※この作品はR-18です。

外法ってやつを見せてやろう   作:山上真

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今回も説明が多いですがご容赦ください。


第1話:ここは本当に高校か……?

 掲示板を確認したところ、三人揃ってDクラスだった。ので、そのまま連れ立って教室まで進む――つもりだったのだが、校舎に入った途端、天嶺と澪は揃って顔を顰めた。

 

「ここは本当に学校か……?」

「『綺麗な薔薇には棘がある』って言うし、謳い文句通りの()()()()()()じゃないのは覚悟してたけど、流石にこれは……」

「え~と、どうかした? いや、言葉と表情から何となくの想像は付くんだけどさ」

 

 それに対し、事情が分からないのが千秋である。言葉通り、何となくの想像は出来るが、結局はその範疇を出ない。

 

「氣が淀んでいる。校舎の外も淀んでいないわけではなかったが、それでも、『特殊な環境』であることを鑑みれば、まあ予想の範疇内ではあった。

 だが、校舎内は外の比ではない。陰氣も満ちている。そりゃあ、謳い文句からすると『生徒に競争意識を強制させる仕組み』が組み込まれているのは予想していたが、それだけでは説明がつかんレベルだ。

 そうだな、『論より証拠』といこう。……これを掛けてみろ」

 

 そう言って、天嶺は己がバッグをごそごそとやって一つのメガネを取り出し、千秋に渡した。

 

「んじゃ、まあ――うわぁ……」

 

 以前の仕事の際に、千秋は依頼者側としてある程度の説明を受けている。

 例えば、家で『ポルターガイスト現象』が起きているとして、それが科学的な原因によるものなのか、それとも本当にオカルト的な原因によるものなのかは、実際にその手のプロが調べてみないと分からないこともある。

 そして、オカルト的な原因によるものだったとして、依頼者にそれを信じさせるには『一定の根拠』というものが必要になる。言わば『説得力』だ。

 その一因が肩書だったり経過観察だったりするわけだが、一番手っ取り早いのは、『依頼者に状況を分からせる』ことであるのも間違いではない。

 そのための道具が、このメガネだ。レンズに特殊な加工が施されており、『氣の目視』が可能となるのだ。これにより、素人目線でも最低限の状況確認が可能となる。

 千秋自身は以前の依頼の際にも使わせてもらったことがあるので疑問を覚えることもなくメガネを掛けたわけだが、直後に顔を顰めた。

 メガネを外してゴシゴシと目を擦る。その上で目元を揉む。裸眼で見る。――何の変哲もない『学校の玄関』だ。

 メガネを装着する。――途端に、『どんよりとした空気が漂う学校の玄関』に早変わりした。

 

「ここに限らず、学校なんてのは一種の密室だ。基本的には施設内全域において『関係者以外立ち入り禁止』が施されているわけだからな。

 外から窺える部分には限りがあるし、だからこそイジメなんかが起こっていたところで発覚しづらい部分があるのは否めない。被害者が泣き寝入りすれば、加害者が口外しなければ、教師が黙認すれば、実際にイジメが起こっていたとしても、『起こっていないこと』として処理されるのが現実だ。

 そして、学校なんてのは昔から『怪談』だの『七不思議』だのが身近なのも相俟って、新設旧造を問わず、怪異が起こりやすい土壌がある。

 その上で、学校の謳い文句と『陸の孤島』とも言える環境だ。一筋縄でいかないのは覚悟していたが……」

 

 ゲンナリとする状況ではあるが、いつまでも玄関で屯しているわけにはいかない。三人はクラス毎に指定されている靴用ロッカーから、自分たちの名前を探す。その間にも、天嶺は言葉を紡ぐのを止めなかった。

 首尾よく自身のロッカーを見つけ、履き替える。なお、内履きは事前に申請したサイズの物がロッカーに納められている。

 

「俺たちは確かに仕事でやってきたわけだが、その一方で新入生であるのも事実だからな。全ての情報が開示されているわけでもない。むしろ、基本的には他の新入生と大差ないと言えるだろう」

「ただまあ、仕事人として場数を踏んでいるのも事実だからね。その分だけ、『現場感覚』ってのはそこらの学生以上に実地で掴めてる自信はある。

 そんな私らに言わせれば、この学校の謳い文句は怪しすぎるのよ。裏を疑わずにはいられない。単純に考えて、『成果主義』と『能力主義』のどちらか、或いは両方が採用されていることは予想してた」

 

 教室へ向けて歩きながら、天嶺と澪は言葉を紡ぐ。

 

「あ~、やっぱり、二人からしても怪しく見える?」

「ああ。確かに学費や生活費は無料かもしれん。敷地内には『小さな街』と言えるほどに各種施設が存在しているのかもしれん。――しかし、生徒の誰もが誰も、それを十全に活用できるとは限らんということだ。

 平たく言えば『生活費の範疇』だな。生きるに不足がないくらいの飲食が出来て、雨風が防げるだけの住まいがあって、日々を過ごす上で問題がない程度に身支度が整えられるのであれば、そしてそれを全員が受けられるのであれば、学校は決して嘘をついていないことになる。

 ただ、あくまでもそれは最低ラインのことであって、より上等な生活を送りたいのであれば、先に澪が言ったように成果主義や能力主義に紐づけられるだろうと思わずにはいられない。

 全校生徒が何人いるのかは分からんが、そのうちの大半は社会においては未だ何の成果も出していないんだ。普通に考えて、その全員を優遇する理由がどこにある……と、こういう話になるわけだ」

 

 無論、確証も確信もない。所詮は前情報からの推測に過ぎない。

 しかしながら、そう考えられるだけの余地があるのも事実だった。相応の説得力が存在するのも、また。

 

「私としては、言わば『キャリア教育』と考えれば、謳い文句もあり得るかな~とは思ってたんだけど……」

 

 千秋は頬を掻きながら、弱弱しく可能性を告げる。天嶺らの意見を聞いたことで、自信がなくなってきたのだろう。

 

「無論、その可能性も否定は出来んさ。この学校が日本政府の直轄校であり、日本で有数の進学校にして名門校なのも事実だ。むしろ、その事実を踏まえれば、千秋の意見の方が可能性は高いだろう」

「その一方、本当に次代の日本を牽引する人材を育てようとするならば、あらゆる可能性に目を向けるのが道理でもある。

 スポーツバカや学力バカだけで上手く回る筈もないし、オールマイティに熟せる人材、人の輪を取り持つ人材、口の回る人材、汚いことも嬉々として手を付けられる人材なんかが必要とされるだろうことは深く考えなくとも分かる」

 

 どちらの可能性もあり得るのだ。そして、現状では情報が足りないこともあって答えを導き出すのが難しい。

 

「判断はクラスの顔触れを見て……かな」

「それが妥当だろう」

 

 そんなことを話しながら足を進めていると、とうとう教室に着いた。

 ガラリとドアを開けた瞬間、廊下以上に強まった淀みが目に入る。

 

「これはまた……」

 

 そう呟いて、千秋は絶句した。表現のしようがないのだろう。

 

「普段は扉を閉ざされていることもあって、言わば『密室の中の密室』状態にあるわけだからな。火山や海辺など環境が影響を齎すこともあるが、生者が影響を齎すこともまた多い。そう考えれば、廊下以上に教室内が濃くてもおかしくはないさ。

 そして、人が周辺の氣に影響を齎す一方で、人もまた周辺の氣によってアテられる。

 取り敢えず、応急処置くらいはしておいた方がいいだろうな」

 

 言って、天嶺は教室内へと足を踏み入れた。

 まずは自分たちの机を探す。応急処置をするにも、道具を取り出す必要があるのだ。

 

「応急処置?」

「ああ。言っても、メジャーもメジャーなやつだがな」

 

 澪が自分の席を探しに離れた一方で、千秋は天嶺に同行して質問を続ける。

 それを気にした様子もなく天嶺は答えた。ぶっちゃけた話、澪の本分は切った張ったなので、こういう部分では役に立たない。説明ぐらいは出来るだろうが、精々がその程度だ。そして、本人が実践を出来ないのであれば、その説得力は大いに下がる。

 自席を発見した天嶺は、机の上にバッグを置いてガサゴソと漁る。やがて取り出したのは、一つのファイルブックだった。

 

「ファイル?」

「対処する事例ごとに必要頻度の高いものはだいたい固まってくるが、毎回容易に補充が出来るとも限らんのが現実だからな。である以上、常日頃から持ち歩くのが一番手っ取り早い解決策だ」

「言ってることは尤もだけど、普通に考えて無理じゃない? 人間、どうしたって一度に持ち運べる量には限りがあるでしょ」

「ああ、そうだな。普通に考えればそうなる。

 しかし、俺たちは違う。それを覆す術を持ち合わせ、実際にそれが可能だから重宝されている側面がある。――流石に、何でもかんでもとはいかないが……な」

 

 言いながら天嶺はファイルをめくり、目当てのページを見付けて手を止めた。

 そこに挿まれていたのは、絵柄の描かれた複数のカードだった。

 

「食器と塩……? あ! もしかして盛り塩!? いやでも、カードに描かれているからってどうするの?」

「結界術としては割と簡単にできる部類だからな。盛り塩は割と重宝するんだ。……で、コイツはこうするわけだ。解!」

 

 手を打ち合わせた千秋に対して天嶺は頷き、取り出したカードを手に解放鍵語を放った。

 するとどうだろう。カードに描かれていた物品が、現実に現れたではないか! 代わりと言うべきか、カードの絵柄は空白になっている。

 

「え!? 何今の!? 手品!?」

 

 余りにも堂々と行ったためか、隣席の少女が目を見開いて問いかけてきた。金髪をポニーテールにした女子だった。

 

「厳密には違うが、周りにしてみれば大差はあるまいよ。――俺は九角天嶺という。お前の名は?」

「私? 軽井沢恵っての。隣席らしいし、よろしく」

「そうか……」

 

 呟いた天嶺は、また別のファイルを取り出してパラパラとめくった。

 

「解! これも奇縁だ。こいつをくれてやる」

「……何これ? アクセサリー? まあ、くれるってんならもらうけど……」

 

 天嶺が渡したのは特殊な力を秘めた装飾具だった。と言うのも、これは天嶺らが修行を兼ねて霊場に潜っていた時に入手した代物なのである。

 霊場というのは、簡単に言うと『氣の集積地点に現れる異常空間』である。

 一つ、その中では時間と空間が歪んでおり、洞窟の中なのに火山地帯だったり雪山地帯だったりが存在する。

 一つ、その中では氣によって形どられた異形だったり動物だったりが存在する。必然、こちらも同種の力で干渉しないと打倒できない。

 一つ、階層内に出没する敵を全て倒すと、次の階層への道が現れる。五階層進むごとに、次回以降はショートカットが可能になる。

 一つ、敵を倒したり階層を進むごとに、お金や物品の報酬が手に入る。

 一つ、内部で結構な時間を過ごしても、外では然程の時間が経っておらず、挑戦者にも老化などは現れない。

 以上のような特性を持っており、平たく言えば『危険性はあるが、これでもかとばかりにご都合主義の込められた空間』に他ならない。

 極論すると、内部で手に入るのは全てが『偽物』なわけであるが、全てが全て『氣が具現化したモノ』であるため、効果や性能などは本物と遜色ないのである。製造過程が異なるから『偽物』に分類されているだけで、効果や性能だけを求める者にとっては本物だろう。

 

「強制はしないが、基本的には身に着けておくことを勧める」

 

 もちろん、天嶺はただの善意で渡したわけではない。

 相手が外見上は『美少女』に分類されるのを否定する気はないが、それだけで会ったばかりの相手にプレゼントするほど天嶺は酔狂ではない。

 早い話、これも仕事の一環であった。

 天嶺の見たところ、軽井沢恵という少女は、見た目とは裏腹に濃厚な陰氣を発している。

 無自覚に陰氣を発する人物の特徴としては、相手を傷付けることを苦にもしない品性下劣な人間か、傷付いた過去に引きずられているパターンの場合が多い。悲しみも負念であることには違いなく、言わばトラウマを背負ったりしている場合には陰氣を発しやすい。

 現状では恵がどちらかなど天嶺には知る由もないが、気付いた以上、放置するのは状況的に問題がある。環境と合わせ、悪い意味での相乗効果が起こりかねないのだ。

 時に清廉潔白な人物は『聖者』と称えられ、時に冷徹・冷酷な人物は『鬼』と称えられることがあるが、氣の観点から見ると、前者は陽の氣に、後者は陰の氣に極端に寄っている場合が多い。それを放置した場合、文字通りに変生する可能性があるのだ。

 変生とは、人から人以外の生き物に変化してしまうことである。場合によっては、変生後に人に戻れることもあるが、そんな事例は滅多にない。

 仕事を兼ねて入学した天嶺にしてみれば、気付いて放置するなどあり得ないのだ。

 恵に渡した装飾具は、精神力を高める効果を持っている。仮にトラウマに苦しめられているのであれば、多少はマシになるだろう。

 

「さて、サッサとやるか……」

 

 恵に装飾具をプレゼントした天嶺は、食器と塩を持って動き出した。なお、当然ながらただの塩ではなく、氣によって聖別された特殊な塩だ。

 教室の四隅に食器を置き、その上に三角形上に塩を盛り付けた天嶺は、次いで教室の中央へと向かった。

 

「ハアッ!」

 

 そして中央に立った天嶺は、両の手を打ち合わせると同時に気合の籠った声を上げた。

 それを合図に、四隅の盛り塩は結界として機能し始める。

 その証拠に、盛り塩の上部が途端に黒ずみ始めた。教室内の過度な陰氣を浄化しているのである。

 綺麗すぎる水に魚が住めないように、偏った空間に人が身を置き続けるのも良くはない。陰陽のいずれにしろ、偏った氣に晒され続けて何の影響も受けない筈がないのだ。

 基本的には毎週通うとはいえ、週の中に休みはあるし、連休もある。一日当たりの滞在時間も限られているのでそうそう問題は起こらないだろうが、手を入れるに越したことはない。自分たちも長時間身を置くとなれば尚更だ。

 担任が姿を現したのはその直後で、天嶺と千秋は慌てて自席に戻るのだった。 




タグとDクラス配属からお分かりになると思いますが、本作ではヒロイン以外の女性キャラは、男共のやる気を上げるための慰み者と化します。
描写することはないでしょうが、モブ男子もまた女子のやる気を上げるための慰み者と化します。
少なくとも、現状ではその予定です。

これは天嶺のスタンスの問題で、最優先は鬼哭村と鬼道衆になります。
次いで、その関連事項となります。仕事とか、クラスの一員としての責任感とかですね。
その上で、優先順位が下がるごとに扱いが雑になります。

なに、性行為に興味がある? いいだろう。だったらクラスの中から適当な女子を宛がってやる。その代わり、シッカリと勉強や運動に取り組め。
こんな感じで、その際に対象になりやすいのが、天嶺からの心証が低い人物です。
『行い自体はどうあれ、それでクラス評価が上がれば悪手とは言い切れない』というのが天嶺の言い分です。

その一方、『悲しい過去』を持つ人物に対しては慈悲を向けます。
そのため、優先順位と合わせて現状で安全圏に位置しているのは澪と千秋だけです。
天嶺が事情を知ったら安全圏に位置するのが、平田、軽井沢、櫛田、茶柱です。
微妙なラインが綾小路、須藤、幸村、堀北です。
綾小路はこれまでの生活環境、須藤と幸村は片親生活、堀北は兄に見放されている現状辺りが理由です。
佐倉はストーカー事件が発覚したら確定で安全圏に位置します。 
なお、これはあくまでも自クラスに関してです。

活動報告に本作用のリクエストボックスを用意しますので、是非ともご協力をお願いします。
『三バカにエース級の活躍をしてほしい』とか、『佐倉の輪姦シーンが読みたい』とか、『こんな道具を使ってほしい』とかでも構いません。

ただし、上記の事情により、仮に佐倉の輪姦シーンを望まれる方がいる場合はお早目のリクエストをお願いします。本作における正史扱いにするには、佐倉は特に時間的余裕がありません。
天嶺は相手が放つ氣を見れますので、ストーカー問題が発生したら、日に日に佐倉の陰氣が増していくのも当然分かります。
そうなると、仕事としてもクラスの一員としても、佐倉に接触しないわけにはいきませんので。

特殊な効果を持つ道具の場合、名前と効果を入れてくれたら作中に登場させるかもしれません。

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