もういっそのこと、感想書かなきゃ同作品の評価はできないとかの仕組みを作ったらどうなんですかね? それだけで嫌がらせ目的の行為は減ると思いますけど……。
まあ、そこら辺の組み方とか詳細を知らないから、こうして気安く言えるんですけど……。
カリカリ、カリカリ。
静まり返ったロビーには、ただペンを動かす音だけが静かに響く。
大抵の場合、ホテルのロビーには談話スペースやラウンジが用意されているものだ。一定人数が集まって一緒に勉強をするには都合がいい。
総監督を最も学力の高い清隆が務め、次いで学力の高い幸村と鈴音が清隆の補佐をしつつ、一緒に勉強をする。平田、桔梗、千秋が一塊、恵と麻耶が一塊。組み合わせとしてはこんな感じで、それぞれが一定の距離を置いてテーブルに陣取っている。
ここを生活拠点にしてからというもの、夜にはこうやって顔を会わせて一緒に勉強することが暗黙の了解となっている。
もっとも、天嶺と澪は参加したりしなかったりだ。基本的に、二人は学力が問題ないこともあるが、それ以上に仕事に精を出さねばならないからだ。
二人が仕事をキチンと行わなければ、ここでの生活権を没収されかねない実情を思えば、無理に参加を要請するわけにはいかない。人手不足の現状、直近で成果が出るかはさて置き、巡回もまた立派な仕事である。
しかし、今日は天嶺が勉強会に参加していた。澪はいない。
これまでは許可が下りていなかったこともあり、街中を練り歩くぐらいしかすることが――出来ることがなかったのだ。
だが今日になって、漸く学校側から校舎内で仕事を行う許可が出た。である以上、暫くの間は校舎内を優先することが出来る。無駄に広くて巨大な校舎なので、各部屋に盛り塩結界による応急処置を施していくだけでも結構な時間が稼げるだろう。
また、そちらに時間を費やしている間に街中の情報がある程度は集まる筈だ。
気にかかるとすれば佐倉のことだが、こればかりは出方を待つしかない。一応、今後は基本的に澪を張り付かせることで合意を得た。佐倉自身、覗かれるかもしれないと分かって、無防備に着替えて自撮りに精を出すほど豪気ではないようだ。
必然、自撮りに使っていた時間が余るため、長谷部を含めて澪が勉強を教える手筈になっている。澪は不愛想な面があるが、口喧しいタイプでもないので、
なので、澪は寮に残って二人に勉強を教えている。ある程度の時間になったら帰ってくるだろう。
一方、こちらの勉強会には天嶺が参加しているため、清隆は恵と麻耶に付きっきりとなっている。
この面子の中において、恵と麻耶の基礎学力の低さは群を抜いている。それを短時間で一端に引き上げようとすれば、効率と密度を引き上げるしかない。
その点において、清隆ほど打ってつけな人材もいないだろう。彼自身が、その極致とも言えるレベルの行いによって、今の段階まで実力を向上させたのだから。
流石に清隆が受けたレベルのものを二人に行わせるわけにはいかないし、現実的にも出来ないが、そもそもにして求めるレベルが違うのだから、何段階か引き下げたところで問題はない。
目安として、鈴音レベルに育てることを清隆は目標に掲げていた。いずれも自分の女なのだから、同レベル帯の方が話も合うだろうと考えてのことだ。
「ふわぁ~っ!? 綾小路くんって教え上手なんだねえ~」
清隆の教えを受けた麻耶は、驚愕に目を瞬かせ、感嘆した様子で呟いた。
「基本、課題だけ与えられて、一定期間内に自主努力だけでそれを乗り越えなければならない……という生活をしていたからな。
学力問題なんてのは、基本的に解き方が定められている。だから楽な部類だ。オレが覚えた過程を教えればいいだけだからな。
途中でお前たちのペンが止まるのも、それはそれで興味深い。個人差というものに向き合う上でいい材料になる」
かつてはそれだけの余裕がなかった。自分を高めることに精一杯で、周りに目を向ける余裕がなかった。
だから、清隆は今になって思う。――何と勿体ないことをしていたのか。
その細かな違いに向き合うことで、導き方に対する幾つもの選択肢が生まれてくる。解が多いということは、それだけ未知に溢れていることでもある。
所詮、清隆は『画一的』な天才に過ぎない。
だが、一人一人にシッカリと向き合い、未知を穴埋めしていけば、分野次第では自分を凌駕する天才がそこらから生まれるかもしれない。その可能性は、決して否定できない。
幸か不幸か、清隆は『画一的』な天才だからこそ、多分野に対して応用が利く。途中までであれば導くことが出来るだろうし、真の天才であれば、あとは勝手に進むだろう。
そして自分は、そんな彼ら彼女らを教材にして、更なる高みへと昇る。
(これぞWin-Win。全方向に無駄がないってやつだな)
カリカリとペンを動かす二人の少女を見つめながら、清隆は静かな野望を抱いていた。
♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢
明けて翌日。
何事もなく授業を終えて放課後を迎えた天嶺は、担任である茶柱を引き連れて、手始めに各学年の教室を順に訪れていた。
それぞれの教室の担任には、二人がいくまで残っておいてもらえるよう、予め通達を頼んである。
担任への説明自体は茶柱に任せ、天嶺は四隅に盛り塩を置いては結界を張っていく。所詮は応急処置に過ぎないが、当座を凌ぐには十分と言えば十分だ。
そもそも、本格的に手を入れるとなれば学校のシステムに介入するしかない。環境そのものが絡んでくる問題だからだ。
必要とあればそれも辞さないつもりではあるが、一朝一夕で行えるものではない。諸々の許可を取ったり、相応の下準備が必要となる。正直に言って面倒だ。
それよりだったら、定期的に応急処置を施す方がよほどに現実的である。
危険性で言えば、この環境に長く身を置いているほど高くなるのが道理。そんなわけで、3-Aから始まり1-Cで終わる形である。1-Dは自分の所属する教室であり、入学した日に手を付けたばかりであるため、今のところ改めて手を付ける必要はない。
「傍目からは四隅に塩を置いて中央で手を叩いたようにしか見えないのに、いきなり塩の頂点が黒くなったな。
しかしなるほど。このようなものを見せられれば、あながち眉唾とも言ってられんか……」
同席していた生徒会長、堀北学が感心したように唸った。
ここは自分たちが慣れ親しんだ教室である。故に、手品を疑うにも否定材料の方がなお多い。予め何処かに種を仕掛けられていたのだとしたら、自分たちが気付けない道理はない。ここで三年間を過ごしたAクラスの生徒として、それだけの自信と自負はある。
だがそもそもにして、その『手品の種』が自分たちの理屈の外側にあるものであれば、気付けなくても不思議はない。
そして天嶺の行いは、その『理屈の外側』であることが予め周知されている。
只人には見えず、聞こえず。然るに眉唾を疑わざるを得ない面があるのだが、自分たちにも分かるように視覚的効果を以て訴えられれば話は別となる。
「基本的に、あとは放置しておくだけで構わない。色の変化の進捗具合も間隔を測る上での参考材料になるので、日に一回は顔を出させて確認させてもらうことになるが、ご了承を願えるかな?」
「その程度であれば構わんだろう。所詮こちらは門外漢であるわけだしな。後輩といえど、その道のプロに任せられるのであればそれに越したことはない。
そも、後輩が先輩の教室を訪ねることなど、別におかしなことではないからな」
天嶺の確認に対し、真っ先に学が了承を返した。
そして、生徒会長である彼が了承した以上、他のクラスメイトに断る理由などありはしなかった。それだけ、学がクラスメイトから信用と信頼を買っている証左である。
その後は順次三年の各教室を回り、二年の階へとやって来た。同じように2-Aから手を付ける。
「ヒュウ♪ 話には聞いてたけど、こりゃすげえ! 九角つったっけ? 俺にも出来るようになるか?」
目を輝かせてそう訊いてきたのは、金髪の美男子だった。傍目『王子様』という二つ名がこれほど似合う男性もそうはいないだろう。
「南雲副会長だったな? 可能性は可もなく不可もなく、だな。
そも、氣というものは人間である以上、誰しもが持ち合わせているものであるからして……。その多くは、単に使い方を知らぬだけなのだよ。
ある程度の理屈は判明しているから、教えることはできるし、努力で覚えることも不可能ではない。
しかし、真に使いこなそうとするならば、宿星の導きの元、氣に目醒めるより他にない。宿星の導きで氣に目醒めた者は、本人に最も適した形でチカラを扱えるようになる。
故、一言に氣と言ったところで、その使い方は人によって千差万別。遺伝などにより、使えるチカラの幅が広がり、それにつれて方向性が定まってもくるが、基本的には当代のオリジナルと考えた方がよい」
未知に出会った際、自分も近付きたくなるのは人のサガだ。全員が全員というわけではないが、大別すれば近付くか逃げるかだ。
だからこそ、南雲の気持ちも分からなくはない。天嶺は苦笑を浮かべながらも、可能な限り誠実に答えた。
「ん~、専門用語混じりでよく分からん部分もあるが、要するにアレか? ゲームで例えるなら、イベントで目醒める必要があるって感じか? それまでは、たとえ使えるようになったところで、大幅な制限が掛かっていたりで使い勝手が悪いという認識で合ってるか?」
首を傾げながら、南雲は天嶺へと確認を取った。
「ま、そんなところだ」
内心で南雲の理解の速さに驚きながらも、天嶺は頷いた。
「ん~、まあ、それでも構わないから余裕があったら教えてくれよ。これで俺も生徒会の副会長をやってるしな。順当に行けば次期会長も俺になるだろうし……。
そっちとしても、生徒の代表がそっち方面に理解を持ってた方が助かるんじゃねえか?」
「まったく……。的確に痛いところを突いてくる先輩だな。だがまあ、素直に頼もしいと思っておこう。
現時点で確約はできんが、それも視野には入れておこう。確かにそちらの言う通り、生徒の代表が知識を持ち合わせ、その上で理解を示してくれるなら、こちらとしても好都合だからな」
「おう! 取り敢えず、前向きな返事をもらえたことで今は満足しておくよ。――ところで、話は変わるんだが、お前、水泳の授業でかなりの好タイムを叩き出したそうじゃねえか? 学力もかなりのもんだと聞いてるぜ?」
ニヤリとした笑みを浮かべて、南雲は天嶺へと問いかけた。
「まあ、そうだな。身体能力には自信を持っているよ。それも、綾小路と高円寺の両名とは横並びの結果に終わったがな……。
学力も……まあ、高校三年間の範囲なら修めている自信はある」
「おいおい、そこまでかよ……。何気に予想以上の返事が来たな……」
「仕事の都合とはいえ、授業にまともに参加できるかも分からんのだ。それを思えば、事前に予習し、不参加に対する文句を黙らせられるほどの学力を身に着けておくに越したことはないからな」
「道理ではあるが、それを実際にやれる奴もそうはいねえだろうよ。
なあ、九角。お前さえよければ、俺の遊び相手を務めちゃくれないか? 正直言って、つまらねえんだよ。遊び相手に飢えてんだ。実力持ってる奴に限って遊んでくれねえしよ~」
なあ、なあ、と天嶺にダル絡みする南雲は、陽氣と陰氣がせめぎ合っていた。
だがそれは、天嶺に対する期待があってのものだろう。天嶺の返事が南雲の意にそぐわぬ場合、一気に陰氣へと軍配が上がると見た。
「答える前に一つ訊きたい。その実力を持っている相手というのは?」
「うん? 生徒会長と、Bクラスの鬼龍院楓花って奴だ」
「……なるほど。鬼龍院何某については何とも言えんが、会長殿に関しては俺からも口添えを頼もう。
正直、仕事の面からも副会長殿を放置は出来ん。……が、副会長殿一人に掛かりっきりにもなれん。
故、俺の手が回らぬ部分は、生徒の代表として会長殿に骨を折ってもらう。――それで如何かな?」
「会長を説得してくれて、お前も偶には遊んでくれるってことだろ? 願ってもねえことだ! 是非ともお願いするぜ!」
天嶺の問いかけに、南雲は喜色を露わにして頷いた。
「然様か。では、このまま一年の教室まで回った後、生徒会室へと赴き、会長殿を説得するとしよう」
選択が間違っていなかったことに内心で安堵して、だけどそれを表には出さず、天嶺は言葉を紡いだ。
「よろしく頼む。……ついでだから、俺も同行していいか?」
「まあ、構わんよ。余計なことをしないのであれば、だがな」
「そっか、ありがとよ。……なずな、お前もついて来いよ」
「ん~、まあ、いっか。よろしくね、え~と、九角くん、だっけ?」
「ああ、九角天嶺という。よろしく頼む、なずな先輩」
「あら、躊躇なく名前呼びするのね……。まあ、名字を知らないんだろうから仕方ないんだろうけど……。
名乗るのが遅れたけど、朝比奈なずなよ。んで、こっちは南雲雅」
暗に『名字で呼べ』と天嶺に言いつつ、親指で南雲を指差しながら。
その機微を読めない天嶺ではない。
「そうか。では、改めてよろしく頼む、朝比奈先輩。……いずれは名前で呼べるくらいに親しくなりたいものであるな」
「ふ~ん、九角くんって結構なプレイボーイ?」
「さて……? 一廉の男子たるもの、魅力的な女子とお近付きになりたいのは当然のことと思うが?」
「一切の照れなくそんなことが言える時点で、プレイボーイ以外の何者でもないっての」
天嶺の言葉を聞いた朝比奈は、呆れを隠さずにツッコむ。
そんなこんな、同行人を増やしながら天嶺の結界行脚は続くのだった。
勉強シーンを入れて、恵や麻耶のフォローです。
あとは南雲との遭遇です。
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学校生活で演じる清隆の性格路線について。クール系の天嶺と、温和系の平田とは別路線を歩みます。基本的には自身の社交性を鍛えるためですが、対象やその周辺人物との友好関係や実力、五月のCPに影響が出ます。
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チャラ男ルート。対象は池。CP上昇大。
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オレ様ルート。対象は佐藤。CP上昇小。
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その他。具体的にはリクエストを。