※この作品はR-18です。

外法ってやつを見せてやろう   作:山上真

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第24話:だから、なろうよ、友達

「え~と、お邪魔しま~す」

 

 清隆と恵に連れられて、佐藤麻耶はとある建物を訪れていた。天嶺らがメインの拠点として活用している元大規模宿泊施設である。

 

「はい、いらっしゃい。……って、私が言えたことでもないんだけどね」

「今後、佐藤にもメインの活動拠点としてもらう。恵と協力して、主に食事の用意なんかをしてくれ。その対価として、勉強・身体面を含めオレがキッチリと育成してやる。

 ああ、もちろん頑張ったらそれに報いるようにご褒美も渡すから、そこに関しては心配するな」

 

 恵と清隆の言葉を聞いているのか、佐藤は呆けたように口を開けてロビーを見回している。

 

「何これ!? まんまホテルじゃん!?」

 

 やがて、正気に戻ったらしい佐藤は大口を開けて吠えた。

 

「元ホテル、であるのは事実らしい。この学校が出来た当初、視察者たちの宿泊施設として用意されたそうだ。

 だがまあ、学校が掲げる目的は立派だが、一朝一夕で結果が出るようなものではないし、今以て方法を模索している最中らしいのが現実だからな。3-Aの卒業生だからといって、真にお国が求めている『実力者』とは限らないわけだ。

 今現在も決して視察がなくなったわけではないが、そんな理由から当初ほど視察も活発ではなくなり、それに応じてここほど大規模な施設が使われることもなくなり、かといって壊すのも勿体ない。

 そんなわけで、持て余していたのが学校側の本音らしい。……で、事前に仕事用の拠点を九角たちに求められたこともあって、これ幸いと提供したそうだ。

 規模はともかく、ここ以外にもそんな感じで拠点として提供された場所がいくつかあるらしい」

「ほら、何かの物品が怪奇現象の原因だったりとかした場合、封印して安置する必要に迫られるイメージがあるじゃない? それ用の場所とかね」

 

 驚く佐藤に対し、清隆と恵が建物の経緯を軽く説明した。

 そう言われれば、佐藤の方も何となくのイメージは付いた。

 次いで、清隆は自分たちがここを使っている経緯について説明する。

 

「言わば、オレたちは九角と伊吹のお零れに預かっている形になる。――だがまあ、向こうも向こうで人手不足は否めない。

 仕事を行おうにも、肝心の情報がなければ取っ掛かりさえ掴めない。情報を集めようにも二人だと限度がある。学校側にも協力はしてもらっているらしいが、それで本格的に仕事を始めれば、今度は生活面で支障が出る可能性が否めない。……と、こういった理由もあって、元から二人だけで行うこと自体に無理があるんだ。

 それは二人も承知の上で、だから手伝い役を引き入れるのは織り込み済みで、そのためにこうして大人数が生活できる拠点を用意してもらっており、オレたちはそうして引き込まれたクチになる。

 で、今またオレがお前を引き込んだ形だな」

「本当はポイントで報酬を支払うべきなんだろうがな、とは言っていたけどね。今は入学したばかりで二人にもその余裕がないからさ。――現金自体は学生に思わしくないだけの大金を持っているみたいなんだけど、ここじゃあ現金が使えないからね。

 で、その結果として、暫くはポイント以外を報酬として扱うことにしたんだってさ。あくまでも体裁としてね。体裁を整えないと、二人はともかく私たちはここで生活が出来ないから。

 私や佐藤さんは食事の用意とか生活面でのフォローをする。対価としてここで生活させてもらえるし、清隆たちから勉強を教えてもらえる。

 櫛田さんに松下さん、平田くんは、主に情報収集に協力する。対価は同様。

 清隆に幸村くん、堀北さんは私たちの教師役として協力する。対価として、ここで生活する権利を得る。

 仕事と学校生活の両立を考えた場合、こういう形にするのがベストなんだってさ」

「あ~、毎月の支給ポイントがクラス評価で変動するってやつ? こっちとしては『そんな馬鹿な』で軽く流したいのが本音ではあるけど、こんだけ早くから危機感持って動いているのを目の当たりにしちゃうと、流石にそうも言ってられないよねえ~……」

 

 言って、佐藤は深々と溜息を吐いた。

 

「ん、いいよ、分かった。寮での独り暮らしよりは楽しそうだしね。お世話になります。

 受かった場合、学生寮で独り暮らしを余儀なくされることは事前に通達されていたしね。料理の方も最低限度には出来るようにしてきたんだよ。――ただまあ、他人様に出せるレベルかって言われると首を傾げざるを得ないんだけどさ」

「気にしない、気にしない。そんなの私も同じだからさ。四苦八苦しながら一緒にやってこ。

 それに、結局は体裁だから手の空いている面子が手伝ってくれるしね」

 

 ペコリと頭を下げた佐藤に、恵は軽く手を振って答える。

 

「取り敢えず、佐藤の部屋を決めた方がいいだろうな。その後で寮に私物を取りに行こうか」

「それが妥当なところだろうね」

 

 恵の先導で佐藤は施設内を歩く。途中、どこが誰の部屋か説明を受けるのも忘れない。――まあ、扉にはネームプレートが掛けられているので、それを確認すれば一目瞭然なのだが。

 

「ここを仕事用に提供されたっていう九角くんは当然として、綾小路くんに平田くん、幸村くんも一緒に生活しているんだね……。

 で、女子の方は伊吹さんに軽井沢さん、櫛田さんに堀北さん、そして松下さん……と」

「正直、佐藤さんが加わってくれて、個人的には本当に助かってるんだよね! ここで暮らしている面子の中だと、私ってダントツに学力が足りてないからさ。疎外感が凄まじいって言うか……。

 まあ、それを気にした清隆が佐藤さんにロックオンかけちゃったわけで、だからそういう部分では申し訳なくも思ってるんだけど……」

「ああ……。何で私に……? って疑問に思ってたけど、そういう理由もあったわけだ。うん、素直に納得。

 むしろ、個人的には綾小路くんみたいなイケメンに頬とはいえキスされて役得だったかな」

 

 恵の説明を聞いた佐藤は、怒るよりも先に納得していた。言葉通り、頬とはいえイケメンにキスされた事実を踏まえれば役得でしかない。

 

「先に言っておくと、キスだけで済ませるつもりはないからな」

 

 首をウンウンと振って頷く佐藤に対し、清隆は釘を刺した。

 

「……と、言うと?」

「抱く。より直接的に言えばセックスする」

「ふあっ!?」

 

 清隆による直接的な言及を受けた佐藤は、瞬く間に顔を真っ赤にさせ、慌てた様子で恵と清隆の顔を行ったり来たりさせた。

 

「いや、まあ、うん。ここの暫定的家主である九角くんと伊吹さんの性的倫理感がどっかに行っちゃってるみたいでね。

 あの二人、婚約者同士ではあるみたいなんだけど、それはそれとして、九角くんは村と組織の次期後継者として、仕事で失われた人手の補充と村民の支援を兼ねて、旦那を亡くした未亡人を抱いて種付けすることを余儀なくされていたみたいでさ。

 二人のお父さんは確かに愛妻家ではあるみたいなんだけど、その一方で普通にお妾さんも何人かいるみたいで、名字の違う異母兄弟も何人かいるみたいだし……。

 で、生まれた時からそんな環境に身を置いていたこともあって、一夫多妻を何とも思っていないみたいなのよ。

 言うなれば、戦国時代の大名的な感じ……? それも、『村民皆家族!』って堂々と言えちゃうタイプのね」

「元々が山奥の小さく閉鎖的な村であることに加え、仕事が一種の技能職だからな。

 行い自体を見れば法に真っ向から喧嘩を売っているのは事実だが、現実問題、国はそれを理由にして裁くことが出来ないのさ。それをして、万一仕事が出来る人材がいなくなってしまえば事だからな……」

 

 慌てる佐藤に対し、やはりこちらも若干頬を赤らめながら恵が説明をし、清隆が補足を入れた。

 

「オレは生まれ育ちが少々特殊でな。ここを出た後は九角の村に移住することを望んでいるし、そのためには九角に恩を売っておいて損はない。――が、氣なんてオレは使えないからな。

 そうなると、学校生活――主にはクラスの底上げでアピールするしかないわけだ。

 しかし、お前もこの一週間で薄々と感づいているだろうが、ウチのクラスは程度の低い奴が圧倒的に多い。根本的に、()()()()()()としての自意識に欠けている。だから授業中も不真面目な態度を取っているし、これを一朝一夕でどうにかするのは不可能だ」

「うっ……! そう真っ向切って言われたら否定はできない……!」

 

 自身が、その『程度の低い』連中の一人だという自覚があるのだろう。佐藤は胸を押さえて後退った。

 

「まともな方法でダメなら、まともじゃない方法を取ればいい。そして、ターゲットを絞ればいい。無理に全体を底上げすんじゃなくて、極一部を確実に引っ張り上げる。――単純な帰結だ。

 そして、オレはその方法にセックスを選んだ。だからこそ、オレは恵のこともあるが、お前を真っ先にターゲットに選んだわけだ。佐藤、お前は間違いなく『美少女』に分類される容姿をしているからな。どうせセックスをするのなら、相手は可愛かったり美人であったりする方がいい。

 幸い、九角のチカラを以てすれば100%の避妊が叶うらしい。まあ、子を作らせぬことで血統を滅ぼすなんてのは呪詛の代表格だ。それを思えば不思議なことじゃない。

 100%の避妊が保証されて、表沙汰にならない範囲で合意の上でヒッソリとやる分には、誰に責められる道理もない。

 その上で、佐藤、お前はどうだ? セックスに興味はないか? オレに抱かれたいとは思わないか? ――ちなみに、恵と鈴音は既に俺に抱かれているぞ」

 

 清隆の言葉に、佐藤は勢いよく恵の方に顔を向けた。

 

「いや、その、本当です。ちなみに言うと、清隆はかなりの絶倫です。テクの上昇具合も半端ないです。最初は初めて同士だったんだけど、その翌日には一方的に啼かされる羽目になりました……。

 堀北さんもそれは同様です。むしろ、啼かされ具合は堀北さんの方が凄いかもしれません……」

 

 顔を真っ赤にさせた恵は、俯きがちにそう答えた。

 その赤面具合と言葉遣いが丁寧語になってる事実が、佐藤に清隆のテクを想起させるには十分だった。彼女はこれで初心な少女であることに違いはないため、顔を真っ赤にさせてしまう。

 それと同時、そんなことを聞けば興味を惹かれずにいるのも不可能だった。思わず、清隆に自主規制されている自分を佐藤は想起してしまう。

 

「まあ、お前に関しては半ば無理矢理に引き込んだものだからな。だからこそ、お前を抱くのは()()()()()()()()にするのが筋というものだろう。何でもかんでも無理矢理では反感を買う一方だからな」

 

 清隆の言っていることは道理なようでいて、佐藤にとってはより辛さが増すだけだった。

 これで清隆に一方的に求められたのならば、たとえ実際にセックスに及んだとしても佐藤は自分に対して言い訳が出来た。法や常識を破るつもりはなかった、抵抗できなかっただけなのだ……と。

 しかし、自分から求めない限り抱かれないのであれば、そんな言い訳は通用しないことになる。

 今はまだいい。言葉で言われただけで、実際の場面を目撃したわけではないのだから。

 だが、頬への口付け程度であれば軽々とやってしまう相手であるのも事実なのだ。

 そこで、佐藤は昼休みの光景を思い出した。思わず疑問が零れてしまう。

 

「そう言えば、昼休みに櫛田さんと松下さんが九角くんにキスしていたけれど、アレはもしかして……」

「うん。あの二人は九角くんに抱かれてるよ。やっぱり九角くんも絶倫みたいだね。

 ここに暮らしている面子の中で、未だセックスに及んでいないのは平田くんと幸村くんだけだね。あとは佐藤さんもか……。

 まあ、正直に言えば時間の問題だとは思うんだけどね。私、幸村くんとはともかく、平田くんとはセックスするつもりではあるし……。

 ぶっちゃけた話、イジメによるトラウマを抱えた者同士の『傷の舐め合い・慰め合い』にしかならないとは思うけど、不健全ではあっても必要ないわけじゃないからさ」

 

 サラリと恵は平田の個人情報に言及しているが、佐藤がここで生活するのなら、遅かれ早かれ知れることではある。詳細に関してはともかく、この程度なら構うまいという判断があった。

 恵にとって佐藤は、友人となり得るだろう相手なのだ。会って短いながらに、()()()()()()()と思える相手なのだ。

 そんな相手に、何も理由を説明せず、行為だけを見てビッチだの尻軽だのと思われるのは堪ったものではない。

 ついでに言うと、だから水泳の際、平田に王を、幸村に井の頭を宛がった経緯がある。

 周りがセックスに及んでいる面子の中で、自分だけがセックスを行っていないというのは、やはり疎外感を覚えると思うのだ。お相手がいるに越したことはない。――もっとも、実際に事に及ぶかどうかは今後の進展次第だろうが。

 しかし、だからこそ、この程度のお節介であれば問題のない範疇だとも思えたのだ。

 

「いや、軽井沢さんさ、気軽に爆弾情報を投下しないでほしいんだけど!? なに、『イジメによるトラウマを抱えた者同士』って!? 気になってしょうがないじゃん!?」

 

 一方、断片情報だけを聞かされた佐藤としては堪ったものじゃない。言葉通り、気になって仕方がない。

 

「あ~、私、中学の時にイジメに遭ってたのよ。それで受けた傷が、ここら辺に跡として残ってるし。

 そんなだから、高校生活における私の最優先目標は『イジメられないこと』の一点に尽きるわけ。

 そのために必要とあれば何でもやるつもりだし。ぶっちゃけ、清隆に抱かれたのはそれが大きい。自分の庇護者として選んだわけだね。

 だけど、そのために学校生活を蔑ろにしたくもない。完全に自分自身を偽りたくはないし、友人だってほしい、誰かに優しくだってしたい。

 だからイジメられた側として、イジメる側に回らざるを得なかった平田くんを慰めてあげたいし、佐藤さんとは友人として気楽にやっていきたいわけ」

 

 事情を知らぬが故に佐藤としては分からぬ部分が多かったが、少なくとも恵の言葉に嘘がないのは感じられた。

 

「まあ、まだまだ事情はよく分からないけど、私と友達になりたいっていうその言葉に嘘は感じられなかった。

 だから、なろうよ、友達。実態が追いつくのにはもっと時間が掛かるだろうけど、まずは手始めに名前呼びから始めよっか。――よろしくね、恵ちゃん」

 

 誰かと友達になりたいのは佐藤も同じで、それが気楽に接せる相手なら願ってもない。

 言葉通り、実態が追いつくのはまだまだ先だろうけれど、最初の一歩を踏み出さない限り到達する筈がないのもまた然り。

 だから、現実と、期待と、打算と、そういった諸々を鑑みた上で佐藤は恵に対して手を差し出した。

 

「うん! よろしくね、麻耶ちゃん」

 

 対する恵もまた、それらを承知の上で麻耶の手を握り返したのだった。




今回は『一方その頃……』的な感じで、麻耶を軸に描写しました。
これから麻耶も朱に交わって赤くなっていくことになります。
なきゃないでも構わないかもしれませんが、やっぱりこういう場面の描写も必要だと思うわけです。

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学校生活で演じる清隆の性格路線について。クール系の天嶺と、温和系の平田とは別路線を歩みます。基本的には自身の社交性を鍛えるためですが、対象やその周辺人物との友好関係や実力、五月のCPに影響が出ます。

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