※この作品はR-18です。

外法ってやつを見せてやろう   作:山上真

32 / 39
予約投稿設定時点でお気に入りが200件を迎えました。
ありがとうございます。
直後に減らないのを祈るばかりです。


第30話:私も覚悟を決めます!

「そんな……? なんで……?」

 

 四月も末が近付いたある日の放課後。

 自分の部屋に帰った佐倉愛里は、届けられた手紙を開封し、中に入っていた写真を見て、困惑と恐怖を覚えざるを得なかった。

 何せ、その写真は自分の着替え姿が写されたものだったからだ。流石に全裸写真はなかったが、下着姿の写真は何枚もあった。そして、その写真に写っている自分は、異なる下着を身に着けている。

 基本、下着なんてものは日が変わらない限りは替えないものだ。だからこそ、その写真が異なる日に撮られた事は一目瞭然だ。

 だが、心当たりがない。いや、送られてきた写真は下着姿のものだけじゃなく、着替え終わった後のものもあった。その恰好はグラビアアイドルの雫としてブログに投稿するためのものであり、そういう意味では十分に心当たりはあると言える。

 しかし、当然ながら佐倉は着替えるに当たって周囲に十分なほど気を配っており、少なくとも自分の知り得る範囲でカメラの類や人の姿がないことは十分に確認していた。

 だからこそ解せない。こんな写真が取られる方法自体が分からない。

 

「せっかくここまで逃げてきたのに、何で……!?」

 

 佐倉の口からは我知らず慟哭が零れた。

 そもそも、新進気鋭のグラビアアイドルとして軌道に乗っていた佐倉が、三年という期間をフイにしてまでこの学校に入学したのには、同じような写真がファンレターとして所属事務所に送られてきたことに端を発する。

 送られてきた写真から情報を読み取る限り、どう考えても内部犯の仕業にしか思えなかったのだ。今は被害に遭っているのが佐倉――雫一人でも、規模が拡大したら事務所としては目も当てられない。

 そういう理由もあって、事務所の意向により所属アイドルは一部仕事が制限され、特に被害に遭った佐倉には精神休養を兼ねて、謳い文句からして安全性が高いと思われる高度育成高等学校への避難命令が出されたのだ。

 実際、そのために事務所も懸命に後押しをした。――だというのに、逃げてきた先でもコレである。

 困惑が生む恐怖、恐怖が齎す絶望に支配され――ようとした瞬間、佐倉は過日の水泳授業の一幕を思い出した。

 そう、自分は確かに注意喚起されていたのだ。授業の後で、半ば押し付けられるようにして連絡先の交換も済ませている。

 それを契機として、澪に勉強を見てもらうようにもなったのだ。――生憎と、今日は澪に勉強を教えてもらう予定が入ってはいなかったが。

 ここ最近はそれが常態化していたこともあり、そもそものきっかけを忘れていた。

 一抹の希望を胸に、佐倉は携帯端末を操作する。

 

「あ、あの、助けてください!」

「すぐに行く。――」

 

 恐怖の余り、その一言を紡ぐのが精一杯で、返された一言以外には耳に入らない。

 この部屋には結界が張られている。少なくとも、部屋にいる分には安心だ。頭ではそう理解しているが――その事実は、この状況下では不安を拭うに足りなかった。

 それでも、『すぐに行く』との一言を希望として胸に宿し、佐倉は恐怖に堪えながらベッドに身を縮こまらせていた。

 そうしてどれだけ経ったか。全身を震わせ、歯をガチガチと噛み合わし、涙を流していた佐倉に正確なところは分からない。

 しかし、自室のチャイムが音を奏でたのは確かに分かった。

 相手が誰かを確認することもなくドアのロックを解除した佐倉は、その先に天嶺の姿を確認して勢いのまま抱き着いた。

 一抹の安堵を抱き、それでも涙はしとどに流れている。

 

「澪、桔梗、中の確認を頼む」

 

 そんな天嶺の声が聞こえた気がするが、今の佐倉にはその意味を理解することなど出来なかった。そんな余裕もなかった。今はただ、この安心感に全身を委ねるので手一杯だった。

 心身を包む安心感と、頭を撫でる手の心地よさに身を任せて、佐倉はいつしか眠りに就いていた。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 電話越し、主語も何もなく告げられた一言に対し、天嶺は否が応でも緊急性を感じざるを得なかった。

 

「何かあった?」

「佐倉から電話があった。助けてと言ったきり、こちらの言葉も上手く伝わっていないようだったから、よほどに精神が追い詰められているのだろう」

 

 澪の質問に、天嶺は端的に返事をした。

 

「分かった。私もいく。櫛田にもついてきてもらいましょ」

「桔梗を……? そうか、そうだな」

 

 澪の言葉に僅かに自問した天嶺は、すぐに納得して頷き、その足で自室へと向かう。

 佐倉には『すぐに行く』と返したが、何が起こっているのかが分からないからこそ、最低限の準備は怠れない。

 

「茶柱先生か、夜分にすまないが、今どこにいる? 緊急事態により、これから俺は佐倉の部屋に行かなくてはならん。可能なら同行を頼みたいのだが?」

『……悪いが、私はまだ学校だ。だが、知恵は既に帰った筈だ。知恵の連絡先は分かるか?』

 

 相手が電話に出たのを確認して、一方的に用件を叩きつける。不躾ではあるが、悠長にしている余裕はない。

 電話に出た茶柱先生は、深呼吸を一つして冷静に対応してくれた。

 

「伺っている。これから掛けてみる。夜分に不躾な連絡を失礼した」

『まあ、構わんさ。何が起こっているかは分からんが、私も佐倉の部屋に行くとしよう』

 

 それで茶柱との電話を切った天嶺は、すぐさま知恵へと電話を掛けた。これまた一方的に内容を叩きつける。

 

『……すぐに行くわ』

 

 頼もしい返事を聞いた天嶺は電話を切った。

 この時間だと、本来なら寮則により男子は女子の階層へと足を踏み入れることが出来ないのだ。『緊急事態』の一言で掟破りをするにしても、可能な限り学校側にも配慮を示しておいた方がいい。

 天嶺がロビーに向かうと、そこには既に澪と桔梗の姿があった。

 

「澪、悪いが荷物を頼む。桔梗、悪いが抱きかかえていくぞ。お前の足に合わせてはいられん」

 

 言うなり、天嶺は荷物を澪に預け、桔梗を姫抱きにした。

 氣による身体強化も行って、人外じみた高度へ一気に跳躍。屋根の上を駆けていく。普通に道路を走るよりは、こちらの方がよほどに早く着く。

 

「ちょ!? どこからやってきてるのさ!?」

「ジェットコースターに乗ってる気分だったよ……」

 

 寮の近くで地面に降り立つと、丁度そのタイミングで教員寮からやって来たと思しき知恵に遭遇した。

 驚く知恵、若干グロッキーな桔梗。

 

「緊急事態故に屋根の上を駆けてきた。それよりも、今は佐倉の元に急ぐぞ」

「あーもう! 分かったわよ!」

 

 やっていることはともかく、天嶺の言葉は道理でもある。諸々を呑み込んで、知恵は走り出す。

 教師の同行を盾にして、天嶺は寮則違反を罷り通らせる。

 そして佐倉の部屋に辿り着き、チャイムを鳴らすとドタドタと足音がして、ガチャガチャとやったあと佐倉が飛び出してきて天嶺に抱き着いたのだった。

 その様子を見れば、佐倉がよほどの恐怖を味わったのは確実である。

 

「澪、桔梗、中の確認を頼む」

 

 二人に室内の確認を任せた天嶺は、佐倉を安心させるかのように、その頭を優しく撫でるのだった。

 

「さて……」

 

 佐倉が眠りに就いたのを確認した天嶺は撫でるのを止め、片腕で佐倉を支えながらもう片手で携帯を操作、勝手ながら長谷部へと連絡を取る。

 

『もしもし? 九角くんが連絡を寄越すなんて珍しいね?』

「そうせざるを得ない事情があるものでな。急でスマンが、佐倉の部屋に来られるか? お前にも同席してもらった方が、佐倉の精神安定にも役立つと見た」

『精神安定……? 快い内容じゃなさそうだね。分かった、すぐに行くよ』

「頼む」

 

 短いやり取りを済ませて電話を切る。

 その頃には、澪と桔梗による室内の簡易調査も終わったようだった。

 

「私の見たところ、室内の結界に綻びは無し。ただ、床に写真が散らばっててね。十中八九、原因はこっちでしょ」

「写真……? 見せてもらうことは?」

「う~ん、天嶺くんが確認するのは、佐倉さんの了承を取ってからの方がいいかもしれないね」

 

 気まずげに桔梗が言葉を紡ぐ。

 諸々の断片情報を組み合わせた結果、天嶺は大凡の内容が分かった。

 

「そうか。では、そうしよう。……取り敢えずは、直接的な危害がなかったようで何よりよ」

 

 言って、天嶺は佐倉を抱きかかえて室内へと歩を進める。結界が機能しているのであれば、目下のところ直近の安全地帯でもある。敢えて他の場所に運ぶ理由もない。

 乱れたベッドを整えてもらい、そこに佐倉を横たえる。

 

「俺は佐倉に付いている。澪、お前が中心になってその写真からの情報収集と、そこから推測できる状況の把握に努めてくれ。

 ああ、長谷部も呼んだし、茶柱教諭も来るそうだ」

「了解。つっても、私、頭働かせるのは苦手なんだけどねえ……」

 

 天嶺の言葉に、澪は肩をすくめて答える。

 それは天嶺も承知しているが、苦手でもやってもらうしかない。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

「ん……」

 

 佐倉が覚醒に近付いた時、真っ先に思ったのは――

 

(いつもと枕の感触が違うような……?)

 

 という感想だった。

 だが、心地いいのは間違いない。佐倉は目を閉じたまま、枕に顔を擦り付けて、その感触を堪能する。

 頭を撫でる手の感触も安心感を呼ぶ。

 

「ふあっ……!?」

 

 微睡みの中、そんな感想を抱き、それが像を成した瞬間、佐倉は一気に覚醒した。思わず、頭を跳ね上げようとする。

 

「は~い、それされるとご(・)っ(・)つ(・)ん(・)こ(・)しちゃうから、ちょっと落ち着いてね~」

  

 しかし、その行いは強く頭を押さえられることで中断せざるを得なかった。

 困惑する佐倉の耳に聞き慣れた声が届き、それが長谷部の声だと認識する。

 次いでその内容を理解した瞬間、佐倉は自身の状況に何となくの見当がついた。ので、力を抜く。

 それが分かったのだろう。頭を押さえる力も弱められる。

 改めて、佐倉はゆっくりと身を起こす。

 想像通り、自分は長谷部によって膝枕をされていたらしい。何がどうしてそうなっていたのかはまるで分からないが……。

 

「えっと、おはよう」

「はい、おはよう。っても、そんな時間じゃないけどね。

 起きたばっかで状況が理解できてないだろうから簡単に説明すると、ここは愛里の部屋ね。

 で、私は九角くんに『愛里の精神安定役に』って呼ばれたの。九角くんもそこにいるよ。

 で、今は伊吹さんと櫛田さんと茶柱先生と星之宮先生がテーブル囲んで話し合いの真っ最中」

 

 佐倉が状況を理解しやすいようにだろう。長谷部は一文一文を区切るように、ゆっくりと状況を説明した。

 

「そっか、私……」

 

 それを受け、佐倉は直前の状況を思い出した。

 恐怖に震えながら天嶺に助けを求め、その姿を認めた瞬間に思わず抱き着き、そのまま安心感から気を失ってしまったのだろう。

 そこまでを理解した瞬間、佐倉の頬は真っ赤に染まった。

 

(私、なんて大胆な行動をしてるの……!? ――いや、でも安心感が凄かった……。あれが男の人の……)

 

 自分で自分の行動に内心でツッコミを入れ、かと思えば天嶺の胸板の感触を思い出そうとしてしまい、佐倉は煩悩を払おうとブンブンと頭を横に振る。

 

「はは……。百面相が凄いよ、愛里」

「言わないでえ~……」

 

 気安げな長谷部の言葉に、佐倉は両手で自身の顔を隠す。穴があったら入りたい、とはこのことか。よもや、そんな気持ちを実感することになるとは思ってもいなかった。

 

「佐倉よ。元気に目を覚ましてくれたのは幸いだが、落ち着いたなら話し合いの方に参加してもらっても構わぬか?

 今のところ、こちらは状況の推測しか出来ぬのだ。こちらの質問に対し、其の方が『はい』か『いいえ』で答えてくれるだけでもだいぶ違う」

 

 そんな佐倉に、天嶺から声が掛けられる。

 

「あ、はい、分かりました。そうですよね……」

 

 天嶺の言葉に反射で答えた佐倉は、しかしそのまま、天嶺へと視線を固定してしまう。その表情には、期待と不安が表れていた。

 

「前以て言っておくと、俺は其の方に送られてきたという写真を見てはおらぬ。まあ、周りの言葉から大体の想像はついておるがな。――しかしなればこそ、俺が確認するのであればお前の了承を得てからの方が妥当だろう」

 

 天嶺の言葉を聞いて佐倉は息を吐く。

 だが、そこには安(・)堵(・)と残(・)念(・)な(・)気(・)持(・)ち(・)が入り混じっているのを、他ならぬ佐倉自身が自覚していた。

 

「あの、九角くんも見たいですか? 送られてきた、私の写真……」

 

 だからだろうか。気付けば、佐倉の口は勝手に言葉を紡いでいた。

 

「それはまあ、見せてもらえるのであればな。仕事としてもそうだが、男としては興味を抱かぬわけがあるまいよ」

 

 その言葉には、一切悪びれた様子が見受けられない。

 言葉を聞けば、決して男(・)と(・)し(・)て(・)の(・)欲(・)望(・)がないわけではない。だがそれを聞いても、不思議なことに佐倉が嫌悪感を抱くことはなかった。

 

「あの、じゃあ、九角くんも確認してください……」

 

 頬を赤く染め、顔を俯かせながらも、佐倉はどうにか言葉を紡ぐ。

 

「おお! 愛里ってば大胆! ……あ、私も一緒に確認してい~い?」

「う、うん。むしろ、九角くんだけに見られるよりは、そうしてくれた方が私もありがたいかな……」

 

 そんなわけで、ベッドに屯する天嶺らの元に写真が回ってきて、佐倉を中心に、両サイドを天嶺と長谷部が固める形で一緒に写真を確認していく。

 時折、天嶺の口から『ほう……』だの、『うむ……』だのと呟かれるのが、佐倉としては気になって仕方がない。

 それは仕(・)事(・)上(・)の感想なのか、それとも男(・)と(・)し(・)て(・)の感想なのか、問い詰めたくて仕方がない。

 佐倉がそんな自分を不思議に思って持て余している間にも、写真の確認は終わってしまった。

 

「断言するが、これは十中八九こちらの領分だ。

 これらの写真の取られた場所だが、いつぞやにこちらも巡回しているし、その際にカメラの類がないのも確認している。物理的に撮影するのが不可能なのだ。

 にも拘らず、その不可能な筈の写真がこうしてここに存在する。まず間違いなく、念写の類によるものであろうよ。

 相手がストーカーの類であるのなら、その情動の一心で氣に目醒め、それが『遠視』、『透視』、『聴覚上昇』、『念写』の類を一纏めにしたようなチカラであっても不思議はない」

 

 写真を確認しての、天嶺の結論がそれだった。紡がれる言葉は、常とは違って重(・)々(・)し(・)さ(・)が漂っている。

 

「あの、実は……」

 

 それに一抹の恐怖を抱きながらも、佐倉は自分がここに来ることになった経緯についても説明をする。

 

「……とのことだが、茶柱教諭?」

「確かに、佐倉の補足事項に関してはそのような事柄が載ってはいた。――もっとも、そこまで危機感を刺激するような感じでもなかったが……」

「フン。お役所仕事の常というやつであろうな。話を聞いた者が現実味を抱いていないから、書類に記載される情報もそうなってしまうのだろうよ。だが、こうして佐倉が入学できている辺り、一定の理解は得られたと見るべきか……。

 結果的に、良かったのか悪かったのかは分からんがな」

 

 茶柱の言葉を聞いた天嶺は、悪態を吐きながらも理解を示す。

 しかし、そうして逃げてきた先にもストーカーがいたわけだから、その点では不幸と言える。

 だが、逃げてきたからこそ天嶺らと出逢えたわけで、その点では幸と言える。

 

「今回、犯人がこのようなものを佐倉に送ってきたのは、焦りがあるからであろうよ。

 おそらく、この者のチカラはあくまでも『雫』をターゲットにしたものなのだ。然るに、いずれの写真も佐倉が雫として行動しようとしたときの物に限られている。

 だがその一方で、ブログを見る限り、犯人は佐倉と雫を結び付けてしまった。同一人物だと認識してしまったのだ。然るに、そのチカラの矛先は、いつ佐倉までを対象に含めてもおかしくはないのだ。

 しかしながら、ここ最近の佐倉は雫としての行動をしておらず、自室には結界のオマケ付きだ。理由は分からぬにしろ、覗き見が出来なくなった犯人にとっては面白いことではあるまい。

 だから、犯人は佐倉を精神的に追い詰めるような真似に出た。自分はお前を見ているとアピールし、その一方で物理的に不可能な状況を示すことで、佐倉から抵抗感そのものを奪い取ろうとしたのだ。

 ならば、話は簡単というものよ」

 

 そこまでを告げた天嶺は、獰猛な笑みを浮かべて佐倉を見やった。

 

「佐倉、明日からは可能な限り、常に俺と共にいよ。

 所詮は覗き見だけが取り柄の輩。自分のお(・)気(・)に(・)入(・)り(・)の近くに他の男の姿があると分かれば、堪らず焦って姿を見せるであろうよ。後はそこを潰せば解決よ。

 向こうがチカラを行使した以上、こちらもまたチカラの行使を厭う理由はない。この下手人には、存分に外法ってやつを見せてやろう。その恐ろしさと共にな」

 

 それは一般常識や法律に依らぬ、『チカラを行使する者の法』に依った宣言である。

 

「あ、なら私も御一緒していい? やっぱ愛里が心配だし、そのチカラが愛里の周辺を見ることにも使えるんであれば、巨乳美少女二人を侍らせる九角くんはよっぽど犯人の怒りを買うと思うんだよね!」

 

 そう言ったのは長谷部だった。気楽そうに言ったように見えて、その瞳には確かな力強さが込められている。

 

「フ……。好きにせよ。其の方の言い分にも一定の理はある。その方に覚悟があるのであれば、俺が止める道理もない」

「決まり!」

 

 天嶺の言葉を聞いた長谷部は指を鳴らす。

 

「はぁ……。教師・大人としては止めるべきなんだろうがなぁ~……」

「領分違いって言われたらどうしようもないよ、佐枝ちゃん。私たちは私たちに可能な部分で支援しましょ」

 

 例えば、上の報告やら何やらだ。一人の女生徒の尊厳が掛かっている状況であることに違いはなく、それに超常のチカラが関わっているのなら、天嶺がそちらを重視して対応しても何の不思議もない。

 然るに、事態を取り巻く事柄に関しては、事情を知り、それでいて直接的な力には慣れない者が対応するべきだろう。

 

「え、えっと、私が雫としての意識を強く持てば、それだけ犯人に見られやすく――言い換えれば伝わりやすくなるんですよね?」

「おそらく、だがな」

「分かりました! 私も覚悟を決めます! 確かにこの人は雫のファンなのかもしれませんが、その行動で私生活と学校生活、アイドル活動に支障が出るのは我慢できません! 雫を覗き見たいというのなら、九角くんとイチャついている様子を存分に見せてやります!」

 

 ギュッとコブシを握り締め、佐倉は力強く宣言するのだった。




佐倉が入学した経緯が分からないので、捏造です。
雫はあくまでもグラドルとして知られているだけで、アイドルとしての仕事の一環だと思うんですよね。とてもグラドル一本とは考えられないです。
で、事務所としても売り出しに力を入れている新進気鋭が、個人事情だけで三年間も公式活動が行えない場所に行くのを、所属事務所がそう簡単に許可を出すとは思えないんですよね。普通に考えて。
なので本作では、事務所もそれを認めざるを得ない、後押しせざるを得ない事情があった。そう解釈しました。

で、本作は『魔人』とのクロス作品ですので、原作のストーカーさんに魔人化してもらい、彼の行いの影響ということにしました。
原作からして、ファンを通り越した活動をしている彼のことですから、『自分はこんなにも君のことを見ているよ』というアピールで、雫の所属事務所に盗撮写真を送りつけても不思議はないと思います。

で、それが本文中のように機能した結果、雫を始めとする所属アイドルたちの活動が減っていって、雫自身も活動休止を報告。
凹んでいたところに、当の雫が生徒としてやってきたわけですから、ストーカーさんは大歓喜です。
『雫ちゃんが活動を休止してまで自分に逢いに来てくれた!』とハッスルしたのが、本作における裏設定だったりします。

で、それが本文中で挙げたように『逃げてきた先でもまた……!?』と佐倉を追い詰めることになり、吊り橋理論が働いた結果、天嶺にコロッといっちゃった次第です。
まあ、理由を鑑みれば仕方ないかもしれませんが、佐倉は原作でもチョロインの類ですのでね。

感想・中~高評価・リクエスト・お気に入り登録お願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。