもりだった。
それが、ある日突然崩れ去った。私は地獄に叩き落とされた。そして、誰も救い出してはくれなかった。友達も、先生も。挙句の果てには、余計に自分を苦しめる結果にしかならなかった……」
三角座りをして顔を埋めたまま、軽井沢は言葉を紡ぐ。
「どれだけ傷だらけになろうと、明らかにイジメを受けていると分かるダメージだろうと、学校は簡単にイジメとは認めないし、助けようともしない。
世間体ってもんがあるからね。『イジメのあった学校』という事実を知られ、そういう認識を持たれ、公の問題化することを、新入生が入ってこなくなることを、自分たちの仕事がなくなることを恐れてるのよ。
幸か不幸か、学校ってのは一種の密室だからね。関係者以外は実情なんか知る由もない。だから、軽くイジメグループに注意するだけでお終い。効果のほどなんか関係ない。大事なのは、『行動を起こした』という名分が立つことだけ。
だけど、それでも注意された側は怒りを覚えずにはいられないんでしょうね。自身の悪さを棚上げして、怒りを吐き出さんとばかりにイジメは苛烈さを増す。
そんな日々を過ごしている内に、こちらの心が先に折れる。現実の非情さに敗北を認める。認めざるを得ない。――それが、現実なのよ」
その言葉には、イジメの被害者だからこその、被害者のみが持ち得る
「さっきも言ったけど、私の左脇腹にはイジメで負った消えない傷があるのよ。
だから、本来なら、こんな他人の目のある場所で湯着に着替えるなんて選択肢は無い筈だった。余人の視界に入れば、どうしたって注目を受けない筈がないからね。来週にあるっていう水泳の授業なんかも、見学に回るつもりだった。
だってのに、実際にはこうして着替えちゃってるんだからなぁ~! なんかもう、自分が頑なになってただけで、バカらしさを感じずにはいられないわ!」
顔を埋めていた軽井沢だったが、不意に顔を上げて伸びをした。その表情は幾分かスッキリとしている。
「見る? 私の傷」
ばかりか、そう言って湯着をたくし上げる始末だ。
綾小路、澪、堀北の目に、軽井沢の傷痕が映る。生々しくはないが、それがかえって痛々しい。
「ねえ、綾小路くん。この傷を見て、それでも私を
「ああ。オレはお前じゃないから、お前がその傷をどれだけ疎ましく思っているのかは分からない。
だがオレにしてみれば、そんなものはお前の魅力を妨げる要因にはなり得ない。まあ、偉そうに言えるほど、お前の魅力を知っているわけではないがな。精々が外見だけだ」
「……そっか。そう言ってくれるんだ……」
軽井沢は綾小路の言葉に涙を流し、それでも笑みを浮かべて、おもむろに綾小路へと近付いて、その唇を奪った。
そのまま、暫しの時間が流れる。数十秒か、一分ほどだろうか。
「……うん。思考誘導とか、そんなのは関係ない。私は、初めてを捧げるならアンタがいい。抱かれるならアンタがいい。この傷を認めて、それでも美しいって言ってくれた清隆がいい」
唇を離した軽井沢は、そう言って清隆を見上げた。
涙を流して、それでも笑みを浮かべて、端的に言えばブサイクに他ならない筈の軽井沢の表情を見た清隆は、どうしてか『美しい』と思った。
だから、気付いた時には、今度は自分から行動を起こしていた。軽井沢の唇を奪っていた。
再び、数十秒~一分ほどの時間が流れる。
「オレもだ、軽井沢――いや、恵。たぶん、オレは今、お前を愛おしく思っている。こんな衝動を抱いたのは初めてだから確証も確信もないが、お前を手放したくはない。オレのものにしたい」
言って、再び口付けを交わす。
交わらせては離し、今度は攻守を変えて再び唇を交わらせる。
♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢
「私は、いったい何を見せられているのかしら……? 何て言うか、わけ分からずしてイライラとしてくるのだけど……」
それを見て、堀北が呟いた。その言葉通り、不機嫌そうな表情を浮かべている。
「嫉妬。或いは羨望でしょ。アンタも、心のどこかではああいうことを望んでいるのよ。そういう関係になりたい誰かを欲しているのよ」
「嫉妬? 羨望? まさか――とは、言い切れないわね。少なくとも、綾小路くんが私以上の学力を有しているのは事実だし、体つきを見れば身体能力が優れているのも分かるわ。
だから、もしかしたら、私は綾小路くんに兄さんを見ているのかもしれない……」
澪の言葉を、堀北は一概に否定できなかった。
「兄さんって……もしかして生徒会長?」
「ええ、そうよ。私は兄さんを追ってこの学校に来たの。昔は私に優しかったのに、唯一優しくしてくれた人だったのに、いつからか冷たく接してくるようになった兄さんを追って……。
兄さんは素晴らしい人だから、そんな人が急に私に冷たくし始めた以上、私に至らない部分があるのは確かなのよ。それは間違いない。
だからそれまで以上に勉強も運動も頑張って、兄さんの真似をして武道を学んで、兄さんが『長い髪が好き』だと言ったから髪も伸ばし始めたのに、それでも兄さんは私を認めてくれない……。ああ、兄さん……」
その言葉を聞いて、澪は思った。コイツ、ヤベえ。ブラコンにも程がある。そして、本人にブラコンの自覚がない。
「いや、だからでしょうよ」
「何が?」
澪が呆れたように呟けば、堀北はグルリと顔を向けてきた。正直に言って怖い。
「アンタの兄さん――生徒会長にしてみれば、アンタの行いは、『可愛い妹が進んで自分のデッドコピーになろうとしている』ようにしか思えないわけよ。
だとしたら、急に態度が冷たくなったのも頷けるわ。早い話、敢えて冷たく接することで、アンタが会長に愛想を尽かせるように誘導するつもりだったんでしょ。まあ、肝心の部分で言葉足らずだったから、逆にアンタはそれまで以上に執着してしまったみたいだけどね。
端的に言って、アンタは会長に対する認識を改めなさい。その上で、会長の真似をするのであれば、上辺ばかりを真似するのを止めなさい。
そうすれば、たぶん、以前のように優しくしてくれると思うわよ。
ちなみに、これは私の経験則。私だって武術を学ぶ上で、父さんのような剛拳使いになりたかったし目指したわよ。だけど、それでしこたま父さんに叱られてね。『父に対する憧れを持つのは嬉しいが、それで自分の良さを殺してなんとする!』ってね。
そんな経験のある私にしてみれば、言葉足らずな点を除けば、会長は父で、アンタは私にしか思えないわ」
澪の言葉に、堀北は分かりやすいまでに目を見開くのだった。
♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢
「あっ❤ あんっ❤ 清隆ぁ❤ 清隆ぁっ❤」
「はっ! はっ! 恵! 恵!」
澪と堀北が会話に耽っている間に、清隆と恵は随分と盛り始めていたようだ。互いが互いの名を呼んで、その身体を弄り合っている。愛撫しあっている。
綾小路清隆は自身を高めることに忌避感がなく、軽井沢恵はイジメられた過去を持つ。
それが故に、ともすれば清隆が一方的に恵を弄る展開になるかもしれず、それがかえって恵を傷付けることになるかもしれない。
そんな危惧があったからこそ、敢えて結界のネタ晴らしをし、セックスまではしなくていいと告げた澪だったが、これを見れば杞憂だったように思えてならない。
「恵、撫でるだけだと物足りない。オレは恵を舐めたい。吸いたい」
「私も! 私ももっと清隆を感じたい! 舐めていいから私にも舐めさせて! 吸わせて!」
盛り上がった二人は、どちらともなく湯着を脱ぎ去り、手だけではなく口を使って互いを攻め立てる。
顔、首筋、肩……徐々に徐々にと下がらせつつ、所々にキスの雨を降らせ、舐め上げ、吸い立てる。
「あっ❤ 清隆、そこはっ!?」
不意に、恵が一際大きな悲鳴を上げた。
見やれば、清隆が恵の傷痕に吸い付いていた。
「恵、お前はオレのものだ。必然、この傷痕もオレのものだ。お前の学校生活を思えば独占は難しいが、だからこそ、オレのものだという印を付ける」
言って、再び清隆は恵への傷痕へと吸い付いた。
「清隆ぁ❤」
清隆のその行動は、恵を蕩けさせるには十分だった。恵の中で、傷痕に対する嫌悪感が確かに失われていく。
だからこそ、恵もまた清隆を離したくないと思った。自分のものにしたいと思った。
だって、自分が清隆のものでなくなれば、傷痕に対する嫌悪感も蘇るのだ。それを防ごうとするならば、清隆を自分のものにするしかないではないか!
一般的には狂っていても、恵にとっては当然の帰結だった。
「清隆も! 清隆も私のもの! 独占は出来なくても、私のものだっていう印を付ける!」
言って、恵もまた清隆に吸い付いた。清隆には恵のような目立つ
お前は自分のものだ。そう言わんばかりの二人の行動は、徐々にエスカレートしていく。
「れろ……ちゅろ……じゅぱ……」
手と言わず足と言わず、互いの指の一本一本までを口に含み、丹念に舐めしゃぶる。
一つ終わったらまた次へ。その繰り返し。
そしていつしか、その態勢はシックスナインへと移行していた。
「清隆の、凄く大きい❤ Tレックスだっけ? 平田くんも上手い名前を付けるよね」
「恵も綺麗だぞ。瑞々しいピンク色だ」
互いに感想を言い合い、どちらともなく互いの秘所へと舌を這わせる。舐める。吸う。
結界による効果もあるだろう。初めての性行為に、二人は素直に没頭していた。
初体験故に技巧も何もない。ただ、衝動に任せるがままの行動。
「じゅるる❤ ずろろ❤ ぢゅぽっ❤ じゅぽっ❤」
「ああ! いい! いいぞ、恵! イきそうだ!」
Tレックスが恵の口に包まれている。その初めての経験は、清隆を昂らせるには十分過ぎた。
清隆の性経験は皆無だ。自慰行為すらしたことがない。それは清隆の防御力の低さをも表しており、その点ではそこらの学生にも劣っているだろう。
正直に言えば、堀北による手淫の時点でヤバかった。思わず射精しかけたのは清隆だけの秘密である。清隆にも男としてのプライドがあるのだ。
しかし、そのなけなしのプライドも、口淫相手では如何ともしがたい。必死に耐えてこそいるが、限界が近かった。
だが!
だがせめて!
自分がイク前には恵をイカセたい!
それが無理でも、せめて同時にイきたい!
その一念で以て、清隆は恵への攻めを強める。
相手を自分のものにするべく、互いが互いのマウントを取ろうと必死だった。
そして――
「ん”むうううぅぅ❤」
清隆の精液が勢いよく恵の口内へと解き放たれ――
プシャアアアァァ……。
恵の愛液が勢いよく清隆へと降り注いだ。
結果は引き分け。
それを認識したのは恵の方が早かった。偏に、自慰行為を含む性経験の差が表れた形だった。
ゴク、ゴク、ゴクン。
口内に放たれた精液をどうにか飲み干し、未だ正真正銘初めてのオーガズムに呆けている清隆より有利になるべく行動に移す。
絶頂を迎えたばかりで覚束ない身体をどうにか動かし、清隆の上に乗った。腰を浮かせて、位置取りをTレックスの上に合わせる。
「これで、清隆は私のものだね」
「ああ、恵はオレのものだ」
一筋の恐怖を呑み込んで言葉を洩らし、その頃には自意識を取り戻していた清隆がそれに続いた。
汗混じりの互いの顔に浮かぶのは、柔らかな笑み。
恵は勢いよく腰を下ろし、Tレックスは容赦なく恵の処女膜を貫いた。
その衝撃は、果たしてなんと形容したものか。
経験の無さも相俟って、二人は同時に再度の絶頂を迎えたのだった。
はい、清隆と恵です。
一般的な意味で純愛と言えるかは分かりませんが、二人にとっては純愛です。
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学校生活で演じる清隆の性格路線について。クール系の天嶺と、温和系の平田とは別路線を歩みます。基本的には自身の社交性を鍛えるためですが、対象やその周辺人物との友好関係や実力、五月のCPに影響が出ます。
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チャラ男ルート。対象は池。CP上昇大。
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オレ様ルート。対象は佐藤。CP上昇小。
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