※この作品はR-18です。

外法ってやつを見せてやろう   作:山上真

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第17話:お言葉を返すようで悪いけど、貴方って私と同じ中学だったの?

 紆余曲折あったものの、坂柳と真澄は帰っていった。

 二人を見送った後、清隆は他の面々に今後の方針についての話し合いを持ちかけた。

 

「まず、現状ではあくまでも推測に過ぎないが、諸々の情報から『卒業特典を受けられるのはAクラスのみ』である可能性と、『来月支給されるポイントは今月の実力を評価された結果であり、それはクラス評価制である』可能性が高い」

 

 そう前置きした清隆は、そう推測するに至った根拠を説明していく。まあ、その大半は以前に天嶺が言及した事柄だったわけだが。

 ただ、昨夜澪から聞いた『上級生の各クラスにおける机の数』にも言及したため、丸っきり以前の焼き直しというわけでもない。

 

「なるほど、上級生の机の数か。そこまでは気を払っていなかったな……」

「数に差はあれ、各クラスから机の数が減っているということは、その分だけ退学者が出たということ。それが一クラスに集約されていない以上、確かに個人評価の可能性は低いだろうね」

 

 清隆の言葉に真っ先に同意を示したのは平田と幸村だった。

 他の面々も、言葉こそ出していないものの頷いているため、同意見であるのは間違いなさそうだった。

 

「それを前提とした上で……だ。この調子でいくと、来月の支給ポイントはかなりヤバいことになると思われる」

「あ~ね。先生に注意されないのをいいことに、真面目に授業を受けてない子も既に何人かいるからね。正直、私も初日のことがなかったら危なかったし……」

 

 頬を人差し指でポリポリと掻きながら、恵が気まずそうに口を開いた。

 

「それを言ったら私もだけどね。天嶺くんたちと再会できてなかったら、私は実力を隠して様子見してただろうし……」

 

 恵をフォローするかのように、千秋も口を開いた。

 

「まあ、そこについてはいいだろう。()()()()を話していてもキリがない」

()()()()()()を気取っていた誰かさんが言えたことではないと思うのだけど?」

 

 自分のことを棚に上げて清隆が言うと、すかさずに鈴音が揶揄い気に言い放った。

 

「……()()()()を話していてもキリがない。今後のことを話すべきだ。具体的には、学校生活における各々の優先事項だな」

 

 鈴音の揶揄いに対しては反論できなかったのか、清隆は無理矢理に押し流した。

 これ以上そこを突っついても時間の無駄でしかないのも事実なため、誰もツッコミを入れることはない。

 

「当然ながら、各々、この学校に来た最大の思惑は違う筈だ。多くは卒業特典に惹かれてだろうとは思うが、中にはそれ以外を目的にしてきた者もいるだろう。九角と伊吹のように仕事だったり、オレのように『許可なき外部連絡の禁止』という環境に惹かれてだったり、何なら『学費と生活費の免除』という項目に惹かれてきた者もいるだろう。

 そこら辺を確認した上ですり合わせをしておかないことには、今後の学校生活を送る上で齟齬が生じると思う。

 早い話、天嶺たちとオレは『Aクラスでの卒業』それ自体に興味がない。――にも拘らず、Aクラスを目指すためにと過度な協力を要請されても困る。

 まあ、仕事によって収入を得られるだろう天嶺たちと違い、オレは各月の支給ポイントを逃すわけにはいかないから無理のない範囲での協力はするが、精々がその程度だと思っていてほしい」

 

 清隆の言い分は至極尤もなものだった。確かに、それぞれで優先事項はあって然りだし、それぞれで異なっていて然りなのだ。

 当然、『クラスのために』を合言葉に協力する気は合っても、その熱意はそれぞれで異なるだろう。――にも拘らず、合言葉を盾にして過度な協力を要請するようであれば、協力どころか反感が高まるのは間違いない。

 

「まあ、綾小路の言う通りだな。それぞれに()()()()()()()は違って然りだ。

 俺と澪が優先するのはあくまでも仕事であり、端的に言うと学校生活の方がオマケだ。しかしながら、仕事を遂行するためにも途中で退学するわけにはいかんのが事実。

 未だ情報が足りぬ以上、何がどう引っ掛かって退学になるかも分からん。故、必要以上に手を抜くつもりはないし、クラスの一員として協力はする。……が、別にAクラスでの卒業を目指す気はない。

 結果としてそうなることはあるかもしれんが、それを目指して無理をする気はない。それで本業の方に支障が出てしまえば本末転倒なのでな」

「右に同じくね。まあ、アンタたちにしているみたいに、体裁整えてここを使わせたりする分には構わないわよ。勉強会とかをするなら、あった方が助かるでしょ?

 それに、気が向けば誰かしらに勉強を教えるのも吝かじゃない。――だけど、あくまでも『誰かしら』であり、『気が向けば』なのよ。クラスメイトだからって、わざわざ全員の勉強を面倒見る気なんてありゃしないわ」

 

 清隆の言い分には、真っ先に天嶺と澪が同意を示した。

 決して協力をしないわけではない。だが、それはあくまでも()()()()()()()()()であり、無理のない範囲。全面的な協力には至らないことを宣言された。

 現状で判明している限り、天嶺と清隆の学力はクラスでも最高峰だ。澪とて僅かに劣る程度。

 テストの際にはその実力を遺憾なく発揮してくれるとのことだし、高得点を取る生徒が多ければ多いほどクラス評価も上がる筈だから、その点については助かる。

 また、都合が合えばクラスメイトの勉強だって面倒を見てくれるとのこと。実にありがたい限りだ。

 しかし、決して『クラス全体の地力向上』に協力してくれるわけではない。彼らの目が届かない生徒は出てくるし、敢えて手を差し伸べない生徒、差し伸べられた手を取らない生徒もいることだろう。

 それは至極当然のことなのだが、三人が三人とも確かな実力を持っているからこそ、どうしても期待せざるを得ない部分があるのも確かだった。

 それを端的に言い表すならば『甘え』になるだろう。そうと理解していても、期待したくなってしまうのが人情である。

 

「無理は言えん。――と言うより、十分過ぎるだろう。

 現時点ではあくまでも推測に過ぎないのは事実だが、どうしてもAクラスでの卒業を目指したいのなら、それを主目的にしている者が中心となって働くべきだろう」

 

 そんな中、三人の言い分に対して真っ先に理解を表明したのは幸村。

 それもまた道理。

 彼はそのまま言葉を続ける。

 

「僕はAクラスでの卒業を目指している。だから、そのために手を抜くつもりはない。

 けれど、僕が確かな自信を持つ部分なんて学力ぐらいだ。そして、それとて九角と綾小路の二人には劣っているのが現実だ。

 運動も得意じゃなければ、人付き合いだって得意な部類じゃない。改善の努力はするが、どこまで効果が出るかも分からないのが実情だ。

 そも、感情的で騒がしい人間は苦手なタチだからな。そして、入学して僅かに数日だが、内のクラスにはそういう連中が多いことは嫌でも分かった。諸々を踏まえると、僕自身の交友関係は極々限られたものになるだろう」

 

 自らの意思を表明した上で、最後には申し訳なさそうに口を閉じた。

 これまで培ってきたものを、『必要だから』の一点だけで変えるのは、不可能ではないが容易でもない。それを容易に出来る者がいたとするなら、それはそれで確かな才能を持ち合わせていることになる。

 

「私も幸村くんと同じようなものね。今まで、『人付き合い』それ自体を不要なものとして切り捨ててきたから。

 学力と運動能力にそこそこの自信はあるし、必要とあれば勉強を教えるつもりもあるけれど、どこまで上手くやれるかは分かったものじゃないわ。

 正直に言って、先日の軽井沢さんの点数を見た時には絶句したし、最初に来たのは『どうしてこの程度の問題も解けないのか?』という疑問だったから。無論、最後の二問は除くけれどね」

「右に同じくだ。軽井沢には申し訳ないと思うが、僕や堀北みたいな人間にとって、最後の二問を除けば、あの程度の問題は『解けて当然』なんだ。

 軽井沢の事情を知った今では、君に対しては理解も納得も出来るが、クラスの他の面々にまでそれが適用されるかは、正直に言って怪しいと言わざるを得ない」

 

 鈴音が幸村に続けば、幸村もまた同意した。

 二人とも、好きで恵を槍玉に挙げているわけではない。しかしながら、この面子の中では恵がダントツ的に学力不振なのは否定しようのない事実である。

 まあ、それとて『イジメを受けていた』という事実を知れば、理解も納得も示せる。それで理解や納得を示せないほど、鈴音も幸村も非道ではない。

 オマケに、消えない傷を負わせられるほどのイジメだ。自習時間の確保も容易ではないだろう。

 だが、そういう風に理解や納得を示せるのは、事情を知ったからこそでもある。逆に言えば、事情を知らない限り、二人にとって恵はただの『学力不振の劣等生』でしかない。すき好んで付き合う気なんか湧きはしないだろう。

 この時点で、この二人を『クラス全体の教師役』として起用するのが難しいことが明らかになった。

 次に口を開いたのは恵。

 

「私がこの学校に来たのは逃避のため。私がイジメられていた事実を知る者がいない環境に来たかった。そして、二度とイジメられたくなかった。

 だから、最優先というならそれが私の最優先事項。そのために必要とあれば、強者に媚びるのも庇護を求めるのも厭う気はない。それで尻軽だの何だのと思われたって知ったこっちゃない。

 だけど、悪評がイジメられる要因になり得るのも事実だから、根本的解決策として自分を高める努力を厭う気もない。

 そう、私は寄生虫なの。強者に寄生し、その旨味を吸い、それを自身の糧とする。

 だから、Aクラスでの卒業を目指す余裕自体がそもそもない。結果的にそうなることは……あるかも……しれない……けど……」

 

 恵の言葉は、最後には途切れ途切れだった。

 恵自身、頭に手を置いて抑えている。それも無理はなかった。

 ――目醒めよ。

 今の恵には、どこからともなく声が聞こえていたのだから。

 ――目醒めよ。

 我知らず恵は重要な決断をし、それが彼女に氣の目醒めを促すに至ったのである。

 そしてそのまま、恵は机に突っ伏すようにして意識を失った。

 

「やれやれ……。類は友を呼ぶとはよく言ったものよ。よもや、この短時間に二人目とはな……」

「宿星の導きか。はたまた奇縁か。さて、正しいのはどっちでしょうね……?」

 

 天嶺と澪の静かな言葉が、その場の面々には強く響いた。

 昨夜、桔梗に起こったことを知る者にとってそれを察するのは難しいことではなく、だからこそ驚愕が奔る。

 

「まさか、軽井沢さんも?」

「ああ、氣に目醒めた」

 

 平田の確認に、天嶺は端的に頷いた。

 

「まあ、取り敢えず大事はあるまい。話を続けるとしよう」

 

 その言葉に異論は出ず、せめてとばかりに清隆が恵をソファに運び横たわらせた上で、話は続行された。

 

「正直、私もAクラスでの卒業はどうでもいいかな。

 私、自分が優秀な自覚はあるし、順風満帆な人生を送って来た自覚もある。そして、これからもそれを続けるつもり満々の、言ってしまえば安定志向の人間なのよね。

 だけど、偶にそれが退屈に感じることも事実で。だから、敢えて自分からレールを外れてスリルを求める部分も持ち合わせてる。

 そんな私にしてみれば、実力を出すことがこの学校の安定路線なら、敢えて手を抜くつもりはないし、自分を高めるための努力を厭うつもりもない。――まあ、さっきも言った通り、天嶺くんと会う前だったら、無用な軋轢を避けるためにも実力を隠していただろうけどね。

 ただ、だからこそ、この環境に相応しくない生徒がどうなろうと知ったことでもない。極論、クラスメイトって言っても出会ったばかりの人たちだしね。退学しないために最低限の自己努力すら出来ない人たちなら、サッサと退学した方がその人たちのためでもあるでしょ。

 まあ、自分から進んで手を差し伸べるつもりはないけど、見込みのある生徒ならその限りじゃないし、正しい意味での協力要請なら応えるのも吝かじゃないってところね」

 

 次に意思表明をしたのは千秋。

 彼女もまたシビアな意見だった。しかし逆に言えば、条件を満たす生徒とは協力を厭わないということでもある。

 既にこの環境の楽さに溺れて不真面目な態度を取っている生徒は切り捨て範囲だが、そうでないなら手を差し伸べる余地はある。暗に千秋はそう言ったのだ。

 

「私は……そうだね。真面目にAクラスでの卒業を目指してみようかな」

 

 微笑を浮かべてそう言ったのは桔梗だった。

 

「正直、最初はそんなつもりも全然なかったんだけどね。私も軽井沢さんと同じようなもので、新環境で再起を図るのが目的の大半だったから。

 そしたら、どういうことか、同じ中学の生徒が同じクラスにいるんだもん! 正直言って、驚いたよね! ――だからまあ、最初にこれだけは確認しておかなければならないことがある。

 ねえ、堀北さん。貴方は、私の過去を言い触らすつもりがあるかしら? その答え次第では、私もちょっと考えなくちゃいけなくなるかな」 

 

 ニッコリと笑みを浮かべて、けれどその視線には冷たい空気を乗せて、桔梗は真っ直ぐに鈴音を見据えた。

 

「……ごめんなさい、櫛田さん。お言葉を返すようで悪いけど、貴方って私と同じ中学だったの?」

 

 対する鈴音の返答がこれだった。気まずい静寂が辺りを襲う。

 

「あ゛~! やっぱそうだよね! 堀北さんならそういう返答になるよね! うん、私の独り相撲なのは薄々と感づいてた! ――感づいてたけど、私としてはそこを確認しないことにはどうしても安心できなかったのよ!」

 

 やがて、耐えられないとばかりに口を開いたのは桔梗だった。先ほどまでの冷たい空気は微塵もない。

 

「その、改めてごめんなさいね。……言い訳になってしまうかもしれないけど、これまでの私って人間関係を切り捨てていたから。

 かてて加えて、同じ中学なら知ってるでしょうけど、私たちが通ってたのって総勢千人を超えるマンモス校だったじゃない?

 正直、その条件が重なってしまえば、どれだけの人気者だろうと同じクラスじゃない限りは覚えていない自信があるわ」

 

 本当に申し訳なく思っているのかは分からないが、鈴音の言葉を聞けば、双方の言い分に頷ける部分はあった。

 

「そうだよね~。堀北さんならそうだよね~。

 だけど、これから先、堀北さんが中学時代の私を思い出さない保証はないし、それを口外されるのは私も困る。

 堀北さんが口で何と言おうと、私はそれを信じられない。――だから、契約をしましょう?」

 

 最初に苦笑を浮かべて頷いた桔梗は、だけど次の瞬間には笑みの質を変えて鈴音へと提案したのだった。




今後の方針についての話し合いです。
ぶっちゃけた話、高育に求める旨味が生徒それぞれで違いますからね。
最初にそこをすり合わせて各々の妥協点を定めないことには、日常生活すら危うくなるでしょう。

原作だと『Aクラスでの卒業を目指して当然』みたいな雰囲気がありますけど、それって半ば以上高育の空気に流されているみたいに思えるんですよね。
『生活費を得る』みたいな部分も含めて、空気に流されて『Aクラスでの卒業』とごっちゃにしているみたいな……。

本作はまだ入学してから数日しか経っておらず、それでいて諸々の推測を成り立たせており、そのことについて話し合えるメンバーもいるので、それぞれが原作よりかは精神的に余裕があります。 
その分だけ割り切りも可能ですし容易です。

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学校生活で演じる清隆の性格路線について。クール系の天嶺と、温和系の平田とは別路線を歩みます。基本的には自身の社交性を鍛えるためですが、対象やその周辺人物との友好関係や実力、五月のCPに影響が出ます。

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